オクラ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。Yqm (会話 | 投稿記録) による 2016年2月17日 (水) 14:51個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (曖昧さ回避ページへのリンクを付け替え(星型多角形))であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

オクラ
Abelmoschus esculentus
Abelmoschus esculentus
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 Core eudicots
階級なし : バラ類 Rosids
階級なし : 真正バラ類II Eurosids II
: アオイ目 Malvales
: アオイ科 Malvaceae
亜科 : Malvoideae
: フヨウ連 Hibisceae
: トロロアオイ属 Abelmoschus
: オクラ A. esculentus
学名
Abelmoschus esculentus
(L.) Moench[1]
シノニム
  • Hibiscus esculentus L.
和名
アメリカネリ
英名
okra
Worldwide okra production
Worldwide okra production
オクラ、生
100 gあたりの栄養価
エネルギー 129 kJ (31 kcal)
7.03 g
糖類 1.2 g
食物繊維 3.2 g
0.1 g
飽和脂肪酸 0.026 g
一価不飽和 0.017 g
多価不飽和 0.027 g
2 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(2%)
19 µg
(2%)
225 µg
516 µg
チアミン (B1)
(17%)
0.2 mg
リボフラビン (B2)
(5%)
0.06 mg
ナイアシン (B3)
(7%)
1 mg
パントテン酸 (B5)
(5%)
0.245 mg
ビタミンB6
(17%)
0.215 mg
葉酸 (B9)
(22%)
88 µg
ビタミンB12
(0%)
0 µg
コリン
(3%)
12.3 mg
ビタミンC
(25%)
21.1 mg
ビタミンD
(0%)
0 IU
ビタミンE
(2%)
0.36 mg
ビタミンK
(50%)
53 µg
ミネラル
ナトリウム
(1%)
8 mg
カリウム
(6%)
303 mg
カルシウム
(8%)
81 mg
マグネシウム
(16%)
57 mg
リン
(9%)
63 mg
鉄分
(6%)
0.8 mg
亜鉛
(6%)
0.6 mg
マンガン
(47%)
0.99 mg
セレン
(1%)
0.7 µg
他の成分
水分 90.17 g
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)
100g中の食物繊維[2]
項目 分量
炭水化物 6.6 g
食物繊維総量 5.0 g
水溶性食物繊維 1.4 g
不溶性食物繊維 3.6 g

オクラ英語: okra秋葵学名: Abelmoschus esculentus)は、アオイ科トロロアオイ属[3]植物、またはその食用果実である。英名 okra語源は、ガーナで話されるトウィ語nkrama から。その形状からLady's finger(婦人の指)とも呼ばれる[4]

原産地はアフリカ北東部(エチオピアが有力)。原産地や熱帯では多年草で、何年も繰り返し果実をつけるが、日本では冬越しができないため一年草である。

和名アメリカネリと言い、ほかに陸蓮根(おかれんこん)の異名もある。沖縄県鹿児島県伊豆諸島など、この野菜が全国的に普及する昭和50年代以前から食べられていた地域では「ネリ」という日本語で呼ばれていた。今日では当該地域以外では「オクラ」という英語名称以外では通じないことが多い。

角オクラは10cm、丸オクラは15-20cmくらいに成長した段階の若い果実を食用とし、日本でも広く普及している。大きくなりすぎると繊維が発達して食感が悪くなり、食品価値を失う。

形態・生態

短期間で50cm-2mほどに生長し、15-30cmの大きさの状のをつける。

黄色に中央が赤色トロロアオイに非常に似たをつける。開花はから早朝にかけてで、にはしぼんでしまう。開花後、緑色もしくは赤い果皮で長さ5-30cmの先の尖った形の五稜の果実をつけ、表面に短毛が生えており、熟すと木質化する。寒さに弱く霜が降りる気候では結実しない。

分布・栽培

熱帯から温帯栽培されている。エジプトでは、紀元前元年頃にはすでに栽培されていた。アメリカ州では、主に西アフリカから移住させられた奴隷によって栽培が始まり、現在でもアメリカ合衆国南部、西インド諸島ブラジル北部など、アフリカ系住民の多い地域でよく栽培されている。熱帯では多年草であるが、オクラは少しので枯れてしまうほどに寒さに弱いために、日本では一年草となっている。

日本に入って来たのは明治初期である。従来「ネリ」と呼んでいたトロロアオイの近縁種であるため、アメリカネリと名付けられた。現在の日本で主流を占めるのは、がはっきりしていて断面は丸みを帯びた星型になる品種だが、沖縄八丈島などでは大型で稜がほとんどなく、断面の丸いものが栽培されている。他にも莢が暗紅色になるもの(赤オクラ)など品種は多い。

