Su-34 (航空機)

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Flag of the Soviet Union (1923-1955).svg Su-34 / Су-34

Su-34

Su-34

Su-34(スホーイ34、スホイ34;ロシア語:Су-34スー・トリーッツァチ・チトィーリェ)は、ロシア(旧ソ連)のスホーイ社によって開発された、Su-27の発展型の戦闘爆撃機である。

ロシアにおいては、Многофункциональные Самолеты(多機能航空機)、あるいは、Su-24と同様Фронтовые Бомбардировщики(前線爆撃機)と呼ばれている。NATOコードネームフルバック(Fullback)である。

開発経緯と現況[編集]

1980年代頃にソ連空軍は、Su-24の後継機となる戦闘爆撃機を求めていた。スホーイ設計局がそれに応じ、T-10Vの計画名でSu-27戦闘機の発展型として複座型のSu-34を開発した。名称内の末尾番号を4としたのは、Su-24との関連性を示すためである。ロシア空軍では、2000年代初頭まではSu-27IBの名称を使用していた。また海軍型はSu-32の名称が付けられていた。

ロシア空軍向けのSu-34は1997年頃に先行量産機4機が製造され、12機が発注されたが資金難を理由に一旦は製造が停止された。2000年9月には資金調達が可能となり製造が再開され、2015年までに58機を調達する計画としている。Su-34量産初号機は2006年10月12日に初飛行し、同年12月15日からロシア空軍に配備されている。ロシア空軍では2009年中に第2段階の試験飛行を終了させ、2010年に24機編成の最初の実戦飛行隊1個を編成して、2015年までに58機が整備される予定である。海軍型のSu-34FNはロシア海軍の購入が決まらず、生産と配備の予定は立っていない[出典 1]

2008年5月9日にモスクワで行われた対独戦勝パレードにSu-34が参加した。Su-34を操縦したのは、リペツク飛行センター司令アレクサンドル・ハルチェフスコミー空軍少将であった。5月9日の対独戦勝パレード当日、Su-34はSu-24前線爆撃機と並んで飛行し、本機がSu-24の後継機である事を印象付けた。

機体構成[編集]

外形[編集]

Su-34

機体最前部は先端のピトー管と思われるものに続き、側面にチャインの付いた大きな扁平型レドームが占める[1]

機体前部はチャインの付いた側面がそのままストレーキとなって全遊動式の小さなカナード翼が付いている。

コクピット部分は並列座席配置も相まって大きなキャノピーが胴体でも最も高い隆起部の前方上部を占め、隆起の後半部は機体中央に向かってなだらかに下っている。座席からの直接の後方視界は失われている。 コクピット左外面には引き込み式の空中給油用プローブが隠されている。

Su-27と同様にエンジン等の後部胴体が機体前部に比べて低い位置にあるため、カナード翼から続いたストレーキは、幾分高翼配置に見える62m2の主翼へ続く。21世紀以降に新設計される最新の第5世代戦闘機では流行のように採用されている曲がったエアインテイクダクトよってエンジンファンを外部から隠してステルス性を向上させる手法は本機では採られず、左右2つの巨大なエンジンは機体の中央から後部末端近くまで低い位置で直線的に延びている。円筒形のエンジン排気ノズルの左右にまで延びた水平尾翼は主翼より低いが主翼同様に水平に付いており、主翼と水平尾翼の平面形はステルス性に配慮してエッジの角度をそろえる工夫は見られない。主翼と尾翼はSu-27と同じものが使用される。胴体幅のほとんど左右端に付いた2枚の垂直尾翼も垂直でステルス性への考慮は見られない。Su-27の胴体後部にあったドーサルフィンは本機では備わっていない。

Su-27の特徴でもあった最後端中央の長く延びたテイルブーム部は、ビーバーテイル状の薄いものからスティンガーと呼ばれる太い形状に変更された。

前脚は重量増加に対応するため、Su-27が単車輪式から複車輪式に変わっている。主脚も強化されているとの情報もあるが、詳しくは不明である[出典 1]

コックピット[編集]

2名搭乗の複座座席は戦闘機形状の軍用機としては珍しいサイドバイサイドの並列型となっており、左席が操縦士席で右席が兵装担当士官席である。操縦席はK-36DM射出座席が用いられ、乗員は個別に射出される。乗員の搭乗は前脚後方にある乗降口から梯子を使い、床下ハッチから出入りする。

乗員区画は17mmのチタニウム装甲で保護され、高度3万フィートまでは酸素マスクが必要ない程度に与圧される。座席後方には電子レンジ冷蔵庫を備えた簡易キッチンとトイレがあり、左右席間に身を横たえることで交代で仮眠を取ることも可能だとされる。

