恒星

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恒星

恒星(こうせい)は、自らを発し、その質量がもたらす重力による収縮に反する圧力を内部に持ち支える、ガス体の天体の総称である[1]人類が住む地球から一番近い恒星は、太陽系唯一の恒星である太陽である[2]

定義

理想気体状態方程式が示す通り、ガス体の天体は重力に対抗するために内部が高温・高圧にならなければならない。しかしその一方で宇宙空間温度は3Kに過ぎず、必ずエネルギーが全方位に流れ出ることになる。これが恒星が輝く理由であり、そのためにエネルギーを供給する源が必要になる[1]

大部分の恒星においてこのエネルギーは原子核融合であるが[1]、誕生直後の恒星では内部温度が充分な高さに達していないため収縮が起こる。ここでガス体の天体を支える重力ポテンシャルのエネルギーが作用し、天体が支えられる[3]。このエネルギーの半分は赤外線で放射され[3]、残りは天体内部の温度上昇に寄与する[1]。恒星となる星は収縮とともに内部温度がさらに高まり1000万Kに達すると[4]水素の核融合を開始する[5]。このような段階へ進む星の性質は「有効比熱が負の系」と言う[1]

恒星は時間経過の段階で、核融合する元素を水素からヘリウムへ変え、そして重い恒星は順次原子番号の大きな元素を使うようになり、その過程で収縮と膨張を繰り返す[6]

語源

「恒星(: asteres aplanis)」という言葉は、英語「fixed star」の和訳であり、地球から肉眼で見た際に太陽または太陽系の惑星に見られるような動きを見せず、天球に恒常的に固定された星々という意味で名づけられた[7]。これに対し、天球上を移動していく星のことを「さまよう人」という意味で「惑星」と名づけられたといわれる[8]。恒星はこのような性質から、古代の人々は恒星の配置に星座を見出してきた[7]

観測

名称

比較的明るい恒星は固有名がつけられたが、地方によって名称はさまざまだった。星表が作られるようになると、代表的な星表につけられた名前が次第に使われるようになった。現在は、プトレマイオスがまとめた星表の名称が多く使われる。ギリシャ神話に由来する名称が多いが、アラビア語のものもある。これはプトレマイオスの著書がアラビア語に訳され、そこから広まったと考えられている。

それほど明るくない恒星は、主にヨハン・バイエルのバイエル星表に記載された記号で呼ばれる。これはバイエル記号と呼ばれる。星座ごとに明るい順にα星、β星とギリシャ語の記号をつけるもので、足りなくなると小文字のローマ字のアルファベットが、それでも足りないとローマ字の大文字が使われた。バイエルの死後、星座の境界が変更されたため、たとえばα星がない星座などが存在する。また、必ずしも明るい順につけられているわけでもない。具体的には、ギリシャ語のアルファベットと星座名をあわせ、「こと座 α星」などと呼ぶ。国際的にはラテン語を使い、α Lyraeと書く。このとき星座名は属格に活用変化させる。3文字の略符を使い、α Lyr と書いてもよい。4文字の略符もあるが全く使われない。バイエルは混乱を防ぐため、たとえばローマ文字のa星を作らなかった。また、最も星の多い星座でも、Q星までしかつけなかったため、R以降の文字は、変光星などの特殊な天体につけられる。

これよりさらに暗い星は、ジョン・フラムスティードの星表に記されたフラムスティード番号で呼ばれる。恒星を西から順に1番星、2番星と数字の符号をつけるものである。ただし、フラムスティード番号は、南天の星座にはつけられていないなどの弱点がある。フラムスティード番号で、上記のこと座α星を表すと、こと座3番星(3 Lyrae、または 3 Lyr)となる。この番号は、フラムスティードの望遠鏡で見たところ、こと座で西端から3番目にあった星ということになる。

