麻枝准

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麻枝 准(まえだ じゅん、1975年1月3日 - )は、Key(株式会社ビジュアルアーツ傘下)所属のシナリオライター作詞家作曲家三重県出身。海星高校卒業。中京大学心理学科卒業。ファンからの愛称はだーまえ。本名、前田純(読みは同じ)。

シナリオライターとして一躍Keyを人気ブランドにした立役者の一人であり、業界内でも彼のファンは少なくない。作詞・作曲家としても非常に高い評価を得ており、KeyのゲームのOP曲やED曲で彼が手がけているものも多い。ビジュアルアーツ社長馬場隆博曰く「何でもできる天才」

目次

[編集] 生い立ち

[編集] 就職活動以前

暗黒城の魔術師』や『ドラゴンの洞窟』等のゲームブックに親しむ。小学生の時からオリジナルのゲームブック作成などの創作活動を始める[1]学級新聞を作っても必ず小説を掲載したという。高校生の時には作詞作曲活動を始める。ファンタジーにどっぷりつかっていたという。大学時代は角川書店の「ザ・スニーカー」誌の小説コンテストや誌上トライアルコーナーにずっと応募するもいつも佳作止まりだった[2]。また、卒業論文の共同執筆者から影響を受けテクノを聞き始める[3]。 同時期には、現在も親交の深いという友人中川氏と共にTM NETWORKのフォロワー的アルバムを作る事を目的としたユニット、KIMELLA(キメラ)を発足し活動していた。

[編集] 就職活動~scoop入社

大学時代は「ピコピコの前田」で名前が通っていたため、当初の就職活動もゲーム音楽を手がけることを希望しサウンドクリエーターとして日本ファルコムナムコカプコンなどの入社選考を受けたが作品審査で選考落ち。就職先が決まらないまま夏休みを迎え、シナリオライターへの転向を決意。当時コンシューマーはシナリオライターの未経験者採用をおこなっていなかったためアダルトゲームの会社に狙いを絞り、大手のチャンピオンソフト(アリスソフト)と当時CGのクオリティが高かったscoopの内定を得る。アリスソフトが第一志望であったものの生存競争に生き残ることは難しいと判断し、scoopへ入社する[注 1]。しかし結局scoopの環境は肌に合わず、『カオスクィーン遼子』のシナリオを完成させた直後に退社する。

[編集] Tactics入社~Key設立

scoop退社後、当時ではさらにマイナーメーカーであったネクストン(ブランド名はTactics)に入社。『MOON.』、『ONE 〜輝く季節へ〜』 のシナリオ・音楽を製作した。しかし、当時のネット上でもう一人のシナリオライターの久弥直樹と比較され「はずれライター」扱いされたことにショックを受ける。実際はニッチ(≒コア)な層からの評価を得ていたのだが、人気=高評価者の人数という観点では差があった。その後、会社との考え方の相違もあってTacticsを退社し、同僚の樋上いたるの紹介でビジュアルアーツへ移籍すると共に新ブランドKeyを設立する。このとき樋上を含む開発チームの大部分のメンバーを引き連れており、「メンバーに悪いことをしたからには、成功せねばならないと責任を感じた」と後年語っている [4]

[編集] Key設立後

ビジュアルアーツ移籍後は企画者、シナリオライター、作曲家(Key名義)として活動。涼元悠一が企画・シナリオを手がけた『planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜』を除く1999年に発売した第1作『Kanon』から2009年現在の最新作『リトルバスターズ! エクスタシー』にいたるまで一線で活動し続けた。現在は、企画及びシナリオは後進に任せ、音楽活動等を行っている。10年近く製作現場の中核的位置にいたことから、実質的なKeyの代表と見なされるようになっている。

しかし、必ずしもKeyというブランドに固執していたわけではない。『Kanon』発売直後においては『ONE 〜輝く季節へ〜』と同様に久弥直樹の人気の高さに勝てなかったと感じていたため、自らの新ブランドの立ち上げ許可を馬場社長に申請しているほどである。しかし、久弥の個人的都合による退社でKeyへの一時的な残留が決定。一作限りということで第2作『AIR』の企画、執筆を行った。だが完成時には新ブランド設立時の相方となるはずだった絵師と縁が切れており、以降もKeyに残留となった[4]

