デジタル加入者線
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デジタル加入者線(でじたるかにゅうしゃせん、DSL:Digital Subscriber Line)とはツイストペアケーブル通信線路で高速デジタルデータ通信を行う技術、もしくは電気通信役務を指す。
上りと下りの速度の異なるADSL(Asymmetric DSL)、CDSL(Consumer DSL)、VDSL(Very high-bit-rate DSL)、長距離向きのReach DSL、同じ速度のHDSL(High-bit-rate DSL)、SDSL(Symmetric DSL)などがありxDSLとも総称する。
特徴[編集]
日本を含む先進国や施設構内では、インフラストラクチャーとして既存のメタルケーブル加入者線を利用、兼用できるのが長所である。そのため、通信用に光ケーブルやLANケーブルなどを新たに敷設する必要が無い。ただし、xDSL対応のモデムが別途必要となる。
方式[編集]
ADSL[編集]

ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)は1対のツイストペアケーブル通信線路で、上り・下りの速度が非対称な通信を行う。
技術にも種類がありアメリカ合衆国からそのまま技術を受け継いだ"AnnexA"、Euro-ISDNと多重化可能な"AnnexB"、日本方式のTCM-ISDNの干渉を軽減した"AnnexC"等がある。
ReachDSL[編集]
ReachDSLは、米パラダイン社が開発した遠距離での接続の確保を優先したDSLである。速度は最大でも上下ともに960kbpsと遅いが、その分通信距離が5 - 12km程度と長い。遠距離で損失が大きくなる高周波数の帯域を使用せず、損失が少ない低い周波数の帯域のみを使う。そのためISDNとの干渉も低いとされている。その後、速度を上下2.2Mbpsに向上させたRDSL2が発表された。米パラダイン社では路線長が5kmの場合1Mbpsの速度が出るとしている。
日本においてはJANISネット(株式会社長野県協同電算)が日本初のサービスを開始し、以後Yahoo! BB等様々な会社が提供しているがRDSL2方式によるサービスを行っているのはNTT西日本-四国と関西ブロードバンドのみである。RDSL2は、発表当時既にブロードバンド接続の主流がADSLからケーブルテレビやFTTxへと移行していたために普及しなかった。
CDSL[編集]
CDSL(Consumer Digital Subscriber Line)は1997年10月28日にRockwell Semiconductor Systems社から発表されたxDSL規格。上り最大128kbps、下り最大1Mbpsが簡易DSL[1]。
ADSLと似た特徴を持つが、ADSLよりも安価でスプリッタが必要ないという点が異なる。日本では初期からADSLが採用されたため普及しなかった。後に発表されたADSLのG.lite規格と類似している。
VDSL[編集]



VDSL(Very high bitrate Digital Subscriber Line)は1対のツイストペアケーブルで、他のDSL方式より高速な通信を行なう。100m - 1.5km程度の通信を目的としており、それ以上の距離ではADSLの方が有利となる。ADSLよりも広い帯域(最高30MHz)や速度優先の技術を採用しており、技術革新が大きいADSLの2倍以上の転送能力を持つ。
集合住宅などの主配線盤でFTTxを変換し既設の電話線で各加入者に分配するために使用されているほか、ホテル客室での高速インターネットにも使われている。
上記のような利用が一般的であるが、一般向けのADSL回線の高速版という位置づけでJANISネット(株式会社長野県協同電算)がVDSLを利用したインターネット回線を提供している。理論通信速度は60Mbpsだが、実際にADSL以上の通信速度が期待できるのはNTT局(または有線放送局)から1km以内の信号減衰の少ない電話回線のみとなる。それ以上の距離になると使用できる周波数帯が狭くなり、通常のADSLと同等またはそれ以下にまで性能が低下してしまう。
使用帯域は0.64 - 30MHzで、上り下りとも速度を出せるようにいくつか帯域を区切り上り下りを交互に割り当てている。そのために最大速度も現在の光ファイバーの速度を基準に下りは100Mbps、上りは30Mbpsから100Mbpsとしているものが多い。なお日本でも初期のFTTxサービス提供時はVDSLの代わりにHomePNAも使われていたが、VDSLが広く普及するとともにあまり使われなくなった。
VDSL2 G993.2[編集]
G.993.2 Annex C。ループ長200m以下で、上り・下りとも最大125Mbpsを実現する。日本国内導入例は少ない[2][3]。
