トライバル級駆逐艦 (2代)

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トライバル級駆逐艦
アフリディ(HMS Afridi)
艦級概観
艦種 駆逐艦
艦名 種族名
前級 I級駆逐艦
次級 J級駆逐艦
性能諸元
排水量 基準:1,850 t、満載:2,520 t
全長 377 ft (114.9m)
全幅 36 ft 6 in(11.25m)
吃水 9 ft(2.74m)
機関 海軍式重油専焼三胴缶4基+パーソンズギヤード・タービン2基2軸推進
最大出力 44,000hp
最大速力 36 ノット
航続距離 15ノット/5,700海里(重油:524トン)
乗員 190~211名

トライバル級駆逐艦(トライバルきゅうくちくかん、Tribal class destroyer)は、イギリス海軍が用いた駆逐艦の艦級。艦名に世界各国の種族(tribe)の名を用いていることから、この名がある。

概要[編集]

元になったグロム級「ブリスカヴィカ」

元来、イギリス海軍の駆逐艦は基準排水量1,300トンクラスの船体に火砲は4.7インチ(120mm)砲を4門という必要最小限の門数を装備する代わりに、4連装魚雷発射管2基装備するなど雷装を重視していた。しかし、本級は船体を大型化したにも関わらず魚雷発射管を4連装1基に削減し、主砲の門数を4門から倍の8門へと強化した、イギリス海軍では特徴的な設計を持つ。これは、フランスを初めとする欧州の列強駆逐艦が軒並み大型化し強力な火力を持つ事で、従来のイギリス駆逐艦は旧態化しつつあったためである。そこで、ポーランド海軍向けに建造した大型駆逐艦「グロム級」をタイプシップにとり、第一次世界大戦後初の自国向けの大型駆逐艦を整備することとしたのである。

英海軍は1934年、砲力の強い駆逐艦の設計に着手した。これが本級で、1935年度計画で7隻、36年度計画で9隻が建造された。計画排水量はロンドン海軍軍縮条約での規定上限の1,850トンとし、主砲は対空射撃可能な4.7インチ Mk.XII 連装砲5基を考慮したが、最終的に4基とした。これに新開発のMk.VII 4連装ポンポン砲12.7ミリ機銃の組み合わせで対空火力を構成したが、その後早期喪失艦を除き3番砲を4インチ(10.2センチ) Mk.XVI 連装高角砲に換装している。

本級は1936年に建造が開始され、1938年3月15日に一番艦アフリディが就役した。1939年12月12日までに、全16隻が竣工した。その後、カナダ海軍向けに8隻、オーストラリア海軍向けに3隻が建造された。オーストラリア海軍やカナダ海軍のものは第二次世界大戦中に建造が開始されているので、艦歴を全うしたものが多いが、イギリス海軍のものは酷使されたため、4隻を除き大戦中に失われている。

対水上火力の優秀な大型駆逐艦だったが、高価に過ぎるという批判も強かった。

活動[編集]

1940年[編集]

1940年2月6日、コサックは中立国であったノルウェーの領海内までドイツ船アルトマルク号を追跡し、乗り込んだうえ乗員を殺害した。これをアルトマルク号事件という。4月9日、グルカがノルウェーのスタヴァンゲル沖でドイツ軍機によって撃沈され、5月3日にもアフリディがナムソスからの撤退作戦中にドイツ軍の急降下爆撃機によって沈められた。5月13日ベドウィン、パンジャビ、エスキモー、コサックは第2次ナルヴィク海戦に参加し、エスキモーが大破した。

1941年[編集]

5月、ソマリはドイツの気象通報船ミュンヘン(München)を捕獲し、暗号書を手に入れた。同月、ズールー、シーク、コサック、マオリはドイツ戦艦ビスマルク追撃戦に参加し、この作戦中にマシオナがドイツ軍機によって撃沈された。地中海では、4月にモホークがイタリア海軍の駆逐艦ルカ・タリゴに沈められた。10月、コサックがHG74船団護衛中にジブラルタル西方の大西洋でドイツ潜水艦U-563に雷撃され、曳航中に沈没した。12月、マオリ、シークは他の駆逐艦2隻と共にボン岬沖海戦でイタリア海軍の軽巡洋艦アルベルト・ディ・ジュッサーノアルベリコ・ダ・バルビアーノを沈めた。

1942年[編集]

1月17日、マタベレがバレンツ海で独潜U-454に撃沈され、2月12日にはマオリがマルタで爆撃により喪失。5月にはパンジャビが濃霧の中で戦艦キング・ジョージ5世に衝突され沈んだ。6月、ハープーン作戦に参加中のベドウィンがイタリア海軍との交戦で損傷、その後空襲で沈没した。9月、シークとズールーがトブルク攻撃時に沈没。同月、QP14船団を護衛中のソマリがドイツ潜水艦U-703に雷撃され大破、ターターに曳航されたが4日後に沈没。これがイギリス海軍のトライバル級の最後の喪失艦である。

1943年[編集]

残存していたアシャンティ、エスキモー、ヌビアン、ターターの4隻は地中海に戻り、サレルノ上陸作戦(アヴァランチ作戦)を支援した。

1944年[編集]

エスキモー、ヌビアン、ターターはオーバーロード作戦前後の期間イギリス海峡で活動した。4月、アサバスカンがイギリス海峡で戦没。ヨーロッパ方面での海上戦終結後、エスキモー、ヌビアン、ターターはマレー半島沖で活動した。

戦後[編集]

記念館として保存されている「ハイダ」
兵装や電子装備は、DDE改装適用後のものである。

イギリス海軍の残存艦は戦後6年間使われた後スクラップとなった。オーストラリア海軍とカナダ海軍の船はミクマックを除き朝鮮戦争に参加した。

カナダ海軍では、1949年から1950年代前半にかけて残存する7隻全てがDDE改修を受けた。1番・2番砲塔はQF 4インチ Mk.XVI 連装砲、3番砲塔はアメリカ製Mk.33 3インチ連装砲にそれぞれ換装され、4番砲塔を撤去して空いたスペースにはスキッド対潜迫撃砲が2基搭載された。レーダーとソナーの換装も行われ、1960年代前半まで運用が続けられた[1]。退役後も「ハイダ」がオンタリオ州ハミルトンにて記念館として保存されている。

オーストラリア海軍においても、1950年代初めごろに「アランタ」と「ワラムンガ」の2隻が対潜駆逐艦として改修された。4番砲塔の4.7インチ連装砲を撤去して空いたスペースにスキッド対潜迫撃砲を1基搭載したほか、ソナーとレーダーの換装に伴い、マストを従来の三脚型マストから新型のラティスマストに換装した。この2隻は、1960年代まで運用が続けられた[2][3]。残る1隻の「バターン」の近代化改修は見送られ、他の2隻よりも早い1958年に退役した[4]


装備[編集]

兵装・電子装備の変遷例
初期建造時 戦時改装後 カナダ、新規建造時
※「カユーガ」「アサバスカン」のみ
カナダ、DDE改装後 オーストラリア、対潜改装後
※「アランタ」「ワラムンガ」のみ
兵装 4.7インチ QF Mk.XII 連装砲×4基 4.7インチ QF Mk.XII 連装砲×3基 3インチ Mk.33 連装砲×1基 4.7インチ QF Mk.XII 連装砲×2基
QF 4インチ Mk.XVI 連装砲×1基 QF 4インチ Mk.XVI 連装砲×4基 QF 4インチ Mk.XVI 連装砲×2基 QF 4インチ Mk.XVI 連装砲×1基
QF 2ポンド砲 Mk.VII 4連装砲架×1基 ボフォース 40mm機関砲
Mk.V 2連装砲架×1基
ボフォース 40mm機関砲
単装砲架×4基
ボフォース 40mm機関砲
Mk.V 2連装砲架×1基
.50"/62ヴィッカース機関銃
Mk.III 4連装銃架×2基
エリコンFF 20 mm 機関砲
単装銃架×4基
エリコンFF 20 mm 機関砲
単装銃架×6基
ボフォース 40mm機関砲
単装砲架×6基
533mm4連装魚雷発射管×1基
Mk.IV 爆雷投射機×2基 スキッド対潜迫撃砲×2基 スキッド対潜迫撃砲×1基
爆雷投下軌条×1基
FCS ? Mk.III レーダー測距儀×1基 Mk.6 砲射撃指揮装置×1基
※「カユーガ」「アサバスカン」のみ搭載
Mk.III レーダー測距儀×1基
Mk.63 砲射撃指揮装置×2基
※「カユーガ」「アサバスカン」では1基
レーダー ? 291型 対空捜索用 AN/SPS-6C 対空捜索用 ?
271型 対空・対水上捜索用 293型 低空警戒・対水上捜索用
※1950年代後半に撤去
SG-1 / SG-4 低空警戒・対水上捜索
268型 標的識別・航法用 Sperry Mk.2 航法用 ?
285型 砲射撃指揮×1基 275型 砲射撃指揮×1基
※「カユーガ」「アサバスカン」のみ搭載
285P型 砲射撃指揮×1基
SPG-34 砲射撃指揮×2基
※「カユーガ」「アサバスカン」では1基
253P型 IFFトランスポンダ
ソナー ? 144型/144Q型 ?
147F型
164B型
SQS-501(162型)
SQS-10
電子戦 HF/DF ?

同型艦[編集]

イギリス海軍[編集]

艦名 記号 建造所 起工 進水 就役 その後
アフリディ
(HMS Afridi)
F07 Vickers Armstrong, Newcastle upon Tyne 1936年6月9日 1937年6月8日 1938年5月3日 喪失 1940年5月3日ノルウェーナムソス沖で独軍機の爆撃により沈没。
アシャンティ
(HMS Ashanti)
F51 William Denny & Bros, Dumbarton 1936年11月23日 1937年11月5日 1938年12月21日 スクラップとして売却 1949年4月12日
ベドウィン
(HMS Bedouin)
F67 William Denny & Bros, Dumbarton 1937年1月? 1937年12月21日 1939年3月15日 喪失 1942年6月15日地中海パンテレリア島沖で伊軽巡洋艦ライモンド・モンテクッコリエウジェニオ・サヴォイアと交戦、損傷。その後伊軍機の攻撃で沈没。
コサック
(HMS Cossack)
F03 Vickers Armstrong, Newcastle upon Tyne 1936年6月9日 1937年6月8日 1938年6月7日 喪失 1941年10月24日ジブラルタル西方で独潜U-563の雷撃により沈没。
エスキモー
(HMS Eskimo)
F75 Vickers Armstrong, Newcastle upon Tyne 1936年8月5日 1937年9月3日 1938年12月30日 スクラップとして売却 1949年6月27日
グルカ
(HMS Gurkha)
F20 Fairfield Shipbuilding, Govan 1936年7月6日 1937年7月7日 1938年10月21日 喪失 1940年4月9日ノルウェーのスタヴァンゲル沖で独軍機の攻撃により沈没。
マオリ
(HMS Maori)
F24 Fairfield Shipbuilding, Govan 1936年7月6日 1937年9月2日 1939年1月2日 喪失 1942年2月12日マルタグランド・ハーバーで空爆により全損。
マシオナ
(HMS Mashona)
F59 Vickers Armstrong, Newcastle upon Tyne 1936年8月5日 1937年9月3日 1939年3月28日 喪失 1941年5月28日独戦艦ビスマルク追撃戦中にアイルランド南西で独軍機の攻撃により沈没。
マタベレ
(HMS Matabele)
F26 Scotts Shipbuilding, Greenock 1936年10月1日 1937年10月6日 1939年1月25日 喪失 1942年1月17日バレンツ海で独潜U-454の雷撃により沈没。
モホーク
(HMS Mohawk)
F31 J I Thornycroft, Woolston 1936年7月16日 1937年10月15日 1938年9月7日 喪失 1941年4月16日伊駆逐艦ルカ・タリゴの雷撃で沈没。
ヌビアン
(HMS Nubian)
F36 J I Thornycroft, Woolston 1936年8月10日 1937年12月21日 1938年12月6日 スクラップとして売却 1949年6月11日
パンジャビ
(HMS Punjabi)
F21 Scotts Shipbuilding, Greenock 1936年10月1日 1937年12月18日 1939年3月29日 喪失 1942年5月1日大西洋で戦艦キング・ジョージ5世に衝突され沈没。
シーク
(HMS Sikh)
F82 Alex Stephens, Govan 1936年9月24日 1937年12月17日 1938年10月12日 喪失 1942年9月14日トブルク沖で陸上からの砲撃により沈没。
ソマリ
(HMS Somali)
F33 Swan Hunter, Wallsend 1936年8月26日 1937年8月24日 1939年12月12日 喪失 1942年9月20日大西洋で独潜U-703の雷撃により損傷、24日曳航中に沈没。
ターター
(HMS Tartar)
F43 Swan Hunter, Wallsend 1936年8月26日 1937年10月21日 1939年3月10日 スクラップとして売却 1948年1月6日
ズールー
(HMS Zulu)
F82 Alex Stephens, Govan 1936年8月10日 1037年9月23日 1038年9月7日 喪失 1942年9月14日トブルク沖で爆撃により沈没。