よく、バイエルが命名しなかった暗い星に順番に番号が振られたと言われることがあるが、誤りである。たとえば、オリオン座α星(ベテルギウス)は、フラムスティード番号ではオリオン座58番星となる。多くの恒星が、両者によって命名がされている。ただし、現在はバイエル符号が主に使われ、フラムスティード番号は主にバイエル名のついていない星に使われる。これよりもさらに暗い星は、さらにそののちに決定された星表(HDなど)でつけられた番号や記号で呼ばれる。

固有運動

太陽系内の惑星は地球との距離が近く、互いの公転による見かけ上の位置変化が大きい。そのため季節毎で天球上の場所が大きく変わる。しかし、他の恒星の見かけ上の位置変化(固有運動)ほとんど変化しないように見える[9]。これは、太陽以外の恒星は地球から数光年以上の離れた場所にあるためである[7]

しかし、恒星は天球上で完全に静止しているわけではなく、僅かに固有運動を持つ[7]。明るい恒星では年間0.1秒角以下の固有運動を持つが、太陽に近い星はより速く動き、これらは高速度星と呼ばれる。その中でもバーナード星(HIP87937) は10.36秒角/年の速度で移動し、100年間で満月半径にほぼ相当する17.2分角を移動する[9]

そのため、特に注意を払っていなければ数十年から数百年程度の時間では肉眼で変化を確認することは難しい。恒星たちは、地球の自転によって互いの位置関係を保ったまま天球上を回転しているように見える。

明るさ

見かけの等級別の星の数
見かけの
等級
星の 
 個数[10]
0 4
1 15
2 48
3 171
4 513
5 1,602
6 4,800
7 14,000

恒星の見かけの明るさは様々である。太陽を除き、最も明るく見える恒星はシリウスおおいぬ座α星)、次いでカノープスりゅうこつ座α星)である。しかしこのような視認できる明るさとは恒星本来の明るさとは異なり、単位面積の光量は距離の2乗に逆比例して少なくなる[11]

この見かけの明るさは視等級や写真等級で表される。視等級mは、こと座α星が0(ゼロ)等級になる様に定数Cを定め、地球上の単位面積あたりに届く光の強度Iから、

  • m = -2.5 log I + C

で表される[12]。2つの恒星の等級差は、

  • m1 - m2 = -2.5 log ( I1/I2)

で表され、これをボグソンの式という[12]

性質

太陽

恒星は水素ヘリウムを主な成分としたガスの塊である。恒星の中心部では原子核融合によりエネルギーが生み出されており、中心から表層へかけて密度温度が次第に減少する構造になっている。これによって恒星の内部には圧力差が発生し、多くの場合は自己の重力による圧縮との釣り合いが保たれている。また、熱エネルギーは高温部から低温部へ移動するため、中心部で発生した熱は放射対流によって表層へ向けて運ばれ、最終的には光エネルギーとして宇宙空間に放出されている[13]

恒星は惑星と比べて質量が大きく表面温度も高い。人類にとって最も身近な恒星である太陽は、地球の33万倍の質量と109倍の半径、5780K(5510℃)の表面温度を持つ[14]。太陽系最大の惑星である木星と太陽を比べても、質量は1000倍、半径は10倍の差がある。

恒星の性質には様々なものがあるが、太陽のように安定した段階にある恒星(主系列星)では、質量が大きいほど半径が大きく高温になるという単純な関係が見られる。例えば太陽と同じ質量の主系列星はいずれも太陽と似た半径や温度を持つことになり、太陽の7倍の質量を持つスペクトル型B5の主系列星では、半径は太陽の4倍、温度は1万5500K前後になる[15]。ただし恒星が主系列星から脱して巨星化すると温度の低下と半径の膨張が起き、この法則から逸脱する。

質量が太陽の8%程度[16]より小さい天体は、中心部が軽水素の核融合反応が起きるほど高温にならないので、恒星ではなく褐色矮星に分類される。この値は恒星質量の下限値といえる。また、質量が太陽の100倍を超えるような恒星も強烈な恒星風によって自らを吹き飛ばしてしまうため、形成されうる恒星の質量には上限が課せられる。

