プライマリ・ケア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
英国では地域保健センターがプライマリケアを提供する

プライマリ・ケア: Primary care)とは、患者地域生活を送るうえでの全体的で多様な健康上のニーズに対応できるよう、おもによく遭遇する疾患(コモン・ディジーズ、common disease)の診療、とくに初期対応を行う。さらに、専門的な治療が必要とされる場合には、各領域の専門医を適切に紹介する役割を担う[1]

プライマリ・ケアはすべての臨床医に必要な能力とされるが、なかでもこれを専門に担う医師は、各専門診療科別の専門医(スペシャリスト)と区別して、総合診療医(ジェネラリスト)と呼ばれる。「家庭医療」、「General Practitioner(GP)」、「総合医」、「総合内科医」などがこの範疇に入る[2]

定義[編集]

米国科学アカデミーの医学部門による1996年の定義では「プライマリ・ケアとは、患者の抱える問題の大部分に対処でき、かつ継続的なパートナーシップを築き、家族及び地域という枠組みの中で責任を持って診療する臨床医によって提供される、総合性と受診のしやすさを特徴とするヘルスケアサービスである」とされている[3][4]

各国の制度[編集]

英国における総合診療医(GP)は、医学部卒業後に4~5年のGP専門研修を受けた医師のことを指す。GPの専門研修には救急医学小児科学精神医学が含まれ[5]、3~4年間を病院で、残り1年間をコミュニティで行われる。

米国における家庭医療は、最低3年間のレジデンシー・トレーニングによって専門医認定されるスペシャリティである。このスペシャリティは米国において伝統的な一般内科と並ぶ、general practiceを志向するスペシャリティと考えられる。

アイルランドにおいては、政府配下のHealth Service Executive(HSE)によって運営される保健センターが担っている。

日本[編集]

日本では欧米とは異なり長年プライマリ・ケア医としてのスペシャリティは存在せず、開業医や一般病院の外来などで、一般の内科医、小児科医などによって提供されてきた。 しかしながら日本は、高齢者は複数の疾患を抱え、かつ財政的な理由により長期入院や過剰な医療機関受診を削減する必要に迫られているため、プライマリケア制度の改善が求められている。

近年、日本プライマリ・ケア学会が認定する「プライマリ・ケア専門医」、日本家庭医療学会が認定する「家庭医療専門医」などの資格が発足したが、ジェネラリストとしての専門性が統一されておらず、現在プライマリ・ケア関連の3学会(総合診療医学会、日本プライマリケア学会、日本家庭医療学会)が合同でジェネラリストの専門資格について検討中である。[6]。2010年に上記3学会が合併し主に一般医・家庭医を中心とした一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会として発足した。同時に病院総合医を中心とした日本病院総合診療医学会も発足した。

医師臨床研修制度[編集]

現在、医学部を卒業し、新たに医師免許を取得したほぼすべての医師が医師臨床研修制度のもとで2年間の初期臨床研修を行う義務がある(医師法第16条の2)。 医師臨床研修制度では、プライマリ・ケアの基本的診療能力(態度・技能・知識)の獲得をその目標に据えている。

臨床研修は、医師が、医師としての人格をかん養し、将来専門とする分野にかかわらず、医学及び医療の果たすべき社会的役割を認識しつつ、一般的な診療において頻繁に関わる負傷又は疾病に適切に対応できるよう、プライマリ・ケアの基本的な診療能力(態度・技能・知識)を身に付けることのできるものでなければならない。

具体的には、内科および救急医療は必須、加えて外科麻酔科小児科産婦人科精神科のうちから2科を選択する必要がある[7]。また、一ヶ月以上の地域医療研修が必須である[7]

脚注[編集]

関連事項[編集]

外部リンク[編集]