アーサー王物語
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アーサー王物語(アーサーおうものがたり)またはアーサー王伝説(アーサーおうでんせつ)とは中世の騎士道物語の一つ。
ヨーロッパの伝説の中でも最大級の伝説ともいわれ、今日ではヨーロッパだけでなく世界各地で知られている伝説である。アーサー王自身の説話を中心として、円卓の騎士・聖杯伝説・宮廷愛など数々の派生した話に彩られている。
目次 |
[編集] あらすじ
現在、アーサー王物語として一般に知られているのは、中世後期に完成し、トマス・マロリーらがまとめたアーサー王を中心とする騎士道物語群である。これは大きく四つの部分に分ける事ができる。
- アーサーの誕生と即位。ローマ皇帝を倒し、全ヨーロッパの王になるまでの物語。
- アーサー王の宮廷(キャメロット)に集った円卓の騎士達の冒険とロマンス。
- 聖杯探索。最後の晩餐で使われたという聖杯を円卓の騎士が探す物語。
- ランスロットと王妃グィネヴィアの関係発覚に端を発する内乱(カムランの戦い)。王国の崩壊とアーサー王の死(アヴァロンへの船出)。
[編集] 歴史
[編集] 伝説
歴史上のアーサー王についてはアーサー王#歴史上の人物としてのアーサー王を参照。
5世紀末にサクソン人を撃退したとされる英雄アーサーは、ブリトン人(ウェールズ人)の間で古くから伝説として語り継がれてきた。アーサーの直系の子孫であるウェールズ人が残した『マビノギオン』はそれを現代に伝えるほぼ唯一の史料であり、華やかな騎士道ロマンスに彩られる前の比較的古い状態のアーサー王伝説を見ることができる。
アーサーの生涯がはじめてまとまった形をとったのは、1136年頃ウェールズ人ジェフリー・オブ・モンマスが書いた『ブリタニア列王史』においてである。その中でウーゼルの子アーサーは、魔法使いマーリンの助けで名君に成長してゆき、名剣カリブルヌスを手に巨人退治やローマ遠征などの様々な冒険を重ねるが、最期は叛乱を起こしたモルドレッドとの戦いで致命傷の深手を負い、傷を癒すためアヴァロンの島へ去る。『ブリタニア王列史』は歴史書の体裁を取っているものの、非現実的な部分が多くを占めており、騎士達の王アーサーのイメージはここから始まると言ってよい。以降、彼の作品とそれを基にしたアングロ=ノルマンの詩人ウァースの『ブリュ物語』(1155年頃)、それにウェールズ人と共通の文化を有するブルターニュ半島のブルトン人などを経由して、アーサーの伝説は西ヨーロッパ全体に伝播してゆく。
[編集] 中世
騎士道が花開く中世後半になると、アーサー王伝説はカール大帝やアレクサンドロス大王と並んで騎士道文学の一ジャンルとなり、フランスを中心に各地でさまざまな異本やロマンスが作られた。また、その過程で本来関係がなかったエピソードが円卓の騎士の物語として徐々に組み込まれていった。ランスロットや湖の乙女、トリスタンとイゾルデ、パーシヴァル、ガラハッド、聖杯探求、石に刺さった剣、円卓、キャメロットなどといった人物やモチーフはこの時期に導入されたものである。
この時代の優れた作品にクレティアン・ド・トロワ(フランス)の『ランスロ、あるいは荷車の騎士』、ドイツのヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハの『パルツィヴァル』、ゴットフリート・フォン・シュトラースブルクの『トリスタン』、イングランドの『ガウェイン卿と緑の騎士』(著者不明)などがあり、これらは中世文学を代表する俗語作品として高く評価されている。
このようにして製作された各種ロマンスは、『ランスロ=聖杯サイクル』や『後期流布本サイクル』(ともに著者不明)などの統一性を持った散文作品群にまとめられていった。1470年にウェールズ出身の騎士トマス・マロリーがこれらを使用して書き上げた『アーサー王の死』はその決定版というべきもので、現在はマロリーの作品がアーサー王物語を代表する作品となっている(ただし、『アーサー王の死』に含まれないエピソードやヴァリエーションも数多く存在する)。この作品は15世紀末の出版業者ウィリアム・キャクストンの手による印刷本(キャクストン版)と、1934年に発見された中世写本(ウィンチェスター版)により現在に伝えられている。
[編集] 近現代
ルネサンス期には中世の象徴として批判されたが(セルバンテスの『ドン・キホーテ』は騎士道物語の荒唐無稽さを揶揄した作品として名高い)、ロマン主義の時代になると作品のモチーフとして好まれた。第二次世界大戦以降はファンタジーの復権とともに再び注目されるようになり、いまなお小説や映画、ドラマなどで新しい解釈によるアーサー王物語が作られ続けている。 現在、一般によく読まれているのは18世紀のアメリカの作家トマス・ブルフィンチがマロリーなどを中心に再話したものである。イギリスのテレンス・ハンベリー・ホワイト、ローズマリ・サトクリフ、バーナード・コーンウェル、アメリカのマリオン・ジマー・ブラッドリーが、オリジナルを加えて書き下ろしたものとして評価が高い。
[編集] 日本での受容
日本では、明治に夏目漱石がアルフレッド・テニスンの詩『シャロットの女』と『ランスロットとエレイン』を基にして短編『薤露行』を書いたが、それ以外ではアーサー王物語を扱った本格的な文学作品はほとんどないと言ってよい。
1942年にブルフィンチの再話が翻訳され(野上弥生子訳『中世騎士物語』)、物語の概略が一般読書人にも知られるようになった。