褐色矮星と恒星の境界付近の質量を持った恒星では、半径は太陽の10分の1程度になる。主系列星段階を終えた恒星は非常に巨大化し、例えばおおいぬ座VY星という赤色超巨星は太陽の1000倍を超える半径を持つと考えられている。太陽自体も数十億年後に巨星の段階を迎えると現在の百倍以上にまで膨れ上がると予想されている。

恒星が誕生する際には、質量の小さい恒星ほど形成される可能性が高い。銀河系に存在する恒星の大部分は、太陽より質量の小さいK型M型の主系列星だと考えられている。しかし低質量の星は暗いために地球に近いものしか観測できない。夜空に見える明るい星の多くは、遠くにある大質量の主系列星や赤色巨星などの数量的には稀だが極端に明るい天体の姿である[16]

恒星は、質量の10分の1くらいの水素原子がヘリウム原子に変わるまで、主系列星でいる。[17]

形成と進化

恒星は、周囲より僅かに物質の密度が高い(それでも地球上の実験室で作ることができる真空よりはずっと希薄な)領域である分子雲から生まれる。分子雲の近くで超新星が爆発したり恒星が近くを通過したりするなどして分子雲に擾乱が起こると、その衝撃波や密度揺らぎによって分子雲の中に圧縮される部分が生じ、重力的に不安定になり収縮していく。(大質量星が作られると、その周囲の分子雲が星からの紫外光で電離されて散光星雲輝線星雲)を作ったり、強烈に照らし出されて反射星雲として観測されたりするようになる。このような星雲の例として、有名なオリオン大星雲プレアデス星団の周囲の青い星雲などが知られている。)

ガス塊の質量が十分大きいと、ガス塊は自己重力が圧力に打ち勝って収縮を続け、次第に内部の温度が上昇し、やがて熱放射で輝くようになる。これが原始星である。

原始星の中心温度が数百万度から約1000万度に達すると、中心で核融合反応が始まる。すなわち、4個の水素原子を1個のヘリウム原子に変え、エネルギーを発生させることができるようになる。するとこれが熱源となって圧力を発生し、重力による収縮が止まる。この段階の恒星を主系列星という。恒星は一生のうち約90%の時間を主系列星として過ごす。

質量が太陽の約8%よりも小さく、核融合反応を持続することができない星(褐色矮星と呼ばれる)は、自らの重力により、数千億年(宇宙が誕生してから現在までの時間よりも長い)という極めて長い時間をかけて、位置エネルギー熱エネルギーに変換しながらゆっくりと収縮していく。最後にはそのままゆっくりと暗くなっていき、黒色矮星へと移っていく。

褐色矮星よりも重いが質量が太陽の46%よりは小さい恒星(赤色矮星と呼ばれる)は、核反応が遅く数千億年から数兆年かけて燃料である水素を使い果たした後、ヘリウム型の白色矮星になるとされている。

赤色巨星の断面図

大部分の恒星は、燃料となる中心部の水素をほぼ使い果たすと、外層が膨張し巨大な赤い恒星に変化していく。これは赤色巨星と呼ばれる。(約50億年後、太陽が赤色巨星になった時には、金星を呑み込むほどに膨張すると言われる。)やがて核の温度と圧力は上昇し、ヘリウムが炭素に変わる核融合が始まる。恒星が十分な質量を持っている場合は、外層はさらに膨張して温度が下がる一方、中心核はどんどん核融合が進み、窒素酸素ネオンマグネシウムケイ素というように、重い元素が形成されていく。

太陽程度の、平均的な質量を持った恒星では、中心核での核融合反応は窒素や酸素の段階で止まり、外層のガスを放出して惑星状星雲を形成する。中心核は外層部の重力を支えきれず収縮する、収縮するとエネルギーを生じ再び膨張する。こうして膨張収縮を繰り返す脈動変光星となる。高密度になったものの、もはや核融合を起こすことができなくなると縮退物質が残る。これは白色矮星と呼ばれる。白色矮星はゆっくりと熱を放出していき、極めて長い時間をかけて、黒色矮星になっていく。

