投資銀行

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投資銀行(とうしぎんこう;investment bank)とは、証券取引免許をもつ金融機関の通称。基本的には米国のinvestment bankが正式な由来であり、日本の銀行法をふくむ金融法関連法群では投資銀行という名称は認可されていない。

概要[編集]

社員の人事・風土・報酬水準[編集]

新卒採用もあるが、日本の場合、基本的に外資系金融機関は中途採用が主流。MBA採用を除くと、大手邦銀・大手証券、若しくは他の外資系金融機関等で秀でた業績を有した者のみを取る、中途採用がメインである。

近年よく話題となるフロント部門(バック・ミドルオフィスを除く)の報酬水準は、年による変動があるものの他の外資系金融機関同様基本的に米国水準、若しくは世界水準である。一般にアナリスト(新卒~3年目)で1500~2000万前半、アソシエイト(4年~7、8年目)で1000万後半~4000万、VP(8年目以降~)で3000万~1億円程度、MDで5,6000万~10数億円程度とされる(括弧内の年数は社会人としての実務経験年数。MDでもグローバルレベルでの経営層やトップトレーダは50億円を超えることもある。)

通常、職位が上がるにつれ高度な対人折衝能力が要求(e.g. 大手企業社長や取締役への助言業務)される投資銀行サイドでは、海外名門大学でのMBA取得者や弁護士・会計士資格取得後数年間の実務経験を積んでからアソシエイトになるバンカーが多いため、マーケットサイドのバンカーよりは平均年齢は数年高い。逆に、短期売買が主体で瞬時の的確な判断能力が要求されるトレーダー・ディーラー等マーケットサイドでは若くしてVP、MDクラスになるバンカーがいる一方、30歳前半でリタイアするバンカーも多く、退職年齢も早くなる傾向がある。

また、ゴールドマン・サックス等トップクラスの外資系投資銀行バンカーが次のキャリアステップ先として好む、外資系PEファンドの給与水準はこの水準にキャリードインタレストを加えた金額となる。一般に投資ファンドは弁護士事務所同様、投資銀行ほど職位が細かく分かれていないケースが多く、アソシエイト(投資銀行のVPクラス~12、3年目)とディレクター(10数年目以降)、パートナー(シニア層)で構成されるところが多い。アソシエイトとパートナーのみの投資ファンドもある。

米国[編集]

investment bank(投資銀行)という法律用語を作ったのはアメリカ政府である。その定義とは、金融機関のうちstock(株式)の株式市場での直接取引免許を有する金融機関のみをinvestment bank(投資銀行)と定義した。 アメリカでは1933年に成立したグラス・スティーガル法により商業銀行と投資銀行を一つの法人が兼業することが完全に禁止された(銀証分離)。

モルガン・スタンレーはグラス・スティーガル法成立時に商業銀行となったJPモルガンと袂を分かって成立している。しかしながら、1980年代以降グラス・スティーガル法の銀証分離規定も骨抜きになり、バンク・オブ・アメリカやJPモルガンが証券子会社を設立することにより投資銀行業務に進出するなど抜け道がある。しかし、銀証分離規定の完全な撤廃も幾度も議論になっているが未だに正式な可決はされていない。

前述の通り、投資銀行は基本的に株式証券を通して顧客の資金調達等を支援、財務戦略を助言するのが本業であり、通常自らポジションを取って投融資を行うことはなかった。しかし、銀行系証券会社が顧客企業の企業買収時に銀行融資により買収資金を供与することによりM&Aでのシェアを高めるにつれ、旧来の投資銀行も競争戦略上自らポジションを取って買収資金を供与する事例が増えており、投資銀行と商業銀行の境界が薄れてきている。

近年の決算を見ると投資銀行部門の収益は、投資銀行全体の収益に占める割合は低い。ゴールドマン・サックスの2006年11月決算では純利益の15%、モルガン・スタンレーの2006年11月決算では同14%を占めるにすぎない。いずれの会社もトレーディング部門の収益貢献度が非常に高い。このため、トレーディング部門の社員は収益貢献度の低い投資銀行部門を卑下する傾向があり、近年の経営陣もトレーディング部門の出身者が昇進する傾向が見られる。