操縦士席前方の計器盤が大きく場所を占めHUDも左側だけに付いており、兵装担当士官席側の前方の簡素な計器盤と比べて左右が非対称になっている[出典 1]。計器盤はカラーCRTによる多機能表示装置で、パイロットがヘルメット装着式照準器を使用することもできる。

エンジンと機体重量[編集]

MAKS-2009でのSu-34

使用されるエンジンは幾つかの異なる情報が錯綜しており明確ではないが、主要な例では、リュールカAL-31Fターボファンエンジンを搭載するとされている。AL-31Fエンジンはドライ推力74.5kN、AB使用時推力122.6kNとされる。別の情報では同エンジンの推力向上型AL-31FMエンジンが採用され、AB使用時推力128.1kNとされる。その他に、AB使用時推力で158.9kNとされるAL-35Fと177.1kNとされるAL-41Fであるという情報もある。

AL-31F搭載型は、最高速度は777ノットの約マッハ1.13も可能で、高高度ではSu-27のマッハ2.35に対してマッハ1.8になるとされる。実用上昇限度はSu-27の1,8000mから14,000-1,5000mに低下するとされる。

機体構造の変更と燃料の増量によって、最大運用重量はSu-27の約30トンから約43.5トンにまで増加されている。 機体の荷重制限はSu-27の9-10Gから7Gほどへと低下したとされる[出典 1]

搭載燃料と航続距離[編集]

機内搭載燃料はSu-27の9トン搭載から12.1トンにまで増やされた。増槽の使用によって燃料の総搭載量は最大で19.1トンまで増加できる。これにより航続距離は機内搭載分だけで約4,000km、増槽を含むと約7,000kmになり、Su-27の約3,700-3,900kmと約6,900kmより少し延びている。

戦闘行動半径はHi-Hi-Hiで約1,100km、Hi-Lo-Hiで約600kmとする情報があるが、増槽の有無や兵器の搭載量が明かされていない[出典 1]

電子機器[編集]

機首部にはレニネツB004(V004とも)多機能高解像度パッシブフェーズド・アレイ・レーダーを搭載し、テイルブーム先端にも後方象限用のレーダーを装備している。赤外線捜索追跡装置(IRST)は装備していないが、空対地攻撃用にTVおよびレーザー・チャンネルを有するUOMZ電子光学センサー/目標指示システムが内蔵されている。

自己防御器材にはTsNIRTI電子戦システムを装備し、両主翼端にはソルブツヤ・アクティブECMポッドが搭載されている[出典 1]

搭載兵器[編集]

Su-34 武装懸架の組合せ

最大搭載可能重量は約8トンであり、日本製のF-2米国製のF-15Eと同等である。

第5世代戦闘機ではステルス性を考慮して可能な限り投射兵器を機内搭載するが、本機では爆弾槽のようなものは備えず、攻撃兵装はすべて機外搭載となる。ハードポイントは合計12ヶ所備え、ロシア空軍が現有し使用しているすべての誘導兵器が搭載できるとされる。

固定武装はSu-27系列と同じ、GSh-301 30mm機関砲1門と150発の砲弾を搭載している[出典 1]

空対空ミサイル[編集]

中距離用AAM

  • R-27系列 (AA-10 アラモ)
    • R-27R セミアクティブ誘導、最大射程80km
    • R-27RE セミアクティブ誘導、射程延長型、最大射程130km
    • R-27T 赤外線誘導、最大射程80km
    • R-27TE 赤外線誘導、射程延長型、最大射程130km
    • R-27EM セミアクティブ誘導、射程延長型、最大射程130km
    • R-27AE アクティブ誘導、射程延長型、最大射程130km
  • R-77系列 (AA-12 アッダー)
    • R-77 アクティブ誘導、最大射程90km
    • R-77M-PD (RVV-AE-PD) アクティブ誘導、ラムジェット推進、最大射程150km(開発完了で配備中)

短距離用AAM

R-27EMは、RE型を基にした海軍向けのシーカー改良型である。超低空飛行対艦ミサイル迎撃用に他型が有効最低射高が10mなのを3mへ向上された。有効最大射高は25,000m。Su-37でもSu-27と同様に、R/REを6発か、R/REを4発とT/TEを2発を搭載する組合せが標準的に採られると考えられる。海軍仕様でもEMとAEの組合せでは同様だと考えられる。

R-73系列は、赤外線シーカーが上下左右に±60度の範囲で可動するため、ヘッドマウンテッドサイトの使用でボアサイトの拡大が可能になる。最低射高は不明だが、有効最大射高は20,000mとされる[出典 1]