3作目では一旦企画者から降りたが、別の人間による企画が数ヶ月立っても全く進まない事態が発生。仕方なく企画者に戻り、三回も開発中止の覚悟をするという難産の末、三年半かけて『CLANNAD』を完成させる。苦労の甲斐があったのか高い評価を得ることができたが、その後スピンオフ作品として比較的自由に作った『智代アフター 〜It's a Wonderful Life〜』は、「ボッコボコにユーザーに叩かれた」(麻枝本人談)。評価する声も決して少なくは無かったのだが、それ以上にバッシングが大きかったため、ショックのあまり1〜2ヶ月の休職に追い込まれた[4]

その後なんとか立ちなおり、新人(都乃河勇人)の育成を兼ねて『リトルバスターズ!』の企画、シナリオを手がけた。なお、現在開発中の『Rewrite』では、QC(クオリティコントロール / 制作監督)としての参加に留まり、ようやく一旦筆を置くことができている。「月刊コンプティーク」2007年2月号にて休筆宣言をした際は「麻枝引退!」と騒がれたが、「次は誰かにまかせます」くらいの気持ちで言ったとして、シナリオライターとしての活動継続の可能性を示唆している[5]

2009年4月には麻枝准企画、脚本、音楽のオリジナルアニメを制作してしまおうというプロジェクト『Angel Beats!』が発表された[6]。麻枝氏公式ブログによると、1クール(ゲームで言う攻略キャラ一人分の長さ)を目安に執筆中とのこと。放送開始時期は未だ不明だが、麻枝氏自身は手応えを感じているらしい。2009年6月4日の公式ブログ記事によると脚本読みが始まっていることから制作は順調である模様。

また、『ヒビキのマホウ』では漫画原作に挑戦している。『ヒビキのマホウ』はルーツとも呼べる物語だという[7]

[編集] 作品の傾向

テキストは、小説やシナリオよりも、作詞のニュアンスに近いと指摘されることがある。麻枝本人は文章が短いほどいいとしているほか、ビジュアルノベルスタイルだと文章の下手さが目立つとしている[8]

関係のない2つの事項を組み合わせてギャップを生み出す、独特のセンスを持つ。そのギャップが生み出すインパクトをもって、シリアスな場面では感動を、ギャグシーンでは笑いを誘う傾向が強い。シリアスシーンとギャグシーン間自体のギャップも激しく、07th Expansionのシナリオライターである竜騎士07は、ここから『ひぐらしのなく頃に』の着想の1つを得たと語っている[9]。このように強固なオリジナリティを確立している一方で、同時に作風の模倣も難しく、これは麻枝がメインとなった『AIR』以降のKey作品で二次創作が盛り上がらないことの一因ともなっている。

泣きゲーが定着する以前からシナリオにおける泣かせ要素に注目しており、これは最初期の『MOON.』のジャンルを『鬼畜サイコ涙腺弛まし系ADV』としていた[10]ことからも伺える。次に企画した『ONE 〜輝く季節へ〜』は泣きゲーの始祖的存在として知られ [11] 、後の作品に大きな影響を与えた [注 2]。 泣き要素を意識するためか、麻枝の作品には必ず死が題材にされることが特徴で、主人公、ヒロイン、主人公の近親者のいずれも死ななかったケースは存在しない。

テーマとしては、家族や絆を取り上げることが多い。とりわけ、母娘関係を取り上げることが多く、『MOON.』でも母娘の葛藤が描かれている。父親を描きたくないのかとの問いには、母親を優先して出そう考えていると答えている[8]。また、家族になる前の段階には興味がないとも述べている[8]。一方で、恋愛ゲーム、アダルトゲームのシナリオライターでありながら、恋愛描写、性的描写には殆ど重点を置かない。

