熱放射

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熱放射(ねつほうしゃ、: thermal radiation)は、伝熱の一種で、電磁波として運ばれる現象。または物体が熱を電磁波として放出する現象をさす。熱輻射(ねつふくしゃ)、あるいは単に輻射ともいう。

熱を運ぶ過程には大きく分けて次の三通りがある。

  1. 熱伝導
  2. 移流対流
  3. 熱放射

熱伝導は物体が移動せず直接触れ合うことにより、移流は流体の流れを媒介させることにより間接的に熱を伝える。どちらも熱は熱振動のまま伝わってゆく。それに対し熱放射では、輸送元の物体が電磁波を出し、輸送先の物体がそれを吸収することによって熱が運ばれる。この過程だと、二つの物体のあいだに媒介する物質がなく、真空であったとしても熱が伝わる。

[編集]

  • 地球が太陽から熱を得ている過程は熱放射であり、太陽放射と呼ばれる。
  • 白熱電球は熱放射によって光る。電球に流れる電流が少ないと、白熱電球は弱く赤っぽい光を出すが、電流が多くなると強く白っぽい光を出す。これらは以下のプランクの法則で説明できる。
  • 炭火や、熱せられたストーブが赤く光るのも熱放射のためである。
  • 地球温暖化は、地表が発する熱放射の一部を大気中の温室効果気体が吸収することで生じる。

理論[編集]

熱放射の基礎理論はプランクの法則である。この法則は、黒体という仮想的な物体について、その温度とその物体が出す熱放射のスペクトルを理論的に関係づける。黒体が発する熱放射を黒体放射という。実際の物体が出す熱放射は、黒体放射よりも小さい。実際の物体が出す熱放射/黒体放射の比を射出率または放射率εという。

派生的な理論[編集]

以下の理論は、全てプランクの法則から導出される。

ウィーンの変位則
黒体放射のスペクトルにおいてピークとなる波長と温度が反比例することを示す法則。プランクの法則で説明されるスペクトル曲線の極大値を数学的に求めることで導出される。例えば、金属製のストーブが熱すると赤く輝き始めるのは熱せられた物体から赤色の光(電磁波)が出ているのである。赤い光は比較的低温で、温度が上がるにつれて青白い光に変わる。
シュテファン=ボルツマンの法則
黒体放射によって輸送されるエネルギーフラックスが温度の4乗に比例することを示す法則。プランクの法則で説明されるスペクトル曲線を積分することで導出される。
レイリー・ジーンズの法則
黒体放射のピークに対応する波長よりもはるかに長い波長において、単位波長あたりの放射量が絶対温度に(近似的に)比例するという法則。プランクの法則の近似として導出される。

面の間で運ばれる熱量[編集]

絶対温度Ts 、表面積A2 で放射率ε2 の物体が、周囲の壁面(表面積A1 、放射率ε1 、温度Ta)に熱放射によって放出する熱量P は下の式になる。

P=\frac{\sigma}{\frac{1}{\varepsilon_2}+\frac{A_2}{A_1}(1/\varepsilon_1-1)}A_2(T_s^4-T_a^4)
σ:シュテファン=ボルツマン定数

A2 << A1 の時、すなわち遠くへ熱が広がっていく場合は

P=\sigma\varepsilon_2 A_2(T_s^4-T_a^4)

となる。シュテファン=ボルツマン定数は小さい値なので[要検証 ]、温度が低い時の熱放射される熱量は小さい。

壁面がより一般的な位置関係をとる場合は、形態係数F1→2 を用いて次のように表される。

P=F_{1\rightarrow2}\sigma\varepsilon_2 A_2(T_s^4-T_a^4)

関連項目[編集]