グレイルクエスト

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グレイルクエスト』(Grailquest)は、アイルランドの作家J・H・ブレナンによるゲームブックのシリーズ。 1984年-1987年に発行され、全8巻に及ぶ。

日本では二見書房より『ドラゴン・ファンタジー』シリーズとして1985年-1987年に発行され、その後2004年から創土社より復刊が始まっている。創土社版には新しいイラストや解説が追加されたほか、2巻からは二見版では省略されていた文章が補完されるようになった。

なお当作品は、かつて『Vジャンプ』(集英社刊)誌上にて取り上げられた『ドラゴンファンタジー』(架空のゲーム作品)とは一切関係ない。

概要[編集]

人を食ったようなユーモラスな文体で描かれる、ゲームブックの異色作。 地の文が「さあピップ、行くんだ」「油断するんじゃないぞ、ピップ」のような、主人公に語りかける口調で書かれており、独特の雰囲気を醸し出している。 次々に現れる珍妙なキャラクターやモンスターの繰り広げるブラックユーモアは他のどんなゲームブックにも見られない魅力として熱烈なファンを多数生んだ。

恐怖の14[編集]

本シリーズでは、主人公ピップは頻繁に死んでしまう。 その後は必ずパラグラフ14に飛ぶ指示がされている。 パラグラフ14では、志半ばで果てた主人公への慰霊、激励、叱咤、失望の言葉とともに再チャレンジの説明がなされるのが毎回恒例となっている。 読者は何度も14に飛ばされるため、14という番号を覚えてしまう。 ブレナンの方も死に様を特に描かず、例えば「捕まってしまったら、かわいそうだが14へ進め。」「わかっているだろうが、14へ進め。」のように指示されるのみである。 また、主人公ピップも死の瀬戸際に際し14を叫んだり、状況説明の際に「これはもはや14しかない!」というような形で一般的な名詞のごとき使われかたをすることもある。 「ブレナンと言えば14」と言われるほどに印象的で有名な要素。

死のパラグラフを14という数字にしたのは、「13では不吉であることで有名だから、敢えて1ずらしてみた」ことが由来であるとのこと。

夢時間[編集]

冒険中はいつでも、眠って生命点を回復できる。 だが、その際に三分の二の確率で、「夢時間」と呼ばれる悪夢の中の世界に迷い込んでしまう。 悪夢の内容は様々だが、夢だけに荒唐無稽で、そのうえ夢時間で失った体力は実際にも減ってしまうし、死んでしまったらそのまま14へ行くことになる。

主な登場人物[編集]

