情報格差

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世界のインターネット普及率。色が濃い国ほどインターネットが整備されている。アフリカと東南アジア諸国を中心に色が薄い国(インターネットが普及していない)が集まる。

情報格差(じょうほうかくさ)またはデジタル・ディバイド: digital divide)とは、インターネット等の情報通信技術(ICT)を利用できる者と利用できない者との間にもたらされる格差のこと[1]。国内の都市と地方などの地域間の格差を指す地域間デジタル・ディバイド[1]、身体的・社会的条件から情報通信技術(ICT) を使いこなせる者と使いこなせない者の間に生じる格差を指す個人間・集団間デジタル・ディバイド[1]、インターネット等の利用可能性から国際間に生じる国際間デジタル・ディバイド[1]がある。特に情報技術を使えていない、あるいは取り入れられる情報量が少ない人々または放送・通信のサービスを(都市部と同水準で)受けられない地域・集団を指して情報弱者と呼ぶ場合もある。

本記事では、情報格差およびデジタル・ディバイドについて述べるものとする[2]。実際の用例ではデジタル・デバイドと同義で使われる場合や、企業と消費者の情報量の差(情報の非対称性)として使われたりする。したがって、特に断り書きがない限りは両者を峻別せずに記載するものとする。

概説

「デジタル・デバイド (digital divide)」という言葉が公式に初めて使用されたのは1996年にアメリカ・テネシー州ノックスビルで行われた演説で当時のアメリカ合衆国副大統領であるアル・ゴアが発言したものであるといわれている[3]。この演説では以前よりゴアが強く提唱していた「情報スーパーハイウェイ構想」を2000年までにアメリカ全土の都市部から郊外・農村部に至るまで隅々に網羅させることを約束し、将来の子孫達が「デジタル・デバイド」によって区切られることがない世界を作りたいと演説の中に織り込んだ。これに続く形で当時の大統領であるビル・クリントンがゴアの発言で使用された「デジタル・デバイド」という言葉を引用し、人々は技術を開発し知識を共有しないことは不平等や摩擦、不安を生む切っ掛けとなるため、それらの課題に一丸となって取り組まなければならないとした[3]

デジタル・デバイドが生じる主な要因として、

  1. 国家間(先進国と途上国間)、もしくは地域間(都市部と地方間)における情報技術力・普及率の格差
  2. 学歴、所得など待遇面で生じる貧富の格差によって情報端末・機器を入手ないし操作する機会の格差
  3. 加齢や障害の有無など個人間の格差拡大

がある。 これらの要因の結果、機会の格差、個人間の格差は新しい情報技術を幼少の頃から受け入れ容易に使いこなせる若者や、高い収入を得ていた者がさらに情報技術を活用して雇用やさらなる収入を手にしていく反面、新しい情報技術の受け入れが難しい高齢者や低収入のために情報端末・機器を入手できない貧困層、身体部位の欠損や損傷、あるいは視覚障害によって情報端末・機器の使用が困難になった身体障害や、知的発達精神など脳に関わる障害者がこれら情報技術を活用できないためにさらに困難な状況に追い込まれ、社会的格差が拡大・固定化してしまうといった情報技術普及に伴う問題が発生している。

また、国家間における情報格差も顕著であり、例えば先進国が情報技術によってさらなる発展を遂げていく一方、発展途上国では情報技術に精通する技術者自体が不足していたり、国家予算から情報技術に投入する費用も不足しているためインフラ整備ができない結果、情報技術そのものが活用できないために国家の経済もさらに格差ができてしまう問題もある。あるいは前述のインフラ整備も都市部では行われているために情報技術が活用できるものの農村部などでは活用できないといった地域間の情報格差も問題となっている。

こうした、発展途上国では上記の理由から情報通信企業の参入も遅れているため、二次的な情報格差の広がりも見せる。

日本において、情報格差(デジタル・デバイド)という言葉が使われ始めたのは2000年前後からである[4]。特に同年夏に開催された第26回主要国首脳会議(沖縄サミット)ではIT革命が議題として取り上げられ『グローバルな情報社会に関する沖縄憲章[5]Okinawa Charter on Global Information Society[6])』の中に盛り込まれた「情報格差(デジタル・デバイド)の解消」と通して同時に情報格差が地球規模の問題であるとの認識と共に知られていった。

情報格差の各側面

国家間・地域間における情報格差

1997年から2007年までのインターネット普及率。数値は100名中の普及数
青 ):先進国
赤 ):発展途上国
緑 ):世界全体の平均普及率
(※:国際電気通信連合による報告)

インターネットにおける情報格差

2000年において、インターネット普及率は世界総人口の7%であった。これは世界人口を60億人と換算すると約4億2千万人になるが、この内の49.4%(約2億750万人)がアメリカ合衆国カナダによるインターネット人口であった[4]。先進国だけで換算すると31%の普及率であった。その後、先進国においてインターネット普及率が上昇しはじめ、2007年までに62%の普及が見られた。特に2003年から2004年にかけて飛躍的な上昇を見せた。これは先進国におけるブロードバンド通信基盤が整備され、一般家庭にも提供し始めた時期とも重なる。これら先進国での通信技術の向上はインターネット普及に大きく貢献したと言える。

しかし、発展途上国においてインターネット普及率は2000年でわずか2%にとどまった。その後、2007年には17%にまでインターネット普及率が上昇したものの、これらの普及の多くは発展途上国の都市部や富裕層にのみしか普及しておらず、先進国と比較して一般家庭にまでインターネットが普及としているとは言えない状況である。

情報格差が経済的格差を拡大する要因とならぬよう、各国政府は対策に追われている。アメリカでは、白人と黒人の情報格差の広がりが問題になっていたが、例えば電話携帯電話も含む)がそうであるように、ある程度以上普及すれば格差が減少していくのを根拠に、政府がインフラ整備と情報技術の普及に予算をつぎ込んだ。マサチューセッツ工科大学のプロジェクトチームが推進している OLPC XO-1 は、このような情報格差の解消を目的としている。インターネットへのより平等なアクセスを持つ国は、より高いスキル能力を持つ国でもある。ドメイン全体での国のスキルの習熟度とインターネットを使用している人口の割合の間には、有意な正の相関関係(65%)がある[7]