空対地ミサイル[編集]

短射程-中射程ASM
  • Kh-59系列
    • Kh-59 (AS-13 キングボルト)TV誘導式、又はレーザー誘導式、320kg弾頭、最高速度1,000km/h、最大射程40km
    • Kh-59M (AS-17 クリプトン) ターボファン推進、最高速度860km/h、最大射程115km
  • Kh-31系列
    • Kh-31 (AS-14 ケッジ)60kg弾頭、最高速度マッハ4.5、最大射程70km(A型)/110km(P型)
  • Kh-31系列 詳細は不明ながらTV誘導式とレーザー誘導式で射程は8kmから30kmの幾つかの種類があるとされる[出典 1]

誘導爆弾[編集]

1,500kg型
  • KAB-1500系列
    • KAB-1500L レーザー誘導
    • KAB-1500KR 光学誘導
    • KAB-1500TK 光学誘導+データリンク誘導
500kg型

これらのレーザー誘導と光学誘導には、機首部に内蔵のUOMZ電子光学システムが使用される[出典 1]

海軍型と輸出型[編集]

スホーイでは、ロシア海軍のSu-24フェンサーの後継機としてSu-32FNを開発し、1995年パリ航空ショーで初公開した。

Su-32FNは全天候での潜水艦および水上艦艇に対する攻撃力が付与され、低高度を高速で飛行する際に乱流の影響を打ち消す操縦システム、液晶表示装置を使った電子計器システムなどを備え、機首にはシー・スネーク・レーダーを搭載する。このレーダーはマリタイム・モードに加えて、地形追随機能も有していると見られる。

海洋作戦用の器材では、各種ソノブイを最大72発、磁気探知機(MAD)、画像赤外線装置、レーザー測距装置を装備する。

Su-34の輸出型としてはSu-32FMを開発しており、初号機は1994年12月28日に初飛行したとされているが、これはSu-34量産仕様試作初号機の初飛行日と同じであるため同じ機体を指している。このSu-32FMにアクティブ式人工知能システムやアクティブ式ガスト荷重軽減システムなどを備えたのがSu-32MFである[出典 1]

性能諸元[編集]

Su-34-line.gif
  • 全幅: 14.70m
  • 全長: 23.34m
  • 全高: 6.50m
  • 主翼面積: 62.00m
  • 通常離陸重量: 38,240kg
  • 最大離陸重量: 44,350kg
  • 最大兵装搭載量: 8,000kg
  • エンジン: リューリカ=サトゥールン製AL-31Fターボファン×2(エンジンは不明な点がある)
    • 推力: 74.5kN/122.6kN(AB使用時)
  • 最大速度: マッハ1.8
  • 実用上昇限度: 15,000m
  • 航続距離: 約4,000km(2,159海里)(機内燃料のみ)
  • 戦闘行動半径: 594海里(Hi-Hi-Hi)/324海里(Hi-Lo-Hi)(搭載量は明かされていない)
  • 乗員: 2名
  • 固定武装: GSh-30-1 30mm機関砲×1

[出典 1]

基本型・派生型[編集]

Su-34
ロシア空軍向けの機体であり、Su-34ファミリーの基本となる戦闘爆撃機型である。
Su-34M
改良型。アビオニクスとソフトウェアを近代化しており、新しい空対空、空対地ミサイルの運用能力が付与される[2]
Su-34FN
空軍型のSu-34を基に、対艦・対潜攻撃が行えるようにしたロシア海軍向けの機体である。対艦ミサイルの運用だけでなく、ソノブイや短魚雷対潜爆弾の投下や、さらにはスティンガー内に機上磁気探知機(MAD)を収容して運用できるように開発が進められている[出典 1]

関係する機種名[編集]

Su-27IB
Su-34の試作機の名称
Su-27R
Su-34をベースとした偵察機提案型
Su-27IB
Su-34をベースとした迎撃機提案型
Su-27IBP
Su-34をベースとした戦術電子妨害機提案型
Su-32FN
ロシア海軍向け海洋攻撃機
Su-32FM
Su-34の輸出型
Su-32MF
Su-32FMの高機能型 

登場作品[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Su-34はSu-27に比べ、先端部分がやや尖った形状をしている。これは飛行性能を害する事なく座席を複座にしたためである。
  2. ^ ロシア、Su-34の改良型を開発(ロシア語)

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n 大塚好古 『ロシア軍の新型多目的攻撃機Su-34フルバック』 「空自F-2/F-1戦闘機と世界の戦闘攻撃機」軍事研究2009年8月号別冊、ジャパン・ミリタリー・レビュー、2009年8月1日発行、ISSN 0533-6716