医療

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医療(いりょう、英語: health care、medical care)とは、人間健康の維持や回復、増進を目的とした諸活動、すなわち疾病に対する診断と治療を包括的に指す概念である。

概説[編集]

定義[編集]

ヘルスケア保健などとも重複する概念だが、そもそもどの範囲を「医療」と見なすかについて、明確な定義はない。 医療は文化性が高いため、国や地域、時代により定義が異なる[1]ともされる。 また厚生労働省は政策決定上「医療」と「介護」を分離しており[2]、疾病や加齢の結果として生じた要介護状態に対する生活上の支援を「介護」として分離し、この文脈ではそれに対する概念として疾病自体への介入を「医療」と称している。

医療人類学者のアーサー・クラインマンは、「医療は様々なセクター[要曖昧さ回避]で行われている」として、公的機関などに認定された通常の医療(制度としての医療)や伝統医などによる専門職セクターだけでなく、宗教や伝統などに基づいた民俗セクター[注 1]家庭内などの民間セクターでも様々な医療が行われている、としている[3]

「医療」には多様な立場の人による多様な行為が属しており、必ずしも専門的職能者のみによって行われるわけではない。 例えば心肺停止状態に対しては無資格者による救急医療(気道確保・人工呼吸心臓マッサージ、および自動体外式除細動器の使用)の実施が社会的に容認されており、在宅医療では必然的に患者自身や家族が医療の一端を担うこととなる。 ] 「救急医療」や「緩和医療」などと、対象とする疾病の段階によって分類されることもある[注 2]が、他方で「身体医療」と「精神医療」のように病因論身体論の体系に分類の根拠を求めた分類法もある。

伝統医療 / 近代医療 という分類法もある[4]。 通常医療 / 補完医療代替医療という分類法もある。それらを総合したものは「統合医療」という呼称で呼ばれている。

根拠法[編集]

日本の医療制度の根拠法は医療法である。同法にて、医療を専門的に提供する医療機関が定義され、医療の内容とその品質管理につき規定されている。

医療従事者[編集]

医療における専門技能を有し医療に携わる人々、あるいはその業務補助を行う者は医療従事者と呼ばれるが、これも明確な定義がない。厚生労働省は厚生労働白書にて「医療関係従事者」という語を用い、国家資格で認定された医療専門職者および准看護師の集計を公表している[5]。一方、同省が新型コロナウイルス感染症に対する予防接種の優先順位決定を目的として令和2年に公表した定義[6]においては「医療従事者等」の語が用いられ、これには事務職等も含め医療機関ないしそれに準ずる場で患者と接する者すべてを含みうるとしている。

医療従事者は、病気や障害を持った人に専門的知識と技術を行使し、健康的な生活が得られるよう助力する職種である。「病気を診ずして、病人を診よ」という某医科大学の理念になぞらえて、病をもった人の生活を支援することが医療者の仕事とされることもある[7]

代替医療、統合医療[編集]

「標準的医療の代わりの医療」という意味で「代替医療」、一方で通常医療を補完する医療という意味で「補完医療」という言葉が存在する[8]。伝統に基づく医学から民間療法、宗教的実践まで様々な理論に基づく様々な療法が含まれる。しかしこのような医療についてはそもそも網羅的統計資料に乏しく、日本でもその実施状況は厚生労働白書等の公的資料における集計対象とはなっていない。


医療の再設定[編集]

医療の再設定とは、健康づくりのためのオタワ憲章にて提唱された、医師の教育と訓練の転換についての提言である[9]

1974年にカナダ保健省から公開されたラロンド・レポートは、健康に影響を及ぼす要因として、生物学、環境、生活様式そして医療へのアクセスという4つの医療領域を提案し[10]、医療へのアクセスの重要性について、具体的な評価を下した。これらの医療領域と健康への影響は、アメリカ合衆国保健教育福祉省ヘルシー・ピープル (1979年) やイギリス保健社会保障省のブラック・レポート (1980年) おいても追認された[11][12]

1984年、世界保健機関健康づくり国際会議を開催し、健康に影響を及ぼす要因を健康の前提条件として整理すると、5つの活動領域の1つとして医療の再設定を掲げ、保健部門に携わる人々に「疾病の治療」の枠組みを越えた「健康づくり」へ向かうよう呼びかけた。

医療の再設定の流れは、マイケル・マーモットリチャード・ウィルキンソンらによる健康の社会的決定要因 (1998年) の整理により健康社会を結びつける現実的かつ政策的な概念[要出典]として成熟し、各国の政策に取り込まれるようになってきている[要出典]

医療のデリバリ[編集]

プライマリケア[編集]

英国のコミュニティ・プライマリケアセンター

プライマリケア(Primary care)とは、医療制度においてすべての患者が最初に受診する起点となる医療職のことである[13][14]。担い手には、プライマリケア医(総合診療医や家庭医)、さらに理学療法士や医師助手(Physician assistant)、ナース・プラクティショナー(NP)などの有資格コメディカルが挙げられる。地理的、医療体制、患者意思などにより、状態により、患者は二次、三次医療に紹介される。