日本におけるインターネットの情報格差

日本政府のインターネット普及への取り組み
  • 学校教育における情報教育カリキュラムの充実
  • 学校への情報機器の整備
  • 講習会の受講料金の補助
  • インフラ整備について
  • 自治体と共同で全県的なブロードバンド通信基盤の整備
  • 通信事業者への補助
--上記の計画はe-Japan戦略による[8]

日本においては、1990年代中期以降にインターネットなどのコンピュータネットワーク情報技術)が普及を見せてきた[9]。日本におけるインターネットの普及は特に2000年より基本戦略として取り入れられ[10]、続いて2001年に後述するe-Japan戦略[8]など日本国内でさらなる情報技術の普及を掲げた計画を政府主導のもとに行われ整備されていったが、普及と同時に企業や事業所内のオートメーション化が進み、そのためにパソコンなどの情報機器の操作に習熟していないことや、情報機器そのものを持っていないことは、社会的に大きな不利として働くようになった。

また、内閣府の調査では単身世帯・家族同居を含み2007年の調査で78%の普及率が見られるが[9]総務省の統計によるとパソコンの所有率は30代をピークに40代、50代の社会人世代は業務でも使用するためにインターネットを使えるようになっているが、60代以上となるシニア世代から極端に普及率が低下しているのが見受けられる。また、30代と比較して20代のパソコン普及率が低いのも現状であり、これらの若年層がパソコンやインターネットの操作に習熟していない者が多いことも指摘されている[11][12]

若年層がパソコンを扱えない理由として挙げられるのが携帯電話(いわゆるフィーチャーフォン、ガラケー)の普及であり、携帯電話でインターネットやメールなど一部パソコンの機能をそのまま有しているため、パソコンを持つ必要性を欠いたためともいわれる。また、2010年代以降には従来型のフィーチャーフォンより多機能でパソコンに近い性能を持ったスマートフォン(スマホ)が普及しはじめたことで、インターネットの使用率では十分な浸透をみせるが、パソコンなど一定の習熟度が必要な端末を扱えない若年層が増えつつあることが問題となっている。これらを「親指族」「携帯族」などと揶揄される。

逆に情報格差の男女比については緩和されつつある。パソコンや携帯電話を含め情報通信端末の使用は男性が圧倒的に多かったが、近年ではあまり差異が見られなくなってきている。この他に地域による情報格差も問題となっており、都心部と比較して村落など地方(田舎)における情報格差も指摘されている。また、これら情報通信端末の中でもパソコンを使えていない人やインターネットの使用頻度の問題で情報収集能力が低い人のことを「情報弱者」から略して「情弱」と呼ばれる傾向になり、一種のインターネットスラングとして扱われている。

1997年から2007年までの携帯電話普及率。数値は100名中の普及数
青 ):先進国
赤 ):発展途上国
緑 ):世界全体の平均普及率
(※:国際電気通信連合による報告)

携帯電話における情報格差

携帯電話の使用率も先進国と発展途上国とでは大きな開きがある[13]。携帯電話の登場は1980年代であるが日本を含めたアメリカやEU諸国など先進国では早期から携帯電話の普及が見られ、2000年には先進国に住む人の半数に携帯電話が普及している。その後も普及を続け2007年には先進国ではほぼ全員である97%に普及し、以後は増加はしているものの横這いに近い状態が続いている [14]。一方、発展途上国ではインターネットと同じく携帯電話もまだ普及しておらず、ここでも情報格差が発生している[15]。但し、インターネットと比較すると操作が容易であることと、新興国や発展途上国の貧困層を対象としたBOPビジネスの商材の中に携帯電話も含まれており、この結果BOPビジネスのターゲットとなっている地区での携帯電話の加入数が爆発的に増加しており、まだまだ先進国との差はあるものの携帯電話における情報格差は徐々に埋まりつつある[16][17]

なお、携帯電話普及の過程には国によって差異がある。現在、人口比で最も多く携帯電話が普及している国はルクセンブルクで、これにイタリア香港と続く。1990年代前半から2000年代前半までは特にフィンランドノルウェースウェーデンなどの北欧諸国が台頭し、日本も1990年代中期から高い普及率を見せている国の一つとなった。しかし、2000年代中期より新興国の台頭や新しいビジネスモデルの提案からさらなる普及がみられ、以前の普及率とは様相が変わり始めている。特に2000年中期以降に目覚ましい普及を見せているのがロシアである[15]。インターネットと比較しても携帯電話のほうが普及に勢いがあるのが明白であり、2007年度で11億台の携帯電話が生産されている。これは、2007年に生産されたパソコン(2億8千万台)の約4倍となる。世界の携帯電話加入数は32億8500万であり、これは世界の人口の約半数が携帯電話を所持しているという計算になる。このままの推移では、試算上で2010年には地球上の人口の約70%の人が携帯電話を所持するという計算になり、近い将来には携帯電話における情報格差はなくなる目途が立ちつつある[18]

日本における携帯電話の情報格差

日本における携帯電話は、その保有率は世界的に見ても有数な国でもあったことから携帯電話における情報格差は一見埋まっているかのように見える。日本では1979年に本格的に自動車電話サービスがスタートし、1985年に個人が所持して移動しながら電話することができる初の携帯電話「ショルダーホン」が登場した。その後、新たに携帯電話事業を行う企業が参入したことや、1994年に「携帯電話機の売り切り制」が導入されたことによって初期費用、回線利用に必要な料金が大幅に値下げされたことが行われ、さらには家電メーカーなど携帯電話の製造・供給に名乗りを上げたことなどによって、市場の競争はさらに加速され、これらの結果、携帯電話が広く一般に普及する下地が作られた。よって、携帯電話の普及は1990年代中期より急激な加速を見せた。

