タイムカプセル
タイムカプセル(英: time capsule)とは、カプセル状の容器にその時代のものを入れて地中に埋め、ある年月後に開けるものである。
日本で知られるものとしては、1970年の日本万国博覧会の年に、松下電器(現・パナソニック)と毎日新聞により企画、製作され大阪城公園に埋められたタイムカプセルがあるが(6970年開封予定)、学校においての卒業記念や、会社の創業○周年記念、建物竣工記念などでつくられることがある[1]。
「タイムカプセル」という用語の登場は、後述のようにニューヨーク万国博覧会とされるが、貴重品を後世のために隠しておくというアイデアは遠く、メソポタミア文明にまで遡り、メソポタミアの都市遺跡の城壁の中に隠されていた小部屋の中から5,000年前の箱が発見されているなど[2]、神殿や城塞の建設時に記念物を埋めることが行われてきた。現存する人類最古の文学であるギルガメシュ叙事詩の冒頭は、ウルクの城壁の礎石の中にある銅の箱の見つけ方から始まる。この箱にラピスラズリの銘板に書かれたギルガメシュの物語が保管されており、ここから彼の物語が語られる。
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[編集] さまざまなタイムカプセル
現在のタイムカプセルという言葉の直接の起源は1937年になる。1939年ニューヨーク博覧会の準備中、文明が崩壊しているかもしれない5,000年後(=西暦6939年)のための「時限爆弾(タイムボム)」を埋めることが提案された。このアイデアは採用され、より穏当な「タイムカプセル」という言葉が使われるようになった。
この「タイムカプセル」という語を考えたのは、同博覧会の広報担当であった広報専門家でSF作家のジョージ・エドワード・ペンドレー(George Edward Pendray)だったとされる[3][4]。
1939年、博覧会においてウェスティングハウス社の展示の一部として、魚雷型の長さ7フィート6インチ、直径8インチ、重さ800ポンド(363kg)、内径 6.5インチ(16.5cm)のタイムカプセルが製作された。7つの鋳鉄の円筒がアスファルトで結合されたもの。内側は耐熱ガラスが張ってあり、真空にされたうえで、窒素が充満された。
ウェスティングハウス社の作った銅99.4%、クロム0.5%、銀0.1%の合金である cupaloy と称する合金でできたカプセルは鉄より硬いと宣伝され、糸巻、人形、本、主な穀物の種を入れた小瓶、顕微鏡、RKO映画の15分間のニュース映像、シアーズ・ローバック社の通信販売カタログや約14000語をふくむ辞書や年鑑を撮影したマイクロフィルムなど日用雑貨や当時の記録が収められ、フラッシング・メドウズ公園の会場内の地下 50フィート(15m)に1938年9月23日 A.W.Robertson によって埋められた。
中に容れる物としては他に、万年筆、製図用鉛筆、懐中時計、電球、煙草入れ、パイプ、巻き煙草、化粧品、婦人帽、眼鏡、歯ブラシ、歯磨き、小型写真機、剃刀、缶切り、数種類の貨幣、重要金属と合金、毛、木綿、絹、リンネル、レーヨン、グラスファイバー、ゴムファイバー、アスベストクロース等の繊維類、ポートランドセメント、天然ゴム、人造ゴム、人造樹脂、5000年後に欠乏しているであろう石炭、普通の書籍約70冊分23000ページの書籍の極小フィルム、聖書1冊、このカプセルがいかにして成り立ったかその発見方法・英語発音に関する注意・将来人に渡さるべきメッセージを含む『The Book of record of the Time Capusule of capaloy』という書籍1冊、計2冊の実物大の書物がある。
1965年、同じ場所で開催された1965年ニューヨーク博覧会では、2個目のカプセルが 10フィート隣の同じ深さに埋められた。二つのカプセルは同じ年(西暦6939年)に開封される予定になっている。
ジョージア州アトランタのオグレソープ大学(Oglethorpe University)はこれに先立つ1936年、「文明の地下聖堂(Crypt of Civilization)」[1]と呼ばれる小さな地下室を学内ホールの地下に作り、様々な書籍を撮影したマイクロフィルムや映像テープ、音声テープなどを収納してステンレス鋼のドアで密封し、西暦8113年に開けることにしている。これは「タイムカプセル」という言葉のできる前の物だが、現代の意味のタイムカプセルの最初のものとみなされている。
以後、地中に埋められたタイムカプセルは枚挙に暇がないが、宇宙に放たれた(広い意味での)「タイムカプセル」もある。パイオニア10号・11号に取り付けられた金属板、およびボイジャー計画にともなう金のレコードは遠い未来に地球外知的生命体に発見させ、内容が解読されることを期待して設置された。また、2012年に打ち上げられるKEO衛星は、未来人に宛てた人々のメッセージが集められたDVDおよびDVDプレーヤーの組み立て方説明書を収容したもので、フランスの芸術家・科学者であるジャン=マルク・フィリップが発案し、ユネスコ・ハチソン・ワンポア・欧州宇宙機関により後援されており、50,000年後に地球に戻る予定である。
[編集] タイムカプセルにまつわる問題点・批判
タイムカプセルには未来の人類に対するメッセージとしての夢もある一方、批判も存在している。歴史学者ウィリアム・ジャーヴィス(William Jarvis)は「こうして意図的に作られたタイムカプセルは役立つ歴史的資料を残さない」と述べている[2]。これらのカプセルに詰められたものは、新品の汚れていない状態でも「役に立たないごみ」同然のもので、限られた価値しか持たない人工物しか入っておらず、未来の歴史研究家に対し寄与するところがあまりないという[2]。これに対し、突然の火山噴火によって埋もれたポンペイ遺跡のような「意図せざるタイムカプセル」[2]は、暮らしぶりを描いた壁画や家々の壁に書かれた選挙の候補者を宣伝する落書き、家財道具、いろりに放置された食べ物、灰に埋まった人の跡にできた空洞など、古代ローマの日常生活について知る手がかりが豊富に残されている。歴史家の中には、作った人の日常生活が分かるもの、たとえば日記帳、スナップ写真、書類などを入れればタイムカプセルの歴史的価値が上がるだろうと示唆している者もいる[2]。