太陽の8倍よりも質量が大きい恒星では、密度が比較的小さいために中心核が縮退することなく核融合反応が進んで次々と重い元素が作られて行く。最終的に鉄が生成されたところで、鉄原子は安定であるためそれ以降は核融合反応が進まなくなり、重力収縮しながら温度が上がっていく。中心温度が約100億度に達すると鉄の光分解という吸熱反応が起き、中心核の圧力が急激に下がって重力崩壊を起こす。その反動で恒星は超新星爆発と呼ばれる大爆発を起こす。これは宇宙で起こる現象の中で、人間的なタイムスケールで起こる数少ないものである。恒星の質量の大部分は爆発で吹き飛ばされ、かに星雲のような超新星残骸を作る。この時恒星は急激に明るくなり、明るさでおよそ1億倍、等級で約20等も増光し、数週間の間、超新星一つが銀河全体と同じ明るさで輝くことも多い。

歴史上、超新星は、今まで星が何も無かったところに突如出現した「新しい星」として「発見」されてきた。超新星爆発が起こったあとの中心核の運命は恒星の元の質量により異なる。太陽の20倍程度以下の質量を持った恒星の場合、中心核は中性子星パルサーX線バースター)と呼ばれる天体となる。さらに重い恒星の場合には中心核が完全に重力崩壊を起こしてブラックホールとなる。

重元素を多く含む、吹き飛ばされた恒星の外層は、やがて再び分子雲を作り、新しい恒星や惑星を作る材料となる。このように、超新星から放出された物質や巨星からの恒星風は、恒星間の環境を形成するのに重要な役割を果たしている。

恒星の形成と死について、より詳しい説明は恒星進化論を参照のこと。

主な恒星

観測

距離と明るさ

恒星までの距離測定には、一般的に年周視差が用いられる。これは地球が公転運動する中で、近距離の恒星が遠距離の恒星に対して見かけ上の位置に生じる差を観測するもので、1秒角の視差がある時、公転軌道の中心にある太陽からその対象までの距離をパーセク (pc) で表す。1pc は3.26光年、2.06×105AU そして 3.08×1013kmである。現在判明している年周視差が最大、すなわち太陽の次に近い恒星はケンタウルス座α星であり、視差0.76秒角、距離1.32pcつまり2.72×105AUとなる[11]。この年周視差を用いる計算法は地動説確立後に間もなく意識され、18-19世紀頃から観測が始まり、1837-38年頃に手段として正しさが確認された[11]

恒星までの距離が判明すれば、本来の明るさである絶対等級が計算できる。ある恒星までの距離を10パーセクとした場合に見える視等級を表す[12]

恒星の分光

表面温度による
色と型の違い[18]
温度(ケルビン) 代表的な恒星
O 33,000 K or 以上 へびつかい座ζ星
B 10,500–30,000 K リゲル
A 7,500–10,000 K アルタイル
F 6,000–7,200 K プロキオン
G 5,500–6,000 K 太陽
K 4,000–5,250 K インディアン座ε星
M 2,600–3,850 K プロキシマ・ケンタウリ

恒星の光を分光器にかけ、そのスペクトルを観察すると、暗い筋であるフラウンホーファー線が見られる。この線が現れる位置は恒星の表面温度を反映しており、19世紀末から20世紀にかけてハーバード大学天文台が高温のO型から低温のM型までの7種類の分類を施した[19]

