情報保全隊

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陸上自衛隊情報保全隊
海上自衛隊情報保全隊
航空自衛隊情報保全隊
創設 2003年(平成15年)3月27日
所属政体 日本
所属組織 陸上自衛隊
海上自衛隊
航空自衛隊
部隊編制単位
兵種/任務/特性 諸職種混成
編成地 市ヶ谷
上級部隊 陸上幕僚監部
海上幕僚監部
航空幕僚監部
担当地域 日本全国
  

情報保全隊(じょうほうほぜんたい)とは、陸上自衛隊海上自衛隊及び航空自衛隊のそれぞれに置かれている、情報保全業務のために必要な資料及び情報の収集整理及び配布を行うことを任務とする防衛大臣直轄部隊である。2003年平成15年)3月27日に設立された。「情報保全」は「counter-Intelligence」の和訳とされており、防諜を意味する。

目次

[編集] 設立経緯

それまで、各自衛隊には「調査隊」という部隊が置かれていた。しかし、陸上自衛隊及び海上自衛隊ではそれぞれにおいて、防衛庁長官直轄部隊たる中央調査隊と、方面隊(陸自)隷下の方面調査隊・地方隊(海自)隷下の地方調査隊と分かれていて、それぞれの連携が十分ではなかった(航空自衛隊の組織編制については「航空自衛隊情報保全隊」の節を参照)。

また、業務内容が限定されていて、現代の軍事活動における情報保全のための任務が十分ではなかった。

このような状況において、防衛庁防衛研究所(現防衛省防衛研究所)に勤務する3等海佐が、在日ロシア連邦大使館付武官のビクトル・ボガチョンコフ海軍大佐に機密文書を渡していたことが判明し、2000年(平成12年)9月に当該3等海佐が逮捕され、ボガチョンコフ大佐が日本を出国する事件があった(ボガチョンコフ事件)。

類似の事件の再発を防止し、また情報保全活動をより充実させるために、それまで置かれていた「調査隊」を廃止して、陸海空の三自衛隊内にそれぞれ情報保全隊が2003年(平成15年)3月27日に発足した。「情報保全業務」とは「秘密保全、隊員保全、組織・行動等の保全及び施設・装備品等の保全並びにこれらに関連する業務」と定義されている。

防衛庁長官(当時)直轄部隊としての情報保全隊の新編により、前述の陸自方面隊・海自地方隊隷下の調査隊は改編されず廃止された。但し各警備区域ごとに方面保全隊隷下の方面情報保全隊(陸自)・地方情報保全隊(海自)が置かれ、旧調査隊の人員器資材を充てている。

[編集] 任務

  1. 自衛隊に対する外部からの働き掛け等から部隊等を保全するために必要な資料及び情報の収集整理等
  2. 職員と各国駐在武官等との接触状況(交流状況や職員に対する不自然なアプローチの状況)に係る資料及び情報の収集整理等
  3. 部隊等の長による職員の身上把握の支援
  4. 省秘又は防衛秘密の関係職員の指定に当たって、当該職員が秘密の取扱いに相応しい職員であることの確認の支援
  5. 立入禁止場所への立入申請者に対する立入許可に当たって、秘密保全上支障がないことの確認の支援
  6. 政府機関以外の者に対する省秘又は防衛秘密に属する物件等の製作等の委託の許可に当たって、秘密保全上支障がないことの確認の支援
  7. 各種の自衛隊施設に係る施設保全業務の支援
  8. 施設等機関等の組織の健全性を保全する機能を強化するため、施設等機関等の組織保全業務の支援

[編集] 陸上自衛隊情報保全隊

陸上自衛隊情報保全隊(JGSDF Intelligence Security Command:ISC)は、中央に情報保全隊本部を、5つの各方面隊警備区域毎に方面情報保全隊[1](隊長は1等陸佐)が置かれている。また、陸上幕僚長は、防衛大臣の承認を得て、方面情報保全隊の隊務を分担させるため、情報保全派遣隊駐屯地若しくは分屯地又は施設等機関等の所在地に配置することができる。なお、部隊を総括する隊長は海自・空自の司令とは異なり将補クラスの自衛官が充てられる。

[編集] 前身

陸上自衛隊情報保全隊が発足する以前には、中央調査隊(防衛庁長官直轄)及び各方面調査隊(方面総監直轄)が置かれていた。1967年昭和42年)当時の中央調査隊の定員は60名であった[2]

