医師国家試験

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

医師国家試験(いしこっかしけん)とは、国家資格の一つである医師免許を取得するための国家試験

概要[編集]

毎年2月中旬ごろに施行され、その規定は医師法第9~16条に定められている。 所管は厚生労働省医政局

医学部入試の競争率が高い一方で、医師国家試験の合格率は殆どの大学医学部で90パーセント前後と、司法試験など他の国家資格のそれよりも高くなっている。これは医師国家試験は「医学の正規の課程を修めて卒業すること」が受験の前提条件とされているためである。つまり、医学部入試に合格した後、最終学年(第6学年)にまで進級し、さらに卒業試験に合格して医学部を卒業するまでの一連の課程が必須となっており、結果的に医師国家試験にほぼ合格できる知識を備えていると見なされた者だけが受験できる。そのため、必ずしも試験自体が容易であるということにはならない。

なお、医師国家試験合格率は大学の評価に関係することがあるため、近年ではカリキュラムの一部に医師国家試験予備校の授業や模擬試験を採用するなどの対策を講じている医学部も少なくない。

沿革[編集]

  • 1946年、医師実地修練制度に基づき、第一回医師国家試験が行われる。
  • 1984年まで年二回行われていたが1985年から春の年一回となる。
  • 1993年より出題科目指定がなくなり、出題科目を全科とした総合問題形式となる。
  • 2001年より出題数が550問(のち530問)9ブロック(うち50問(のち30問)は試行問題)になり、試験日程が3日間となる。
  • 2004年までは毎年3月に行っていたが、2005年より臨床研修義務化に伴い2月に行われる。
  • 2007年、試行問題がなくなり、出題数が500問、8ブロックの出題となる。
  • 2008年、必修の基本的事項、医学総論、医学各論のそれぞれの領域について、一般問題と臨床実地問題(長文形式含む)が同一ブロック内で出題されるようになり、3領域×3ブロック=9ブロックでの出題となる。
  • 2009年、事前に予告されていた新出題形式(多選択肢問題・計算問題・正解数を指定しない問題)のうち、多選択肢問題及び計算問題が採用される。一方、正解数を指定しない問題については出題されず、今後も採用されない[1]。英語問題の出題開始。
  • 2010年芥川龍之介の小説「歯車」からの出題が104F17の問題で出題され、初めて病跡学的要素を含んだ出題となった。
  • 2012年、4年ぶりに改訂された新ガイドラインが厚生労働省から発表[2]。医師国試全体の目的として、新たに「臨床実習での学習成果を確認する」が追加[2]
  • 2015年、英語を取り入れた臨床問題が初出題。
    • 2015年、第109回医師国家試験に初出題された英語を取り入れた臨床問題は以下のもの

【109F25】 44歳の男性.航空会社の職員に付き添われて空港内の診療所を受診した。持参した英文紹介状の一部を示す。 This patient is a 44-year-old man with a complaint of right flank pain*. The pain suddenly occurred while he was on the airplane. It was colicky and radiated to the right inguinal region. Neither nausea nor diarrhea was associated. He had appendectomy when he was 8 years old. Urinalysis results:Protein(-),Sugar(-),Occult blood(2+),flank pain:lateral abdominal pain

この患者にみられる可能性の高い身体診察所見はどれか

a 腸雑音亢進 b 陰嚢の透光性 c 腹部血管雑音 d Blumberg徴候 e 肋骨脊柱角の叩打痛  答え e

また2001年-2005年までの問題、解答は非公表であったが、2005年11月11日に厚生労働省Web上にて公表となった。

受験資格[編集]

医師法第11、12条の規定に基づく。

  • 学校教育法に基づく大学において、医学の正規の課程(医学部医学科・6年制)を修めて卒業した者。
  • 防衛医科大学校卒業生(防衛庁設置法第17条)。
  • 医師国家試験予備試験に合格した者で、合格した後1年以上の診療及び公衆衛生に関する実地修練を経た者。
  • 外国の医学校を卒業し、又は外国で医師免許を得た者であって、厚生労働大臣が上記の二つと同等以上の学力及び技能を有し、かつ、適当と認定した者。
  • 沖縄の復帰に伴う厚生省関係法令の適用の特別措置等に関する政令第17条第1項の規定により、沖縄復帰前に琉球政府の医師法(1955年立法第74号)の規定による医師免許を受けたものとみなされる者であって、厚生労働大臣が認定した者。