戦後、1970年代の後半にはテレビアニメ『円卓の騎士物語 燃えろアーサー』が放映された。この作品はマロリーの作品を原作とし、愛国の騎士としてアーサーを描いている。子供向けではあるものの、一般的なアーサー王のイメージを崩すことなく日本人にも伝えた点で一定の功績が認められる。
1990年代以降、アニメやゲーム、ライトノベルが大衆若者文化に広く浸透するようになると、それらにアーサー、ランスロット、エクスカリバー、聖杯、円卓などといった人物やモチーフが登場するようになったが、単に名前を借りてきただけのものも多い。
[編集] ナルト叙事詩との関連
アーサー王をはじめとする伝説の多くは、従来はケルトに由来するというのが有力な説であった。しかし近年は黒海東岸のオセット人のナルト叙事詩と共通の起源を持つという説が注目されている[1]。この説で特に注意されているうちの一つは、アーサー王の死とナルト叙事詩の大英雄バトラズの死との間に顕著な類似が認められることである。
アーサー王は死の直前ベディヴィアに湖にエクスカリバーを投げ込むよう指示する。しかしベディヴィアはエクスカリバーの美しさに見惚れて湖に投げ込んだと嘘をつく。しかしアーサー王は奇跡(つまり湖から手が現れて剣を受け取る)が起きないことを理由にその嘘を見抜き、仕方なくベディヴィアは剣を湖に投げ入れる。一方のバトラズも死の直前、ナルトたちに自分の魔剣を海に投げ込むよう命じる。しかしその剣のあまりの重さゆえに、ナルトたちが海に投げ入れたと嘘をつくと、やはり何の奇跡も起きていないことを理由にその嘘を見抜き、ナルトたちは仕方なく剣を海に投げ込む。奇跡の内容など違いもあるが、物語の構成に類似が保存されている、と論じられている。
[編集] 主要登場人物
詳細はアーサー王伝説に登場する人物一覧を参照。作品により、名前や血縁関係が多少異なる。
- アーサー・ペンドラゴン
- ブリテンの王。
- マーリン
- アーサーを補佐し、導く魔術師。
- グィネヴィア
- アーサーの王妃。ランスロットとの禁断の恋で有名。
- ヴィヴィアン(湖の乙女)
- マーリンの愛人にして弟子。
- モルゴース
- アーサー王の異父姉。アーサー王との間にモルドレッドをもうける。
- モーガン・ル・フェイ
- 妖姫。アーサー王の異父姉。
[編集] 円卓の騎士
アーサー王に仕えた精鋭の騎士たち。各々魔法の円卓に席を持つ。席の総数、構成員は作品によって異なる。
- ケイ
- アーサーの育ての親エクトル卿の息子。アーサーの乳兄弟。国務長官を務める。
- ベディヴィア
- アーサーの忠実な家臣。最後の戦いののち、エクスカリバーを湖の乙女に返還する。
- ランスロット
- 湖の騎士。この世で最も誉れ高き最高の騎士。
- ガウェイン
- モルゴースの息子でアーサーの甥。
- トリスタン
- アイルランド王マルクの甥。竜退治やイズーとの恋で有名。
- ガラハッド
- ランスロットと白い手のエレインの息子。聖杯の騎士の一人。
- パーシヴァル
- ペリノア王の息子。聖杯の騎士の一人。
- ボールス
- 聖杯の騎士の一人。
- モルドレッド
- ガウェインの異父弟。モルゴースの息子にしてアーサーの甥(実はアーサーの近親相姦でできた子)。王位の簒奪を企み、アーサーと戦う。
[編集] 研究書・解説書
日本語の文献のみ挙げる。
- リチャード・バーバー著、高宮利行訳『アーサー王 その歴史と伝説』東京書籍 1983年
- 高宮利行著『アーサー王伝説万華鏡』中央公論社 1995年
- ローナン・コグラン著、山本史郎訳『図説 アーサー王伝説事典』原書房 1996年
- 渡邉浩司「アーサー王物語の淵源をケルトに探る」、ジャン・マルカル著(金光仁三郎・渡邉浩司訳)『ケルト文化事典』大修館書店 2002年、pp.191-209.
- 渡邉浩司「<アーサー王物語>とクマの神話・伝承」、『中央大学経済学部創立100周年記念論文集』、2005年、p.531-549.
- 渡邉浩司「古フランス語散文<アーサー王物語>の<サイクル化>-プレイヤッド版『聖杯の書』所収『アーサー王の最初の武勲』を手がかりに」、佐藤清編『フランス-経済・社会・文化の諸相』中央大学出版部 2010年、pp.93-132.
[編集] 学術研究機関
- 国際アーサー王学会
- (IAS:The International Arthurian Society/SIA:La Société Internationale Arthurienne)
- 1948年にアーサー王文学の研究者ジャン・フラピエ(Jean Frappier)、ウジェーヌ・ヴィナーヴァ(Eugene Vinaver)、ドミニカ・レッゲ(Dominica Legge)らが中心となり、パリ大学(ソルボンヌ)を本拠として創設された研究団体。世界各国に支部があり、日本にも支部がある(1987年第1回支部総会)。
[編集] 関連作品
「アーサー王に関する書籍の一覧」および「アーサー王に関する作品一覧」を参照
[編集] 脚注
- ^ C・スコット・リトルトン, リンダ・A・マルカー『アーサー王伝説の起源 スキタイからキャメロットへ』辺見葉子, 吉田瑞穂 (訳), 青土社, 1998年, 978-4791756667.
[編集] 外部リンク
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