消費税
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- 消費税(しょうひぜい)は広義では物品・サービスの消費に担税力を認めて課される租税のこと。
- 狭義では消費税法に規定する消費税と地方税法に規定する地方消費税の総称。
- 税法では消費税法に規定する消費税を指す。
目次 |
[編集] 分類
消費税は法律上においては、製造業者や商人が担税指定者となるが、実際には課税分が最終消費者に転嫁されることを前提として、物品・サービスなどの「消費」行為そのものを客体として課税するものである。消費は所得の存在を前提として発生することから、消費に課税することによって所得税などで十分に把握できない所得に対して間接的に課税することになる。ただし、所得の中には貯蓄に回される部分があるために、所得の大小と消費の大小は必ずしも一致せず、消費者の消費性向が実際の消費税の負担に対して影響を与えることとなる。
消費税は消費そのものを課税対象とする直接消費税と最終的な消費の前段階で課される間接消費税に分類できる。前者にはゴルフ場利用税などが該当し、後者には酒税などが該当する。
間接消費税はさらに課税対象とする物品・サービスの消費を特定のものに限定するかどうかに応じて個別消費税と一般消費税に分類することができる。
- 消費税
- 直接消費税
- 間接消費税
- 個別消費税
- 一般消費税
以下この記事で消費税と言う場合には特に断りが無い限り一般消費税のことを言う。
なお、中国にも「消費税」(消费税)と呼ぶものがあるが、日本の酒税などに類似する、一部贅沢品だけにかかる特別税で、日本の消費税に類似する一般間接税は「増値税」(增值税、付加価値税の意味)と呼ばれる。
[編集] 個別消費税
個別消費税は特定あるいは一群の財貨・サービスに対する課税である。課税の対象になる財貨・サービスは特定的で税率も統一されていない。この方式で課税される対象としては3つの分類が考えられ、酒や煙草のような社会的に望ましいとは言えない嗜好品に賦課する「嗜好品課税(抑止的税)」、ガソリンのように応益原則・受益者負担の原則に基づいて特定の公共サービスを行うために関連した商品・サービスにかける「目的税」、その他の物を対象とした「奢侈品・娯楽用品・サービス課税」と呼ばれる奢侈品や日常生活で用いられてはいるが生活必需品とはいえない商品に課される。かつて日本に存在した物品税の多くがこれに含まれている。
個別消費税は、元は内国消費税(excise)として、16世紀末期にスペインからの独立戦争を継続していたオランダで軍費調達のために始められたと言われている。イングランドではこれを範として内国消費税を導入して財政難を克服しようとした。これに対する英国議会の反発が、清教徒革命へと発展するが、皮肉にも革命軍の軍事費を得るためにジョン・ピムやオリバー・クロムウェルが採用したのが内国消費税であった。その後、王政復古期に王権と議会の対立の原因となっていた徴発権などの国王大権を国王が返上する代わりに消費税の半分を国王の生活のための供与金として認めることで合意が成立した。その後も財政難を理由として何度か消費税の引き上げが行われた。1733年に当時(初代)の首相ロバート・ウォルポールが地租の削減・廃止と関税の引き下げの代償に更なる消費税の大幅引き上げを図った。これに対して政敵のボリングブルック子爵が噛み付き、民衆も生活苦から暴動を起こす騒ぎとなったためにウォルポールは提案を撤回した。これを「消費税危機」(excise crisis)という。産業革命以後には産業育成のために国内消費税を削減して関税に転嫁する方針が採用された。フランスではコルベールが導入した塩の専売制に付随してかけられたガベル(gabelle)と飲料品税に由来するエード(aides)が知られ、絶対王政期のフランス財政を支えた。ドイツでも17世紀後半以後盛んに導入されたが、余りの高率に国民生活の不安定と国家財政の極度の消費税依存を招きラッサールから厳しい批判を浴びた。この他アメリカでも独立戦争時にイギリスを真似て消費税を導入したが、1794年にウィスキー税に反対するウィスキー反乱が発生してジョージ・ワシントン政権を揺るがした。日本では、江戸時代以前の運上・冥加が一種の個別消費税に相当するが、近代的な税制は明治維新以後に各種の間接税が導入されて以後である。特に酒税は一時は歳入中最大の割合を占めるほどになった。戦後になってシャウプ勧告と消費税法施行に伴って2度にわたって間接税の整理が行われることとなる。
[編集] 一般消費税
消費税は、フランス大蔵省の官僚モーリス・ローレが考案した間接税の一種。財貨・サービスの取引により生ずる付加価値に着目して課税する仕組みであることから、欧米ではVAT(Value-Added Tax、付加価値税)、もしくはGST(Goods and Services Tax、物品税)と呼ばれる。
