マーケットメイク

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マーケットメイクは、株式為替債券など、金融商品の市場における取引方法のひとつ。

概要[編集]

オークション方式とともに一般的な市場での取引手法として用いられている。オークション方式が、買い手と売り手の注文のうち条件の合うものを市場内で連続して約定させていく方式であるのに対し、マーケットメイク方式は、取引所より資格を得たマーケットメイカー(値付け業者。株式は証券会社、為替は銀行など)が常時「売り気配」と「買い気配」を提示し、最良気配を出しているマーケットメイカーの間で相対取引を行う。オークション方式のように投資家と投資家が市場内で直接売買をすることはなく、全ての取引はマーケットメイカーとの間で行われる。

オークション方式は機動的に取引が出来、また一物一価の法則が自動的に働いて値が決定されるが、取引の量が少ない場合は値がつきづらいという欠点がある。例えば、あまりに取引量が少なく買い手だけがいる場合や売り手だけがいる状態が1日中続くような場合、値をつけることが出来ない。それに対してマーケットメイク方式は常に気配が提示されている。このため流動性の確保に有効である。

株式ではアメリカの NASDAQ 市場が全面的に採用しているほか、ロンドン証券取引所でも用いられている手法である。日本では、ジャスダック (JASDAQ) の一部の銘柄で採用されていた。外国為替取引では東京金融取引所が採用しているほか、海外では米国債等の取引にシカゴ商品取引所が採用しているなどその例は多い。

JASDAQの株式マーケットメイク制度[編集]

JASDAQで採用されていたマーケットメイク制度は「MM」あるいは「MM銘柄」と略されるほか、JASDAQ の場合はプレフィックスをつけて「JASDAQMM」「JQMM」と表記される。米ナスダック等で採用されているものと比較して、投資家の利益保護に問題があると指摘されていた。米ではオーダーハンドリングルールという規制があり、

  1. 顧客の注文が自社の気配より有利な場合は自社の気配として提示する義務がある。
  2. 自社の気配と顧客の指値が同じ値段の場合は顧客の注文を優先する義務がある。

どちらも、日本にはない規制である。

  • 利点は、常に気配が提示されているため、(値段にこだわらなければ)売れない、買えないというリスクがないことがある。
  • 一方、欠点としては、「気配」より優先するべき「指値注文」があっても、マーケットメイカーの気配は改善されないため、不透明である。このため、自分の買い指値より低い値段がついていても、自分の買い注文は約定していないことがある。
  • 例えば、550円売り、500円買いの気配の場合に、自分が520円の買い注文を入れても、買い気配は変わらない。また、このとき、500円の値段がついても、520円の買い注文が約定しているとは限らない。
  • また当初は「成り行き」による取引が出来なかった(後に可能となった)。

米NASDAQでも、オーダーハンドリングルールが導入される以前は株価のスプレッド(マーケットメイカーの提示する買い気配と売り気配の差)が広く、これがそっくり投資家の負担、すなわちマーケットメイカーの利益となっていた。この点に投資家から批判が集中し、上の規制が導入されたものである。この規制は投資家の取引コストを劇的に減少させ、デイトレードなど新しい形態の取引の発展を可能にした。

日本はオーダーハンドリングルールを導入しなかった結果、導入当初からスプレッドが広く、時にはしばしば10%以上に達し「ただ買って売るだけで資金が大幅に減少してしまう」など投資家には不評であった。同制度を特色として優位性を打ち出すつもりだったJASDAQは当てがはずれた形となり、マーケットメイク制採用企業に上場時の優遇措置を講ずるなど普及に努めたものの、投資家・登録企業のマーケットメイク制度離れに歯止めをかけることは出来なかった。JASDAQ は業績の不振から大株主の日本証券業協会が株式の過半数を大阪証券取引所へ売却し、JASDAQ市場は2010年に大証ヘラクレス市場と統合した。取引システムの一本化の必要からマーケットメイク制度は2008年3月21日をもって廃止された。結局、株式のマーケットメイク制度はシステム設計のまずさから日本では定着せずに終わった。