近鉄6400系電車

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基本情報
運用者 近畿日本鉄道
製造所 近畿車輛
製造年 1986年 - 1997年
投入先 南大阪線系統
主要諸元
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1500V
最高運転速度 100 km/h
全長 20,720 mm[1][2]
全幅 2,800 mm[1][2]
全高 4,150 mm[1][2]
車体高 4050・4025 mm[1]
主電動機 MB-5020A[1][3]
主電動機出力 155 kW[1][2]
駆動方式 WNドライブ[1][2]
歯車比 6.31[3]
制御方式 GTO-VVVFインバータ制御[1][3][4]
制動装置 回生併用電磁直通ブレーキ
(保安ブレーキ付)
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近鉄6400系電車(きんてつ6400けいでんしゃ)とは、近畿日本鉄道(近鉄)が保有する同社南大阪線用の一般車両(通勤形電車)である。

本稿では6620系電車についても紹介する。なお、解説の便宜上、吉野側先頭車の車両番号+F(Formation=編成の略)を編成名として記述(例:モ6401以下2両編成=6401F、モ6621以下4両編成=6621F)する。

概要[編集]

1984年に登場した1420系は近鉄では初採用のGTOサイリスタ素子を搭載したVVVFインバータ制御の試作形式として投入され、大阪線にて長期的な試験運用が行われたが、この結果を基に狭軌線(南大阪線系統)用の量産型として登場したのが6400系であり、その4両編成仕様である6620系に続いている[4]

両形式共に1400系8810系で確立された車体デザインを概ね踏襲し、車体構造では同時期に登場した3200系と同様の最大車体幅2,800mmの大型車体を採用し[4]、1420系や6600系以前の従来車の鋼製から裾を絞ったアルミニウム合金車体に仕様変更されている[1]。安定した大型アルミ押出材の供給と構体の組立工数の削減が可能になったためであり、特急車と大阪線・名古屋線用急行車の5200系東大阪線(現・けいはんな線)7000系を除き、その後の車両にもこのアルミ車体は採用され、近鉄VVVF制御車両の標準仕様となっている。

車内インテリア面では内装材は1420系と同様にサンドウェーブ柄の化粧板に、マルーン調の床材を引き続き採用しているが、ロングシートの仕様は本形式の前年に製造された3200系と同様のひじ掛けが化粧板仕上げとなった新しいものに変更されており、以上の車内デザインは2000年に登場するシリーズ21まで近鉄一般車両の標準仕様となった。

6400系[編集]

6400系電車
河内天美駅に停車中の6400系電車(6404F)
基本情報
製造年 1986年 - 1996年
製造数 33編成66両
主要諸元
編成 2両編成
編成定員 6400系、6407系:272名
6413系、6419系、6422系、6432系:298名
車体高 4,050 mm (6412Fまで)
4,025 mm (6413F以降)
台車 Mc車:KD-94/KD-98/KD-98B/KD-305[1]
Tc車:KD-94A/KD-98A/KD-98C/KD-305A[1]
編成出力 620 kW
制御装置 日立製作所[1][3]
6400系:VF-HR-108
6407系、6413系、6419系:VF-HR-114
その他:VF-HR-114A
備考 電算記号:Mi
6432系はワンマン運転対応
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御所線を快走する6432系電車(6425F)
6407系の車内(座席モケットは交換済み)

1986年3月に登場[5][3]。登場から30年が経ち、非冷房車であり老朽化が目立っていた6800系の置換え用として製造された。電算記号はMi[6]、Mc-Tcで2両編成を組成する[1][4][5]1422系1220系の狭軌仕様だが[1]、登場は両形式より約1年早い[5]

車体・走行機器[編集]

日立製作所製のGTO素子によるVVVFインバータ装置を装備[1][4][5]主電動機かご形三相誘導電動機で1台あたりの出力は155kW[1][2]。歯車比は6.31とした。制御回路マイコンは16ビットのものを採用し、制動装置はT車優先遅れ込め付きのHSC-R形を採用している。MGはHG-77463形を[3]、CPはHS-10形をそれぞれTc車に設置している[3]。裾を絞った幅2,800mmのアルミニウム合金製の車体を持つ[1][4][5][3]台車はKD-94形(Mc)、KD-94A形(Tc)を装備[1][3]。車輪径は動輪・付随輪とも860mmとなった。