かつての日本の経済学では一般売上税(general sales tax)とも呼ばれていた税方式がモデルとなっている。一般売上税の課税方法として製造・卸売・小売の各段階のいずれか1段階で課税される単一段階課税と2つ以上の段階で課税される多段階課税がある。多段階課税は可能な限り最低の課税税率で一定の税収を確保可能であるが流通段階がそれぞれ異なる商品に同じように課税をすることによって商品に対する税負担の格差が生じることになる。また、単一段階課税でもどの段階で課税を行うかで製造段階課税・卸売段階課税・小売段階課税の3種類に分けられる(多段階課税では、これらの全てあるいは複数が併行して課せられる)が、早い段階でかけた場合には次の段階に税負担を転嫁させていく「ピラミッド効果」が発生する可能性がある。従って、資源配分と税の公正負担の面からは単一段階課税しかも小売段階課税が望ましいとされている(小売店の多さに由来する税徴収の煩雑さという問題は生じるが)。
こうした問題点を解消するために多段階課税を採用する一方で、ピラミッド効果を回避するために納税義務者はその売上げに係る消費税ではなく、差額に係る消費税を納税する方法が考え出された。これが今日の一般消費税(付加価値税)である。一般消費税は付加価値の算定方法により所得型付加価値税と消費型付加価値税に分けることが出来る。前者は仕入計算時において資本財の控除は減価償却分しか認められないが、後者では資本財全額が控除の対象となり、消費部分のみが課税対象となる。個別消費税と一般消費税は外見的には類似しているが、一般消費税には所得に対して課税する所得税や法人税などの直接税に対する批判に由来する代替的な要素も含まれている。所得に課税する場合には、納税者が正確な納付をしているかを把握するのにコストがかかり、公平性・水平性の点でも問題が多い。直接税に批判的な人々は消費による支出を通じてより正確な所得が把握できるという考えから一般消費税による代替を求める。従って、一般消費税を導入したからと言って、既存の個別消費税を撤廃する必要はないと考えられている(勿論、政治的配慮を理由とした縮小・廃止はあり得るが税制とは別の話である)。
一般消費税が初めて導入されたのは1954年のフランスであるが、その前身は1917年に導入された支払税である。その後、1920年に売上税、1936年に生産税と名称を変更しながら現在の形になっていった。その後、1967年にEC閣僚理事会においてフランスと同様の消費型付加価値税に基づく一般消費税を中心とした加盟国間の税制統一運動の推進が確認され、この方針に基づいて1968年に西ドイツが一般売上税を一般消費税に変更した。これをきっかけに1969年にオランダ、1970年にルクセンブルク、1971年にベルギー、1973年にイギリス・イタリア……と加盟国間において一般消費税への転換が進んだ。日本でも10年に及ぶ議論の末に消費型付加価値税型の消費税が1989年に導入されることになった。
[編集] 総合消費税
総合消費税(general expenditure tax)は、イギリスの経済学者ニコラス・カルドアが提唱した方法で、spendings tax(支出税)とも呼ばれる。個々の消費者がその年度内に発生した財貨・サービス支出を税務署に自己申告を行い、累進課税に基づく税額の算定に基づいて納付する。元は所得税を補完する税法として考案され、キャピタルゲインなどの所得からも支出に対する課税の形で税を徴収でき、かつ預貯金とその金利は支出に相当せずに課税されないために節約と貯蓄奨励にもなるとされ、インドなどで一時導入が検討された。だが、全ての人が正確な納付を行うためには、各個人が自己の支出に関する正確な記録を作成して、収入・支出・貯蓄に関するバランス・シートを作成しなければならないことから、本格的に導入した国は存在しなかった。また、税務署が個人の収入・支出・貯蓄情報を把握する(拒否すれば結果的に脱税行為となる)ため、今日では個人情報保護との兼ね合いからも実施が不可能であると言える。
[編集] 消費税の歴史
ここでは、VATや日本の消費税などいわゆる一般消費税の歴史について記述する。
[編集] 世界
[編集] 日本
- 1978年(昭和53年)第1次大平内閣時に、一般消費税導入案が浮上。総選挙の結果を受け撤回。
- 1986年(昭和61年)第3次中曽根内閣時に、売上税法構想。マスコミは反発。
- 1988年(昭和63年)竹下内閣時に、消費税法が成立、12月30日公布
- 1989年(平成元年)4月1日 消費税法施行 税率3%
- 1994年(平成6年)2月細川内閣で税率を7%とする国民福祉税構想が世論の批判を浴びる。→即日白紙撤回
- 1997年(平成9年)4月1日、既に村山内閣で内定していた地方消費税の導入と消費税等の税率引き上げ(4%→地方消費税を合わせて5%)を橋本内閣が実施。