  • O型:電離したヘリウム、高階電離状態の炭素・窒素・酸素などの線が現れる。
  • B型:強い中性ヘリウムや水素の吸収線が現れる。
  • A型:強い水素の吸収線と、金属吸収線が現れる。
  • F型:弱い水素の吸収線と、強い電離カルシウムのH・K線が現れる。
  • G型:F型よりも水素の吸収線が弱く、H・K線はより強い
  • K型:多くの金属吸収線が現れる。
  • M型:K型に、酸化チタン(TiO)の吸収帯が際立つ。

現在は、この7種それぞれをさらに9段階のサブクラスに分け、合計63段階で表示される[19]

1940年代に、同じスペクトルに現れる線の太さや強さが着目され、これが恒星の絶対等級と関係する事が明らかになった。例えばBやA型の恒星では、絶対等級の明るい星ほど水素のパルマー線の幅が狭く、絶対等級効果と呼ばれる。これを元に光度階級という指標が導入され、ローマ数字のIからVまでの5段階で表す[19]

  • I型:最も直径が大きい恒星(超巨星)[19]
  • II型:次に直径が大きい恒星[19](輝巨星)[20]
  • III型:直径が大きい恒星(巨星)[19]
  • IV型:巨星と矮星の間に当たる恒星[19](準巨星)[20]
  • V型:矮星(主系列星)[19]

上記2種類の分類を組み合わせる表示法はMK2次元分類と呼ばれる。例えば太陽はG2V、ベガはA0V、はくちょう座デネブはA2Iである[19]

スペクトルを分析すると、特定の元素が示すフラウンホーファー線は実験室で観察する線とずれが見られる場合がある。これは、恒星の固有運動によって距離が変化するために生じるドップラー効果が影響する。ここから逆に、恒星がどのような運動をしているかを分析する事ができる[21]。また、恒星が含む元素構成比を測定する事も可能であり、恒星の進化状況を判断する材料も与える[21]

恒星は黒体放射にほぼ等しい光を連続して放っている。これを利用して表面温度を測定する方法では、B(Blue 青)と V(Visual 可視) の2種類のフィルターを通して等級を測定し、その差(B-V)から温度を推計する方法が用いられる。このB-V透過率は色指数と呼ばれ、A0型の恒星をゼロと置き、青が強いと等級数は小さくなるため、色指数が大きいと温度が低く、小さいと温度が高いと考えられる[22]

ヘルツシュプルング・ラッセル図

ヘルツシュプルング・ラッセル図

20世紀初めに、アメリカのヘンリー・ノリス・ラッセルが恒星のスペクトルと絶対等級の相関関係を図に並べたところ、多くの星が左上と右下を結ぶ帯を成す事が示された。また、デンマークのアイナー・ヘルツシュプルングも独立に恒星の色と明るさの関係に偏りがあることを示した。この相関はヘルツシュプルング・ラッセル図(HR図)として纏められ、恒星の進化を示したものを認識されるようになった[23]。HR図の横軸はスペクトルの型で表す場合と色指数で表す場合があるが、どちらも基本的に恒星の表面温度の指標である。なお後者は色-等級図と呼ばれる場合もある[23]

HR図にある恒星の位置は、その星の大きさを知る手がかりを与える。恒星が放射するエネルギー総量は、単位面積当たり放射量と星の表面積の積で表される。面積当たり放射量は半径の2乗に比例し、シュテファン=ボルツマンの法則から温度の4乗に比例する。スペクトルつまり表面温度が同じで絶対等級が0等と10等のふたつの星は、総放射量の差は10000倍になる。これを半径に置き換えると100倍の差がある事になる[23]。同じ絶対等級の場合、A型(表面温度10000K)とM型(同3000K)では、A型はM型の3.3倍であり、この4乗が単位面積当たり放射量になるため差は120倍となる。しかし総放射量は同じであるため、表面積ではA型の表面積M型の1/120となり、半径では1/11となる[23]

