マイクロフィルム

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マイクロフィッシュ(マイクロフィルムを何コマも収めた整理用シート)
ロールタイプのマイクロフィルム
アパチュアカード

マイクロフィルム (microfilm) は、一般に書籍新聞および設計図面などの保存に使用する写真フィルムである。

概要[編集]

「資料を写真で撮影してサイズをコンパクトにして保存、閲覧する」という考え方は写真の発明当初より存在しており、1839年に資料の160:1の比率の写真を撮影したダゲレオタイプ技師のJohn Benjamin Dancerがマイクロフィルムの発明家とされる。その後、イーストマンコダック社が1928年よりマイクロフィルム部門を立ち上げ、アメリカ議会図書館大英図書館で採用されるようになった1930年代頃から一般化した。イーストマンコダックは1935年よりニューヨークタイムズの縮刷版を発行している。日本では富士フイルムが1958年よりマイクロフィルムを製造している。

マイクロフィルムは100年を超える耐用年数があるとされるが[1][2]、当時のセルロースアセテートを原料にしたマイクロフィルムは高温多湿環境では30年程度で劣化し、分解によってマイクロフィルム表面に酢酸が生成されて資料の閲覧が不可能となる「ビネガーシンドローム」が起こることが判明したため、1993年以降は劣化しにくいポリエステルを原料として製造されている[3]。国際規格(ISO 18901:2002)では、適切な保存条件のもとでの期待されるマイクロフィルムの寿命は、セルロースエステルベースで100年、ポリエステルベースで500年とされている[4]

マイクロフィルムにはロールタイプのフィルムと、マイクロフィッシュ(microfiche)と呼ばれるシートタイプのフィルムがある。ロールタイプは幅16mmと35mmが一般的である。また、パンチカードにフィルム貼り付け用の窓(アパチュア)が開いているアパチュアカード(APカード)と呼ばれるタイプもある。アパチュアカードは、カードに情報を書き込んだり、パンチによって情報を付加することができるため、製造業の設計図面の保管管理に適しているほか、幅広い分野で使用されている。

マイクロフィルムを作成する際には、原版となる資料を特殊な写真撮影機材を使って原版の1/5 - 1/40に縮小して焼き写す。閲覧する際にはマイクロフィルムリーダーと呼ばれる専用の投影機を用い、必要な場合は原版と同じサイズで印刷をすることができる。

マイクロフィルムは、歴史的な文献など重要な書籍・図面、あるいは新聞(縮刷版も含む)の原版を汚れ・破損などから予防する目的、また、図書館・資料館の限られたスペースで莫大な資料を効率的に保管する目的で用いられる。図書館・資料館では閲覧コーナーに投影機が備えられていることが多い。

近年は、マイクロフィルムに代わってパソコンで閲覧することを目的としたCD-ROMDVDの縮刷版が市販されている例もある。しかし磁気メディア光学メディアの場合、新たな規格が次々に登場する結果、過去のメディアを閲覧するためのハードウェアの入手や利用が困難になるという問題が指摘されている。一方のマイクロフィルムリーダーは個人所有は一般的ではないが、改ざんが困難で耐久性が高く閲覧用機器の陳腐化のおそれもないため、重要な情報を安定的に保存する手段として一定の需要を保っている。

脚注[編集]

  1. ^ 社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会DMS(ドキュメントマネージメントシステム)部会では、方式にもよるが、100年から500年を超える寿命があるとしている(DMS - 第2回 媒体の安定性についての質問 ― Q11. マイクロフィルムはどの位もつか?参照)。
  2. ^ コダックでは、期待寿命を約500年としている(コダック BPOサービス-サービスご紹介 イメージングサービス参照)
  3. ^ 西山貴章 (2011年1月22日). “まるで酢こんぶ…マイクロフィルム資料劣化に悩む図書館”. 社会. asahi.com. 2011年1月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年6月12日閲覧。
  4. ^ 収集部資料保存課 『マイクロフィルム保存のための基礎知識』(pdf) 国立国会図書館、2005年2013年6月12日閲覧。

関連項目[編集]

記録メディア

外部リンク[編集]