- 2003年(平成15年)消費税課税業者の免税点が売上3000万円から1000万円に引き下げられた。
- 2004年(平成16年)価格表示の「税込表示」が義務づけ。
- 2009年(平成21年)導入以来の累計213兆円(2009年度予算含む)、同時期の法人3税(法人税、法人住民税、法人事業税)累計182兆円減。
[編集] 各国の消費税
平成20年度現在、145カ国で導入されている[1]。
[編集] EU加盟諸国
| 国名 | 消費税率 | 略称 | 現地での名称 | |
|---|---|---|---|---|
| 一般 | 特定品目の低減税率 | |||
| 21% | 12%, 6% or 0% | BTW TVA MWSt |
Belasting over de toegevoegde waarde Taxe sur la Valeur Ajoutée Mehrwertsteuer |
|
| 19% | 6% | BTW | Belasting over de toegevoegde waarde | |
| 15% | 12%, 9%, 6%, or 3% | TVA | Taxe sur la Valeur Ajoutée | |
| 19.6%[1] | 5.5% or 2.1%[1] | TVA | Taxe sur la Valeur Ajoutée | |
| 20% | 10%, 6%, or 4% | IVA | Imposta sul Valore Aggiunto | |
| 19%[2] | 7%[2] | MwSt./USt. | Mehrwertsteuer/Umsatzsteuer | |
| 25% | 0%[3] | moms | Merværdiomsætningsafgift | |
| 21% | 13.5%, 4.8% or 0% | CBL VAT |
Cáin Bhreisluacha Value Added Tax |
|
| 15%[4] | 5% or 0%[4] | VAT | Value Added Tax | |
| 19% | 9%, 4.5% or 0% | ΦΠΑ | Φόρος Προστιθέμενης Αξίας | |
| 16% | 7% or 4% | IVA | Impuesto sobre el valor añadido | |
| 21% | 12% or 5% | IVA | Imposto sobre o Valor Acrescentado | |
| 20% | 12%, 10% or 0% | USt. | Umsatzsteuer | |
| 22% | 17%, 8% or 0% | ALV Moms |
Arvonlisävero Mervärdesskatt |
|
| 25%[5] | 12%, 6% or 0%[5] | Moms | Mervärdesskatt | |
| 18% | 5% or 0% | km | käibemaks | |
| 18% | 5% or 0% | PVN | Pievienotās vērtības nodoklis | |
| 18% | 9% or 5% | PVM | Pridėtinės vertės mokestis | |
| 22% | 7%, 3% or 0% | PTU/VAT | Podatek od towarów i usług | |
| 19% | 5% | DPH | Daň z přidané hodnoty | |
| 19% | 10% | DPH | Daň z pridanej hodnoty | |
| 25%[6] | 15%[7] | ÁFA | általános forgalmi adó | |
| 20% | 8.5% | DDV | Davek na dodano vrednost | |
| 18% | 5% or 0% | TVM | Taxxa tal-Valur Miżjud | |
| 15% | 5% or 0% | ΦΠΑ | Φόρος Προστιθεμένης Αξίας | |
| 19% | 9% | TVA | Taxa pe valoarea adăugată | |
| 20% | 7% | ДДС | Данък Добавена Стойност | |
Note 1: 島嶼では、さらに消費税率を3割軽くして、13%, 6%, 3%に。
[編集] その他の諸国
| 国名 | 消費税率 | 現地での名称 | |
|---|---|---|---|
| 一般 | 特定品目の低減税率 | ||
| 21% | 10.5% or 0% | IVA = Impuesto al Valor Agregado | |
