プライベートバンク

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プライベート・バンク(Private Bank)は、「個人銀行家の銀行(プライベートバンカーの銀行)」、「経営に無限責任を負うプライベートバンカー(Private Banker)が所有し、経営する銀行」が原義である。

スイスをはじめとした欧州において、歴史的な経緯により発生・成立した銀行の一形態であり、組織形態としては、「最低1名以上の無限責任プライベートバンカーがパートナーとして経営に参画している銀行」である。そのため、銀行自身がリスクがほぼない業務しか扱わず倒産リスクがほぼ皆無であるのが他の金融機関との最大の違い・特長であり、また、いたずらに規模の拡大を追わず、スタッフ数も数十人から数百人ぐらいまでのこじんまりとした経営規模が一般的である。

また、顧客対象は、主に世界中の王族や貴族を含む超富裕層・富裕層であり、営業内容としては、資産保全や資産運用が主要業務である。実態として、そうした富裕層が「個人的に活用する銀行」であるという意味で(「私的な銀行」「プライベートなバンク」という意味で)プライベートバンクと呼ばれているきらいがあり、厳密には字義とは異なるが、そのようにも用いられているといえる。

プライベートバンクの定義[編集]

「プライベートバンク」の本来の定義は「プライベートバンカーが経営する銀行」である。

では、「プライベートバンカー」の定義は何かというと、プライベートバンカーが提供するサービスとして発生し発展してきたプライベートバンキングサービスで世界一位(国際的な財産運用管理サービスで世界一位)のスイスの例が最も適切であろう。
スイスでは、スイス銀行業法で「プライベートバンカー」が明確に定義されている。すなわち、「少なくとも1名は無限責任を有するプライベートバンカー(私人銀行家)がパートナーとして経営に参画している銀行」がプライベートバンカーを名乗れる。
また、スイスプライベートバンカー協会は、「プライベートバンカー」という言葉の、世界中での、単数形又は複数形であるかを問わず、また言語を問わない(全ての言語の)、団体商標の権利を保持している。
よって、プライベートバンカーを名乗るための条件は、
・「少なくとも1名は無限責任を有するプライベートバンカー(私人銀行家)がパートナーとして経営に参画している銀行」
・「スイスプライベートバンカー協会の会員資格」
であり、これがそのままプライベートバンクの定義と等しいといえる。

なお、中国語圏では「プライベートバンカー」は「私人銀行家」、「プライベートバンク」は「私人銀行」、「プライベートバンキング」は「私人銀行業務」と表記される。
日本では、誤って「個人銀行家」や「個人銀行」と訳すケースが散見されるが、そのまま「プライベートバンカー」あるいは中国語にならって「私人銀行家」、「プライベートバンク」あるいは「私人銀行」、「プライベートバンキング」「私人銀行業務」等とそれぞれ表記すべきであろう。

プライベートバンクの例[編集]

スイス[編集]

スイスプライベートバンカー協会 加盟行(アルファベット順)[編集]

スイスのプライベートバンクの特徴[編集]

  • 組織形態:無限責任のパートナーによる経営
万一の場合は無限責任パートナーが個人資産を含めて責任を負う形態のため信頼度が高い。
  • 顧客対象:主な対象は富裕層や機関投資家
銀行によって基準が異なるが、米ドルで100万ドル・日本円で1億円以上の金融資産(不動産を除く)が一つの目安と言われている。
  • 事業領域:資産保全・資産運用に特化(融資、自社売買等の高リスク業務を行わない)
ほぼ倒産等の恐れがない。
  • 収益構造:顧客から預かった資産の保全・管理・運用の手数料
顧客と銀行の利害ベクトルの一致(「顧客が儲かれば(顧客資産が増加すれば)、銀行も儲かる(手数料が多くなる)」あるいは「顧客が損する(顧客資産が減少すると)と、銀行も損する(手数料が少なくなる)」)。また、大手商業銀行のプライベートバンキング部門等とは異なり、特定の金融商品の営業行為を基本的に行わない(収益構造が販売手数料等に依存していない)。

スイスの銀行であることの特徴・メリット[編集]

  • 政治的安定性:スイスは永世中立国であり、かつ、各種の国際機関の本部が設置され、政治的に安定性が非常に高い
  • 地理的優位性:地理的に欧州の中心に位置する
  • 厳格な顧客情報の秘匿性・守秘性:スイス銀行法に基づく厳格な守秘義務の遵守。ただし、現在では諸外国の租税当局に対して情報提供を行うようになっている。
  • 実績・ブランド:スイスのプライベートバンクは富裕層の資産保全・資産運用に関して既に数百年以上に亘る長い実績とブランドを有する

