ビールテイスト飲料

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内, 検索
ホッピー(アルコール分0.8%)

ビールテイスト飲料(ビールテイストいんりょう)とはノンアルコール飲料の一種でビール風味の発泡性炭酸飲料のこと。

ノンアルコールビール・ビアテイスト飲料・ビール風味飲料・ノンアルコールビールテイスト飲料とも呼ばれる。

目次

[編集] 概要

明確な定義はないが[1]、香り・味わい・のど越しなどの要素をビールに似せたり[2]、その雰囲気を持たせたりした[1]、アルコール分は含まない[3][4]か特定の数値未満に調整した炭酸飲料を指す[1]。日本では酒税法の分類によってアルコール分が1%未満は酒類とならずビールテイスト飲料に該当する。ヨーロッパではかなり前から製造され愛用者も多く[1]、アルコール分0.5%未満がビールテイスト飲料(ノンアルコール飲料)に該当し、0.6 - 0.9%は酒類に分類されローアルコール飲料と呼称されている[5]

アルコール分を含有する商品では飲んだ量・体質・体調によっては酔った状態になる場合があり[6][注釈 1]自動車の運転においてその状態ではアルコール分の基準値が飲酒運転の数値に該当する可能性がある[7]。また、アルコール分含有商品の飲用において、を処方されている場合や、妊婦、病気で飲酒が禁じられている人など、アルコール分が悪影響を及ぼす可能性がある場合は医師に相談するなど注意する必要がある[8][9]

飲酒運転の罰則が強化されると需要が高まる傾向があり、日本では2002年道路交通法改正後の事例[10]や、日本国外では2006年にチェコの事例[11]がある。

製法としては

などが存在する。

[編集] 日本における状況

日本向けの商品は、アルコール分0.000%の商品からアルコール分1%未満を含む商品が存在する(後述)。

2002年道路交通法改正により、飲酒運転への罰則が強化されたことに伴って2000年代中盤までは小売店飲食店での売上が伸び、需要が高まっていた[10]。だが、アルコール分が含まれる商品も存在することで飲酒運転となる懸念もあり2000年代中盤から後半は売上は横ばいから低下傾向になっていた[14][15]。2009年にキリン「キリンフリー」が発売され、アルコール分0.00%の安心感から需要が急増したことで再び活性化した[13][16][17]

2000年代前半まではノンアルコールビールの呼称・表示が広まっていたが、実際にはアルコール分を1%未満で含有する商品も存在する事から、消費者にてアルコール分が全く含有されていない酒類の代替的飲料と誤認する可能性があるとして、2004年5月26日に公正取引委員会が関連企業・団体に向けて表示適正化の指導要望を出したことで、「ビールテイスト飲料」などの呼称・表現に変化していった[4][18]。容器の品質表示で品名は「炭酸飲料」(キリンフリーオールフリーなど)などと表示されている。マスコミなどでは2010年代においても「ノンアルコールビール」の表現が使われることがある[6][19]

ビール酒造組合によると、2010年12月現在において日本の大手4社ではアルコール分を含む商品は生産していない[19]

地ビールのビールテイスト飲料版(ノンアルコール地ビール)も存在する[12]

法律では清涼飲料水とされるため、販売にあたって酒類販売業免許も不要で、未成年者への販売、提供と未成年者の購入や飲用も法律上では特に問題はない。しかしメーカー側は「20歳以上が飲用することを想定して開発した」としている[19]。未成年者に対する販売において、アルコール成分を含有している商品は各社自粛していたが、アルコールを含まない商品では対応が分かれており、セブンイレブンファミリーマートなど大手チェーン店の中には未成年者への販売を自粛している場合や、ローソンサークルKサンクスのように未成年者にも販売している場合もある[19]。また、未成年者が購入しにくいように酒売り場に陳列する場合も多い。

アルコール分を含まないと謳った商品では、アルコール分の数値を0%と表示せず、0.00%のように小数点以下の数値も表示している[20]。理由として、酒税法に該当しないビールテイスト飲料はアルコール分の含有値の表示において四捨五入が使用可能であり、例として0.2%のアルコール分を含んだ商品でも四捨五入で0%と表示することが可能であるが、2000年代後半以降の消費者は食品の表示に敏感であることから、0.00と小数点以下まで正しく伝えることで消費者の安心感を得る目的がある[20]