| 10% | 0% | GST = Goods and Services Tax | |
| 17% | PDV = porez na dodatu vrijednost | ||
| 5% GST or 13% HST1 | 4.5%2 or 0% | GST = Goods and Services Tax, TPS = Taxe sur les produits et services; HST = Harmonized Sales Tax, TVH = Taxe de vente harmonisée | |
| 19% | IVA = Impuesto al Valor Agregado | ||
| 16% | IVA = Impuesto sobre el Valor Agregado | ||
| 17% | 6% or 3% | 增值税 (ピン音:zēngzhí shuì) | |
| 22% | 0% | PDV = Porez na dodanu vrijednost | |
| 16% | 12% or 0% | ITBIS = Impuesto sobre Transferencia de Bienes Industrializados y Servicios | |
| 12% | IVA = Impuesto al Valor Agregado | ||
| 10% | GST = Goods and Sales Tax | ||
| 13% | IVA = Impuesto al Valor Agregado | ||
| 18% | 0% | DGhG = Damatebuli Ghirebulebis gdasakhadi დღგ = დამატებული ღირებულების გადასახადი | |
| 16% | 14% | ||
| 24.5% | 7% | VSK = Virðisaukaskattur | |
| 12.5% | 4%, 1%, or 0% | VAT = Valued Added Tax | |
| 10% | 5% | PPN = Pajak Pertambahan Nilai | |
| 15.5% | Ma'am = מס ערך מוסף | ||
| 5% | Consumption tax = 消費税 | ||
| 10% | VAT = 부가세(附加稅, Bugase) = 부가가치세(附加價値稅, Bugagachise) | ||
| 3% | 0% | GST = Goods and Sales Tax | |
| 16% | GST = Goods and Sales Tax | ||
| 14% | |||
| 15% | 0% | ||
| 10% | TVA = Taxe sur la valeur ajoutée | ||
| 20% | 5% | TVA = Taxa pe Valoarea Adăugată | |
| 18% | 5% | ДДВ = Данок на Додадена Вредност | |
| 5% | |||
| 15% | 0% | IVA = Impuesto al Valor Agregado | |
| 17% | 8% | PDV = Porez na dodatu vrijednost | |
| 12.5% | GST = Goods and Services Tax | ||
| 25% | 14% or 8% | MVA = Merverdiavgift (非公式な略称moms) | |
| 13% | VAT = Value Added Tax | ||
| 7.5% | 1% or 0% | ||
| 5% | ITBMS = Impuesto de Transferencia de Bienes Muebles y Servicios | ||
| 10% | 5% | GST= Impuesto al Valor Agregado | |
| 19% | IGV = Impuesto General a la Ventas | ||
| 12%10 | RVAT = RVAT or Reformed Value Added Tax, 地元ではKaragdagang Buwis として知られる | ||
| 18% | 10% or 0% | НДС NDS = Налог на добавленную стоимость Nalog na dobavlennuyu stoimost | |
| 18% | 8% or 0% | PDV = Porez na dodatu vrednost | |
| 7% | GST = Goods and Services Tax | ||
| 14% | 0% | VAT = Valued Added Tax | |
| 15% | |||