よく混同される用語・概念[編集]

プライベート・バンキング(あるいはプライベート・バンキング・サービス)[編集]

まず、プライベートバンクは「(ある種の)銀行そのもの」のことであり、プライベートバンキング(サービス)は「(提供される)サービス」のことである。しかして、プライベートバンキングとは、「プライベートバンクで提供されている(ような)高度な金融サービス」のことである。

オフショアバンク[編集]

オフショアバンクは「オフショア金融センター」または「タックスヘイブン(租税回避地)」と呼ばれる、無税または著しく税が低い国(または地域)に設立されている銀行のことであり、全く異なる概念である。

スイス銀行[編集]

現在「スイス銀行」という銀行は存在しない。スイスがプライベートバンクの発祥の地であることから、スイス銀行=プライベートバンクという誤解が生じたと思われる。

その他プライベートバンクに関連する噂・都市伝説、等[編集]

  • 「プライベートバンクには紹介者や紹介業者を経由しないと口座が開設できない」。
    • これは誤り。自分で電話やメールで直接問合せて口座開設することができる。日本語のできる担当者がいる銀行も増えてきた。
  • 「プライベートバンクに口座開設すれば脱税または節税できる」。
    • これは誤り。本物のプライベートバンクは絶対にこのような不法行為や非合法行為を行うことはない。プライベートバンクの仲介業者がそのように宣伝したり勧誘するケースは比較的多いが、それは世界のどの国においても明確に違法(犯罪)なので、注意が必要である。
  • 「プライベートバンクに口座開設すれば高度な節税のアドバイスを受けることができる」。
    • これは誤り。本物のプライベートバンクが日本に居住する顧客に直接税に関するアドバイスを行うことは絶対に有り得ない。そもそもプライベートバンクの収益は、基本的に口座管理と投資顧問業務の手数料から成っていて[1]、節税のアドバイスで顧客にサービス料金を請求できない。

また、日本国内における税に関するアドバイス・助言が可能なのは公認会計士税理士だけだからである。国内で資格なく行われた場合は税理士法公認会計士法違反となる。
「海外のプライベートバンクを仲介する業者の有資格者が運用に関してアドバイスを行うことはある」ようであるが、絶対にこれを信用してはいけない。そもそもそうしたアドバイス・助言はまさにプライベートバンクの本業であり、プライベートバンクから直接サービスを受けるべきものであるからである。仲介者は仲介だけをすればよいのであって、運用に関するアドバイス・助言はプライベートバンクだけを信用すべきである。
また、プライベートバンクからの運用に関するアドバイス・助言は、結果として節税効果をもたらすことがあるが、節税を第一義の目的として運用のアドバイス・助言を行うわけではない。

プライベートバンクに関する動向[編集]

マネーロンダリングに対する国際金融上の厳しい規制によりスイスオーストリアルクセンブルクリヒテンシュタイン等々で番号口座(いわゆる秘密口座、匿名口座)が発行されなくなったこともあり、個人名義での口座開設は個人情報保護・プライバシー保護上まったく無意味となってしまった。
ただし、前述のスイスプライベートバンカーが経営するスイスプライベートバンク等では現在でも番号口座を発行しているところがある。法律で番号口座が禁止されているわけではなく銀行業界が自主規制して番号口座を発行しなくなっている側面があるのと、依然としてプライバシーを特に重要視する世界の超富裕層顧客の要請が高いためである。
またSWIFTを利用した国際送金の際の送金データには、口座名義人の個人名が必ず含まれる。個人名義の銀行口座を匿名で開設することは以前から世界のどこでも不可能であったが、最近は更に厳しく各国で情報を自動交換するようになってきている。現在のところ、これを回避する唯一の方法は法人口座である。オフショア金融センターに法人を設立し、その役員に就任し、その役員の名前で法人銀行口座を開設することである。ただし、どのオフショアでも良いわけではない。オフショア財団法人+オフショア法人の組み合わせがベストで、世界に4つしかない本物の白紙株券が発行可能なオフショアで法人を設立するスキームが次点であり、それ以外はない。なおスイスオーストリアルクセンブルクは、日本との租税条約締結国である。

関連項目[編集]

脚注・参考資料[編集]

  1. ^ 「世界のプライベート・バンキング [入門] 」 p.56 米田 隆著 ファーストプレス

外部リンク[編集]