尊厳死

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尊厳死(そんげんし、death with dignity)とは、人間が人間としての尊厳 (QOL) を保ってに臨むことであり、インフォームド・コンセントのひとつとされる[1]蘇生措置拒否 (DNR) と関連が深い。

末期がん患者など治癒の見込みのない人々が、クオリティ・オブ・ライフ (quality of life, QOL) と尊厳を保ちつつ最期の時を過ごすための医療がターミナルケアend-of-life care、終末期医療)である。

QOLを保つための手段として、胃瘻の除去、苦痛から解放されるためにペインコントロール技術の積極的活用が挙げられる。無意味な延命行為の拒否 (DNR) については、実際に死を迎える段階では意識を失っている可能性が高いため、事前に延命行為の是非に関して宣言するリビング・ウィル (living will) が有効な手段とされる。

生存権を脅かしかねないものとして尊厳死を警戒する立場の人もいる。日本では事前に本人による指示書が準備されていても、親族の一人でも治療を止めたことで殺人だと訴えられる可能性がある。尊厳死のための法律がないから、当事者本人が尊厳死を事前に希望しても人工呼吸器を取り外すことはできないという声が延命治療の現場では圧倒的に多い[2]

各国の状況[編集]

米国では、患者本人の希望により人工呼吸器を取り外すことは、1970年代にインフォームド・コンセントとして確立している[1]。アメリカやイギリスでは患者が冷静かつ明確に望まない医療を拒否しているのであれば、それに従うのが医療倫理であるとされ[1]、強制すれば医師は傷害罪に問われうる。周囲が裁判所に訴え出ても、それを裁判所が認めることはない[1]。日本ではリビングウィルの一種である自身が昏睡状態になったときなどに備えて治療の継続や中止などを記した事前指示書の導入に関するニュースで一部の識者や団体が反発した。しかし、京都大学大学院文学研究科准教授の児玉聡は京都新聞や扱われた識者の主張へのファクトチェックにて虚偽や誤解を指摘した。事前指示書には二種類あり、今回誤解で騒がれたタイプ事前に自身の尊厳死の可否の指示書と英米にある代理の意思決定者を自身でもしもの時に決めておく永続的委任状のがある。なお、英米には両方の事前指示書に法的に拘束力があり、日本では法的な効力はないため医師が患者の書いていた事前指示書に従っても罪に問われる危険性がある[3]

日本では2012年、超党派議員により終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案(仮称)の作成作業が進められていた[4][1]

(基本的理念)
第二条 終末期の医療は、延命措置を行うか否かに関する患者の意思を十分に尊重し、医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手と患者及びその家族との信頼関係に基づいて行われなければならない。
2 終末期の医療に関する患者の意思決定は、任意にされたものでなければならない。
3 終末期にある全ての患者は、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられなければならない。

—  終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案(仮称)[1]

  • 2016年に『文藝春秋』の2016年12月号で「安楽死で逝きたい」と宣言して大きな反響のあった90歳を越えた橋田壽賀子は「終活」を考えるようになったのは“自分の意志で死なせてほしい”という思いであると述べた。橋田は安楽死は患者の尊厳を守るもの・人助けなのだとする考えが普通になることを自身の願望として、そういう世の中なら安心して生きていけると語っている。本人が元気なうちに意思表示をしておいて、安らかに眠らせてもらえたら一番良いとして「医者が罪問われない法制度」を日本へ導入を求めている[5]


韓国では、1997年に医師が家族の要請に基づいて、患者の人工呼吸器を外したため、殺人罪で起訴された事件をきっかけに、尊厳死に関する議論が起こり、2016年1月に尊厳死に関する法案が成立した[6]

関連項目[編集]

関連作品[編集]

出典[編集]

外部リンク[編集]