| 7.6% | 3.6% or 2.4% | MWST = Mehrwertsteuer, TVA = Taxe sur la valeur ajoutée, IVA = Imposta sul valore aggiunto, TPV =
Taglia sin la Plivalur |
|
| 7% | VAT = Valued Added Tax | ||
| 15% | |||
| 18% | 8% or 1% | KDV= Katma değer vergisi | |
| 20% | 0% | ПДВ= Податок на додану вартість | |
| 22% | 10% | IVA = Impuesto al Valor Agregado | |
| 10% | 5% or 0% | GTGT = Gia Tri Gia Tang | |
| 9% | 0% | IVA = Impuesto al Valor Agregado | |
Note 1: 統一売上税(HST)はいくつかの州で徴収される連邦/州での付加価値税を統合したものである。残りの州では、物品税(GST)は5%の連邦の付加価値税であり、州売上税がある場合は付加価値税と別に加算される。
Note 2: 本当の軽減税率ではないが、還付が広く利用でき実質的には4.5%まで税は減る。
[編集] 是非論
所得に応じた累進税率を採用する所得税とは異なり、消費全般に対して課税される為、低所得層ほど所得に占める消費税の負担割合が相対的に大きくなり(逆進性)、それらの層には不公平感を与えることがある。日銀の統計では、年収400万以下の世帯の収入に対する消費の割合は約90%、年収1000万円以上の世帯の収入に対する消費の割合は約50%である。このため、消費税率5%の場合、年収400万以下の世帯の収入に対する消費税の負担率は約4.5%、年収1000万円以上の世帯の収入に対する消費税の負担率は約2.5%である。つまり、消費税は高額所得者ほど収入に対する税負担率が低くなる。つまり、消費税は逆進的である。
他方、消費を基準に課税するため、同一金額の財やサービスを消費すれば所得にかかわらず同額の税負担となるために公平であるともいえる。つまり、基準を収入(所得)に置いた課税と、支出(消費)に置いた課税とのバランス(直間比率)の問題である。
[編集] 日本の消費税制度の諸議論
詳細は「消費税法」を参照
[編集] 物品税と消費税の違いについて
一般消費税導入以前には、奢侈品・贅沢品とみなされるものについて、個別消費税の一種である物品税が課されていたが、対象となる物品の範囲、指定のタイミングなどを巡って企業側から不公平感が指摘されることもあった(真に新しいカテゴリの商品のうちは対象にならず、法令の改正などを経るためにある程度普及してから課税対象になる、そのことが、可処分所得が相対的に少ない世帯にとって新商品の入手をいっそう困難にする結果となる、など)。この問題は、広く財を対象にする消費税では生じにくい。
[編集] 全体の税収や税率を中心とした議論
欧州では10 - 20%以上の国が大勢を占める(上述)。この事実が、日本における消費税率引き上げの根拠とされることがある。経済界では、経団連が度々消費税率引き上げを主張している[8]。
ただし、なぜ欧州の真似をしないといけないのかという反論も強い。またアメリカでは連邦としての間接税は存在しない。
この「欧州では10 - 20%以上」の議論では、その支出が医療・教育・福祉など国民の基本生活を支える目的に使われていること、食料品などの税率は低く抑えられていることなどの点が無視されていること、日本では、20年間の消費税の累計が法人税減税に見合っていて、国民に法人の社会的負担分を負担させていること、さらに平行して社会福祉の切り下げが継続しておこなわれていることなど、正確な議論を抑える形で税率引き上げ論として利用されていることがあり、より深めた議論が必要とされている.
たとえば、消費税導入(1989年導入)による税収と、法人税率の40.0%から30.0%への引き下げ(1999年)による税収減とを関連づけた議論も存在する。
消費税だけの議論ではないため、詳しくは該当する項を参照すること。
[編集] 福祉水準を中心とした税率の議論
消費税は、消費行為と関連性の高い福祉と関連付けられていることが多い。国の姿として福祉水準をどうするかどうかによってその議論も変わってくるといえる。例えば、高福祉社会が実現しているとして、日本国内のメディアから称賛されることの多い北欧諸国の消費税率は、日本と比較して圧倒的に高いからである(既述の国別の税率比較を参照)。
