社債

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社債(しゃさい、: corporate bond)は、会社が資金調達を目的として、投資家からの金銭の払込みと引き替えに発行(起債)する債券である。狭義には、会社法の規定するものをいう。

概要[編集]

社債は、基本的には資本である株式と異なり、発行企業から見ると負債(借入れ、借金)となる。

社債の募集の方法として、公募私募があり、それぞれ公募債、私募債と呼ばれる。一般には機関投資家向けの社債が多い。

公募債については、主に投資適格(ムーディーズではBaa3以上、スタンダード&プアーズなどその他格付機関ではBBB-以上)の格付けを得た大手企業が行う設備投資や企業買収などのM&Aなど、多額の資金が必要となる場合発行されることが多い。転換社債の場合は、株式に転換されると負債から資本に組み入れられることから、増資と同じ機能も持つことになる。大手企業の場合は銀行などからの単なる融資と異なり、投資家(社債の購入側)から見ると、債券を市場で売ることもできる(流動性を持つ)ことから、いつでも現金化ができるメリットもある。

私募債については、発行会社の財務内容・発行目的とも、より多様である。

日本法の社債[編集]

  • この節で、会社法は条数のみ記載する。

歴史[編集]

日本では19世紀末ごろから社債の発行が行われてきたが、第二次世界大戦中および戦後は発行が厳しく統制され、一部の大手優良企業しか社債の発行ができなかった[1]1970年代以降規制緩和が進められ、1996年に金融ビッグバンの一環として適債基準撤廃・財務制限条項が自由化されたことにより社債発行が完全に自由化された[2]

また、かつては社債がデフォルトに陥りそうになると銀行が社債を買い取るという慣行があった[3]。公募債のデフォルトによる損失を投資家が負担した戦後初の事例は、1997年ヤオハン転換社債の事例である。2001年にはマイカル債のデフォルトにより多数の個人投資家も影響を受けたが、その後7年間、日本において社債のデフォルトは発生していなかったが、2008年にスルガコーポレーションの社債のデフォルトが発生した。

定義[編集]

会社法上は、「この法律(注:会社法)の規定により会社が行う割当てにより発生する当該会社を債務者とする金銭債権であって、第676条各号に掲げる事項についての定めに従い償還されるものをいう。」と定義される(2条23号)。

会社法の渉外的適用範囲[編集]

日本の会社が、日本の法律に準拠した発行手続に基づいて発行した社債については、発行地の内外を問わず、日本の会社法の社債権者集会社債管理者の規定の適用を受ける(属地的な適用を主張して限定する見解もある)。日本の会社が発行する(広義の)社債であっても、外国の法律に準拠した発行手続に基づいて発行された社債については、会社法の規定する社債ではないため、かかる規定は適用されないとされる。また、外国会社が発行する広義の社債についても、同様に会社法の規定する社債ではないため、かかる規定は適用されないとされる(ただし、属地的な適用を主張する見解からは一部肯定される。)。

発行に際して[編集]

社債は有価証券であるため、株式などと同じく金融商品取引法の規制下に置かれる。

公募債を発行する会社は金融商品取引法上の有価証券報告書の提出義務が生じる。 社債の取引方法としては相対取引と市場取引がある。

社債の発行には取締役会の決議が必要である(362条4項5号)。取締役会設置会社でない会社では、取締役の過半数による決定が必要である(348条2項)。

  • 募集社債
    募集社債に関する事項の決定(676条)
    募集社債の申込み(677条
  • 社債原簿(681条
  • 社債券
    社債券の発行(696条)
    社債券の記載事項(697条)
    社債券には、利札を付することができる。
  • 償還
    利札が欠けている場合における社債の償還(700条
    社債の償還請求権等の消滅時効(701条)
    償還請求権は、十年間行使しないときは、時効によって消滅する。
  • 社債管理者
    社債管理者の設置(702条)
  • 社債権者集会
    社債権者集会の権限(716条)
    社債権者集会の招集(717条
    社債権者による招集の請求(718条)
    ある種類の社債の総額の十分の一以上に当たる社債を有する社債権者は、社債発行会社又は社債管理者に対し、社債権者集会の目的である事項及び招集の理由を示して、社債権者集会の招集を請求することができる。
    議決権の額等(723条)
    社債発行会社は、その有する自己の社債については、議決権を有しない。
    議決権の不統一行使(728条)
    社債権者は、その有する議決権を統一しないで行使することができる。
    社債権者集会の決議の効力(734条)
    裁判所の認可を受けなければ、その効力を生じない。