また、マイクロフィルム、磁気テープ、DVD、ブルーレイなど記録する媒体自体が時間と共に劣化し再生できなくなることと、これらの媒体内にあるデータを読み取る機器や規格が廃れる可能性などの問題、記録した言語が滅びてしまう問題、数千年先の未来まで一度も開けないと途中の世代がその中身の読み方を忘れてしまい、価値も分からなくなるという問題も指摘されている。
その他、埋設地周辺の建築物や構造物の改築などにより途中でタイムカプセルを埋めた場所が分からなくなる問題も提起されている。実際、埋められたタイムカプセルの少なからぬケースで、いざ掘り出しという段になって場所が分からなくなって大騒ぎになったり、開封時にも地下水や地面に浸透した雨水の侵入による破損が判明している。
- 例えば米国・オクラホマ州で1957年にオクラホマ州合衆国加入100周年記念行事(設置時は加入50年目)として、50年後(2007年)に開封する予定で設置された「核攻撃にも耐える」堅牢な地下室からなるタイムカプセルでは、内部に納められた当時の人気自動車プリムス・ベルヴェデア他、これの燃料として石油資源の枯渇やガソリン車の衰退も考慮しガソリンの缶詰も入れられた。
- 開封時には当時募集された「2007年のオクラホマ州人口を当てるクイズ」の近似値の回答者本人ないし子孫などの血縁者に贈られる予定であった。
- ところが、実際に2007年の合衆国加入100周年記念式典で地下室から出てきたのは、長い年月の間に染み込んでしまった地下水に往時の見る影もなく赤錆びた、動作するかも分からぬただの鉄屑と化した車であったという(車の原型は保たれていた)[5]。
この他、埋設後数十年での開封を予定しているものですら、埋設当時は植込みなどの一角に埋設されたカプセルの存在が忘れられて、後年にその場所が駐車場や道路として舗装されてしまったり、直上に建物などの構造物が建てられてしまったケースもある。また、教育機関などの場合でも、少子化に伴う学校統廃合などにより施設が移転し、その跡地が企業に売却されたり住宅用地として分譲されるケースもあり、この場合、タイムカプセルの扱いが問題となる、あるいはその時点では忘れ去られて後年になってから騒動となるケースもある。また、過疎地域である場合、埋めたものの廃校や高齢化、さらなる過疎化の進行などの影響で地域のコミュニティ自体が事実上崩壊し、そのまま忘れ去られてしまう可能性もある。
他方、イベントなどで埋設されるタイムカプセルの多くは耐久性とセレモニーで用いられるデザイン性の両立が考慮され、埋設管も含めて変質しにくい材料で堅牢な構造にされることが基本である。そのため、ちょっとした大きさがあるものだとカプセルの材料としてだけでも数十キログラムからそれ以上の銅・アルミ・ステンレスなどの金属がふんだんに用いられる。このため、金属価格の高騰に伴いタイムカプセルの中身ではなくケースの素材として用いられている金属類の転売を狙った盗掘などのリスクも考えられる様になっている。
[編集] 脚注
- ^ 上記タイムカプセルは2つあり、一つは2000年に点検のため開封された。内容の確認後再度埋められ、100年ごと(世紀末の年)に開封される予定となっている(次回は2100年の開封を予定している)。
- ^ a b c d e William Jarvis (2002)
- ^ “Princeton University Library - G. Edward Pendray Papers, 1829-1981 (bulk 1923-1971)”. 2008年6月28日閲覧。
- ^ New York Times, August 19, 1938, page 21
- ^ Auto 'time capsule' unearthed after 50 years(動画ニュースあり)
[編集] 参考文献
- William Jarvis (2002). Time Capsules: A Cultural History. ISBN 0-7864-1261-5
- Janet Reinhold (1993, 2000). A Sampling of Time Capsule Contents. ISBN 1-891406-30-2
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- タイム・カプセルEXPO'70
- International Time Capsule Society at Oglethorpe University
- Capturing Time: The New York Times Capsule; an American Museum of Natural History exhibition
- The future of the future - Seattle Weekly
- Project Keo
- Time Capsules from Tales of Futures Past
- Genesis Landing Site Monument Installation
- Yahoo! Time Capsule
- マクセルタイムカプセルプロジェクト
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