アサツキ

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アサツキ
Allium schoenoprasum var. foliosum 2.JPG
青森県種差海岸 2017年6月
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 単子葉類 monocots
: キジカクシ目 Asparagales
: ヒガンバナ科 Amaryllidaceae
: ネギ属 Allium
: エゾネギ A. schoenoprasum
変種 : アサツキ A. s var. foliosum
学名
Allium schoenoprasum L. var. foliosum Regel[1]
和名
アサツキ(浅葱、浅つ葱)[2][3]
アサツキの葉

アサツキ(浅葱、学名Allium schoenoprasum var. foliosum)は、ヒガンバナ科ネギ属球根多年草[2][3][4]エゾネギを分類上の基本種とする変種[1]

ネギよりも色が薄く、食用とされるネギ類の中では最も細いを持つ。別名はイトネギ、センブキ、センボンネギ、センボンワケギ、ヒメエゾネギ。野草であり、山野で自生が見られる。葉や鱗茎を食用とするため、栽培される。

名称[編集]

和名アサツキ(浅葱)という名は、ネギ(葱)に対して色が薄い(浅い)ことからきている[5]。ネギよりも細い形から、イトネギ(糸葱)、センボンワケギ(千本分葱)の別名も生まれており[6]、地方によりアサヅキ、ハナマガリ、ヒルなどとも呼ばれている[7]

種小名(種形容語)schoenoprasum は、「イネのようなネギの」の、変種名 foliosumは、「葉の多い」の意味[3]

分布と生育環境[編集]

基本種エゾネギの変種で、北半球の温帯となどに分布し[6]、日本では北海道本州四国に分布し、国外ではシベリアにも分布する[2][4]。野生のものは海岸近くや土手山野草原に自生し、また畑でも栽培が行われている[6][7]

特徴[編集]

地下にラッキョウ型の鱗茎があるのが特徴である[注釈 1]。地下の鱗茎は狭卵形で、長さ15 - 25ミリメートル (mm) になり、淡紫色から灰褐色になる外皮に包まれる。花茎は葉叢の中央から出て、細い円柱形で直立し、高さ30 - 50センチメートル (cm) になり、淡緑色であるが下部は紫色を帯び、基部は葉鞘に包まれる。基部に1 - 3個のがあり、細い円柱形で中は中空、長さは花茎より短く15 - 40 cmになり、径は3 - 5 mmになる[2][3][4]

花期は6 - 7月で、淡紅紫色の小さなを球状に咲かせる[6]は花茎上に散形花序に多数つき、蕾時に、その基部に膜質で初め紫色をした総苞があり、総苞は卵形となって先端は尾状にとがる。花被片は離生し、外花被片が3個、内花被片が3個の計6個があり、淡紅紫色になり、披針形または広披針形で長さ9 - 12 mmになり先端は鋭くとがる。雄蕊は6個で、葯は淡紫色、花糸の長さはふつう花被片より短く、その半分から3分の2の長さ、ときに同長となり、変種では花被片より長くなるものがある。花糸の基部には歯牙が無い。子房は上位で3室、各室に数個の胚珠があり、その上に花柱1個がある。果実蒴果で胞背裂開し、種子は黒色になる[2][3][4]

野菜[編集]

アサツキは、野菜としては冬から春のもので、早ければ12月に若い葉と鱗茎を収穫する。若芽を「ひろっこ」という[8]

似たものにハーブチャイブがあり、アサツキはチャイブを分類上の基本種とした変種である。ワケギワケネギとも異なる。チャイブと比べると草丈が低く鱗茎があり、また味覚はチャイブのような青臭さは少ないが、やや辛味がある。数年を経過した球根からは直径が5 mmを超える葉が出る事もある。

鱗茎や葉にはペントースマンナンカロチンなどの成分が含まれる[6]。カロチンはヒトの身体に吸収されるとビタミンAに変化する栄養素で、食用油に溶けているカロチンは約95%は吸収されるが、野菜の成分としては20 - 50%が吸収されるだけである[6]。したがって、食用油を使って調理すると効率よく吸収できる[6]

食材[編集]

主に、茹でてお浸し酢味噌和え、若い葉は刻んで汁の実や鍋物に調理され[9]、利用法は通常のねぎと同様である。鱗茎は味噌をつけてそのまま食べる[7]。ただし生で食べる場合アサツキのほうが苦味と辛味が強いため薬味には向かない。消化促進、食欲増進、滋養保健には生で食べて、ビタミンA補給には食用油で調理した方が良い[9]

薬効[編集]

民間療法では、傷薬として生葉を揉み潰したものを患部に貼り付けると、葉に含まれる酵素の働きで揮発性硫黄化合物が精製され、抗菌作用により止血に役立つといわれている[9]。また、生葉10 - 20グラムほどを細かく刻んで、大きめの茶碗に入れて湯を注いで温かくして飲んだり、普通に食べたりすることで、寒気がある風邪にも効果があるとされる[7]