日本国内向けの手作り麦芽飲料キット(いわゆる「ビールキット」)は酒税法に抵触しないようにアルコール分が1度以上にならない製造方法が取扱説明書に記載されており、これに沿って作成したアルコール分1%以下の麦芽飲料はビールテイスト飲料に該当する[21]

[編集] 沿革

日本でビールが高級品扱いだった大正末期に代用品としての「ノンアルコールビール」(ノンビア)が流行したことがあったが、技術や材料の不足で質の悪い物が多く流通していた[22]

米国禁酒法施行時代にはビールの代替品として「near beer」と呼称されるノンアルコールビールが生産され、製法はアルコール除去法と発酵抑制法が用いられた[23]。禁酒法廃止後もnear beerは清涼飲料としての需要があったため引き続き生産・販売が行われた[23]

秀水舎→コクカ飲料(現・ホッピービバレッジ)によって大正時代末期から昭和時代前半に開発されたホッピー戦後の1948年7月15日に発売[24]。当初の成り立ちから質にこだわったノンアルコールビールの立場であったが、発売開始した頃は戦後の物資不足の影響でビールの代用飲料として、ホッピーで焼酎を割って飲む方法が自然発生したことから、ホッピーは焼酎割り飲料として認知度が上がったため、ビールテイスト飲料とは別にアルコール飲料に類似した立場で扱われることが多い[22]

1970年代から1980年代にかけて、日本国外ではビールやワインなどアルコール飲料のアルコール分を減らしソフトドリンク化する動きが活発化した[1]。しばらく大きな動きがなかった日本国内でも1980年代になるとその影響を受けて開発が行われ[1]1986年2月に新感覚の大人向け飲料として宝酒造から「バービカン」が発売[25][26]。1987年9月に発売された書籍『飲めない族』には、1986年2月に発売された「バービカン」が大きく取り上げられ、他にも当時販売されていた日本国内外のノンアルコールビール計16種類が掲載された[26]。しかし、バービカンはビールほどのコクや深みが無いために不評を買い、長らく細々と売られていた。

2003年道路交通法が改正され、飲酒運転への罰則が強化されたことなどから需要が増し、サントリーの「ファインブリュー」を皮切りに日本の大手ビール会社や日本コカコーラも次々と市場に参入。キリンビールが発売した「モルトスカッシュ」がヒットするなど話題にもなった。過去には運転中の車上で飲むシーンを放映したCMが、上記の通りアルコール分を微量ながら含んでいる指摘を受け放送を取りやめた経緯があり、実際にも飲用の直後に道路交通法に基づくアルコール検査を受けるとトラブルになる恐れがあることから、運転中もしくは運転直前に飲用するのは避けるべきとの声があった。このような不安感から市場は停滞化し、2005年から2008年における日本のビールテイスト飲料市場は販売数量250万ケースの横ばいから低下傾向で推移した[14][15]

また、日本国外産の輸入品でアルコール0.0%表示のアインベッカーやホルステンが日本でも発売。原材料はビールでアルコール分を抜く製造法であり[27][28]、数値の表示は0.0%であるが四捨五入された表示(前述参照)であるため、実際にはわずかにアルコール分を含有しており、アインベッカーは極微量[29][注釈 2]、ホルステンは0.03%[28]のアルコール分が含まれている。

2009年4月8日に世界で初めてアルコール分0.00%を達成したキリン「キリンフリー」発売[30][31]。同年4月7日に海ほたるパーキングエリアでイベントを行ったことで認知度が上がり大きな反響を得て、注文が急増した[31][32]。これまで消費者が抱いていたアルコール分に対する抵抗・不安感が払拭されたことで、キリンフリーはドライバー妊婦の支持を得た[4][16]。アサヒビール、サントリー、サッポロビールもこれに追随してアルコール分0.00%のビールテイスト飲料の新商品を発売したことで市場は活性化し、キリンフリーは2009年で350万ケース強の販売数量を記録し[17]、同年のビールテイスト飲料市場規模は約500万ケースと拡大した[13][14]

2010年には健康成分のオルニチンを配合したキリン「キリン休む日のAlc.0.00%」やカロリーゼロのサントリー「オールフリー」やアサヒ「ダブルゼロ」のように機能性の付加価値を加えた商品が登場したり、市場占有率トップのキリンフリーは再度リニューアルで味をビールに近付ける改良を行い、さらにサッポロ「プレミアム アルコールフリー」のようにプレミアムビールテイストの商品も登場するなど、引き続き日本のビールテイスト飲料市場は活性化している[13][33]