日本の携帯電話に特色性がみえてくるのが1999年1月にNTTドコモが開始したサービス「iモード」である。「携帯電話でインターネットに接続できるサービス」として日本国内ではビジネスモデルとして浸透し、同年4月にはDDIセルラーグループIDO(現:KDDI沖縄セルラー電話連合、au)がサービス「EZweb」・「EZaccess」を開始(のちEZwebに統一)。12月にはJ-フォン(現:ソフトバンクモバイル)がサービス「J-スカイ」(現:Yahoo!ケータイ)を開始し、これらが寄与して日本のインターネット普及に大きな拍車をかけた。しかし、これらのサービスは開始当時は世界最先端の技術でありながらも、日本の独自性を非常に強く打ち出したものであったことから海外との携帯電話に対する価値観にズレが生じ始め、いわゆる「ガラパゴス化」を招く原因となった[19][20]

日本のように1台の携帯電話を多機能化することによって生じたガラパゴス化は、情報格差においても様々な弊害を受けていると言える。2009年に総務省が発表した統計によると、インターネット普及率は68.9%で18位。ブロードバンド普及率は22.1%で32位。パソコンの普及台数も人口1000人辺り542台で12位。そして肝心の携帯電話も83.9%で76位であった[21][注 2]。特に携帯電話においては欧米諸国が上位を独占しており、それぞれが100%を超える普及率であることから1人の個人が2台以上持っているということが伺える。なお、日本は2011年末の調査で普及率が100%を超えている[22]

2010年代に入りスマートフォン及び第三世代携帯電話第四世代携帯電話が急速に普及すると、従来のフィーチャーフォンはレガシーな物と見なされ[23]、両者で受けられるサービスに質的な差異が見られるようになった。また2010年代後半から年代末に掛けてフィーチャーフォンでのサービス提供を終了するサイトやサービスなどが相次いでいる[24][25]。もっともスマートフォン自体や、3Gや4Gのサービス提供は事業者により地域格差問題が顕在化する以前に日本全国遍く展開されたため[26][27][28]、地域的情報格差の側面は少ない。むしろユーザー側の機器操作習熟の問題により高齢者を中心に移行を渋る状況になっている[29]。また費用相場も格安スマホ、MVNOなどの普及により格差は埋められつつある[30]

個人間の情報格差

日本学術会議の基盤情報通信研究連絡委員会による報告では、将来的に高齢社会孤独の問題、3次活動時間(労働時間から完全に外れた自由な時間)が増大した結果の余暇の有用性など様々な要因で「情報資源」の活用ができる社会の構築を目指すべきであると発表した[31]

日本における通信格差

日本国内で、東京都23区)・政令指定都市県庁所在地などの都市部を除いた、各市・町・村および離島別におけるブロードバンド利用可否の格差。日本では2000年頃から、地方へブロードバンドが普及するにつれ、「ブロードバンドを利用できる地区」と、「(ADSLすら)利用できない地区」との情報アクセスへの格差が生じるようになっている。最近では、FTTHや無線系サービス(WiMAXなど)より、高速なブロードバンドサービスが提供されるようになったが、サービスが「利用できる地区」と「利用できない地区」との情報アクセスへの格差はさらに拡大していた。

2000年代(00年代)までには、ほとんどの市・町でADSLが提供されるよう拡大されたが、村や離島(特に沖縄県)ではいまだに提供されていない場合が多く、またあまねく全ての市・町・村への提供が義務づけられていないため、完全に提供できていない(64kbps以下の低速・定額制のインターネット接続サービスに関しては、ほとんどの村に普及したが、それでも100%には達成できていなかった)。

このことは、一部の電子掲示板などのコミュニティでしばしば取り上げられるようになった。これには二つの意味があり、情報格差(通信格差)として問題になるのは主に後者である。

  1. ADSLなどの加入・解約手続きを行ったにもかかわらず、それに関する手続きや作業を長期間履行されず放置されている者。さらに長期間待たされた上に断られたり、特に解約時においては「回線握り」と呼ばれ、ADSL業者を変更する際に問題とされる。Yahoo! BBにおいて開業当初に問題とされたが、現在では改善されている[要出典]
  2. 住んでいる所で、ブロードバンドあるいは定額制インターネット接続サービスを全く受けられない状態。

これらの問題を解決すべく、総務省などが中心となり、「ブロードバンド・ゼロ地域 脱出政策」の戦略案を纏めているが、2010年末においていまだに2割近くがナローバンド回線を使っているという調査結果があった[32]

2010年代前半からこれらの通信格差は一部の離島や僻地を除き2010年代後半までにはほぼ解消された。

2010年代後半以降では、光提供エリアにおけるフレッツ・ISDNの2018年新規受付終了およびフレッツ・ADSLの2023年サービス終了予定など[注 3]、種々のナローバンド接続のサービス縮小や廃止、初期のブロードバンド接続を支えたADSLのサービス終了など光回線(FTTH)への収斂が進み、また4G携帯電話スマートフォンによる利用が進む、ギガビット回線の混雑が発生し地域とプロバイダーと時間帯によっては実効速度がADSLと逆転するに至るなど、様相が変化してきている。

分類

過疎型
離島や僻地など人口が少ないことで、本土や市街部と同額の料金では採算が合わないという事情があり、国内の全市町村に遍くブロードバンドのサービスを提供するのは困難である。
法的にもインターネット接続サービスは日本全国への提供が義務づけられていないため、サービスを受けられない(ユニバーサルサービスの対象に、ブロードバンドの提供が含まれていない)。
ダイアルアップ接続が利用されていた時代では、アクセスポイントのワンナンバー化により、当時頼みの綱であった準定額サービス・テレホーダイが利用できないプロバイダが増えつつあることが懸念されていた。
都市型
既に地域としては進出済みであるが、後述する諸事情によりサービスを受けられないケース。大都市周辺の郊外の住宅地に多いが、定額制のナローバンドによる常時接続(フレッツ・ISDN)だけなら使用できるケースも多かった。

代表的な事例として、2003年にあった石川県の報告で情報通信ネットワーク(有線通信無線通信)などの通信に関連する「情報資源」で地域による格差が発生していることが述べられている[33]。福井県、富山県と合わせた北陸3県で見てもDSLではそこまで極端な比率に差がないものの、ケーブルテレビによるインターネット加入率になると北陸3県の中で最も低い加入率となっていた。