福祉水準を維持するものとして、高齢者の割合が世界一高い日本の社会構造を鑑みれば、一般先進国以上に消費税を引き上げねば、福祉水準を維持できない、または国家財政が破綻するという主張もある。しかし税率引き上げが年金支給目的となれば、高齢者は現役世代の時に年金保険料を既に負担済であるため、再度の負担をする事になるとして反対している(同様の理由で消費税法が制定される時にも関連団体から反対運動がおきたが、福祉目的税として検討されていたものを一般税とすることで解決を図った経緯がある)。
なお日本共産党などは一部大企業への直接税増税によって消費税増税を回避するとしているが、企業の本社機能の海外移転を助長してしまうという経済界の意見や経済産業省の見解がある。なお本社機能移転問題については実質本社へ課税するように法改正したり、移転価格税制を厳正化することにより回避できるとする説もあるため、一概に言えない部分もある。
もっとも福祉水準を下げる事(たとえば年金の支給開始をアメリカ並みの67歳からにすることなど)によって税率等の負担の軽減を図る事も考えられる。
[編集] 税率アップにともなう生活必需品への課税軽減について
欧米では、品目により消費税が減免または非課税にして、低所得者層の負担に配慮している国も多い(俗に二段階税率方式と呼ばれている)が、日本では、食料品などの生活必需品にも一律に課税されており、低所得者層には重い負担になっているとの議論がある。とはいえ、これら批判は単純には当てはまらないといえる。なぜなら日本では医療・福祉・公教育・住居用不動産賃貸などは非課税とされているし、所得税の扶養控除等で負担軽減を図っている事から、総合的に考慮することが重要といえる。
2009年1月現在、与・野党の税制調査会や各政治団体等で、税率アップの議論に伴いこれら話題が活発に議論され始めている(詳しくは政治動向の欄を参照。ここでは一部紹介のみする。)。自民党税調では欧米で主流の二段階税率方式が検討されている。民主党税調では税額控除・還付方式が所得税法と併せて検討(世帯の生活必需支出の平均額を計算し、所得税法の扶養控除等を税額控除化して一体化)されている。共産党は、税率アップの議論以前から、生活必需品への課税軽減の意見を持っている(そもそもが消費税制度に対して否定的である点で他団体とは異なるといえる)。実務者である税理士会では税率アップにあわせて負担軽減を提言している(方式についての提案ではない)。
二段階税率方式では、生活必需品の線引きが難しいという問題がある。物品税(消費税法制定により廃止)は、いわゆる嗜好品や贅沢品に課されていたが、当時も課税対象品の選定を巡って幾度となく議論が起きた。同様に、例えば食品への税率を軽減するとして、大衆食堂やフードコートをどう扱うか等という議論が起きている。経理・申告においても、仕入税額控除が多段階となるため逐次確認が必要となり煩雑化する。逆に税額控除・還付方式に比べて行政コストは軽減する。
税額控除・還付方式では、二段階税率方式で批判があるような、生活必需品の線引きが難しいという問題を回避することができるという利点がある。しかし、還付実務等において行政コストがアップする(所得税で税額控除する事でコスト軽減する案が主流だが、所得税がそもそも掛からない課税最低限の人には還付実務が生じる事や、不正防止の監視・措置を講じる必要が出てくる)。また算定方法にも議論は生じるだろうし、算定額が政局に利用されやすくなる(支持率が下がった時に算定方法を変更して軽減するなど)という批判もある。
[編集] 税率アップが消費や商行為に及ぼす影響
1997年、消費税率が5%に引き上げられた後には消費の後退が生じた(両者の因果関係については議論がある)。当時の首相である橋本龍太郎は2001年の自民党総裁選において、消費税率引き上げは失敗であったとコメントしている。2006年の時点でも、消費税増税は景気回復に悪影響を及ぼすという意見があった[9]。
全国宅地建物取引業協会連合会が行った「06年度 不動産の日アンケート」では、消費税率の引き上げが行われた場合に住宅購入に何らかの影響があるという回答は76%であった[10]。
また、導入時と税率引き上げ時一部の業者が便乗値上げを行なったこともあるため、同様の問題が起こるのではという懸念がある。
下請業者等は価格転嫁が進まなかったり、脱税である収益隠しが行われた場合に税収被害額が増えるという問題がある。
[編集] 益税問題
「売り上げが1000万円以下の事業者は消費税を納めなくていいのに、消費税を消費者から取っているのはずるい」というような言説がよく見られる。しかし、商品の仕入れ時に消費税がかかっており、仕入れ時の消費税額は、納税業者の場合は納める消費税額から差し引いている。非納税事業者の場合は自身で消費税を納める必要は無いものの、仕入れ時に消費税を支払っているため、消費者から消費税を受け取る必要があるのである。 例えば、本体8000円+消費税400円で仕入れて、本体10000円+消費税500円で売った場合、納税事業者が納める消費税額は500円-400円の100円である。一方、非納税事業者の場合、受け取った500円の消費税は納税しなくてもいいが、仕入れ時に400円の消費税を支払っているため、懐に入るのはまるまる500円ではなく、差額の100円が入ることになる。