平成24年度における全国作付面積は799ha、年間国内出荷量は11,224tであり、主な生産地は鹿児島4,383t(39%)、高知1,946t(17%)、沖縄992t(9%)、熊本898t(8%)、宮崎523t(5%)である[5]。また、国内出荷量が減る冬季を中心にタイフィリピンなどから輸入している。

人間との関わり

オクラは、刻んだ時にぬめぬめした粘り気が出るが、この粘り気の正体は、ペクチンアラピンガラクタンという食物繊維で、コレステロールを減らす効果をもっている。他の栄養素としては、ビタミンA、B1、B2、C、ミネラルカルシウムカリウムなどが含まれるため、夏ばて防止、便秘下痢に効く整腸作用などが期待できる。 粘り気を外に出さないように、莢のままやさしく加熱する料理もある。また、穀粉と一緒に加熱する、酸味の水に漬ける、先に油通ししておくなど、粘り気を抑えるための調理法がある[6]

日本では、生あるいはさっと茹でて小口切りにし、醤油鰹節味噌などをつけて食べることが多い。他にも、煮物天ぷら炒めもの酢のもの和えものスープ、すりおろすことによってとろろの代用にするなどの利用法がある。

インドグジャラート州では、輪切りにしたオクラをひよこ豆の粉(ベサン besan 英語版)と炒めたビンディ・ヌ・シャーク (bhindi nu shāk) という料理があり、南インドには、炒めたオクラをヨーグルトで和え、で炒めた香辛料で香りをつけたヴェンダッカイ・タイール・パチャディ (vendakkai thair pachadi) という料理がある。

パキスタンから中東北アフリカ西アフリカ西インド諸島では、輪切りにしてトマトと煮込み、ご飯にかけて食べることが多い。

キューバでは、煮込み料理にする他、ピラフのようにと炊き込む。ブラジルバイーア州には、オクラ、タマネギ、干しえびラッカセイまたはカシューナッツを煮込んで作る「カルル・ド・パラ英語版」(caruru)というソースがある。

アメリカ合衆国では、南部の料理によく用いられる。北部ではオクラ特有の粘り気が嫌われることが多く、21世紀現在でもあまり栽培されていない。南部ではスープの具にしたり、輪切りにしてコーンミールトウモロコシの粉)をまぶして揚げたり、ピクルスにする他、オクラをベーコンと米と一緒に炊き込んだ、リンピン・スーザン (Limpin' Susan) というピラフのような料理もある。ルイジアナ州クレオールケイジャン料理では、ガンボ (gumbo) と呼ばれる煮込み料理にとろみをつけるのに、オクラが使われることが多い。オクラを入れたスープもしばしばガンボ・スープと呼ばれるが、これはフランス語の「ゴンボ」(gombo) が英語に導入されガンボとなったものである。なお、「ゴンボ」は「オクラ」を意味するアンゴラ語の「キンゴンボ」(ki ngombo) もしくは中央バントゥー語の「キゴンボ」(kigombo) に由来する。ちなみにオクラのことを、キューバでは「キンボンボ」(quimbombó)、プエルトリコでは「キンガンボ」(guingambó) と呼ぶ。

ベトナムでは、大振りのオクラをスライスしたものを、ヤギ肉の焼き肉と一緒に焼いて食べる。

西アフリカでは、細かく刻んだオクラをヤシ油で煮込んだソースを、米やフフなどの主食につけて食べる。

加工食品として、ソースケチャップ原材料としても用いられる。種子は煎じてコーヒー代用品として飲まれた歴史がある。

脚注

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Abelmoschus esculentus (L.) Moench”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2013年9月16日閲覧。
  2. ^ 五訂増補日本食品標準成分表
  3. ^ 以前はフヨウ属Hibiscus)に分類されていたが、現在ではトロロアオイ属に分類されている。
  4. ^ Okra BBC Good Food 2015年5月13日閲覧
  5. ^ 地域特産野菜生産状況調査”. 農林水産省. 2014年8月23日閲覧。
  6. ^ バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント監修 山本紀夫監訳『世界の食用植物文化図鑑』、柊風社、2010年、p190

参考文献

  • 板木利隆ほか『校庭の作物』全国農村教育協会〈野外観察ハンドブック〉、1995年、73頁。ISBN 4-88137-054-5 

関連項目

外部リンク