また、光ファイバーに対応した地区が2002年6月の時点では、県庁所在地たる金沢市1市のみに留まった。また、2003年3月になっても一切のブロードバンドサービスが提供されていない自治体が吉野谷村、鳥越村、富来町、能登島町など13自治体に上った[33]

原因

最大の原因は「過疎型」にあるが、他にも以下のような複数の原因が存在することもある。

過疎
人口が数百人〜数千人と極端に少なく、民間ベースでは採算が合わないためサービスが提供されない。仮に自治体が誘致しても不採算を理由に提供が難しい。これらの地域では自治体主導でCATVなどの整備を進めているところが多々あるが、起伏のある山間部など新規配線コストが高くなるような所では整備困難な場所が多い。
利用者の人口密度
既に地域としては進出済みであり地域の人口密度には問題がない場合でも、競合する業者が複数社あり自社のユーザのシェアが低い場合、同一地区内である程度の数がそろわないと、サービス対象地区内でも、採算が取れないためサービスが提供されない。最悪の場合、ある地区において、進出済みの業者が複数あっても、それらすべてから「(期待される)地区内のユーザ比率が低い」(絶対数が少ない)ことを理由にサービスの提供を拒否される場合もある。
光収容
ADSL特有の問題。RT(銅線と光ファイバーの変換装置)などにより、経路途中まで光ファイバー化されていたり、最近のマンションなどの集合住宅において、電話回線が集合装置まで光ファイバーで引き込まれているため、ADSLのように、電話局から末端の加入者宅まで一貫してメタル線を必要とするインフラを利用できない(直収電話なども同様)。これは、当初NTT東西FTTH整備までISDNを使う予定で投資を推し進めた影響もある。
2010年代以降は前述のようにADSLサービス自体の終了に向けた縮小、光回線への収斂で解消されつつある。
回線品質
ADSL特有の問題。人口密度の低さなどで、電話局からの線路長が長すぎる、紙絶縁など品質の低いケーブルや手抜き工事、電話線のスタブ線、幹線道路や鉄道などから発生するノイズ、海岸沿いにおける塩分などによるケーブルおよび器具の腐食などによる回線品質の悪化など、信号の減衰やノイズが多すぎてADSLを正常に利用できないケース。
これも2010年代以降は光回線への収斂で解消されつつある。
電話設備の問題
会社や学校などの独身寮を中心とした集合住宅においては、電話回線自体がレンタル回線であったり、工場や学校の敷地内にある場合には、PBXなど独自の交換設備を介している場合があり、この場合はADSLなどのブロードバンドサービスはもちろん、フレッツISDNを含むISDN回線、テレホーダイなどの割引サービスなど、一般的な音声通話以外のサービスを一切受けられない。
集合住宅問題
集合住宅で、FTTHやCATVなど、配線方法によっては、壁に回線を通すための穴を開けるなど大がかりな壁面工事が必要なインフラは、賃貸住宅であれば大家、分譲マンションであれば管理組合の許可を得る必要があるが、インターネットに対して関心が低いなど何らかの理由により敬遠するような大家、管理組合や住人が居る場合には、しばしば工事を許可されないケースがある。
一事例として、神奈川県営住宅では、2003年までインターネット回線に関する一切の工事を許可していなかった。理由として、神奈川県住宅営繕事務所は「同住宅は低所得者向けであるため、生活に最低限必要な物以外の「贅沢品」の使用は認められない」[注 4]とするもので、インターネット回線も一種の「贅沢品」とみなしていた。翌2004年からは「模様替え(増築)」などの名目で許可はされたものの、「建物本体に一切の改造を加えず、現在使用している電話管路などをそのまま利用する」[注 4]など、他にも厳しい制約を設け、また、手続きにも時間を要し、早くても申請から1か月超、場合によっては数か月もの時間を要するなどの制約があった。
その一方で、VDSLを利用する形となるが、既に全棟でFTTHを利用可能な県営住宅も存在する。 また、住宅の戸数が少ないために事業者の営業上の理由で不可な場合や、電柱より高い部屋には光ファイバーを直接引き込めないなど施工方法上の理由で不可な場合などもある。ただしエアコン設置時に壁に配管用の穴を開けている場合、ADSLでタイプ2と呼ばれるADSL専用回線をその穴の隙間を使って回線を引き込むことができる。
ブロードバンドが一般化する前に建造された建築物においては、光ファイバーなど新しいインフラに対する配慮が行われていないことが多く、配線や配管のスペースに余裕がなかったり、特に急カーブさせることが難しい光ファイバーを通すことは困難であった。後述の、電話線に準じる可塑性(折り・荷重不可)を持つ、プラスチック製クラッドの光ファイバーケーブルの開発・普及により、集合住宅の各室個別に直配線が可能になるなど、この問題は大幅に緩和された。
CATV対応マンションであっても、配線されている同軸ケーブルに関して、流合雑音の問題や、あるいは有線放送などを重畳などしているため、CATVのインターネットサービス(CATVのデジタル放送サービスも含む)の通信速度が出ず、または利用不可なことがある。
共同アンテナ問題
過疎地において共聴組合にて管理しているテレビ・アンテナの中には、複数の組合員がCATVに移行した場合、テレビ・アンテナの保守管理がコスト高になり運営が不可能となる。そのため区域全体でCATVの導入に消極的になり、あわせてインターネットの整備が遅れる結果を招いている。
電線類地中化問題
電線類地中化で道路に電柱がなくなると、地下管路を経由して、ケーブルを建物に引き込むことになるが、その割高な工事費や、通信会社道路管理者に支払う必要がある管路使用料がネックとなり、光ファイバー同軸ケーブルなどの敷設を拒む通信会社(ケーブルテレビ局)が存在している[34][35]