ここで「400円だけ消費者から徴収すればよい」と言う者もいるが、
- 400円という徴収金額から顧客に仕入額を否応なく知らせなければならなくなる(通常は仕入額というのは商売上の秘密である事が多い)
- 遡って顧客に返金するにしても膨大な事務処理が必要となる(益税問題は、消費税納税事務の繁雑さを小規模事業者に課する事を避けるための免税措置により生じている為、本末転倒となる)
等から非現実的である。
補足だが宅建業者(不動産業者)の報酬については国土交通省令により限度額が定められているが、その規定によると課税事業者が受け取れる消費税相当額は5%だが、免税事業者が受け取れる消費税相当額は2.5%となっている。これは簡易課税制度で宅建業は5種(50%)とされているのと同様の理由に基づいて決定されている。このように報酬規定が法定の場合に、実情を勘案したものも存在する。
益税そのものには大きな問題があるため時折社会的関心は集めたものの、現実的な解決案が無いために免税業者でも売価に対する消費税相当額を徴収せざるを得ない状況が続いている。
なお、これとは逆に、保険診療にかかる患者負担金は非課税であるが医療機関の薬剤・診療材料購入には課税されることによる「損税問題」が存在する[11]。
[編集] 輸出免税と輸出戻し税
「輸出額が多い企業は消費税を払わず、むしろ消費税の還付を通じて利益を得ている」というような言説がよくみられるが、これは消費税の負担者を最終消費者ではなく販売者であるという錯覚を利用した主張(政治的デマ)、もしくはそのような誤解からくる主張である。国内販売分の商品分では
- 販売先から受け取った消費税-(仕入れ元に支払った消費税+販売者自身が納める付加価値分の消費税)=0
海外輸出分の商品分では、販売先から消費税を受け取れないため消費税の還付制度があり
- 仕入れ元に支払った消費税-消費税の還付分=0
となる。ここで注意をしなければならないのは、国内販売分は付加価値分の消費税を納める販売者が消費税を負担しているわけではなく、最終消費者が負担した消費税が販売者を経由して納税されるという所である。輸出については消費税を負担するべき(国内の)最終消費者がいないため、還付制度がある。これにより国内販売・輸出における販売者の税負担は中立的となる。当然ではあるが、輸出先に消費税に相当する税が有る場合、現地にて課税され、現地にて納税される事になる。
また、輸出割合によっては、販売者自身が納める付加価値分の消費税額より還付される金額が大きくなり、差し引きでは販売者に金銭が支払われる(つまり、相殺により納めるべき消費税は納めている事になる)。還付により消費税を払わず、むしろ利益を得ているという誤解の大きな原因はこれによるものと思われる。
[編集] 道義的問題がある輸出行為に対する輸出免税の問題
廃棄物の輸出問題に絡めて議論されることもある。道義的かつ国際的な問題ではあるが、貴金属等が混じったゴミを輸出することで、多量の廃棄物を国外で安価に処分できて、処分先では適切な処分がされていないという社会問題が存在する(廃PC・プリント基盤・廃容器・廃バッテリー・廃タイヤの実質廃棄目的での輸出など)。現行制度上はこれらも輸出免税であり、廃棄物輸出業者であれば輸出戻し税を受ける事も多々ある。輸出戻し税上の問題は上記の説明で足りるのだが、そもそも廃棄行為が法定の輸出行為なのか、法定の輸出免税に該当するかどうか、道義的にどうなのかという問題が残る。
[編集] 大企業の陰謀とされた議論
「消費税率が上がった際に、仕入れ元に消費税増税分を転嫁させない事により利益を得るために大企業は消費税増税を求めている」という主張も多く見かけられるが、この主張にはいくつか注意を要する点がある。
まず「増税分を転嫁させない」という言い方は、仕入れる企業が消費税を負担しないということではなく、「従来より値下げした仕入れ金額に、増税された分の消費税を課され、その結果仕入れ企業の支払金額に変化が無い。」という事である。この事からこの問題は「消費税の負担の問題」ではなく「仕入れ価格の値上げ・値下げの問題」である事が解る。消費税の増税が無くとも、仕入れ価格の同等の値下げ率を達成したら利益率も同等に増える事になる。
消費税増税時における不当な値下げ圧力を含め、優越的な立場を悪用した不当な値下げ圧力による取引は独占禁止法上の問題であると同時に、取引価格の上下は多くの企業にとっての日常的な問題である。このように消費税増税と仕入れ価格の実質値下げは本来的には別個の問題であるのだが、この主張はそれに因果関係が成立しているとする物である。