なお、医師法に直接記載されていないが、試験実施年の3月中までに大学の医学正規課程を卒業する見込の者も、厚生労働省の告示に基づき受験資格を得る[3]

試験内容[編集]

出題基準[編集]

厚生労働省より公示される試験内容は以下の通りのみ。

  • 臨床上必要な医学及び公衆衛生に関して、医師として具有すべき知識及び技能。
  • 試行問題を出題し、これは採点から除外する(2007年より試行問題は廃止)。

試験内容は上記の通りのみで、司法試験のように出題科目が限定されているのではなく、USMLEのような段階的でもなく、基礎医学臨床医学社会医学などすべての医学関連科目が出題範囲である。また、科目ごとの試験ではなく、すべての科目を取り混ぜた総合問題形式である。

それぞれの専門分野から選出された「医師国家試験委員」によって考案され出題される。4年に1度「医師国家試験出題基準」が出され、概ねそこに列挙された項目・疾患・症候等を基本として出題される。

試験構成[編集]

各回が下記の内容で構成された計500問の選択肢問題で、A~Iブロックに分けて3日間の日程で実施される。

  • 必修の基本的事項・一般問題
  • 必修の基本的事項・臨床実地問題(長文形式含む)
  • 医学総論・一般問題
  • 医学総論・臨床実地問題(長文形式含む)
  • 医学各論・一般問題
  • 医学各論・臨床実地問題

問題冊子は全ブロックで問題文と別冊に分けられており、別冊には問題文が参照する検査画像や写真、図などが含まれる。また、マークシートは記入欄が縦並びと横並びのパターンが存在する。得点は一般問題を1点、臨床実地問題を3点として計算され、不適切問題の削除等の得点調整を経て、後述の合格基準をすべて満たした場合に合格となる。なお、各回の問題及びその正答例については、合格発表後の毎年4月頃に厚生労働省ホームページに掲載される。

合格の基準と合格率[編集]

合格基準[編集]

以下をすべて満たした者を合格とする(一般問題・臨床実地問題の基準については合格発表時に掲示される)。

  • 一般問題(総論+各論):相対基準(例年65%前後で推移)
  • 臨床実地問題(総論+各論):相対基準(例年60%台後半で推移)
  • 必修問題(一般+臨床実地):8割(絶対基準)
  • 禁忌肢の選択数:2問以下(絶対基準)

必修問題で採点除外などの調整がなされた場合は、採点対象の問題について8割以上の得点で合格となる(2006年からは、採点対象外となった問題が不正解だった場合のみ当該問題を採点から除外すると変更されたため、受験者により必修問題の満点は異なる)。また、禁忌肢の選択数は3問以下などに変更されることがある。

合格率[編集]