放送・通信の格差により生じる問題点

  • 通信(回線の速度)と放送の格差は情報収集などの能力の差に繋がる。近年では行政機関のオンラインシステム、学校教育就職活動情報系を中心とした各種産業においてブロードバンドへの依存度が高くなっており、町・村や離島の役場におけるオンラインシステムや学校カリキュラム遂行に支障が出たり、就業機会に影響があるなど、デジタルデバイドの一形態ともいえる問題がある。
    • これにより、かつての地上デジタル放送(地デジ)を含めブロードバンドの提供の遅れる地域(特に山間部や離島)および地上波民放で受信可能なチャンネル数が少ない地域から若年層が離れ、田舎での定住を忌避する人口流出なども発生し、過疎化の促進による悪循環となっている(なお総務省主導の「次世代ブロードバンド戦略2010」は、直接的な過疎対策として盛り込まれたわけではない)。
    • かつては地上デジタル放送(地デジ)の移行の遅れも僻地、山間部や離島で見られたが、2011年までに全国完全移行し解消された(震災の影響で東北3県は2012年)。
  • 動画や音楽の配信サービスは、1Mbps以上の速度を有する回線で提供されることを前提にし、1Mbps未満の低速なADSLやナローバンドでの利用を想定していないものが多いことからサービス受けること自体に支障が出る。
  • ADSLやFTTH、CATVといったブロードバンド回線の利用を前提としているIP電話が利用できない。
  • ワームコンピュータウイルスの蔓延に伴うOSなどのセキュリティパッチアンチウイルスソフトウェアパターンファイル入手、あるいは各種ソフトウェアのバグフィックスの修正ファイルの入手は、PCではブロードバンド回線によるダウンロード依存型になっている。「ブロードバンド難民」のユーザにとっては、それらへの対策にも支障が出ている(ナローバンドの常時接続によるダウンロードも全く不可能ではないが、数MBのファイルをダウンロードするにも数分〜数十分を要するうえ、長時間の接続で回線が不安定な状態になるため、切断されてしまうこともある)。
  • ウェブページの閲覧、ファイル転送メールの送受信に関して、当初よりブロードバンド回線による大容量の通信を想定している場合には、結果としてナローバンドユーザのサービス利用を疎外してしまう面もある(ナローバンドユーザへの配慮ができていない)。
    • 2010年代前半ごろまでには、PC向けインターネットサイト(スマートフォン向けサイトを含む)が概ねブロードバンド接続前提となり、日本国内ではナローバンド接続サービスが実質的にほぼ終息した。
  • 個人情報保護法の施行や学校関係者の不祥事を口実にした振り込め詐欺の被害が急増しているため、学級やPTAの緊急連絡網をインターネットによる直接連絡(公式サイトのトップページにおける「緊急情報があるので確認」するよう促す表示やメーリングリスト)に切り替える動きがあるが、その際に情報格差(通信格差)の発生している家庭への対応が問題となっている。

解決策

世界情報社会サミットWSIS)の様子。
(※:写真は2005年ジュネーヴにて)

技術的解決策

技術の進歩・低価格化により、2000年代以前までは不可能だったブロードバンドの導入も可能・容易になっている。

  • プラスチック製クラッド光ファイバーケーブルの導入・普及
    • ガラス製クラッドよりも曲げに強く、さらに5mm程度の小径曲げもできるような技術開発が進み、屋内配線として、既存の配管にも導入しやすくなっている。
  • ラスト10メートルの進歩・普及 (FTTB/FTTCなど)
  • 既存インフラの活用
  • 改良型ADSL
    • 独自技術によって、メタル線のまま長距離対応を実現したReach DSLや、途中経路まで光ファイバを使用でき、韓国で導入されたHFA[注 7]などがある。
  • 無線によるラストワンマイル整備も補完的な役割が期待されたが、2010年代以降はモバイルネットワークを補完する方向に変化している。4G携帯電話の普及により、無線LAN以外のサービスは終息しつつある。

ナローバンド定額制や、無線系アクセスによる代替

以上の解決策を適用してもなお回避できない諸事情のためにブロードバンド回線が利用できないケースが都市、地方や僻地等を問わずピンポイント的に存在し、そのような状況はしばしば「ブロードバンド難民」として形容された。

やむを得ずISDNベースのフレッツ・ISDNや、本来モバイル向け無線アクセスであるPHSのAIR-EDGEの定額制接続や、定額制の低速回線を使用し、電話代を定額で固定させるだけで解決を図るケースも見られた。

第三世代携帯電話においては384kbpsや、2Mbps以上の通信スループットを謳うサービスもあるが、日本国内ではほぼ全ての料金プランで、携帯端末単独での使用とPCなどに接続して使用する場合で課金制度が異なるため、単純に利用すると数万円 - 数百万円単位の高額な課金を請求される恐れがある(パケ死の項目も参照)。

PHSのAIR-EDGEにおいては最高408kbpsを謳うW-OAM通信がサービス開始されたが、第三世代携帯電話のMbpsクラスの高速サービスと同様に、東京・大阪などの都市部を優先してサービス展開がされるため、地方では常に後手に回り高速無線アクセスの提供が遅れた。なおPHSは2018年3月で全事業者が新規契約受付終了した。

2000年代末頃からモバイルブロードバンドの参入が相次いだ。2007年3月31日より、第三世代携帯電話では初となる携帯端末だけでなくPCを介した最大3,6Mbpsデータ通信も完全定額5980円で利用できるイー・モバイルが新規参入。2009年7月1日には、同じくPC利用での定額制を標榜するUQコミュニケーションズモバイルWiMAXで参入した。サービス開始当初は東京23区・横浜市・川崎市・名古屋市・京都市・大阪市といった人口の多い都市部のみでの展開であり、人口カバー率も90%前後(すなわち概ね人口集中地区でしか利用できない)であり、これも情報格差の一端である。

また無線系アクセスの宿命として、通信パケット量が多くまたは通信時間が長くなるほど、課金が上昇する従量制(準定額制を含む)であったり、定額制・準定額制であっても高速な通信になるほどまたは通信時間が長くなるほど、基本料金が高額であったりと、固定通信系ブロードバンド回線に比較してスループット対コストのパフォーマンスが低い問題もある。また一部の利用者による帯域の占有が問題になっており、事業者が帯域制限を実施していることがパフォーマンスの低下に拍車をかけている。ただ、移動体通信事業には巨額の費用が必要であること、また有限資源である無線帯域を共用して伝送路として利用する以上、現状避けがたい問題ではある。