X線

X線は恒星の死後の姿である中性子星や、恒星の放射物が連星を成す高密度星に引きずり込まれる際に発生することが知られるが[24]、単独の恒星からも観察される。

太陽をX線観測すると、磁力線のねじれと再結合の際にエネルギーが解放され、コロナフレアを発する際に放射が起こる事が知られている。形成中で若く、まだ中心で水素の核融合を起こす前段階にある前主系列星という恒星は、太陽よりも強い短波長の硬X線を放つ現象が知られる。形成途上の恒星は周囲から収縮途上のガスの流入が続き、その角運動量が持ち込まれて自転が早くなる。すると星の内部で対流が大規模に起こり、発生するフレアも太陽の数万倍規模になって強いX線が生じると考えられている。前主系列星は星間ガスに取り囲まれて可視光線では観測しづらい。しかし硬X線を使えばその位置を知る手段のひとつになる[25]

太陽質量の5倍以上の恒星は表面対流を起こしておらずコロナやフレアが生じないためX線は放射しないと考えられていたが、X線天文衛星HEAO-2はこのような星からX線を観測した。大質量星は多くの質量を星風の形で放出しており、これが周囲のガスと衝突すると高温のプラズマが発生し、X線を放射している。これらの観測は星間ガスの分布を知る上で有用である[26]。なお、大・中質量星でもフレアのような磁力線由来のX線と思われるX線が観測された例もあるが、そのメカニズムはわかっていない[26]

参考文献

  • 斉尾英行『星の進化』培風館〈New Cosmos Series〉、1992年。 
  • 尾崎洋二『宇宙科学入門』(第2版第1刷)東京大学出版会、2010年。ISBN 978-4-13-062719-1 
  • 水谷仁『ニュートン別冊 太陽と惑星 改訂版』ニュートンプレス、東京都渋谷区代々木2-1-1新宿マインズタワー、2009年。ISBN 978-4-315-51859-7 
  • 編:岡村定矩『天文学への招待』朝倉書店、2001年。ISBN 4-254-15016-4 

脚注

注釈

脚注

  1. ^ a b c d e 尾崎洋二 2010, pp. 95–96.
  2. ^ 水谷仁 2009, pp. 30–31.
  3. ^ a b 尾崎洋二 2010, pp. 96–97.
  4. ^ 尾崎洋二 2010, pp. 99–101.
  5. ^ 尾崎洋二 2010, pp. 101–103.
  6. ^ 尾崎洋二 2010, pp. 103–104.
  7. ^ a b c d 尾崎洋二 2010, p. 71.
  8. ^ 水谷仁 2009, p. 4.
  9. ^ a b 岡村定矩 2001, pp. 45–46.
  10. ^ Magnitude”. National Solar Observatory—Sacramento Peak. 2008年2月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2006年8月23日閲覧。
  11. ^ a b c 岡村定矩 2001, pp. 46–47.
  12. ^ a b c 岡村定矩 2001, pp. 3–4.
  13. ^ 斉尾 p.13-16
  14. ^ Sun Fact Sheet”. NASA NSSDC. 2010年2月25日閲覧。
  15. ^ 斉尾 p.43 表1
  16. ^ a b Ledrew, G. (2001). “The Real Starry Sky”. Journal of the Royal Astronomical Society of Canada 95: 32. http://adsabs.harvard.edu/abs/2001JRASC..95...32L. 
  17. ^ 「徹底図解 宇宙のしくみ」、新星出版社、2006年、p108
  18. ^ Smith, Gene (1999年4月16日). “Stellar Spectra”. University of California, San Diego. 2006年10月12日閲覧。
  19. ^ a b c d e f g h i 岡村定矩 2001, pp. 48–50.
  20. ^ a b 理科ネットワーク
  21. ^ a b 岡村定矩 2001, pp. 53–55.
  22. ^ 岡村定矩 2001, pp. 50–51.
  23. ^ a b c d 岡村定矩 2001, pp. 51–53.
  24. ^ 岡村定矩 2001, pp. 57–59.
  25. ^ 岡村定矩 2001, pp. 55–56.
  26. ^ a b 岡村定矩 2001, pp. 57.

関連項目