米国でバンカーと言えば投資銀行の投資銀行部門で働く人間を指す言葉という認識が多い。現代ではホールセール専業の投資銀行として設立されたゴールドマン・サックスメリルリンチなどが有名である。

欧州[編集]

欧州ではスイス系のUBSクレディ・スイス、フランス系のBNPパリバ、イギリス系のバークレイズ・キャピタル、ドイツ系のドイツ銀行などが有名。しかし、欧州にはアメリカのグラス・スティーガル法のような銀証分離を規定する法律がなかったことから、上記の大手金融機関は1つの法人が商業銀行業務と証券業務の双方の営業活動を展開しており、商業銀行、投資銀行あるいは証券会社ではなくユニバーサルバンクと呼ばれることもある。投資銀行が利益の大部分を占めている金融機関が増えてきている。

日本[編集]

日本において投資銀行という名称が広く知れ渡るようになったのは、1990年代以降ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーのような米系投資銀行が高度な金融技術を武器に複雑な合併案件や巨額の資金調達の財務アドバイザーに指名されるようになってからである。

前述の通り、日本では野村證券大和証券日興證券などが主に投資銀行業務を担っていたが、それらの証券会社はメリルリンチのように個人向け有価証券売買の仲買業務の割合が高かった。法人向けの財務アドバイザリー業務などの割合が小さかった。

しかし、資本市場の国際化や規制緩和に伴って、大和証券と住友銀行が合弁で大和証券SBCM(三井住友フィナンシャルグループと大和証券の合弁解消により、現在は大和証券に吸収)を設立したり、当時の日興證券とトラベラーズグループ(後にシティコープと統合してシティグループ)の合弁で同じく日興ソロモンスミスバーニー証券(現在はシティグループ証券SMBC日興証券の投資銀行本部に分割)を設立するなどホールセール専業の本格的投資銀行が出現した。

また、2000年に当時みずほフィナンシャルグループ傘下だった第一勧業銀行富士銀行日本興業銀行2002年に3行は分割合併し、みずほ銀行みずほコーポレート銀行)のそれぞれの証券子会社が合併したみずほ証券が法人に特化した営業を行ったり、2005年に三菱証券とUFJつばさ証券が合併した三菱UFJ証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)や独立系の証券会社である東海東京証券が投資銀行ビジネスを拡大・注力するなど、日本でも狭義の投資銀行という業態が活躍する。

日本の法人向け銀行(日本興業銀行や日本長期信用銀行(現・新生銀行)など)は、事業の大部分を法人への融資に頼っており、投資銀行業務を行なっているとは言いがたかった。しかしながら、企業の負債圧縮が進行し銀行融資に対する需要がなくなっていく中、みずほコーポレート銀行、みずほ証券は資産流動化や財務アドバイザリー業務などの投資銀行業務を積極的に手がけるようになり、みずほFGの利益の9割近くをたたきだしている。しかし、欧米の金融機関と比べるとまだまだ収益率が低く、リスクテイク能力・リスク管理能力の弱さを指摘されている。そして、昨今の金融危機において、欧米の金融機関の「見事な」リスクテイク能力・リスク管理能力が明らかになったことは記憶に新しい。

日本でもアメリカのグラス・スティーガル法と同様に証券取引法第65条が銀証分離を規定していた。しかし、アメリカと同様に緩和され、銀行子会社の証券業務参入が認められた。それから、みずほFGやMUFGなどの都市銀行を母体とする金融持株会社が出現し、商業銀行と投資銀行を傘下に置いている。

さらに、2006年度に証券取引法とその他の金融商品に関する法律を合わせて抜本改正された金融商品取引法投資サービス法も内包)が可決された。これにより、銀証分離規定が廃止され、銀行による証券業務参入と証券会社による銀行業務参入が自由化された。そして、欧州型のユニバーサルバンクへの道が開かれることになり、国内メガバンクもドイツ銀行グループやUBSのような世界的な金融グループへの発展が現実味を増している。


日本国内で投資銀行業務を行っている主な会社[編集]

Category:投資銀行を参照。

出典[編集]

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関連項目[編集]