フレッツ・ISDNやダイヤルアップのISDNも、国内の全域で提供されているように思われがちだが、フレッツ・ISDNについては一部の地方で未提供の局がまだ残っており、完全な全域での提供に達していない。また収容局から加入者宅までの線路長が8〜10kmを超えるような遠距離の場合、ISDNのサービス自体がほぼ不可能である。よってダイヤルアップ接続、無線系アクセス等での定額制接続手段がない限りにおいて、いずれの常時定額接続手段も存在しない地域が一部の町・村・離島に残ることになっていた。この点については後述の総務省による「ブロードバンド・ゼロ地域解消事業」により解消が図られている。

なお、フレッツ・ISDNは2018年に新規契約受付を終了し、ISDNおよびメタル回線によるアナログ電話を前提とするサービスはPSTNマイグレーションに伴い2025年までに全廃することが決定している[36]

自治体などの取り組み、今後の技術展開など

自治体やNPOの関心が高い地域では、さまざまな地域独自の試みが行われている。

多摩ニュータウン八王子市柚木地区のNPOである「FUSION長池」や八丈島の「八丈島にブロードバンドを推進する会」などによる署名活動やブロードバンド事業者や行政に対する陳情活動が行われたり、北海道山越郡八雲町の八雲PC同好会のように署名や陳情だけではなく、独自に専用線を確保して、無線LANで分配することで定額接続を実現といったケースがある。特に八雲町のケースは、北海道新聞で報道され、これをきっかけにブロードバンド事業者が八雲町への進出を決めるなどの反響があった。

また、島根県秋田県岡山県では、ADSLを中心に進出したブロードバンド事業者に経済的援助を与えたり、地方自治体が整備したインフラを民間にも開放するなどの整備促進策を取ったり、三重県岐阜県などでは、CATVを主として県がブロードバンド整備を行っている。このため、三重県においては、県道や国道から余程離れた一戸建て以外では、殆ど全県でCATVによるブロードバンドが利用できるまで整備されている。

総務省でも、この問題を解決するために、地方自治体が初めから民間への開放を目的としてインフラ整備を行うことの是非が論じられたり、5GHz帯を無線によるインフラ構築用に開放する動きがあるが、現在の行政側の対策は、過疎型対策がメインである。

また、技術的には研究開発段階ではあるが、人工衛星による超高速インターネット衛星「WINDS」などが計画されており、全国同じ条件でサービスを受けられることが特徴となっている。「成層圏プラットフォーム」(成層圏滞空飛行船)もこれに近い形態といえる[37]

横浜市NPOである「インフォメーションギャップバスター」による情報弱者情報リテラシーを身につけることで情報格差を解消することを試みる動きもある[38]

しかし肝心のインターネット端末普及は、パソコン教室に通って使い方に習熟しなければ困難である。パーソナルコンピュータ若しくは携帯電話は、普及したとはいえ、まだ家電製品並みの使い易さになっているわけではない。

総務省による施策

これらに対し、総務省もただ手をこまねいていたわけではなく、先述の過疎型による町・村・離島への問題対策として、同省を主導とした「u-Japan政策」において「次世代ブロードバンド戦略2010」を発表し、以下を目標として掲げた。

  • 2008年度までに「ブロードバンド・ゼロ市町村」(全域においてADSLFTTH・CATVいずれのブロードバンド回線も利用できない市町村)を解消すること
  • 2010年度までに「ブロードバンド・ゼロ地域」(いずれの種類のブロードバンド回線も利用できない地域)を解消し、
  • 超高速ブロードバンド(FTTHなど)の世帯単位でのカバー率を90%以上とすること

これを受けて2010年までに「ブロードバンド・ゼロ地域解消事業」を策定実施し、東日本大震災の影響を受けつつも2016年度末の時点で、固定系超高速ブロードバンドの世帯カバー率は99.0%、移動系超高速ブロードバンドの世帯カバー率は99.8%まで達成していると報告している[39]

インターネット業界以外での動き

不動産業界

情報格差の問題については、不動産業界においても取扱物件のブロードバンド利用の可否が物件の価値、契約の成否を少なからず左右しかねない時代になっており、取扱物件に発生し得る情報格差に対しても敏感になっている。

とりわけ、20代〜30代以下の若年層をメインターゲットとした分譲住宅、学生向け賃貸物件などでは、ブロードバンドでもとりわけFTTH導入の可否が販売成約率や入居率を少なからず左右し、販売価格や家賃などにまで影響を及ぼすケースも見られる。

そのため、現在では多くの企業で付加価値を向上させる策として、取扱物件のブロードバンドへの対応が積極的に進められている。特にFTTHが導入可能な物件においては、広告にその旨が宣伝文句として大々的に記載されていることが多い。

同様に短期賃貸マンションや若者向けの賃貸物件では、入居時にパソコンさえ持ち込めば即時インターネット使用可能というシステムを構築している所も少なくない。

2008年頃からは解消されつつあるものの、首都圏でさえ少し郊外部に行けば、FTTHが市街地のみでその周辺地区には存在しない(さらにADSLはあるものの、局までの距離があるため速度がほとんど出ない)という場所は決して珍しくなかった。だが、この様なインターネット能力の差が、地価にも若干ながら悪影響を及ぼしているケースもあると言われている。

他にも、いわゆるパソコン世代ではないベテランの営業販売担当者などには、この情報格差に関する知識に乏しい者も多く、不動産は高額の商取引であるだけに、この情報格差の問題については営業担当者の知識不足が顧客とのトラブルなどの訴訟リスク要因になるのではないかという危惧を、現在では一部の不動産会社が抱くところとなっている[注 8]。このため、営業担当者へのブロードバンドに関する知識の教育など、対策に取り組む企業も存在している。

