空飛ぶスパゲッティ・モンスター教

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スパゲッティ・モンスター教のシンボルマークイクトゥスのパロディ。中に「FSM」の文字を入れて表記されることが多い。)
ワシントンの夏至祭で空飛ぶスパゲッティ・モンスター像と共にパレードする人々

空飛ぶスパゲッティ・モンスター教(そらとぶスパゲッティ・モンスターきょう、英語: Pastafarianism, Flying Spaghetti Monsterism, FSMism)は、ボビー・ヘンダーソンが、インテリジェント・デザイン説を公教育に持ち込むことを批判するために創始したパロディ宗教(冗談宗教)。2014年現在、数カ国に支部を持つ[1]

オーストリアにおいて宗教団体としての登録を申請したことがあるが、キリスト教ではないとして同国宗教当局より却下されている[2]。その後、オランダでも宗教団体としての登録を申請し、こちらは2016年1月26日に認可された[3][4]


概要

成立までの経緯

2005年カンザス州教育委員会では、公教育において進化論と同様にインテリジェント・デザイン(ID説)の立場も教えなければいけないという決議が評決されることになっていた。前年の教育委員の改選で委員6人中4人を保守派が占めており、可決は確実と見られていた。これに抗議するために、2005年6月、アメリカ合衆国オレゴン州立大学物理学科卒業生のボビー・ヘンダーソン公開質問状を提出した。ヘンダーソンは自分のサイト "venganza.org" (スペイン語で復讐の意)において空飛ぶスパゲッティ・モンスターの概略を示して、明らかな証拠や、それに基づいて進化を説明できる十分な論理性・整合性があると論じ、創造論の一部として「空飛ぶスパゲッティ・モンスター」を進化論やID説と同様に公立高校で教えることを公開質問状において提案した。

私は国中の、そしていつかは世界中の科学の時間にこの3つの理論がどれも等しく教えられるのを楽しみにできると思います。3分の1はインテリジェントデザインのため、3分の1はスパゲッティモンスター教のため、3分の1は圧倒的な量の観察可能な証拠に基づく論理的推論のため。[5]

そしてもしこれが受け入れられないようなら法的手段をとると教育委員会に警告した。

その後、空飛ぶスパゲッティ・モンスターはインターネット上のミーム(流行)となり、ブログ(特に人気ブログ Boing Boing)などを中心に世界に広まった。カンザス州教育委員会にもID説を教える事に反対する人々がおり、ヘンダーソンはそのうち三人から空飛ぶスパゲッティ・モンスターに対する好意的な返事を受け取った。また、別の一人からは「神のまがい物を作るとは深刻な侮辱である」との返事があった。

その後の2005年11月、カンザス州教育委員会は多数決の結果、進化論は「単なる理論」であり、ID説を同時に教える事などを定めた科学教育基準を採決し、ID説派が勝利を収めるかたちとなった。しかし2006年の改選では、それを決定した委員は全員落選し、新たな委員会は元の基準を再び採用することを決めた。2007年2月には決議で改めて2005年の基準改定が拒否された。

主張

スパゲッティ・モンスター教団は自らの「宗教」をラスタファリアニズムならぬパスタファリアニズムとも呼ぶ。

ID説の信奉者等は「平等のため、進化論のみならずインテリジェント・デザインも学校で教えるべきだ」と主張する。空飛ぶスパゲッティ・モンスター教団はこの点を皮肉って、「平等のため、スパゲッティ・モンスターが人類を作ったという説も学校教育で教えるべきだ」と主張している。

ID説の信奉者等は「何らかの知性」が「キリスト教の神」であると明言しない。空飛ぶスパゲッティ・モンスター教団はこの点も皮肉っていて、「何らかの知性はスパゲッティ・モンスターであり、ブッシュ大統領を始めとしたID説の信奉者は我等がスパゲッティ・モンスター教を学校教育に採り入れる為に戦ってくれている」と主張している。

創造科学者ケント・ホヴィンドは、進化論正当性証明できたものに25万ドルを支払うという約束をした(科学者達は、この検証が不公平なものであると主張している[6])。これを受け、2005年8月、Boing Boing は、イエスがスパゲッティ・モンスターの息子ではないという実験的証拠を見つけた者に25万ドルを払うと約束した(ただし、イエスはスパゲッティ・モンスター教団で崇拝されている訳ではない)。後に懸賞金は「インテリジェントにデザインされた通貨100万ドル分」に値上げされた。

主な教義

  • 宇宙は空飛ぶスパゲッティ・モンスターによって創造された。これは空飛ぶスパゲッティ・モンスターが大酒を飲んだ後の事であった。
  • 最初に創造したものは、木々小人一人だった。
  • すべての証拠が、進化はスパゲッティ・モンスターの ヌードル触手によって推進されたことを示している。
  • 古代の人の身長が低いのはスパゲッティ・モンスターの触手によってを押さえられていたからであり、現代人の背が高いのは人口増加によりスパゲッティ・モンスターの触手の数が足りなくなったからである。
  • ボビー・ヘンダーソンがこの宗教の「預言者」である。
  • 信者は海賊衣装を着る。海賊はスパゲッティ・モンスター教の教義の中で重要な位置を占めている。
  • 地獄はビールの気が抜けていてストリッパーが性病持ちであるという事以外天国と同じである。
  • ヌードルはスパゲッティ・モンスター神の触手を象徴する聖なる食物である。
  • 学校教育では進化論のみならずスパゲッティ・モンスター創造説も教えるべきだ。
  • ブッシュ大統領をはじめとする「進化論以外の創造説も学校教育で教えるべきだ」と主張する人々は我々の代弁者だ。
  • スパゲッティ・モンスター神が存在しないという明確な証拠さえ提示されるのであれば、スパゲッティ・モンスター神が存在しないという事さえ否定しない。
  • 教祖や教団にお布施をする代わりに、そのお金は「貧困をなくす」、「病気を治す」、「平和に生きて、燃えるように愛して、電話の通話料を下げる」のに使う。

脚注

関連項目

教義書

  • Henderson, Bobby (2006). The Gospel of the Flying Spaghetti Monster. Villard Books. ISBN 0-8129-7656-8 
  • ボビー・ヘンダーソン『反★進化論講座 空飛ぶスパゲッティ・モンスターの福音書』片岡夏実訳、築地書館、2006年12月。ISBN 4-8067-1340-6 (上述書の日本語訳版)

関連文献

外部リンク