円キャリー取引

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

円キャリー取引(えんキャリートレード)は「円借り取引」とも呼ばれ、円資金を借入れて相場商品や証券など一般には金融資産を保有し、一定期間後に資産を売却しその売却対価によって、資金を付利して返済し、差額により利益を得ようとすることである。資産を保有すること、つまりポジションを持つ状態(正しくは、ロングポジションにあること)をキャリングというが、円をキャリングしているわけではない。

[編集] 概要

円キャリー取引(円キャリートレード)は、円資金を借入れて様々な取引を行うことを指す。国際的にみて低金利である円を借入れて、円を売ってより高い利回りとなる外国の通貨、あるいは外国の通貨建ての株式債券などで運用して「利ざや」を稼ぐ行為は、円キャリー取引と呼ばれている。内外の機関投資家のほか、個人投資家もこの取引に参加している。

個人がこの取引に入る形として注目されているものに外国為替証拠金取引(FX)がある。証拠金取引では、証拠金に比べて大きな取引をすることが可能だが、それは資金を借入れているのと同じ状態である。このような円借り取引の拡大もあって、本来は経常収支の黒字によって円高が進行するはずの日本で、円売りが多いために逆に円安が進行して注目されている。背景には日本の金利が2006年7月日本銀行によるゼロ金利政策の解除以降も、なお絶対的にも国際的にも相当に低い水準にあることがある。しかし今後、日本の金利が上昇したり円高が進行したりすると、円借り取引を継続していると為替差損が拡大するリスクが高まるので取引を解消(手仕舞い)しようと、早めに円を買い戻す動き(巻き戻し)が出て円高が加速され急激な円高となることが懸念されており、円借り取引の問題は日本銀行の金融政策の新たな制約要因となっている。

円キャリー取引の資金の多くは日本の金融機関が用立てしている。そのためアメリカの株価が急落すれば、日本の金融機関は円キャリー取引の清算に失敗した海外の投資家達の不良債権を一気に抱えることになり、最終的なババを引かされる可能性があるため、円キャリー取引の行方は日本経済にとっても重要な問題である。

[編集] 文献

  • 吉田健一郎「円キャリートレードの正体」『エコノミスト』3861, Nov.21, 2006.
  • 小野寺勇介「円安についての考察」『アナリストの眼』(富国生命)Jan.22, 2007.
  • 佐々木融「円キャリートレードは止まらず」『エコノミスト』3875, Feb.6, 2007.
  • 鈴木雅光「円安を加速させるFX人気」『エコノミスト』3875, Feb.6, 2007.
  • 西垣「円キャリートレードの巻き戻しは続くのか」『調査レポート』(三菱東京UFJ銀行R&C)06-83, Mar.9, 2007.
  • 保科雅之「円キャリートレードと為替相場」『証券調査月報』136, Apr.2007.
  • 松尾健治「個人マネーによる円キャリートレードの実態」『金融財政事情』2736, Apr.2, 2007.