この様なことがあって、特に郊外部では、住宅・アパートを新築する際に、FTTHが導入可能な地区かなどの事前チェックが入念に行われることも多い。

また、FTTHが導入可能な地域に所在し、工事をすれば導入可能であっても、インターネットに対する大家の無理解が原因で導入できない賃貸物件は大都市圏でも見られている。だが、これは入居を希望する側が近隣の物件との間での比較検討をする際には、多くのケースでネガティブな要因として扱われ、上述している様に究極的には入居率や家賃などにも響いてくる。そのため、物件の価値の維持・向上のために、不動産業者が大家に対してブロードバンド、さらにはインターネットそのものについての啓蒙を行うケースも見られている。

放送格差(日本)

放送の中でも、特に都道府県および市・町・村単位で見た地上波民放におけるチャンネル数の格差のことを指す。

基幹局とその系列、および県域局を加えた地上波民放テレビ局の数は、各都道府県あたりの放送対象地域でみた場合、次のようになっている。()内は県域局。

  • 関東広域圏(東京都・千葉県・埼玉県・群馬県・栃木県・神奈川県)は6局
  • 北海道・茨城県[注 9]・中京広域圏・近畿広域圏・瀬戸内準広域圏・福岡県は5局
    • (ぎふチャン、テレビ愛知、三重テレビ、びわ湖放送、KBSテレビ、テレビ大阪、サンテレビ、奈良テレビ、テレビ和歌山)
  • 岩手県・山形県・宮城県・福島県・長野県・新潟県・静岡県・石川県・広島県・愛媛県・長崎県・熊本県・鹿児島県は4局
  • 青森県・秋田県・富山県・山陰準広域圏・山口県・高知県・大分県・沖縄県は3局
  • 山梨県・福井県・宮崎県は2局
  • 徳島県・佐賀県は1局(それぞれ近畿広域圏、福岡県からのスピルオーバーにより受信可能エリアあり)

ただし、放送対象地域内でも中継局が整備されていない場合もあり、必ずしも全ての市・町・村(特に山間部)および離島で民放の局が受信できるとは限らない。逆に、スピルオーバーにより、一部のエリアでは隣接する都道府県の民放を受信できることがある。ケーブルテレビ[注 10]やかつてのデジタル放送の分野においても、同様の地域格差があり、重大な放送格差である。また、新規テレビ局の開局は2011年の地上デジタル放送への完全移行後も現時点では予定されていないが、新たな難視聴が発生している地域および放送対象地域内でありながらアナログ未開局でカバーできていなかった地域における中継局の開局は現在も続いている。

全国をあまねく網羅する衛星放送・衛星デジタル放送により、放送に関する格差はある一定のレベルについては解消されつつあるが、経済的な理由で地上波しか視聴できない(BS・CS放送の機器を導入していない)家庭が半数を占めているうえ、地上波が主である以上、現在地上波とは番組編成が異なる衛星放送[注 11]では単にチャンネルが増えるだけであり、視聴できない全国放送の番組のほとんどが現状ではなくなる訳ではなく、また集合住宅問題として何らかの理由[注 12]により衛星アンテナが設置できない問題や、衛星波のある、南西向きの方角に山やビルなどの障害物があるため受信できない問題は「起伏の激しい山村」や「中高層住宅の並ぶ都市部」で残っている。また地上波テレビも民放テレビ全国四波化等の政策によりある一定のレベルについては解消されてきたものの、様々な理由から民放テレビ局の新規割り当てそのものが行われなかった地域や割り当てられた周波数が取り消された地域も発生している。そのため、いまだに情報格差の是正には至っていない。

ケーブルテレビは地方部の多くの自治体により、地上デジタルテレビ放送は国により強力に推進されているため、地方でも若干ながら地域格差の解消は進むとは考えられるが、それでも「国内全ての市・町・村や離島が網羅されない」ことと、デジタル化を機に「民放連ならびローカル局などによる区域外再放送の原則禁止や、同意の拒否」などの放送利権の行使で、今まで視聴できていた他県の放送局が今後見られなくなる恐れがあるなど、特にケーブルテレビについては(サービスエリアの対象が市・町・村単位であるため)今後ますます地域格差が広まることが懸念される。ケーブルテレビの区域外再放送の禁止についても事業者側と民放連との部分合意により、実際は各放送局の権限に任せられているため、上記のような事例もあるものの、一部では各放送局の同意や大臣認定などで問題が解決されつつあるところもある(特に民放が3局以下の地域で多い)。ケーブルテレビなどで受信する中継局のない地域で、ケーブルテレビなどの契約を行わなければ、本来の地域の放送局の放送を見ることができない場合がある。

また、デジタル化ケーブルテレビや、光CATV(放送系光ファイバー、光放送)などのために必要な光ファイバー基盤(FTTHFTTx)にしても前述の推進はあるとはいえ、不採算を理由に離島や過疎地での提供を忌避し、都市部に優先される傾向があるため、サービス展開上でも地域格差が生じている。

日本では番組制作会社の力が弱く、番組の著作権を放送局が所有することが多いため、娯楽番組など嗜好性の高い番組がCSなどの専門局へ(外国のようには)移行せず、在京キー局中心の番組供給体制であることが格差につながっている。

アジアの開発途上国での情報格差

ベトナム

ベトナムではアジア諸国の中で特にデジタル・ディバイドの問題が深刻であり、ルーラル地域に対するICTインフラ構築プログラム「eLangViet(e-Vietnamese Village)」プログラムが展開されている[1]。このプログラムには国連のUNCTADやUNDPが支援している[1]

インドネシア

インドネシアは2010年のインターネット利用率が8.7%と低い状況にあるが、ソーシャルネットワーク利用度は5.72と高く、共有やコミュニケーションを重んじる文化がソーシャルメディアの利用率を高めているという見方もある[1]。2011年2月時点のFacebookのアカウント数は米国に次いで世界第2位であった[1]

フィリピン

フィリピンの2010年のインターネット利用率は9.0%と低いが、ソーシャルメディアが選挙活動等においても広く活用されておりソーシャルネットワーク利用度は5.50と高い[1]。ComScore社の調査では2011年2月時点のフィリピンでのFacebookのウェブサイト訪問率はインターネット利用者の92.9%にのぼり世界で最も高い水準である[1]