ピップ
本シリーズの主人公で、プレイヤーの分身。ピップ自身は農場で暮らす普通の若者であるが、マーリンの時を越える魔法(グレイル・クエストシリーズそのもののことである)によって未来人(グレイル・クエストを読んでいるプレイヤー)の意識を乗り移らされる。養父はジョン、養母はメアリー。
マーリン
アーサー王を助けるウェールズ人の魔術師。少々偏屈ながら極めて優秀な魔術師で、アーサー王は親しみを込めて「愚かな頑固老人」とも呼ぶ。さまざまな住まいを持つ。各々の巻の冒頭で読者の意識をピップに移し変え、冒険に出ることを促す。
E・J(エクスカリバー・ジュニア)
ピップが持つ魔法の剣。マーリンがアーサー王のエクスカリバーを模して作った。模造品ながら武器としては一般的な武具より強力で、知能を持っていて対話もできる。やや傲慢な性格ながら蜘蛛が苦手である。ショックを受けると気絶したり、切れ味が弱まったりもする。
詩的魔神
各巻のどこかに登場する魔神。詩をこよなく愛し、自分は最高の詩人だと思っているが、その作品は聞くに堪えないものである。仮にも「魔神」であるため恐ろしく強く、ピップが機嫌を損ねる行為(作詞した詩を少しでも批判する等)をとると、即座に14へ送る。日本語版のフーゴ・ハルによる挿絵では、クラウス・ノミがモデルとなっている。
「余に謁見を望む者は大勢いるのでな」という理由で登場するたびに(1度を除き)ピップのことを忘れているが、かつて二見書房から刊行されたゲームブック『ドラキュラ城の血闘』(J・H・ブレナン著)に登場した際には主人公に対し、「妙じゃな、以前におまえと会ったことはなかったか? 名前はたしか…ヘッペとか…いや、ペップ…でもないパップ、プッフ、プッペ、プッポ、ポッポ、いや(略)」と、グレイル・クエストファンをニヤリとさせる台詞を放つ。  
アーサー・ペンドラゴン
アバロン王国に平和と騎士道円卓をもたらした人物。今シリーズでは、魔術師やドラゴンの襲来、エクスカリバーの盗難、魔法のカビの侵略、奇病など災難にこと欠かない。マーリンによれば、王でなければもっといい男。
ギネヴィア
アーサー王の妃。1巻では魔術師アンサロムに誘拐され、暗黒城に囚われの身となる。のちの作品では、王との仲睦まじい様子も描かれる。
円卓の騎士
ランスロットペリノアパーシバルギャラハッドビデヴィアモルドレッドなどが登場。金曜日の円卓会議は、週末の騒ぎに備えて騎士たちが散漫になり、月曜日の円卓会議は、週末の騒ぎのために不調となる。ペリノアは方向音痴で有名。
意地悪ジェイク
ピップの3歳年上の悪党。シリーズ最初の戦闘相手となり、生命点は20点。のちの作品でも夢時間に現れる。
ゾンビ、食屍鬼(グール
シリーズにおなじみの怪物たち。後半の作品では、ピップはゾンビにとって要注意人物とされてしまう。
ネルド
メガネをかけ、受付や執事をしている強欲なモンスター。何度か登場し、パンクタイプなどもいる。
ゴル
筋肉質で野蛮な亜人種。頭が無く胸に顔があるという奇怪な種族、東洋人っぽい顔をしていて空手を使う者も居るらしい。
ピップ・ジュニア
ピップの代わりとするためにマーリンが作った魔法のかかし。通称P・J。
ニワトリ、ウサギ
共にシリーズでは危険な存在として登場することが多い。

各巻の内容[編集]

物語はアーサー王の時代、彼が統治するアバロン王国に魔術師マーリンがプレイヤーの意識だけを召喚し、ピップの肉体に宿らせる、という設定で始まる。

暗黒城の魔術師 (Castle of Darkness)
ピップは、邪悪な魔術師アンサロムを倒して誘拐された王妃ギネヴィアを救うべく、暗黒城への旅に出る。この巻では、マーリンは丸太の城に住む。地底湖にて湖の乙女が登場する。
ドラゴンの洞窟 (Den of Dragons)
ピップは、もっとも危険といわれる真鍮のドラゴンを倒す旅に出る。この巻では、マーリンは水晶の宮殿に住む。
魔界の地下迷宮 (The Gateway of Doom)
開け放たれた「魔界の門」を閉じるべく、ピップは地下迷宮を冒険する。この巻では、マーリンは樫の木の中に住む。
七つの奇怪群島 (Voyage of Terror)
アーサー王の秘剣エクスカリバーが消え失せ、ピップは剣を求めて奇妙な航海へ出る。なぜかイアソンをはじめとするアルゴー船の面々が登場し、ギリシア神話の怪物が出没する島々をめぐる。この巻では、マーリンは井戸の中に住む。
魔獣王国の秘剣 (Kingdom of Horror)
エクスカリバーを取り戻すため、ピップは「おとぎの国」へ旅立ったはずだが、魔獣王国へ到着してしまう。この巻では、マーリンはサイコロ型の隠れ家に住んでおり、ピップの首にはボルトが刺さっている。
宇宙幻獣の呪い (Realm of Chaos)
邪悪なカビにおおわれたキャメロットを救うため、ピップは謎の幻獣を倒す冒険へと旅立つ。この巻では、マーリンは樽の中に住む。
幻し城の怪迷路 (Tomb of Nightmares)
マーリンの借金を取り立てるため、ピップは「幻しの霊城」へゆく。一見スケールの小さい仕事のようだったが、そこには隠された目的があった。この巻では、マーリンはロック鳥の卵の中に住む。出版前の仮タイトルは「妖魔の棲む霊宮」だった。
ゾンビ塔の秘宝 (Legion of the Dead)
アーサー王が奇病に倒れ、マーリンは行方不明となり、王国は「死の軍団」の侵略にさらされようとしていた。ピップは「聖杯」を見つけるために最後の冒険へと旅立つ。聖杯伝説漁夫王が登場する。