つまり、この主張は「大企業が仕入れ価格を下げるために、消費税の増税を求めている」と等しく、そこにある因果関係が確かである・信じるに足りる内容であるかどうかの判断が、この主張を信じるかどうかのポイントである。
[編集] 政治的な動向
(近年のもの)
- 民主党は、2004年の第20回参議院議員通常選挙で「消費税を8%に上げる」と公約。その後、2007年の第21回参議院議員通常選挙では「消費税率の据え置き」に方針を変更した。理由は「小泉・安倍自民党政権下での国民負担の増加によるもの」と説明。
- 2006年(平成18年)9月、自民総裁選で、谷垣禎一元財務相は「2010年代には消費税を10%にする」「社会保障目的税化」と表明した。同選挙で当選した安倍晋三内閣官房長官(当時)は消費税議論に関しては明言を避けていた。
- 2007年(平成19年)、テレビ番組に出演した 安倍総理は「消費税を上げないと言ったことはない」「税制の抜本改革は近いうちに信を問うことになっている(=国民に審判を仰ぐ)」と税率を上げる可能性があることを示唆した。直後には、「出来るだけ上げないように努力する」と発言している。
- 同年10月、内閣府直属の経済財政諮問会議が「財政を黒字化した上で医療・介護給付の水準を維持するためには2025年度に約14兆〜31兆円分の増税が必要となり、消費税でまかなうなら11〜17%まで税率を引き上げる必要がある」と現行と比べて最大12パーセント消費税率を引き上げる可能性がある試算を公表した。
- 2008年(平成20年)10月30日、麻生太郎首相は消費税率について、「大胆な行政改革を行った後、経済状況を見た上で」と断った上で、「3年後に消費税の引き上げをお願いしたい」と述べた。具体的な上げ幅について言及はなかったが、上げ幅を5%とし、最終的に10%とする案を検討していることが報じられている。
[編集] 参考文献
- 内野順雄「消費税」(『社会科学大事典 10』(鹿島研究所出版会、1975年) ISBN 978-4-306-09161-0)
- 仙田左千夫「消費税」(『歴史学事典 1 交換と消費』(弘文堂、1994年) ISBN 978-4-335-21031-0)
- 「諸外国の付加価値税(2008 年版)」鎌倉治子 2008年10月 国立国会図書館調査及び立法考査局[2]
[編集] 外部リンク
[編集] 脚注
- ^ a b フランスの2009年1月時点の消費税率は、標準税率が19.6%。食料品、書籍、旅客輸送肥料等が5.5%。新聞、雑誌、医薬品等が2.1%。ゼロ税率はなし。出典:主要国の付加価値税の概要 - 財務省 閲覧日2009年6月12日。
- ^ a b ドイツの2009年1月時点の消費税率は、標準税率が19%。食料品、水道水、新聞、雑誌、書籍、旅客輸送等が7%。ゼロ税率はなし。出典:主要国の付加価値税の概要 - 財務省 閲覧日2009年6月12日。
- ^ デンマークにおいて食料品にかかる消費税率は、一般税率と同じ25%である(2004年1月現在)。出典:正井泰夫監修 『今がわかる時代がわかる世界地図 2005年度版』 成美堂出版、2004年12月、ISBN 978-4-415-10117-0、81頁。
- ^ a b イギリスの2009年1月時点の消費税率は、標準税率が15%(2008年12月1日から2009年12月31日までの時限措置。本来の標準税率は17.5%)。家庭用燃料及び電力等が5%。食料品、水道水、新聞、雑誌、書籍、国内旅客輸送、医薬品、居住用建物の建築、障害者用機器等がゼロ税率。出典:主要国の付加価値税の概要 - 財務省 閲覧日2009年6月12日。
- ^ a b スウェーデンの2009年1月時点の消費税率は、標準税率が25%。食料品、宿泊施設の利用等が12%。新聞、書籍、雑誌、スポーツ観戦、映画、旅客輸送等が6%。医薬品(医療機関による処方)等がゼロ税率。出典:主要国の付加価値税の概要 - 財務省 閲覧日2009年6月12日。
- ^ 2004年1月時点のデータ。出典:正井泰夫監修 『今がわかる時代がわかる世界地図 2005年度版』 成美堂出版、2004年12月、ISBN 978-4-415-10117-0、81頁。
- ^ ハンガリーにおいて食料品にかかる消費税率。2004年1月時点のデータ。出典:正井泰夫監修 『今がわかる時代がわかる世界地図 2005年度版』 成美堂出版、2004年12月、ISBN 978-4-415-10117-0、81頁。
- ^ 『希望の国、日本』 日本経済団体連合会、2007年1月1日、112頁。
- ^ 森永卓郎 「個人消費低迷のなかでの増税は景気の失速を招く」 日経BP社、2006年12月18日。
- ^ 『消費税引き上げは、約76%が「住宅購入に影響あり」全宅連調べ』 住宅新報、2007年1月17日。
- ^ 「医療機関における消費税損税問題とは? 第1回」 医療経営財務協会