6400系の他、標準軌用のGTO-VVVFインバータ車と同じ仕様変更の歩みを続けている派生系列を以下に挙げる。

  • 6407系1989年登場[1][3]。ホイールベース間隔を標準軌の1430系、1230系と同様の2,100mmに短縮した新仕様台車KD-98(Mc)、KD-98A(Tc)に変更[1][3]
  • 6413系1990年登場[1][3]。通勤車の全線共通仕様に基づく新仕様の車体を採用し[1][4][3]、台車をKD-98B形(Mc)、KD-98C形(Tc)に変更[1]
  • 6419系1992年登場[1][3]。Tcに設置されている補助電源装置を電動発電機からSIV(静止型インバータ、BS-483Q形)に変更し[1][4][3]バリアフリー対応として車椅子スペース(後に6400系列全車にも設置)を設置[1]、2022年4月までに全編成ワンマン運転対応仕様を追設[7]
  • 6422系1993年登場[1]。台車をKD-305形ボルスタレス式に変更[1][4][5][3]、抑速制動を追加[5]
  • 6432系(6422F - 6429F・6432F・6433F):6422系のワンマン運転対応仕様[1][4][3]

改造[編集]

標準軌線用GTO-VVVFインバータ車両と同様に、以下の改造が順次施工されている。

  • 全車両の車外転落防止幌設置[5]
  • VVVFインバータ制御車のシンボルマーク撤去[5]
  • ATS-SP設置・デッドマン装置更新工事、戸締灯の増設工事[5]
  • バリアフリー対応改造 (2022年4月現在、6422F・6425F・6430F・6432Fに施工[8][9])
    • 車内案内表示器およびドアチャイム、ク6500形先頭連結部に連結部注意喚起スピーカーの取り付け
  • 簡易内装更新
    • 座席モケットの交換
ワンマン運転対応改造

1999年から2001年にかけて6422F - 6429Fにワンマン運転対応工事が行われ6432系に編入された。その後2022年4月実施のワンマン運転区間拡大により6419系全編成に対してもワンマン運転対応工事を実施した[7]。改造された編成はワンマン運転設備を取り付けした関係上、車内乗務員室側の窓が小型化されている。

制御装置更新

2022年から制御装置がSiCを使用したものへと更新が開始された。更新最初の車両は6422系6430FのC#6430であった[10]。けいはんな線および特急車以外でのVVVF車の制御装置更新は同系列が初めてである。

編成[編集]

2019年4月1日現在、33編成66両が古市検車区に配置されている[11]

 
← 大阪阿部野橋
6400系
Mi01 - Mi06
ク6500 モ6400
6501 - 6506 6401 - 6406
6407系
Mi07 - Mi12
ク6507 モ6407
6507 - 6512 6407 - 6412
6413系
Mi13 - Mi18
ク6513 モ6413
6513 - 6518 6413 - 6418
6419系
Mi19 - Mi21
ク6519 モ6419
6519 - 6521 6419 - 6421
6422系
Mi30・Mi31
ク6522 モ6422
6530・6531 6430・6431
6432系
Mi22 - Mi29・Mi32・Mi33
ク6532 モ6432
6522 - 6529・6532・6533 6422 - 6429・6432・6433

6620系[編集]

6620系電車
長野線を走行する6620系電車(6627F)
基本情報
製造年 1993年 - 1997年
製造数 7編成28両
主要諸元
編成 4両編成[12]
編成定員 614名
車体高 4,025 mm[13]
台車 KD-305・KD-305A[13]
編成出力 1,240 kW
制御装置 日立製作所製 VF-HR-114A
備考 電算記号:MT
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1993年に登場した6400系(6422系)の4両編成仕様である[13][12][5][3]。電算記号はMT[14]。登場後30年以上経過した6000系の置換え用として[5]、1997年までに合計7編成が製造された[13][12][5]