[編集] 部隊編成

[編集] 本部組織

  • 総務科
  • 運用科
  • 情報科
  • 保管科
  • 本部付情報保全隊(本部付情報保全隊長は2等陸佐市ヶ谷地区を担当する)

[編集] 隊長

歴代の陸上自衛隊情報保全隊長(陸将補)
氏名 在任期間 出身校・期 前職 後職
1 鈴木健 2003.3.27 - 2005.3.28 防大15期 通信学校長 退職
2 中村幹生 2005.3.28 - 2007.3.27 防大17期 小平学校副校長 第10師団長
3 高山治彦 2007.3.28 - 防大20期 防衛大学校防衛学教育学群
統率戦史教育室長

[編集] 海上自衛隊情報保全隊

海上自衛隊情報保全隊(JMSDF Intelligence Security Command)は、陸上自衛隊同様中央に情報保全隊本部を、5つの各地方隊警備区域毎に地方情報保全隊(隊長は2等海佐又は3等海佐)を置き方面区を担当している。さらに警備区域内の主要基地情報保全分遣隊(分遣隊長は3等海佐)を分派している。

[編集] 部隊編成

  • 海上自衛隊情報保全隊本部(市ヶ谷基地
    • 横須賀地方情報保全隊(横須賀基地
      • 厚木情報保全分遣隊
      • 下総情報保全分遣隊
    • 呉地方情報保全隊(呉基地
      • 阪神情報保全分遣隊
      • 岩国情報保全分遣隊
      • 徳島情報保全分遣隊
    • 佐世保地方情報保全隊(佐世保基地
      • 鹿屋情報保全分遣隊
      • 那覇情報保全分遣隊
    • 舞鶴地方情報保全隊(舞鶴基地
    • 大湊地方情報保全隊(大湊基地
      • 函館情報保全分遣隊
      • 八戸情報保全分遣隊

[編集] 本部組織

  • 総務科
  • 企画運用科
  • 調査科

[編集] 司令

歴代の海上自衛隊情報保全隊司令(1等海佐)
氏名 在任期間 出身校・期 前職 後職
1 橘恒紀 2003.3.27 - 2003.12.19 海上自衛隊中央調査隊長 横須賀潜水基地隊付
→2004.3.21退職
2 外山帥生 2003.12.19 - 2005.3.24 情報本部 海上幕僚監部付
→2005.4.18退職
3 渡部年晴 2005.3.25 - 2006.8.3 皇學館大学
昭和49年卒
ちはや艦長 海上幕僚監部付
→2006.11.18退職
4 後藤博之 2006.8.4 - 2007.8.19 防大19期 情報保全隊副長 海上幕僚監部付
→2007.11.3退職
5 湯元正義 2007.8.20 - 防大21期 情報本部

[編集] 航空自衛隊情報保全隊

航空自衛隊情報保全隊(JASDF Intelligence Security Wing)は、陸上・海上自衛隊と異なり、中央の情報保全隊本部の下に22個の地方情報保全隊を置いており、主要基地と情報保全隊本部が直接、指揮・連絡を取っている。これは、改編前の調査隊も同様であった(「航空自衛隊調査隊本部」の下に22個の地方調査隊が隷属)。

[編集] 部隊編成

[編集] 司令

歴代の航空自衛隊情報保全隊司令(1等空佐)
氏名 在任期間 出身校・期 前職 後職
1 原田千敏 2003.3.27 - 2003.7.31 調査隊司令 西部航空方面隊司令部幕僚長
2 尾崎久信 2003.8.1 - 2005.3.31 防大18期 統合幕僚会議第1幕僚室企画調整官 航空教育隊司令
3 長尾齊 2005.4.1 - 2007.4.1 防大18期 航空保安管制群司令 退職・空将補
4 松田和彦 2007.4.1 - 2008.4.1 防大19期 作戦情報隊司令 退職・空将補
5 三嶋哲 2008.4.1 - 防大23期 第4高射群司令