かつて、アサツキはデザイナーフーズ計画のピラミッドで3群に属しており、3群の中でも、ハッカ、オレガノ、タイム、キュウリと共に3群の中位に属するが、癌予防効果のある食材であると位置づけられていた[10]

栽培[編集]

秋まきの場合、種子は9月ごろに蒔く[9]。一般には同じ頃に、鱗茎を1球ずつ植え付ける[9]。秋には葉を伸ばして生育するが、寒冷・積雪などで葉は一旦枯れた状態で冬を越したあと、春に新しい鱗茎から活動をはじめて4月には葉を伸ばし、6月上旬ごろに開花して、7月に結実する[9]。種子はあまり採ることはできないが、葉は枯れて鱗茎が休眠状態になり、8月下旬ごろに発芽を始める[9]

混植[編集]

チャイブと同様にコンパニオンプランツ(共栄植物)として利用する事が出来る。

  • バラ:黒点病、黒斑病、黒星病の予防
  • トマト、ナス:アブラムシ回避
  • ニンジン:土壌の殺菌

基本種、変種[編集]

  • エゾネギ(蝦夷葱) Allium schoenoprasum L. var. schoenoprasum - 分類上の基本種。花被片の長さが15mm内外と大型になる。本州北部、北海道、シベリアヨーロッパに分布する[4]
  • ヒメエゾネギ(姫蝦夷葱) Allium schoenoprasum L. var. yezomonticola H.Hara[11] - 変種。花茎の高さは10-20cmと低く、花被片の長さが6-8mmと小型になる。雄蕊は花被片より短い。北海道アポイ岳の特産[4]
  • シブツアサツキ(至仏浅葱) Allium schoenoprasum L. var. shibutuense Kitam. - 変種。葉が細く径1.5-3mmになる。花被片の長さが約6.5mmと小型。雄蕊は花被片と同じ長さかわずかに長い。至仏山谷川岳の特産[4]。準絶滅危惧(NT)(2015年、環境省)。
  • シロウマアサツキ(白馬浅葱) Allium schoenoprasum L. var. orientale Regel[12] - 変種。葉が太く径4-5mmになる。花被片の長さは6-8mmと小型。雄蕊は花被片と同じ長さかわずかに長い。北海道、本州(中部地方以北・近畿地方北部・隠岐諸島)、サハリン朝鮮半島、シベリア東部に分布する[4]
  • イズアサツキ(伊豆浅葱) Allium schoenoprasum L. var. idzuense (H.Hara) H.Hara - 変種。花茎は葉束の中央からではなく、横に離れて出ることがあり、花被片は長さ7-9mm、幅3-3.5mm、白色から淡紅紫色で、花被片の先端が短くとがる。伊豆半島の南部海岸で発見された[4]。絶滅危惧IB類(EN)(2015年、環境省)。

ギャラリー[編集]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 学名状の母種であるチャイブには鱗茎はない[6]

出典[編集]

  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Allium schoenoprasum L. var. foliosum Regel”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2015年11月27日閲覧。
  2. ^ a b c d e 『山溪ハンディ図鑑1 野に咲く花)』p.424
  3. ^ a b c d e 『新牧野日本植物圖鑑』p.854, p.1327, p.1346
  4. ^ a b c d e f g h i 『改訂新版 日本の野生植物 1』p.242
  5. ^ 本山荻舟『飲食事典』平凡社、1958年12月25日、p. 8。
  6. ^ a b c d e f g h 田中孝治 1995, p. 166.
  7. ^ a b c d 貝津好孝 1995, p. 81.
  8. ^ あきた郷土作物研究会
  9. ^ a b c d e f g 田中孝治 1995, p. 167.
  10. ^ 大澤俊彦、「がん予防と食品」『日本食生活学会誌』 2009年 20巻 1号 p.11-16, doi:10.2740/jisdh.20.11
  11. ^ 清水 (2014)、49頁
  12. ^ 清水 (2014)、48頁

参考文献[編集]

  • 貝津好孝『日本の薬草』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年7月20日、81頁。ISBN 4-09-208016-6
  • 田中孝治『効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法』講談社〈ベストライフ〉、1995年2月15日、166 - 167頁。ISBN 4-06-195372-9
  • 林弥栄監修、平野隆久写真『山溪ハンディ図鑑1 野に咲く花』、1989年、山と溪谷社
  • 牧野富太郎原著、大橋広好・邑田仁・岩槻邦男編『新牧野日本植物圖鑑』、2008年、北隆館
  • 清水建美、門田裕一、木原浩『高山に咲く花』山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑8〉、2014年3月22日、増補改訂新版。ISBN 978-4635070300
  • 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 1』、2015年、平凡社
  • 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)

関連項目[編集]