[編集] 銘柄

50音順

  • アインベッカーアルコールフリー0.0%アインベッカードイツ
  • イスターク(アルパナッシュ、イラン) - アルコール分0.00%。フルーツフレーバーのテイストもある。
  • ウエストエンド・エクストラライト(サウスオーストラリアンブリューィングカンパニー、オーストラリア
  • オールフリーサントリー) - アルコール分0.00%、カロリーゼロ、糖質ゼロ。
  • キリンフリーキリンビール) - アルコール分0.00%。現在は麦芽100%麦汁を使用
  • キリン休む日のAlc.0.00%(キリンビール) - アルコール分0.00%
  • クラウスターラー(クラウスターラー、ドイツ)
  • ゲステル(アイシュバウム、ドイツ)
  • ダブルゼロ(アサヒビール) - アルコール分0.00%、カロリー0kcal(100mlあたり)
  • テキサスセレクト(サンアントニオビバレッジ、アメリカ
  • ドライゼロ(アサヒビール) - アルコール分0.00%
  • バービカン日本ビール)- 以前は宝酒造が販売していた。2009年12月15日にパッケージデザインと麦芽100%で日本初アルコール分0.000%を達成した中味にリニューアル[34]
  • バーリアル アルコールフリー(イオントップバリュ) - イオングループ専売、アルコール分0.00%。
  • バーリアル 3つのフリー(イオントップバリュ) - イオングループ専売、アルコール分0.00%、カロリーゼロ、糖質ゼロ。
  • バクラー(ハイネケンオランダ
  • ビットブルガードライブ(ビットブルガー、ドイツ)
  • ファインフリー(富永貿易神戸居留地》)
  • プレミアム アルコールフリー(サッポロビール) - アルコール分0.00%、麦芽100%麦汁、ドイツバイエルン産アロマホップも75%以上使用。
  • ブローリー(サウスオーストラリアブリューイングカンパニー、オーストラリア)
  • プロシュテル(カイザードーム、ドイツ)
  • ホッピーホッピービバレッジ) - アルコール分0.8%
  • ホップの香り(サンガリア) - アルコール分0.00%
  • ホルステンノンアルコール(ホルステン、ドイツ)- アルコール分0.03%で、缶に書かれた名称は「炭酸飲料」となっている。
  • レーベンブロイアルコールフリー(レーベンブロイ、ドイツ)

[編集] 日本で発売終了した銘柄

  • スカイモルト(コカ・コーラ
  • モルトスカッシュ(キリンビール) - キリンフリーに取って代わられた。
  • ポイントワン(アサヒビール) - ポイントゼロに取って代わられた。
  • ポイントゼロ(アサヒビール) - アルコール分0.00%。ダブルゼロに取って代わられた。
  • ファインブリュー(サントリー) - ファインゼロに取って代わられた。
  • ファインゼロ(サントリー) - アルコール分0.00%。オールフリーに取って代わられた。
  • スーパークリア(サッポロビール) - 2009年9月30日よりアルコール分0.00%にリニューアル。プレミアム アルコールフリーに取って代わられた。

[編集] 脚注

[ヘルプ]

[編集] 注釈

  1. ^ 2010年11月27日放送『所さんの目がテン!』(日本テレビ)第1060回「ノンアルコールビール」 の実験では、酒が苦手な被験者にアルコール分を含有(0.1%)するビールテイスト飲料を数本飲んでもらったところ、酔った時に無意識に黒目が揺れる現象「眼球振盪」が発生していた。
  2. ^ アルコール分は0.01%以下 (PDF)0.01%0.02% 程度であり、比較事例として天然果汁に自然と含まれているアルコール分0.05% 程度)より低い。