会社法による変化[編集]

平成17年(2005年)に制定された会社法においては、株式会社のほか、特例有限会社(旧有限会社)、持分会社も発行することが出来るようになった(旧有限会社法において、法解釈上、有限会社については社債の発行を認めていないと認識され、持分会社については社債の発行についての規定がなかったが会社法により明文化された)。また、発行会社が特にその定めを置いた場合を除き、債券を発行することを要しないものとされる(676条6号参照)。

社債の種類[編集]

会社法上の社債と類似するものとして、特定目的会社が発行するものを、特定社債といい、資産の流動化に関する法律の適用を受ける。投資法人が発行するものは投資法人債といい、投信法の適用を受ける。その他にも、業種によっては、社債発行に当たり、各業法規制の影響を受けることがある。 また、非居住者である外国の発行体が日本国内で円建てで発行する債券をサムライ債、外貨建てで発行する債券をショーグン債という。

格付けとの関係[編集]

R&IS&Pムーディーズなどの格付会社よって信用格付けが付与された会社の社債は、一般に低い金利で社債の発行が可能となる。

その中でも、一般にBBB(トリプルB、一般的なレベルとされる)以上(その上はA、AAと続き、最高はAAA)の格付けが付与された社債を慣習的に「投資適格債券」(「投資適格」とは英語Investment Gradeを日本語訳した言葉)と呼び、BBB未満の格付け、もしくは格付けが付与されていない社債については「投資不適格債券」(Non Investment Gradeの日本語訳)と通常呼んでいた。また格付がBBB未満の社債は俗にジャンク債(Junk Bond)とも呼ばれる。しかし現在海外金融市場ではInvestment Grade,Non Investment Gradeという言葉は、現実の投資家の多様な期待リターンやリスク許容度を考えた場合、言葉として曖昧でありミスリーディングであるとの考えが強くなっている。事実海外金融市場には、ハイリスク・ハイリターンを前提にジャンク債を扱う市場や機関投資家も存在する。よって英語ではBBB格以上の社債は単にHigh Grade「高格付債」、それ未満をLow Grade「低格付債」と呼ぶ動きもある。また金融業者がBBB格未満のハイリスク・ハイイールド債を投資家に販売する場合に、敢えて「ハイリスク」の部分を落として「ハイイールド債」と言い替えることもある。

ジャンク債は米国金融市場で1980年代にLBOなど企業買収で大量に発行され、一時的に市場は収縮したものの90年代以降投資家の認知を得るに至っている。ジャンク債には、もともと格付が高かった社債が格下げされてジャンクになるケースと最初から低格付で発行されるものがある。後者の場合は、国債金利に対する上乗せ金利であるクレジット・スプレッドが高いことはもちろんのこと、それ以外にも投資家に対する契約内容であるコベナンツの内容を工夫することにより安全性を高める努力が行われる場合がある。しかしジャンク債のデフォルト率は当然ながら高く、投資家は高いリスクを相殺すべく高いクレジット・スプレッドを要求することになる。 なお日本においては、高格付債がジャンク化する例は多いし、実体的なクレジット・リスクが高い会社も多いが、発行時点からBBB格未満の格付を付けてリスクを表示して社債を発行することを嫌う傾向が強い。したがって日本では海外に存在するようなジャンク債市場は存在しない。

脚注[編集]

  1. ^ 橘高研二、個人投資家向け社債について――個人金融資産の動向と投資家保護――、農林金融2005年9月号、502頁、2008年6月7日閲覧。
  2. ^ 適債基準の撤廃と「金融1940年体制」の終焉日本総研、Japan Research Review 1996年01月号 OPINION、2008年6月7日閲覧。
  3. ^ 総務省郵政研究所、社債市場の動向と社債投資に関する調査研究報告書 1頁、2003年3月付、2008年6月25日閲覧。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

外部リンク[編集]