[編集] 市民活動監視問題

2007年6月6日、自衛隊内部文書を入手した日本共産党が情報保全隊の活動を国会で取り上げマスコミに公開。翌7日には機関紙「しんぶん赤旗」に記事を一面で掲載した[3]。情報保全隊とは関連がないが、市民活動監視の類似事案として、2002年6月には、情報公開請求者の身元について調査し、作成したリストを庁内LANで参照可能なようにしていた事が発覚(海幕3等海佐開示請求者リスト事案)。このリストが当時民事訴訟を抱えていた陸上自衛隊の1佐に利用され、法廷で相手攻撃に使われた事も判明している[4]

[編集] 概要

この内部資料は、本来任務たる「自衛隊に対する外部からの働き掛け等から部隊等を保全するために必要な資料及び情報の収集整理等」のためであるとして隊が行っていた情報収集(日本共産党社会民主党ジャーナリストなど報道関係者や、市民や宗教者[5]による自衛隊イラク派遣反対の活動や反戦イベント、また集会などの調査)を示すものであり、自衛隊イラク派遣反対活動の日時、場所、活動内容、また活動に携わった団体の名称や活動の規模、活動団体の代表の氏名などについての調査結果、及びそれらの活動が自衛隊関係者または国民世論への影響や活動の今後の見通しの分析などが中心となっていた。

共産党によれば、共産党系を「P」、社民党系を「S」、民主党及び連合系を「GL」、新左翼系を「NL」、その他の市民運動を「CV」、個人その他を「その他」と分類し、その活動を記録するほか、活動内容の種類によっては、『反自衛隊活動』と分類[6]し、適宜、自衛隊活動の正当性を強調する内容の脚注が付けられていた。

[編集] 各方面の反応

[編集] 監視に対する批判

自由民主党公明党は調査対象にされていなかったことから[7]、調査対象とされた団体・個人から「戦前の憲兵政治の再来だ」、「一般市民の活動を監視している」と批判される結果となった。調査の対象には消費税年金の問題、あるいは春闘関連の集会までも含まれており、「自衛隊、防衛問題とは無関係でないか」とその正当性を問う批判も出ている。

共産党は「表現の自由プライバシー侵害行為で、違憲である」と中止を求めている[8]が、防衛大臣久間章生は共産党の質問に対し、「自衛隊法に基づく正当な任務である。」と答弁し、問題がないとの見解を示し[9]、民主党からの質問に対し、「国会議員であれ、国民は、平等に情報収集対象になりえる」と回答した。守屋武昌事務次官は「防衛省設置法に基づく調査研究である」として違法性はないと反論した。

尚、監視については、市民団体の公然活動に纏わる情報の集積、分類といった行政調査に留まっているに過ぎぬとの指摘もある。

[編集] 情報漏洩に対する批判

日本共産党は自衛隊関係者から内部資料を入手したと発表しており、保守派や自衛隊の中では(殊に、情報保全隊自身は)外部から情報を盗み出されたことが防諜が甘かった」、との観点から一番の問題とする向きもある[10]

以前にも90式戦車の試験車両の写真が日本共産党に渡り、国会質問に使用された。度重なる防衛秘密の漏洩等、それから自衛隊の防諜に対する意識は変わっていないのではないかとする意見もある。

[編集] 社民党の抗議

また当問題に関して、社民党の福島みずほ党首と保坂展人議員は6月8日に市ヶ谷の防衛省を訪問し、守屋武昌事務次官に市民活動監視は不当・不法として抗議を行ったが、その際に守屋次官はキャンプ・シュワブでの基地移設反対運動についても、海自の情報保全隊が事後の情報収集を行っていると言及したと保坂議員は自身のブログで報告している。但し守屋次官は其の後の記者団との非公式会見ではこの事を否定しており、各社の報道は両論併記となった[11]

[編集] 日本共産党の追求

日本共産党は、情報保全隊の関係者が日本の防衛産業及び警備会社に『天下り』を行っていると主張している[12]

[編集] 活動の支持

梅原克彦仙台市長は、自衛隊を事実上の軍隊であるとして、この活動に対して支持を表明した。

[編集] 提訴

2007年10月5日、仙台市の写真家等が、「監視活動による人権侵害で、精神的苦痛を受けた」として、情報保全隊の活動停止、及び、損害賠償請求を求めるべく、仙台地裁に提訴する。
尚、自衛隊による情報収集活動を巡る国家賠償請求訴訟は、前例がないという。