二次医療[編集]

二次医療は、複数分野の専門的な診療技術を有する医療従事者が在籍する医療機関にてプライマリケアでは提供困難な重症例の通院および入院医療を提供する。プライマリケアからの紹介によって、または三次医療からの逆紹介によって提供される場合もある 。

また緊急の治療が求められる外傷・疾患を受け付ける急性期医療も担っている。そのため二次救命処置分娩医用画像処理施設などを持っている。

三次医療[編集]

国立がん研究センターは、ナショナルセンター(国立国際医療研究センター)のひとつ

三次医療は、各専門分野に特化した診療機能を有する医療機関によって提供される医療であり、たいていプライマリケアまたは二次医療からの連携によって受診することとなる。複雑な医療機器や技術、十分な人的資源を伴う集中治療体制等に基づき、一次、二次の医療機関では困難とされるリスクの高い医療が提供される。一般に重症度の高い病状、診断と治療に特に専門性の高い知識の要求される病状が対象となる。また一部の三次医療機関では先進的な医学研究が行われており、その一環として高度先進医療が提供されることもある[15]

在宅・地域医療[編集]

いくつかの医療従事者は医療施設以外にて業務を行っている。それには公衆衛生分野も含まれ、食の安全監査や、疾患予防のためのコンドーム注射針配布なども含まれる。

また住宅やコミュニティにおいて、セルフケア在宅医療介護生活支援薬物乱用治療などの医療・ソーシャルケアなどにも携わる。

パフォーマンス評価[編集]

関係する項目[編集]

医療制度[編集]

医療経済学[編集]

OECD各国の財源別保健支出[16]
水色は政府一般歳出、紫は社会保険、赤は自己負担、橙は民間保険、緑はその他

医療制度の財源は以下の5つを主にしている[17]

  1. 中央政府、自治体、市町村の一般税収
  2. 社会保険
  3. 非営利団体や民間による、医療保険
  4. 患者の自己負担
  5. 寄付慈善団体

ほとんどの国々では、以上の5つを全て組み合わせて運用されている。

健康情報学[編集]

医療の下位分類[編集]

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ 医療人類学では「folk medicine 民俗医療」 という用語が用いられている。医療人類学の文献例が参照可。
  2. ^ 診断 / 治療 / リハビリテーション / 予防 、また看護活動(看護過程) / 調剤及び服薬指導(OTC薬販売における登録販売者の指導や助言)/ 栄養指導 等々といった要素に分けるほか、(医療行為の項を参照)。

出典[編集]

  1. ^ 病院のあり方報告書 第7章医療の質(公益社団法人全日本病院協会)
  2. ^ 厚生労働省ウェブサイト ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 健康・医療 > 医療保険 > 医療と介護の一体的な改革, 2021年9月22日閲覧
  3. ^ アーサー クラインマン『臨床人類学―文化のなかの病者と治療者』大橋英寿, 作道信介, 遠山宜哉 , 川村邦光訳、弘文堂、1992年(原著1980年)。
  4. ^ 黒田浩一『現代医療の社会学: 日本の現状と課題』、1995年、p.203。
  5. ^ 厚生労働省 令和3年版厚生労働白書 資料編, 2021年9月22日閲覧
  6. ^ 厚生労働省ウェブサイト 医療従事者等の範囲, 2021年9月22日閲覧
  7. ^ 『医療入門 よりよいコラボレーションのために』第二章
  8. ^ 鈴木信孝「補完代替医療の展望」『全日本鍼灸学会雑誌』第56巻第5号、2006年、 p.693-701。
  9. ^ 健康づくりのためのオタワ憲章PDF形式(世界保健機関)
  10. ^ カナダ人の健康についての新たなる展望 Archived 2006年12月14日, at WebCite(カナダ保健省)
  11. ^ ヘルシー・ピープル (1979) 全文(米国国立医学図書館)
  12. ^ ブラック・レポート(Socialist Health Association)
  13. ^ World Health Organization. Definition of Terms. Retrieved 26 August 2014.
  14. ^ Johns Hopkins Medicine. Patient Care: Tertiary Care Definition. Accessed 27 June 2011.
  15. ^ OECD 2013.
  16. ^ World Health Organization. "Regional Overview of Social Health Insurance in South-East Asia.' Retrieved December 02, 2014.

参考文献[編集]

  • Health at a Glance 2013 (Report). OECD. (2013-11-21). doi:10.1787/health_glance-2013-en. 
  • ロバート・メンデルソン 『医者が患者をだますとき』、1999年。ISBN 4794208545 
  • 『医療入門 よりよいコラボレーションのために』医学書院 2006年
  • 吉原敬典医療経営におけるホスピタリティ価値:経営学の視点で医師と患者の関係を問い直す』(2016年 白桃書房・単著) ISBN 978-4-561-26674-7

関連項目[編集]

学問・教育

法律

制度

社会問題など

概念など

医療を題材とした作品

その他

外部リンク[編集]