書籍データ[編集]

挿絵はフーゴ・ハルによる。

二見書房版[編集]

  1. 『暗黒城の魔術師』 真崎義博訳、1985年7月30日初版 ISBN 4-576-85044-X
    総パラグラフ数157。付属:魔神に捧げる詩の記入用ページ、綴じ込みマップ
  2. 『ドラゴンの洞窟』 大久保寛訳、1985年8月20日初版 ISBN 4-576-85050-4
    総パラグラフ数173。付属:ストーンマーテン村地図、魔神に捧げる肖像画用ページ、綴じ込みマップ
  3. 『魔界の地下迷宮』 真崎義博訳、1985年10月25日初版 ISBN 4-576-85056-3
    総パラグラフ数201。付属:魔神に捧げるポスター用ページ、地下迷宮マップ、さまよえる怪物リスト
  4. 『七つの奇怪群島』 真崎義博訳、1986年3月25日初版 ISBN 4-576-86024-0
    総パラグラフ数203。付属:日本の読者へ(著者メッセージ。日本人の読者は、今回の冒険で生命点を5点加えてよい)、航海図、黄金の船(設計図付)、やぶにらみ航海、まやかしの術
  5. 『魔獣王国の秘剣』 大久保寛訳、1986年9月25日初版 ISBN 4-576-86106-9
    総パラグラフ数226。付属:魔獣王国地図、奇岩城地図、闇の迷宮マップ記入用紙、マーリンの隠れ家、魔法の品、十字架の扉、著者からのメッセージ
  6. 『宇宙幻獣の呪い』 高橋聡訳、1987年3月15日初版 ISBN 4-576-87008-4
    総パラグラフ数222。付属:宇宙樹マップ、呪いの迷宮、「幽鬼おどし」設計図、キャメロット城地図、謁見室の見取り図、空手で"見えない敵"と戦う著者写真
  7. 『幻し城の怪迷路』 真崎義博訳、1987年8月25日初版 ISBN 4-576-87094-7
    総パラグラフ数224。付属:らせん迷路、はらわた迷路
  8. 『ゾンビ塔の秘宝』 高橋聡訳、1987年11月25日初版 ISBN 4-576-87132-3
    総パラグラフ数237。付属:『幻し城の怪迷路』の「ドクロの三角形」のヒント

創土社版[編集]

  1. 『暗黒城の魔術師』 真崎義博訳、フーゴ・ハル監修、2004年11月30日初版、180ページ、ISBN 4789301419
    総パラグラフ数159。付属:魔神に捧げる詩の記入用ページ、禁断の書(マップ)、目神たちのお喋りタイム(解説)、「著者近影?」(著者イラスト)
  2. 『ドラゴンの洞窟』 日向禅訳、フーゴ・ハル訳監修、2006年4月30日初版、205ページ、ISBN 4789301427
    総パラグラフ数173。付属:魔神に捧げる肖像画用ページ、ストーンマーテン村地図、隠しマップ、解説(4種類)、著者近影。
  3. 『魔界の地下迷宮』 日向禅訳、フーゴ・ハル訳監修、2008年11月30日初版、ISBN 978-4-7893-0143-5
    総パラグラフ数201。付属:迷宮図(全3層)。
  4. 『七つの奇怪群島』 日向禅訳、フーゴ・ハル訳監修、2011年1月30日初版、ISBN 978-4-7988-0144-5
    総パラグラフ数203。付属:航海図、「黄金の舟」製作用折り紙、訳者あとがき。
  5. 『魔獣王国の秘剣』 日向禅訳、フーゴ・ハル訳監修、2012年12月30日初版、ISBN 978-4798801452
    総パラグラフ数250。付属:闇の迷宮地図、闇の迷宮(単色印刷)、マーリンの隠れ家、十字架の扉、その他マップ2枚、訳者あとがき。

関連グッズ[編集]

ファンサービスとして、フーゴ・ハルのデザインによるグッズが制作されている。これまでに以下のようなグッズが販売されている。

14Tシャツ - パラグラフ14をモチーフにしたTシャツ
ナイトメア・キャップ - 夢時間で使える
EJTシャツ - EJをモチーフにしたTシャツ
14リサイクルバッグ - 買い物に使えるバッグ
聖盃マグカップ - 聖盃と詩的魔神が描かれたマグカップ

外部リンク[編集]