[編集] 出典

  1. ^ a b c d e f g h i 農林水産消費技術センター「新食品ウォッチング - ノンアルコール飲料」、『大きな目小さな目(広報誌)』第10号、独立行政法人 農林水産消費技術センター、1993年7月。
  2. ^ ビールテイスト飲料 - コトバンク
  3. ^ ノンアルコールビール - コトバンク
  4. ^ a b c アルコール0%飲料 - コトバンク
  5. ^ アルコール度数について(脱アルコール酒の楽しみ)
  6. ^ a b c 2010年11月27日放送『所さんの目がテン!』(日本テレビ)第1060回「ノンアルコールビール」
  7. ^ ノンアルコールビールはどれだけ飲めば酔うか - デイリーポータルZ 2006年11月21日
  8. ^ a b 食の生活110番Q&A:ノンアルコールの飲料 - 東京ガス
  9. ^ 飲みすぎると酔う!? ノンアルコールビールの注意点〔2〕 - All About 2010年6月13日
  10. ^ a b ファブレスでニーズに柔軟対応 - 京都経済新聞 2004年7月26日
  11. ^ 『飲酒運転規制の強化でノンアルコール・ビールの売れ行き急増=チェコ』 - 時事通信 2006年9月2日
  12. ^ a b c d e ノンアルコール醸造酒の製造方法 (PDF) - Brewer's Tips 連載第6回
  13. ^ a b c d e f g 激化するノンアルコールビール戦争、“第2世代”とは?:1 / 2 / 3 - 日経トレンディネット 2010年12月2日
  14. ^ a b c アルコールなしがいま人気? ビールテイスト飲料バカ売れ - J-CAST 2010年8月16日
  15. ^ a b 0%ノンアルコールビール戦争! 大手4社の製品を飲み比べ〔1〕 - 日経トレンディネット 2009年9月5日
  16. ^ a b ノンアルコールビールが異例の売れ行き - サーチナ 2009年8月20日
  17. ^ a b 発売8ヶ月!大ヒットの「キリンフリー0.00%」を開発者の梶原さんに聞く - サーチナ 2010年1月2日
  18. ^ 平成15年度における景品表示法の運用状況及び消費者取引の適正化への取組 (PDF) - 公正取引委員会 2004年5月26日
  19. ^ a b c d 合田月美 (2010年12月4日). “ノンアルコールビール:未成年に売っていいの?店主ら困惑”. 毎日新聞 (毎日jp). http://mainichi.jp/select/wadai/news/20101205k0000m040062000c.html 2010年12月5日閲覧。 
  20. ^ a b 「海ほたる」で酒造メーカーがイベント アルコール0.00%の確かさが認知される〔1〕 - 日経BPネット 2009年6月15日
  21. ^ 【自家醸造】Q3「手造り麦芽飲料用」の缶入り、いわゆる「ビールキット」を購入して、自宅で自家製ビールを造ることに問題はありますか。 - 国税庁
  22. ^ a b 港区探訪:はじめて物語(4)ホッピー - Kissポート財団公式サイト、ホッピー物語 - ホッピービバレッジ公式サイト
  23. ^ a b 春山行夫 『ビール文化史(下)』 東京書房、1972年。
  24. ^ ホッピー物語 - ホッピービバレッジ
  25. ^ バービカン<リアルテイスト> 新発売 - 宝酒造 ニュースリリース 2004年2月3日
  26. ^ a b よしだけん 『飲めない族』 日本テレビ放送網、1987年。ISBN 978-4820387480
  27. ^ アインベッカー商品情報 - アインベッカー
  28. ^ a b 明治屋商事 株式会社 ホルステン ノンアルコール ビール - goo 評判検索
  29. ^ アインベッカーの安心度 - アインベッカー
  30. ^ 「キリン フリー」を新発売 - 麒麟麦酒 2009年1月9日
  31. ^ a b 「海ほたる」で酒造メーカーがイベント アルコール0.00%の確かさが認知される〔4〕 - 日経BPネット 2009年6月15日
  32. ^ 事例研究 第4回「キリン フリー」大ヒットを支えたマーケティング戦略 - コンテンツPlus+ 2010年8月9日
  33. ^ 『アサヒ ダブルゼロカクテル』新発売 - アサヒビール 2010年7月15日
  34. ^ 日本ビール、アルコール分0.000%のノンアルコールビール「バービカン」を発売 - 日経デザイン 2009年12月14日
    激戦区!アルコール0%ビール市場に麦芽100%の『バービカン』が登場 - ガジェット通信 2009年12月14日
    日本ビール、麦芽100%のアルコール分0.000%ノンアルコールビール「バービカン」を発売 - ライブドアニュース 2009年12月17日

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

個人用ツール
名前空間
変種
操作
案内
ヘルプ
ツールボックス
他の言語