VDSL G.fast[編集]
従来のVDSLは、1Gbps前後まで向上している光ファイバー本線(局まで)の通信速度に比べ、低速でありボトルネックとなっていたが、上り・下り帯域合計で最大1Gbpsを実現するG.fast(G.9701)規格が2014年に制定、実装モデムが開発され、auひかり等の一部のISPで導入が進んでいる[4][5]。既にVDSL等を導入済の集合住宅等において、集合装置[注釈 1]および個宅のモデムを入れ替える事で高速化を図ることが可能[5]。
XG-FAST[編集]
G.fastから速度を10Gbpsに向上させている[6][7]。ノキアが2020年商用化。
HDSL[編集]
HDSL(High-bit-rate Digital Subscriber Line)は、2対のツイストペアケーブルを用いる送信・受信とも同じ速度の対称型DSLである。SDSLの2対版ともいえるもので、1対で送信・もう1対で受信を行う。使用帯域は200kHzと低いため最高速度は約2Mbpsにとどまるほか、アナログ電話回線との多重化はできない。しかし使用可通信線路長は20kmに及ぶ。
業務用に既設の構内電話線で用いられている。ただし、現在は光ファイバーの敷設が進み利用されることは少なくなっている。
SDSL[編集]
SDSL(Symmetric Digital Subscriber Line)は東京めたりっく通信などが提供していた上下速度対称の方式。その技術はITU-Tで定義されているxDSL規格、G.992.1 Annex Hで取り決められている。
ISDNの「INSネット1500」と並ぶサービスとして企業・業務用に提供されたが、光ファイバーの登場・普及により下火になった。しかし普及度は低いものの、現在でもサービスを行っている業者もあり廉価な対称サービスとして展開されている。
速度は上下共に160kbps - 2Mbpsが一般的で160kbps時には最大6.9kmまでの距離を通信することが可能。
なおADSL同様に加入電話と共有することができるがSDSLの利用の特性上、個々で使うことが多い。その場合には共有したときよりも高速な通信が可能である。
構成機器[編集]
DSLAM[編集]
DSLAM(Digital Subscriber Line Access Multiplexer)は、DSLの回線を集め高速な回線(いわゆるバックボーン)に橋渡しを行なう装置。回線収容局などに設置する。なお、この回線を集めることをアグリゲーションと呼ぶ。
なおDSLAMはDSLモデムとしての機能も兼ね備えているので、加入者側でもDSLAMのDSL規格に合致したDSLモデムを使う必要がある。
モデム[編集]
モデム(modem)は、デジタル変調、復調を行うデータ回線終端装置である。
スプリッタ[編集]
スプリッタ(splitter)は、アナログ電話回線から送られてくる信号を、電話機のための信号とインターネット通信のためのDSLモデムのための信号とに振り分けるための分波器、混合器である。
脚注[編集]
注釈[編集]
- ^ ISPが、耐用年数を過ぎた既存VDSL装置を置き換える事も可能。
出典[編集]
- ^ “米Rockwell社が高速通信技術「CDSL」を発表”. INTERNET Watch (1997年10月30日). 2012年9月4日閲覧。
- ^ 「集合住宅の味方、電話や動画にも強いVDSL2(1/2)」『ITmedia NEWS』。2018年10月5日閲覧。
- ^ xTECH(クロステック), 日経. “VDSL” (日本語). 日経 xTECH(クロステック) 2018年10月5日閲覧。
- ^ 株式会社インプレス (2018年6月15日). “既存の電話回線で最大1Gbpsのモデムシステム、NECが「G.fast」対応のVDSL装置を発売” (日本語). INTERNET Watch 2018年10月5日閲覧。
- ^ a b 株式会社インプレス (2018年10月4日). “auひかり、既存のメタル電話回線で下り664Mbpsの「タイプG」、マンション向けに提供開始 11ax対応ホームゲートウェイもレンタル提供” (日本語). INTERNET Watch 2018年10月5日閲覧。
- ^ “ノキアとエネコム、ブロードバンド高速化に向けて、商用導入済みのG.fastと日本国内仕様のVDSLを同一ネットワーク上に導入”. Nokia. 2020年4月3日閲覧。
- ^ 株式会社インプレス (2017年1月13日). “[DATAで見るケータイ業界 Nokiaがプライベートイベントで披露した新技術、国内展開の可能性]”. ケータイ Watch. 2020年4月3日閲覧。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- DSL普及状況ページ(総務省)