海幕3等海佐開示請求者リスト事案では、新潟県の作家と弁護士がプライバシーの侵害であるとして提訴。2008年4月に最高裁にて20万円の賠償命令が確定。防衛省はこの直後に、損害はリスト作成をした自衛官個人の私的責任に帰すものとして国家賠償法第1条第2項に基づく求償権を行使し、同額を当人に弁償させている。

[編集] 情報収集活動の背景

  • 警察白書によれば、監視対象となっていた活動の多くには、過激派の関与もしくは参加が指摘されている。
特に革マル派は同派の活動であることを隠しながら「反戦運動」を展開し組織の拡大を図っている[13]とされ、いまだ暴力闘争を放棄していない現状では、自衛官およびその家族に対する働きかけに対し、一定の警戒を必要としている現状がある。
  • 1970年代には警察官僚の家族に対する爆弾テロ(土田・日石・ピース缶爆弾事件 但し被告全員無罪)が行われたことがある。自衛隊に対する働きかけも拉致・脅迫等、非合法な手段を伴う可能性がある。
  • これらの情報収集はあくまでも行政調査の範囲内であり、街頭での活動や集会の日時と場所、名前を出して参加した者、といった公開されている情報や、公共の場における活動の情報の集積、分類にとどまっている。適法に行われている街頭活動を妨害したわけでもなく盗聴や盗撮などの違法な手段で入手した情報ではないことに留意する必要がある。公然の場所で社会的、政治的な意見表明をしているのに「名前は記録してくれるな」というのは明らかに矛盾している。[14]
  • 監視対象には反米保守も含まれている。

[編集] 外部からの評価

  • 新右翼鈴木邦男は、著書『公安警察の手口』の中で、自身が調査隊(情報保全隊の前身)の取調べを受けた際の様子を描いている。

鈴木は、2003年、知人の元自衛官が起こした内部告発事件に絡んで調査隊の取調べを受けた。その際、取調べを担当した調査隊員達は、逮捕権が無いにもかかわらず「パクってやる!」と虚勢を張ったり、鈴木から逮捕権が無いことを指摘されると「じゃあ、警察に頼んでパクってもらう!」と逆上したり、取調べの最中に自衛隊内部の秘密情報をあっさり漏らしたりと、防諜機関の職員としてあるまじき行動に及んだ。このような取調べを受けた鈴木は「調査隊の能力はこの程度か」と感じ、大いに失望したという。

[編集] 脚注

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  1. ^ 「方面」の名を冠しているが、方面直轄部隊ではない(「方面警務隊」・「会計監査隊方面分遣隊」も同様)
  2. ^ 1967年(昭和42年)7月4日の衆議院内閣委員会における島田豊政府委員答弁
  3. ^ しんぶん赤旗2007年6月7日「自衛隊による違憲・違法の国民監視活動を告発する」
  4. ^ 防衛庁が個人情報を違法に収集==02年5月28日付『毎日新聞』スクープ松山大学田村譲教授のページ
  5. ^ 「教会も調査対象に」キリスト新聞報じるしんぶん赤旗2007年6月22日付
  6. ^ 当時の久間防衛大臣曰く、「冷戦時代からやっているもので、『反自衛隊活動』という分類は、間違っている」と分類方法が誤りであることを認め、分類方法を検討している。
  7. ^ 公明党の支持母体である、創価学会系の反戦運動も調査対象にはされていない。
  8. ^ 自衛隊による違憲・違法の国民監視活動を告発する日本共産党。自衛隊の国民監視/注目のキーワード追跡 闇の監視部隊(しんぶん赤旗連載) も参照されたし。
  9. ^ 朝日新聞2007年6月6日「久間防衛相、情報収集認める 文書の真偽は確認せず」
  10. ^ 「情報保全隊」からの情報漏洩?(ライブドアパブリックジャーナリスト・小林亮一)
  11. ^ 保坂展人のどこどこ日記2007年6月9日「沖縄・辺野古でも海自情報保全隊が県民監視活動」
  12. ^ 情報保全隊が天下り 軍需企業・警備会社などに国民監視“経験”生かす緒方議員調べ
  13. ^ 平成18年度版警察白書 第5章を参照のこと
  14. ^ 住所氏名は、求めに応じて基地や機材の資料を送付するなど、国民への説明責任を果たすためにも用いられる。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク