L級駆逐艦 (初代)

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L級駆逐艦
基本情報
種別 駆逐艦
運用者  イギリス海軍
就役期間 1913年 - 1923年
前級 K級 (アカスタ級)
準同型艦 アドミラルティ型
アドミラルティ後期型
ホワイト特型
ヤーロウ特型
パーソンズ特型
次級 アドミラルティM級
要目 (アドミラルティ型)
常備排水量 965~1,003トン
全長 81.9 m
最大幅 8.4 m
吃水 3.2 m
ボイラー 水管ボイラー×4缶
主機 蒸気タービン×2基
推進器 スクリュープロペラ×2軸
出力 24,500馬力
速力 29.0ノット
航続距離 1,950~2,200海里 (15kt巡航時)
燃料 重油268トン
乗員 73名
兵装40口径10.2cm砲×3門
7.7mm機銃×1挺
・53.3cm連装魚雷発射管×2基
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L級駆逐艦英語: L-class destroyer)は、イギリス海軍駆逐艦の艦級[1]。「ラフォーレイ」をネームシップとしてラフォーレイ級: Laforey-class)と称されることもある[2]

来歴[編集]

社会保障の財源確保のため海軍増強計画の見直しを進めるアスキス内閣のもと[3]イギリス海軍の駆逐艦は、1908-9年度計画のビーグル級(後のG級)、1909-10年度計画のエイコーン級(後のH級)、1910-11年度計画のアケロン級(後のI級)と、艦型を小さくまとめてコスト低減を重視してきていた[1][2]

しかし1910年1月の庶民院総選挙英語版の結果や仮想敵であるドイツ帝国海軍大型水雷艇の性能向上を受けて、1911-2年度計画のアカスタ級(後のK級)では、再度大型化・高性能化が志向された。1912-3年度計画でもこの路線は踏襲されており、これによって建造されたのが本級である[1]

なお、アケロン級(I級)以降、イギリスの民間造船所の高い技術力に期待して、海軍本部の設計による基本型(アドミラルティ型)とは別に、設計・建造にあたって各造船所に大幅な自由裁量を許した特型(Specials)が建造されており、このアプローチは本級でも踏襲された。本級では、アドミラルティ型12隻のほか、3タイプ8隻が建造された。1913-4年度計画以降の建造はM級駆逐艦に移行しているが、第一次世界大戦の勃発を受けた戦時緊急措置として、1914-5年度計画で本級2隻が追加建造された[1]

設計[編集]

船型はリバー級(E級)以来の船首楼型が踏襲されており、基本的な要目はアカスタ級(K級)と同様であるが、同級が高速性を重視して細長い船型にしたのに対して、本級では全長を若干短縮するかわりに幅と吃水が増している。また船首楼の高さを増してフレアを大きく取ることで、凌波性の向上を図ったほか、減揺装置として、初めてフリューム式減揺タンクが装備された[1]

機関構成・出力はアカスタ級(K級)と同様で、ボイラーはヤーロウ式の重油専焼水管ボイラー4缶、主機はパーソンズ式直結蒸気タービンによる2軸推進を基本とする。ボイラーについては、ヤーロウ特型では同型ボイラーの3缶構成、ホワイト特型はホワイト・フォスター式水管ボイラーの3缶構成が、また主機についてはフェアフィールド社製の艦とヤーロウ特型ではブラウン・カーチス式直結タービンが採用されている[1]

またパーソンズ特型では、初めてオール・ギヤード・タービンが採用された。これは、高圧、低圧タービンの両方を減速機を介して推進軸に結合するものであり、従来の直結タービン艦と比して、重量・価格は同等でありながら、推進器効率が約10パーセント向上、燃費は全力時で9パーセント、低速時には26パーセント向上という良好な成績を収めた[4]

装備[編集]

艦砲として、40口径10.2cm砲を3門搭載している点ではアカスタ級(K級)と同様だが、本級では尾栓を鎖栓式として発射速度を向上させたQF 4インチ砲Mk.IVに更新された。また凌波性向上のため、2番砲は1~2番煙突(3本煙突艦では2~3番煙突)の間のプラットフォーム上に架して装備されている[1]