『ONE 〜輝く季節へ〜』の「永遠の世界」のように、幻想的、形而上的な世界に一人たたずむ少女がしばしば登場することも特徴である。[注 3]また、同作のように時間軸を異にする二つの世界が、しばしば他作品中にも現れる。

これらの傾向の集大成となったのが『CLANNAD』で、麻枝も「電撃G's magazine」の美少女ゲームの人気投票で『CLANNAD』が1位に輝いた時、「自分の中でもシナリオでは行き着くとこまで行っちゃって二度と超えられない壁になっている」とコメントしている。

ネットなどの評価を比較的気しているライターとしても知られており、『ONE 〜輝く季節へ〜』 のときに久弥直樹と比べ評判が良くなかったことから『Kanon』の沢渡真琴に「肉まん好き」などの特徴を与えたり、前述の通り母娘しか書けないのかということに対して、『CLANNAD』では父と息子の関係を過去の作品と比べて強く出している。

[編集] 作曲活動等

企画、シナリオの他に主にKey Sounds Labelでの作詞、作曲活動も行っている。代表曲として「鳥の詩」(『AIR』のOP/作詞担当)や「Light colors」(『智代アフター』のOP/作詞担当)、「Love Song」(Key Sounds Label/作詞、作曲担当)などが挙げられる。Keyに関連した仕事が多いが『GUNSLINGER GIRL[12] 等Keyとは直接の関係がないところでも曲を提供することも増えている。また、かつて存在した自身のウェブサイトをFlaming Juneと名付けるほどBTの「Flaming June」をこよなく愛し、「えいえんのせかい[注 4]はここから生まれたと述べるほど強い影響を受けている[8]。また、『MOON.』では企画、シナリオの他に久弥直樹とともに、ファンの間からは非常に評価の高いデモムービーを制作したが、フォトショップの使用方法が分からず、ペイントで制作したという逸話が残っている[3]

[編集] 主な著作

[編集] シナリオ

[編集] ゲーム

[編集] アニメ

  • Angel Beats! (企画・シリーズ構成・脚本・音楽ディレクション・<オープニング/エンディング/挿入歌 作詞・作曲>)

[編集] 漫画

[編集] 作詞、作曲

  • 陽のさす場所 (『MOON.』 作曲)
  • Last regrets (『Kanon』 作詞・作曲)
  • 夢の跡 (『Kanon』 作曲)
  • 冬の花火 (『Kanon』 作曲)
  • 残光 (『Kanon』 作曲)
  • 風の辿り着く場所 (『Kanon』 作詞)
  • 鳥の詩 (『AIR』 作詞)
  • 夏影 -summer lights- (『AIR』 作曲)
  • 青空 (『AIR』 作詞、作曲)
  • 夏影/nostalgia (Key+Lia 作詞・作曲)
  • Birthday Song, Requiem/恋心 (Key+Lia 作詞・作曲)
  • Spica/Hanabi/Moon (Key+Lia 作詞・作曲)
  • 道しるべ (『Spice ghost』 作曲)
  • 渚 (『CLANNAD』 作曲)
  • 同じ高みへ (『CLANNAD』 作詞、作曲)
  • 願いが叶う場所II (『CLANNAD』 作曲)
  • カントリートレイン (『CLANNAD』 作曲)
  • 小さなてのひら (『CLANNAD』 作詞、作曲)
  • 遙かな年月(-piano-) (『CLANNAD』 作曲)
  • Love SongKey Sounds Label 作詞・作曲)
  • hope (『智代アフター』 作曲)
  • love song (『智代アフター』 作曲)
  • morning glow (『智代アフター』 作曲)
  • old summer days (『智代アフター』 作曲)
  • memories (『智代アフター』 作曲)
  • love song -piano- (『智代アフター』 作曲)
  • Light colors (『智代アフター』 作詞)
  • Life is like a Melody (『智代アフター』 作詞・作曲)
  • Little Busters! (『リトルバスターズ!』 作詞・作曲)
  • Song for friends (『リトルバスターズ!』 作詞・作曲)
  • 遥か彼方 (『リトルバスターズ!』 作詞・作曲)
  • RING! RING! RING! (『リトルバスターズ!』 作曲)
  • 目覚めた朝に (『リトルバスターズ!』 作曲)
  • れっつ・りたーん (『リトルバスターズ!』 作曲)
  • BOYS DON'T CRY (『リトルバスターズ!』 作曲)
  • ともしび (『リトルバスターズ!』 作曲)
  • スローカーブ (『リトルバスターズ!』 作曲)
  • Little Buster! -Ecstasy ver.- (『リトルバスターズ! エクスタシー』 作曲)
  • 猫と硝子と丸い月 (『リトルバスターズ! エクスタシー』 作曲)
  • 駆ける (『リトルバスターズ! エクスタシー』 作曲)
  • Saya's Melody (『リトルバスターズ! エクスタシー』 作曲)
  • Saya's Song (『リトルバスターズ! エクスタシー』 作曲)
  • 風花雪月 (『ひまわりのチャペルできみと』 作曲)
  • だんご大家族 (TV版『CLANNAD』 作詞・作曲)
  • doll (アニメ『GUNSLINGER GIRL -IL TEATRINO-』ED 作詞・作曲)
  • human (アニメ『GUNSLINGER GIRL -IL TEATRINO-』最終回ED 作詞・作曲)
  • 風の理 (『5 -ファイブ-』 作詞・作曲)
  • 永遠 (『5 -ファイブ-』 作詞・作曲)
  • 時を刻む唄 (『CLANNAD AFTER STORY』 OP 作詞・作曲)