カナダ海軍[編集]

艦名 記号 建造所 起工 進水 就役 その後
イロコイ
(HMCS Iroquois)
(旧アサバスカン HMCS Athabaskan)
G89
DDE-217
Vickers Armstrong, Newcastle upon Tyne 1940年9月19日 1941年9月23日 1942年12月10日 スクラップとして売却 1966年
アサバスカン
(HMCS Athabaskan)
(旧イロコイ HMCS Iroquois)
G07 Vickers Armstrong, Newcastle upon Tyne 1940年10月31日 1941年11月18日 1943年2月15日 喪失 1944年4月29日Ile de Bas北方で独水雷艇T24の雷撃により沈没。
ヒューロン
(HMCS Huron)
G24
DDE-216
Vickers Armstrong, Newcastle upon Tyne 1941年7月15日 1942年6月25日 1943年7月28日 スクラップとして売却 1965年
ハイダ
(HMCS Haida)
G63
DDE-215
Vickers Armstrong, Newcastle upon Tyne 1941年9月29日 1942年8月25日 1943年9月18日 カナダ・オンタリオ州ハミルトンにて保存。記念艦 1964年 
ミクマック
(HMCS Micmac)
R10
DDE-214
Halifax Shipyards, Nova Scotia 1942年5月20日 1943年9月18日 1945年9月14日 スクラップとして売却 1964年
ヌートカ
(HMCS Nootka)
R96
DDE-213
Halifax Shipyards, Nova Scotia 1942年5月20日 1944年4月26日 1946年8月9日 スクラップとして売却 1964年
カユーガ
(HMCS Cayuga)
R04
DDE-218
Halifax Shipyards, Nova Scotia 1943年10月7日 1945年7月28日 1947年10月20日 スクラップとして売却 1964年
アサバスカン
(HMCS Athabaskan)
R79
DDE-219
Halifax Shipyards, Nova Scotia 1944年5月15日 1945年5月4日 1947年1月12日 スクラップとして売却 1969年

オーストラリア海軍[編集]

艦名 記号 建造所 起工 進水 就役 その後
アランタ
(HMAS Arunta)
I30 Cockatoo Dockyard, Sydney 1939年11月15日 1940年11月30日 1942年4月30日 スクラップとして売却後、1969年解体地へ曳航中に浸水沈没。
ワラムンガ
(HMAS Warramunga)
I44 Cockatoo Dockyard, Sydney 1940年2月10日 1942年2月2日 1942年11月23日 スクラップとして売却 1963年
バターン
(HMAS Bataan)
(旧カーネイ HMAS Kurnai)
I91 Cockatoo Dockyard, Sydney 1940年11月30日 1944年1月15日 1945年5月25日 スクラップとして売却 1958年

参考文献[編集]

  • Destroyers of the Royal Navy, 1893-1981, Maurice Cocker, Ian Allan, ISBN 0711010757
  • Royal Navy Destroyers since 1945, Leo Marriot, Ian Allan, ISBN 0711018170
  • British and Empire Warships of the Second World War, H T Lenton, Greenhill Books, ISBN 1853672777
  • Conway's All the World's Fighting Ships, 1922-1946, Ed. Robert Gardiner, Naval Institute Press, ISBN 0870219138
  • Destroyers of World War II, An International Encyclopedia, M. J. Whiteley, Arms and Armour Press, 1988, ISBN 1854095218
  • HMCS Haida: Battle Ensign Flying, Barry M Gough, Vanwell, 2001, ISBN 1551250586
  • Tribal Class Destroyers, Peter Hodges, Almark, 1971, ISBN 0855240474
  • The Tribals, Martin H Brice, Ian Allan, 1971, ISBN 0711002452
  • Unlucky Lady: The Life and Death of HHCS Athabaskan 1940-44, Len Burrow & Emile Beudoin, Canada's Wings, 1983, ISBN 0920002137

外部サイト[編集]

  1. ^ Canadian Navy of Yestaday and Today - TRIBAL Class
  2. ^ オーストラリア海軍公式サイト HMAS Arunta (I)
  3. ^ オーストラリア海軍公式サイト HMAS Warramunga (I)
  4. ^ オーストラリア海軍公式サイト HMAS Bataan

関連項目[編集]