アフリカの開発途上国での情報格差

ナイジェリア

ナイジェリアではNPOのFantasuam Foundationが太陽光発電によるパソコン等の導入に取り組んでおり、ICTの利活用を通じて、地域発展や教育、地域間連携、電子商取引などの基盤を整備する活動を行っている[1]

エチオピア

エチオピア政府は教育、医療、農業などの分野でのICT活用を図るeガバメント計画を推進している[1]。エチオピア政府はeガバメント計画の一部として2003年から遠隔教育プロジェクトSchoolNetを開始させた[1]

エジプト

エジプトで2001年より政府(MCIT)主導のプロジェクトであるIT Clubがスタートし、ITスキルの向上を含むソフト面とハード面の確保によりルーラルや貧困地域の経済成長を図ることを 目的としている[1]。IT Clubに対しては、国連のUNDP、エジプトのICT Trust FundのほかNGO等がプロジェクトの立ち上げ及び持続性を担保し参加している[1]

チュニジア

チュニジアでの2010年のインターネット利用率は34.1%と低い[1]。ただし、ソーシャルネットワーク利用度は6.02と高く、2011年ジャスミン革命と呼ばれる政変ではソーシャルメディアが大きな役割を果たした[1]

チュニジア政府は第11次計画(2007年~2011年)でICT産業のGDPシェアを2011年までに13.5%に拡大させ、63億チュニジアディナール(約3,600億円)の海外からの投資を推進する方針を盛り込んだ[1]

学者の見解

経済学者のアラン・クルーガーの1993年の研究によると、パソコンを使って仕事をしている労働者は、パソコンを使って仕事をしていない労働者より、賃金が10-15%程度高いということを実証的に示している[40]。一方で、この分析は、パソコンが賃金が高めているのではなく、優秀な労働者がパソコンを使って仕事をしているということを示しているのであるという反論もある[40]

経済学者の小原美紀大竹文雄の研究によると、パソコンを用いて仕事をする労働者の賃金は、パソコンを用いて仕事をしていない労働者の賃金よりも高くなっている傾向にあるが、その傾向は高学歴労働者に特徴的に現れているとしている[40]。また、低学歴の労働者の場合、パソコンの利用が賃金引き下げの要因となっているとしており、IT革命は学歴間の賃金格差拡大の要因となっているとしている[40]

大竹文雄は「IT革命が賃金格差を高めるという論点は、デジタル・デバイドといわれるIT革命の負の側面として指摘されることが多い。IT革命が高学歴者に対する需要増加をもたらすことが賃金格差の要因であるならば、高学歴者の供給増加政策が対処法となる。単なるパソコンの操作を身につけさせる政策は賃金格差の縮小につながらない。IT技術の習得は高学歴者にとっては賃金引き上げ要因となるが、低学歴者にとっては賃金の引き上げをもたらさない。ITと補完的な判断能力・分析能力の習得が必要である」と指摘している[41]

注釈

  1. ^ 放送・通信などに従事する企業の本社は、ほとんどが東京都の23区(特別区)内に集中しているため、特別区を対象として考慮する必要はない。
  2. ^ これらの統計はパソコンは2004年。インターネット、ブロードバンド、携帯電話の普及率は2007年。統計データはITUの2008年データによるもの。
  3. ^ 光提供エリア外では、ISDN自体のサービス終了までフレッツ・ISDNの新規契約受付も継続し、フレッツ・ADSLも提供継続される事になるが、具体的なエリアおよび詳細については未定となっている。
  4. ^ a b 県営住宅模様替え(増築)承認書
  5. ^ MDFから各戸に既存電話配線により高速信号を通す。10〜100Mbps。
  6. ^ 集合住宅近傍の電柱に無線の基地局を設置し、個宅のベランダにアンテナを設置する。
  7. ^ Hybrid Fiber ADSL
  8. ^ 実際、ADSLしか存在しない地域で速度もそれほど出ない地域であるにも関わらず、広告で「超高速インターネットの利用が可能」など、客観性の乏しい謳い文句しか記載されないため、あたかもFTTHが利用できるかのような誤解で物件を販売し、トラブルが発生したケースは存在する。
  9. ^ 関東広域圏ではあるが、県域民放テレビ局が存在しないため。
  10. ^ アナログ放送では区域外再放送で地上波民放数の格差が是正されていたが、デジタル放送では権利上の都合や視聴者減少の防止などを理由に、区域外再放送が実施できなくなる事例が相次いでおり、再び地上波民放数の格差が広がりつつあったが、系列局のない放送局に限っては各放送局の同意や大臣裁定の結果認められる事例も相次いでいる[要出典]
  11. ^ 地上波に比べ「衛星放送は娯楽番組が少ない」「地方の民放は通販番組(テレビショッピング)の割合が多い」(特に深夜に集中するため、深夜アニメがほとんど放送されない)などの違いが顕著である。
  12. ^ ベランダが東〜南側を向いているため、衛星波の方角(南西向き)にパラボラアンテナを設置できない、など

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 平成23年版情報通信白書”. 総務省. 2018年1月18日閲覧。
  2. ^ 『ジーニアス和英辞典』(大修館書店)では、「情報格差」の英訳は「digital divide」となっている
  3. ^ a b “Remarks by President and VP in Knoxville TN”. Clinton Presidential Center. (1996年10月10日). http://archives.clintonpresidentialcenter.org/?u=101096-remarks-by-president-and-vp-in-knoxville-tn.htm 2011年9月22日閲覧。 
  4. ^ a b 『平成12年度通信白書』(郵政省
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  10. ^ “IT基本戦略”. IT戦略会議 (首相官邸). (2000年11月27日). https://www.kantei.go.jp/jp/it/goudoukaigi/dai6/6siryou2.html 2011年9月22日閲覧。 
  11. ^ “パソコン見放す20代「下流」携帯族”. FACTA.online. (2007年3月). http://facta.co.jp/article/200703060.html 2011年9月22日閲覧。 
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  41. ^ 大竹文雄 『経済学的思考のセンス-お金がない人を助けるには』 中央公論新社〈中公新書〉、2005年、201頁。

関連項目

外部リンク