1020系の場合、編成中の母線の引き通しでMc、M車とも集電装置は1基装備だが、本系列では最初の2編成はMc車、M車ともパンタグラフを2基搭載し、母線の引き通しを行わなかった。6623F以降、1620系、1020系と同様に母線の引き通しが行われ、各車パンタグラフ1基搭載になった[3]。後年、最初の2編成も母線引き通しが行われたため、現在は全編成のMc車、M車がパンタグラフ1基である。

ラッピング列車[編集]

  • 6623F:「YOSHINO Foresta」 (1999年3月 - 2002年12月
  • 6624F:「solaha」(2014年3月 - 2014年11月)
  • 6625F:「不思議の国のアリス」(2007年5月 - 2008年4月)
  • 6626F:「吉野線ラッピング旬彩列車」(2012年10月1日 - 2016年6月
  • 6622F:「あすか万葉トレイン」

2019年7月30日 - 2023年 1月5日

改造[編集]

標準軌線用GTO-VVVFインバータ車と同様に、以下の改造が順次施工されている。

  • 全編成の車外連結部に転落防止幌設置
  • バリアフリー改造 (2018年4月現在、6621F・6622F・6624F - 6626Fに施工[8][15])
    • 車内案内表示装置とドアチャイム、ク6720形先頭連結部に連結部注意喚起スピーカーの設置
  • VVVFマーク撤去[5]
  • 全編成のATS-SP車上装置設置・デッドマン装置更新工事の施工[5]
  • 簡易内装更新
    • 座席モケットの交換

編成[編集]

2019年4月現在、7編成28両が古市検車区に配置されている[11]

 
← 大阪阿部野橋
6620系
MT21 - MT27
ク6720 モ6670 サ6770 モ6620
6721 - 6727 6671 - 6677 6771 - 6777 6621 - 6627


近鉄6620系電車 (6624F・MT24)(河内天美駅付近にて)

運用[編集]

6400系は2両編成という汎用性の高さを活かして、南大阪線・吉野線・長野線・御所線・道明寺線の全区間で使用される。特に、2両のワンマン運転は現状6400系専用となっている。ツーマン運転の場合は本系列同士または他系列と連結のうえ4両編成から8両編成まで、普通から急行そして行楽期には臨時快速急行まで幅広く使用される。

6620系はワンマン運転の道明寺線と5両編成以外で、単独の4両編成、本系列同士または他系列との連結で6両編成から8両編成まで、普通から急行、行楽期の臨時快速急行まで幅広く使用される。

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac 三好好三『近鉄電車』p.199
  2. ^ a b c d e f 諸河久・山辺誠『日本の私鉄 近鉄2』p.129
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 日本の私鉄「近畿日本鉄道」p146 - p153(著者・編者 広岡友紀、出版・発行 毎日新聞社 2012年) ISBN 978-4-620-32003-8
  4. ^ a b c d e f g h i j 諸河久・山辺誠『日本の私鉄 近鉄2』p.28
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 近畿日本鉄道のひみつ p.132・p.133(発行者 小林成彦、編者・発行所 PHP研究所 2013年)ISBN 978-4-569-81142-0
  6. ^ 三好好三『近鉄電車』p.231-232
  7. ^ a b 柴田東吾『大手私鉄サイドビュー図鑑07 近鉄通勤車 上』P88-97「6400系・6620系」 イカロス出版 ISBN 9784802211215 2022年4月18日発売
  8. ^ a b 『鉄道ファン』2015年8月号 交友社 「大手私鉄車両ファイル2015 車両データバンク」
  9. ^ 『鉄道ファン』2017年8月号 交友社「大手私鉄車両ファイル2017 車両データバンク」
  10. ^ イカロス出版「私鉄車両年鑑2023」P.19「近畿日本鉄道」の車両動向欄説明。
  11. ^ a b 交友社鉄道ファン』2019年8月号 Vol.59/通巻700号 付録小冊子「大手私鉄車両ファイル2019 車両配置表」(当文献にページ番号の記載無し)
  12. ^ a b c 諸河久・山辺誠『日本の私鉄 近鉄2』p.29
  13. ^ a b c d 三好好三『近鉄電車』p.200
  14. ^ 三好好三『近鉄電車』p.232
  15. ^ 『鉄道ファン』2016年8月号 交友社 「大手私鉄車両ファイル2016 車両データバンク」

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]