本級では、飛行船対策を主眼として対空兵器も搭載された。当初は.303口径(7.7mm)マキシム機関銃が搭載されていたが[2]、後に43口径37mm機銃(QF 1.5ポンド・ポンポン砲)、ついで39口径40mm機銃(QF 2ポンド・ポンポン砲Mk.II)へと更新された[5]

また水雷兵装も強化されており、従来の駆逐艦が53.3cm単装魚雷発射管2基を備えていたのに対し、本級では連装2基と倍増した[1]

同型艦一覧[編集]

当初はウィリアム・シェイクスピアウォルター・スコットの小説に因んだ艦名が予定されていたが、建造途上の1913年9月30日、全ての駆逐艦にアルファベットの艦級名を付与することになり、本級はL級となったことから、全艦がLではじまる艦名に改名した。また「フロリゼル」から改名した「ラフォーレイ」をネームシップとして、ラフォーレイ級と称されることもある[2]

設計 艦名 造船所 進水 解体/売却
アドミラルティ型 ルーエリン
HMS Llewellyn
ベアドモア 1913年10月30日 1922年3月
レノックス
HMS Lennox
1914年3月17日 1921年10月
ロイアル
HMS Loyal
デニー 1913年1月11日 1921年11月
リジョン
HMS Legion
1914年2月3日 1921年5月
ラフォーレイ
HMS Raforey
フェアフィールド 1913年3月28日 1917年3月23日 戦没
ローフォード
HMS Lawford
1913年10月30日 1922年8月
ルイス
HMS Louis
1913年12月30日 1915年10月30日 難破沈没
リダード
HMS Lydiard
1914年2月26日 1921年11月
レアルテズ
HMS Laertes
スワン・ハンター 1913年6月5日 1921年12月
ライサンダー
HMS Lysander
1918年8月18日 1922年6月
ランス
HMS Lance
ソーニクロフト 1914年2月25日 1921年11月
ルックアウト
HMS Lookout
1914年4月27日 1922年8月
アドミラルティ
後期型
ロッキンバー
HMS Lochinvar
ベアドモア 1915年10月9日 1921年11月
ラソー
HMS Lassoo
1915年8月24日 1916年8月13日 戦没
ホワイト特型 ローレル
HMS Laurel
ホワイト 1913年5月6日 1921年11月
リバティ
HMS Liberty
1913年9月15日
ヤーロウ特型 ラーク
HMS Lark
ヤーロウ 1913年5月26日 1923年1月
ランドレイル
HMS Landrail
1914年2月7日 1921年12月
ラブロック
HMS Laverock
1913年11月19日 1921年5月
リニット
HMS Linnet
1913年8月16日 1921年11月
パーソンズ特型 リオニダス
HMS Leonidas
パルマーズ 1913年10月13日 1921年5月
ルシファー
HMS Lucifer
1913年12月29日 1921年12月

参考文献[編集]

  1. ^ a b c d e f g h 「イギリス駆逐艦史」『世界の艦船』第477号、海人社、1994年2月、30頁、ISBN 978-4905551478 
  2. ^ a b c d Randal Gray (1984). Robert Gardiner. ed. Conway's All the World's Fighting Ships 1906-1921. Naval Institute Press. pp. 18, 75. ISBN 978-0870219078 
  3. ^ 坂井秀夫『政治指導の歴史的研究:近代イギリスを中心として』創文社、1967年、393-434頁。 NCID BN0195115X 
  4. ^ 阿部安雄「機関 (技術面から見たイギリス駆逐艦の発達)」『世界の艦船』第477号、海人社、1994年2月、164-171頁、ISBN 978-4905551478 
  5. ^ 高須廣一「兵装 (技術面から見たイギリス駆逐艦の発達)」『世界の艦船』第477号、海人社、1994年2月、172-179頁、ISBN 978-4905551478