歯ブラシ

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歯ブラシ

歯ブラシ(はブラシ)は、歯磨きもしくは入れ歯磨きに使用する小型ブラシである。一般的な製品は柄の先端の片側に数十本ごとに束ねられた繊維が複数植えつけられていて、その摩擦によって歯垢などの汚れを落とす。

歯ブラシは長く使っていると繊維が曲がって毛先が開き、歯磨きの効果が落ちるため、取り替えの時期となる。歯磨きに使用出来なくなると、風呂場のタイル目や排水溝など身の回りの細かい所などの掃除に使用する場合もある。

形状と種類[編集]

歯ブラシは先端から植毛部(ヘッド)、頚部(ネック)、把柄部(ハンドル)の3つの部分からなり、さらに植毛部の上方をつま先(トゥ)、下方をかかと(ヒール)という[1]。繊維の束は列状に配置されており、一般的な3列植毛のほか、6列植毛、5列植毛、4列植毛、2列植毛、1列植毛のものもある。毛先の形状にはラウンドカット毛と超極細毛がある[2]。毛切り(カット)には平切りのほか山切りなどがある。

360度歯ブラシのように先端が特殊な形状のものもある。また、スイッチを入れるとモーターにより動作する「電動歯ブラシ」(電気歯ブラシ)もある[3]。また、柄のない指サック型の製品もある[3]歯磨き粉を用いる場合には歯ブラシの毛先に付けて磨くことになるが、「粉付き歯ブラシ」のように最初から粉状の歯磨き粉を付けている使い捨ての歯ブラシもある。

繊維を加工したり毛先を0.02mmに加工するなど、歯と歯の間や奥歯の汚れを綺麗に取る為のものや、歯茎を刺激するものなど多機能化が行われている。また、「歯科医院向」の製品も製造されている。 ペット用の歯ブラシもあり、犬用のものでは大型犬用・小型犬用などがある。

歴史[編集]

古来は歯を磨くには楊枝を使った。これは爪楊枝ではなく房楊枝と呼ばれるもので、細い木の枝をブラシのように一方の端を噛み砕いて使用した。楊枝で歯を磨く習慣がいつから始まったかは不明だが、仏典に釈迦が楊枝を使って地に投げたところたちまち根づいて大木となった話があり、当時既に楊枝が使用されていたことがうかがわれる。日本でも歯ブラシが一般化するまでは房楊枝が一般的に歯磨きに使用されていた。

アメリカ歯科医師会によると、1498年中国皇帝が豚毛を骨の柄に植えつけたものを歯磨きに使用したものが、最初の歯ブラシであるとしている。しかし1223年にに留学した禅僧の道元が現地における「くちすすぐともがらは、馬の尾を寸餘にきりたるを牛の角のおほきさ三分ばかりにて方につくりたるがながさ六七寸なる、そのはし二寸ばかりにうまのたちがみのごとくにうゑて、これをもちて牙歯をあらふ」習慣を記述しており[4]、実際の歴史はさらに古いものと思われる。17世紀ごろからヨーロッパでも使用されるようになるが、19世紀に大量生産されるようになるまで一般的ではなかった。1903年(大正3年)に小林富次郎商店(現在のライオン)が「萬歳歯刷子」を発売。1938年2月24日にはデュポン社がナイロン製の歯ブラシを初めて売り出した。

生産[編集]

日本国内ではおよそ4億本/年が生産されている[5]。昭和20年代には大阪府が全国の出荷額の90%以上を占めていたが、有力メーカー工場の移転などにより2009年には大阪府の出荷額に占めるシェアは15.8%にまで低下した[5]。また近鉄八尾駅前には「生産高日本一」を記した歯ブラシ型のモニュメントが設置されている。

家庭用品品質表示法の対象品目になっており[6]、柄の材質(ポリプロピレン、飽和ポリエステル樹脂など)、毛の材質(人工毛(ナイロンなど)、天然毛(白馬毛、豚毛、馬など))、毛のかたさ(かため、ふつう、やわらかめ)、耐熱温度(60度、80度など)、表示者名の表示がされる[7]。また日本工業規格 (JIS S3016) において規定がある。

歯ブラシによる外傷[編集]

幼児が口に箸や棒等をくわえたまま転倒や衝突などで口腔内の軟組織が受傷することがあるが、その原因の第一位が歯ブラシであり、30%以上であると報告されている[8][9]。歯ブラシの形態から症状は軽微なことが多いが、重症ないし重症となる危険性の高い症例の報告も多く[10][11] 、保護者による危険性の認識や監視の必要性が指摘されている[9]

脚注[編集]

  1. ^ オーラルケアの基礎/歯と口腔内の基礎知識/歯ブラシ”. ライオン歯科衛生研究所. 2012年8月16日閲覧。
  2. ^ オーラルケアの基礎/歯と口腔内の基礎知識/歯ブラシ”. ライオン歯科衛生研究所. 2012年8月16日閲覧。
  3. ^ a b 意匠分類定義カード(C3) 特許庁
  4. ^ 正法眼蔵第五十 「洗面」。道元は日本にこの習慣を伝えなかった。彼は歯ブラシを「これは靴のほこりを落とす道具で歯磨きの道具ではない」と断じ、当時日本では楊枝(房楊枝)が普及していることを賞賛したのち、禅僧は歯ブラシを使ってはならず、楊枝を使用することが正しいことであると戒めている。現在の永平寺では歯ブラシを使用している。
  5. ^ a b 歯ブラシ製造業”. 大阪府. 2014年1月22日閲覧。
  6. ^ 家庭用品品質表示法施行令
  7. ^ 歯ブラシ”. 家庭用品品質表示法 製品別品質表示の手引き. 消費者庁. 2014年1月22日閲覧。
  8. ^ 加藤崇雄小村国大沼健博宮恒男菊池元宏那須大介金子貴広堀江憲夫工藤逸郎下山哲夫「小児の口腔軟組織への刺入による外傷の臨床的観察」、『小児口腔外科』第19巻第2号、日本小児口腔外科学会2009年、 116-121頁、 doi:10.11265/poms.19.116ISSN 1884-6661NAID 130003381602JOI:JST.JSTAGE/poms/19.116
  9. ^ a b 大久保雅基横林敏夫清水武五島秀樹鈴木理絵「歯ブラシによる幼児の口腔軟組織損傷例の臨床統計的観察」、『日本口腔外科学会雑誌』第51巻第12号、日本口腔外科学会2005年12月20日、 630-633頁、 doi:10.5794/jjoms.51.630ISSN 0021-5163NAID 10018954177JOI:JST.Journalarchive/jjoms1967/51.630
  10. ^ 岩田雅裕西嶋克巳高木慎池田洋一神原滋「歯ブラシの頬粘膜刺入により波及した側頭窩膿瘍の1例」、『小児口腔外科』第3巻第1号、日本小児口腔外科学会1993年、 41-44頁、 doi:10.11265/poms1991.3.41ISSN 1884-6661NAID 10012158198JOI:JST.Journalarchive/poms1991/3.41
  11. ^ 今井智章道澤雅裕清水英孝竹内憲民濱田正和藤田祐生「歯ブラシが側咽頭隙へ達した幼児の口腔内穿通性損傷の1例」、『日本口腔外科学会雑誌』第55巻第5号、日本口腔外科学会2009年5月20日、 231-235頁、 doi:10.5794/jjoms.55.231ISSN 0021-5163NAID 10027090348JOI:JST.JSTAGE/jjoms/55.231

関連項目[編集]

外部リンク[編集]