[編集] 脚注

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  1. ^ 当時のアリスソフトでは、TADA開発主任(当時)が「1年経って芽が出なければ、切ります」と宣言しており、この一言にアリスソフトの企業内での生存競争の厳しさを知ったことが理由である。麻枝はそれまでWindowsに触ったことのないズブの素人で、アリスソフト社内での生存競争に生き残れる自信がなく、また契約社員と正社員の差も大きかった
  2. ^ しばしば逆ONEと称される『秋桜の空に』(Marron 2001)等
  3. ^ 他には『Kanon』の川澄舞ルートなど
  4. ^ 作中では『永遠の世界』と漢字表記だがここでは出典の表記に合わせひらがな表記にしてあります。

[編集] 出典

  1. ^ 「高橋龍也×麻枝准 シナリオライターSpecial対談」、『カラフルPUREGIRL』第5巻第9号、ビブロス、東京、2004年7月、78-83、2009-04-24 閲覧。
  2. ^ 麻枝准インタビュー 「コンプエース」、vol.4、角川書店、2006年
  3. ^ a b 『MOON.』おまけRPG内スタッフコメント
  4. ^ a b c 「麻枝准ロングインタビュー」、『コンプティーク』第27巻第2号、角川書店、東京、2009年2月、付録48-60、2009-04-24 閲覧。
  5. ^ 「電撃マ王」2月号付録 竜騎士解析本 R-07より
  6. ^ "Angel Beats!" (日本語) (2009-04). 2009-05-10 閲覧。
  7. ^ 麻枝准・依澄れい『ヒビキのマホウ』第一巻、角川書店、2005年 ISBN 4-04713713-8 後書き
  8. ^ a b c d 「keyシナリオスタッフロングインタビュー」、『カラフルPUREGIRL』第2巻第3号、ビブロス、東京、2001年3月、22-29、2009-04-24 閲覧。
  9. ^ 竜騎士07 (2004-07-09). "実はKEYのエッセンスが…(苦笑)" (日本語). 07th Expansion. 2008-08-10 閲覧。
  10. ^ 「MOON.企画書」『タクティクス設定原画集』コンパス、1998年 ISBN 4-87763-014-7
  11. ^ 本田透 『萌える男』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2005年、91。ISBN 4-480-06271-8
  12. ^ 相田裕; アスキー・メディアワークス. "キャスト&スタッフ" (日本語). ガンスリンガー・ガール公式サイト. マーベラスエンターテイメント. 2009-04-24 閲覧。

[編集] 外部リンク