医師国家試験の合格率をみてみると、第1~100回までの平均では84.2%であったが[4]、近年は80%台後半を推移している。

医師国家試験合格者推移(単年毎の合算)
当該年 受験者数 合格者数 合格率
第2/3回 1947(昭和22) 1,897 1,515 79.9%
第4/5回 1948(昭和23) 2,947 1,768 60.0%
第6/7回 1949(昭和24) 6,282 4,677 74.5%
第8/9回 1950(昭和25) 7,906 7,097 89.8%
第10/11回 1951(昭和26) 7,809 7,425 95.1%
第12/13回 1952(昭和27) 5,765 5,248 91.0%
第14/15回 1953(昭和28) 3,824 3,252 85.0%
第16/17回 1954(昭和29) 3,513 3,112 88.6%
第18/19回 1955(昭和30) 4,167 3,481 83.5%
第20/21回 1956(昭和31) 3,987 3,459 86.8%
第22/23回 1957(昭和32) 3,369 2,932 87.0%
第24/25回 1958(昭和33) 3,621 3,043 84.0%
第26/27回 1959(昭和34) 3,543 3,260 92.0%
第28/29回 1960(昭和35) 3,352 3,218 96.0%
第30/31回 1961(昭和36) 3,526 3,231 91.6%
第32/33回 1962(昭和37) 3,359 3,108 92.5%
第34/35回 1963(昭和38) 3,268 3,102 94.9%
第36/37回 1964(昭和39) 3,210 3,127 97.4%
第38/39回 1965(昭和40) 3,140 3,034 96.6%
第40/41回 1966(昭和41) 3,175 3,078 96.9%
第42/43回 1967(昭和42) 3,109 3,048 98.0%
第44/45/46回 1968(昭和43) 6,686 6,544 97.9%
第47/48回 1969(昭和44) 3,568 3,347 93.8%
第49/50回 1970(昭和45) 3,875 3,741 96.5%
第51/52回 1971(昭和46) 3,909 3,723 95.2%
第53/54回 1972(昭和47) 4,441 3,963 89.2%
第55/56回 1973(昭和48) 5,002 4,146 82.9%
第57/58回 1974(昭和49) 5,418 4,076 75.2%
第59/60回 1975(昭和50) 5,553 4,295 77.3%
第61/62回 1976(昭和51) 6,174 4,643 75.2%
第63/64回 1977(昭和52) 6,756 4,937 73.1%
第65/66回 1978(昭和53) 7,593 5,562 73.3%
第67/68回 1979(昭和54) 8,846 6,003 67.9%
第69/70回 1980(昭和55) 9,905 7,087 71.5%
第71/72回 1981(昭和56) 10,648 7,253 68.1%
第73/74回 1982(昭和57) 11,207 7,497 66.9%
第75/76回 1983(昭和58) 10,361 7,914 76.4%
第77/78回 1984(昭和59) 10,822 8,449 78.1%
第79回 1985(昭和60) 8,808 7,542 85.6%
第80回 1986(昭和61) 9,507 7,951 83.6%
第81回 1987(昭和62) 9,940 8,573 86.2%
第82回 1988(昭和63) 9,672 7,854 81.2%
第83回 1989(平成元) 10,037 8,829 88.0%
第84回 1990(平成2) 9,448 7,862 82.9%
第85回 1991(平成3) 9,812 8,256 84.1%
第86回 1992(平成4) 9,515 7,988 84.0%
第87回 1993(平成5) 9,664 8,698 90.0%
第88回 1994(平成6) 9,255 7,982 86.2%
第89回 1995(平成7) 9,218 7,930 86.0%
第90回 1996(平成8) 9,057 8,088 89.3%
第91回 1997(平成9) 8,898 7,843 88.1%
第92回 1998(平成10) 8,716 7,806 89.6%
第93回 1999(平成11) 8,692 7,309 84.1%
第94回 2000(平成12) 8,934 7,065 79.1%
第95回 2001(平成13) 9,266 8,374 90.4%
第96回 2002(平成14) 8,719 7,881 90.4%
第97回 2003(平成15) 8,551 7,721 90.3%
第98回 2004(平成16) 8,439 7,457 88.4%
第99回 2005(平成17) 8,495 7,568 89.1%
第100回 2006(平成18) 8,602 7,742 90.0%
第101回 2007(平成19) 8,573 7,535 87.9%
第102回 2008(平成20) 8,535 7,733 90.6%
第103回 2009(平成21) 8,428 7,668 91.0%
第104回 2010(平成22) 8,447 7,538 89.2%
第105回 2011(平成23) 8,611 7,686 89.3%
第106回 2012(平成24) 8,521 7,688 90.2%
第107回 2013(平成25) 8,569 7,696 89.8%
第108回 2014(平成26) 8,632 7,820 90.6%
第109回 2015(平成27) 9,057 8,258 91.2%

試験地[編集]

北海道宮城県東京都新潟県愛知県石川県大阪府広島県香川県福岡県熊本県沖縄県の12都道府県で行われる。東京都には例年全受験者の3割以上の人数が集中するため、受験会場が2箇所設けられることが多い。

関連項目[編集]

脚注[編集]

外部リンク[編集]