バニラ

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バニラ
Vanilla planifolia 1.jpg
バニラ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 単子葉類 Monocots
: キジカクシ目 Asparagales
: ラン科 Orchidaceae
: バニラ属 Vanilla
: バニラ V. planifolia
学名
Vanilla planifolia
和名
バニラ
英名
Vanilla

バニラ(vanilla、学名 Vanilla planifolia)はラン科バニラ属蔓性植物。または、その植物から抽出された香料などのこと。

概説[編集]

原産地はメキシコ中央アメリカといわれている。現在の主たる栽培地はマダガスカルメキシコグアテマラブラジルパラグアイインドネシアなど。種小名ラテン語で「扁平な葉」を意味する。

蔓()は樹木やそのほかのものにからんで成長していく。長いときは60 mを超える。種子は香料の原料となるが、収穫した豆(種子鞘)には香りはない。ここから発酵乾燥を繰り返すキュアリングを行う事によって初めて独特の甘い香りがするようになる。鞘の中には非常に微細な黒色の種子が無数に含まれている。キュアリングを経た種子鞘が「バニラ・ビーンズ」として、またその成分を抽出し溶剤に溶かしこんだバニラ・エッセンスやバニラ・オイルが、アイスクリームケーキスイーツ全般などをはじめとして様々なものに利用されている。

日本国内でも観葉植物として苗が流通することがあり、植物の入手自体はそれほど難しくない。しかし栽培には冬期に高い温度を必要とすることと、大きな株にならなければ開花しないこともあり、個人栽培で開花・結実させるのは難しい。バニラのの寿命は短く、普通は1日しか開花していない。

原産地ではハリナシバチミツバチ科)が花粉を運び、受粉した花は半年以上かかって、長さ30cmほどの長細い果実になる[1]。ハリナシバチ以外では容易にバニラの受粉ができず、1837年に人工授粉の手法が開発され、1841年に改良人工受粉法が開発された[2][出典無効]

栽培(生産)[編集]

バニラの生産順位[3]
(2008年、単位は100万トン)
インドネシアの旗 インドネシア 4.1
マダガスカルの旗 マダガスカル 3.1
中華人民共和国の旗 中国 1.4
メキシコの旗 メキシコ 0.6
トンガの旗 トンガ 0.2
トルコの旗 トルコ 0.2
全世界 9.8
バニラの栽培地域

メキシコか、中央アメリカ原産であるが、現在はマダガスカルを中心に熱帯各地で栽培されている。2008年の全世界生産量980万トンのうち、インドネシアマダガスカル中国の3カ国で9割弱を占める。次いで、メキシコトンガトルコである。

日本では福岡県等で商業用にバニラが栽培されている[4]


歴史[編集]

バニラは、コロンブス以前の中央アメリカでタバコやカカオ飲料の香り付けに用いられていた香味料であり、スペインの征服者によってヨーロッパへと持ち帰られた。古代メキシコ以来、19世紀中頃にフランス人の栽培者が、彼らの知っていた花の人工受粉の方法の知識と、トトナコ族のバニラ・ビーンズの製法の知識を交換するまで、トトナコ族の人々が最良のバニラの生産者とされていた。


栽培、花、種などの写真


香料[編集]

乾燥されたバニラの果実

バニラ・ビーンズバニラ・エッセンスバニラ・オイルの三種類がある。

バニラ・ビーンズは、名称的には「バニラの種子」ではあるが、実際には種子を含んだ種子ごと発酵乾燥を繰り返す「キュアリング」を行うことによって初めて香料となり、通常「バニラ・ビーンズ」と言えばキュアリングを経たものを指している。原料として主に使用されるのはバニラ (Vanilla planifolia) の種子鞘で、この他に品質は少し劣るものの、同じバニラ属であるニシインドバニラ (V. pompona) も原料として利用される。

バニラ・エッセンス、バニラ・オイルは成分抽出して溶剤にとかしたものであるが、バニラ・ビーンズ(vanilla pod、バニラのさや)は非常に高価(一本数百円)なため、人工的に合成された成分(人工香料)を大なり小なり溶かしたものが多い。

人工香料を使わず、酒類にバニラ・ビーンズを直接漬け込み作られたバニラ・エッセンスは特にバニラ・エキストラクトと呼ばれ区別される。

成分[編集]

バニリンの構造式

天然のバニラは数百種類の化合物から成る非常に複雑な混合物であるが、バニラ特有の風味や香味の元となる化合物は主にバニリンである(詳細についてはバニリンの記事を参照)。

バニラ・ビーンズは非常に高価なため、その香り主成分の合成には長い間興味が持たれていた。最初の工業的合成は、より簡単に得られる天然物のオイゲノールを出発物質としていた。これをイソオイゲノールへと異性化させ、次に酸化することによりバニリンが得られる。現在では、ライマー・チーマン反応によるグアイアコールの合成を含む工程や、紙工業の副生物として得られる木材の構成成分、リグニンの発酵によって作られている。リグニンを原料とする人工バニラの香りは、バニラエクストラクトよりも豊かな香りを持つとされる。

バニラエッセンスは主にエタノールを、バニラオイルは油脂を溶剤としている。


用途[編集]

一番よく利用されるのはアイスクリームである。単に「アイスクリーム」という場合はバニラアイスクリームのことを指すことがほとんどである。

ケーキなどの洋菓子の香りつけにも利用される。またコーヒーココアワインなどにも入れられる。

オイルもエッセンスも非常に香りが強く、特にオイルは数滴で十分な香りを放つため使用分量には注意が必要である。

バニラエッセンスは開封後も長期間の匂いを保つが、賞味期間は概ね未開封で一年である。加熱によって香りが揮発しやすいため、焼き菓子など高温で加熱するものにはバニラオイルのほうが適している。

主な使用例[編集]

その他[編集]

花言葉は「永久不滅」。

比喩表現[編集]

バニラはアイスクリームの最も代表的かつ飾り気の少ないフレーバーとして用いられるが、ここから転じてコモドール社製のコンピュータAmigaにおいて、アップグレードしていない初期状態を(プレーン)バニラと呼ぶようになり[5]、コンピュータゲームやアプリケーションソフトウェアにおいてもアップグレードしていない状態、あるいは「MOD(モッド, modification)やスキン、追加コンテンツを適用していない素の状態」の意、音楽アルバムやシングルにて本来の構成に含まれない追加曲(ボーナス・トラック)がない状態、トレーディングカードゲームでは特殊な能力を持たないカードの呼称に用いる。


脚注[編集]

外部リンク[編集]