海上自衛隊のC4Iシステム

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本項では、海上自衛隊が配備しているC4Iシステムについて述べる。

概要[編集]

自衛隊のC4Iシステムは、指揮統制に使用される指揮システムと、補給・人事など後方支援に使用される業務系システムの2つの系統がある。

指揮システムのうち海上自衛隊の各階梯で運用されるものでは、戦略階梯で運用される海幕システム、作戦階梯で運用されるMARSシステム、戦術階梯で運用される各種戦術情報処理装置戦術データ・リンクがある。

作戦級システム[編集]

海上作戦センターがある自衛艦隊司令部
方面部隊センターの一つがある横須賀地方隊
対潜水艦戦作戦センターの一つがある鹿屋航空基地
「ありあけ」。NORA-1のアンテナはレドームに収容され、艦橋両脇に設置されている。
「ひゅうが」。上部構造物前方にNORA-7、後部煙突前面にORQ-1C、側面にNORQ-1のレドームが設置されている。

海上自衛隊は、戦術級C4Iシステムを先行して導入する一方で、艦隊の指揮・統制に重点を置いた作戦級システム(CCS: Command and Control System)の研究を進めていた。ここで構想されたCCSは、意思決定支援システムとしての要素が強く、情報の記憶・整理と、情勢認識の支援を担当して、自衛艦隊司令部での部隊指揮を効率化するためのものであり、その名のとおりに、C4IシステムというよりはC2システムで、コンピュータや通信・情報といった概念は含まれていなかった。

この「CCS」は、アメリカ海軍の艦隊指揮支援センター(FCC: Fleet Command Center)を参考にして、自衛艦隊指揮支援システム (SFシステム) として開発され、1972年より建設開始、1975年より運用を開始した。このSFシステムは、「作戦推移の迅速化、情報量の増大および処理の複雑化に対処し、自衛艦隊司令官およびその他の主要作戦部隊指揮官が必要とする信頼性のある情報をタイムリーに収集・処理・配布して、作戦指揮や業務の効率的な計画と実施を可能にすることである」と説明されていた。

このSFシステムの後継として1999年より運用が始まったのが海上作戦部隊指揮管制支援システム(Maritime Operation Force System:MOFシステム)である。MOFシステムはダウンサイジングとオープンシステム、分散構造を採用しており、各階梯の部隊指揮官の間で共通作戦状況図(COP)を作成することを最大の目的としている。COPとは、地形・気象・海象など戦闘空間の状況とともに、そこに存在するすべての勢力についての、位置・兵力・状況・意図・脆弱点・戦闘力の要衝を表示したものであり、大熊康之は、「C4I全体の中で、COPの重要性は最上位である」と述べている。またM&Sによる意思決定支援機能等も拡充されている。

MOFシステムの中核となるのが、横須賀基地自衛艦隊司令部内に設置された海上作戦センターであり、その他の拠点として方面部隊センターが各地方隊に設置されている。また、特に洋上航空作戦を統括するものとして、海上作戦センターの直轄下に海上航空作戦センターが設置されており、その隷下には対潜水艦戦作戦センター(ASWOC)がある。ASWOCはP-3C哨戒機が配備された航空基地に設置されており、八戸航空基地厚木航空基地鹿屋航空基地那覇航空基地の4ヶ所に所在する。 P-1哨戒機が配備された基地には、海上航空作戦指揮統制システム(MACCS: Marine Air Command Control System)が装備されつつある[1]。 MACCSは、ASWOCと同様の機能を有するシステムで、可搬化し、機材を分解して哨戒機数機で空輸したのち、外国の飛行場などに設置して運用することで、作戦基盤のない海外に展開する哨戒機部隊に対して、運用、指揮、統制、戦術支援を効果的に実施することも可能である[2]

このようにMOFシステムは情報処理システム、意思決定支援システムとしての要素が強いが、各級部隊指揮官を連絡するための通信システムとしての機能も含有している。また各艦艇に専用端末としてOYQ-31 指揮管制支援ターミナル(Command and Control Terminal、C2T; 潜水艦用はZYQ-31)が配備された事により、陸上の各指揮官が現場の艦艇と連接することが出来るようになっている。これらは、現代アメリカ海軍で言えばGCCS-M、あるいはかつてのJOTSの機能を有するものである。

さらに、2009年に就役した「ひゅうが」(16DDH)では、ビデオ会議チャット機能を導入するなど性能を強化したOYQ-51 洋上ターミナル(MTA)が採用され、艦全体で30台以上が搭載された。またアメリカ海軍との協同作戦を考慮してGCCS-Mも搭載されている。

なお、MOFシステムは2002年から2006年にかけて再構築が行われており、これに応じて名称も海上作戦部隊指揮統制支援システムに変更された(英名・略称には変更無し)[3][4]。その後、平成26年度末に、海上自衛隊指揮統制・共通基盤システムMaritime Self Defense Force Command, Control and Common Service Foundation System:MARSシステム)に発展しており、各艦の端末としては洋上ターミナル(Mobile MARS terminal:MMT)が配される[5]。これは海上自衛隊のみならず、他自衛隊や海上保安庁などの各種情報をネットワークを介して統合・共有する機能を備えている[6]

衛星通信[編集]

海上自衛隊では、1990年より衛星洋上データ通信を艦隊配備した[7]。これはSUPERBIRD B2通信衛星を使用して、使用周波数はXバンド、通信速度は数十キロビット毎秒(kbps)とされている。艦上の衛星通信空中線装置としてはNORA-1が採用され、あさぎり型後期建造艦(60DD)より搭載されたほか、それ以前に建造された護衛艦にも順次バックフィットされた。この衛星通信機能は、2000年よりMOFシステムとも連接された。

また、大容量データ通信へのニーズの激増に対処するため、Kuバンドを使用する衛星通信空中線装置としてNORQ-1も順次に導入されつつある。ただしKuバンドはXバンドよりも通信帯域を大容量化しやすい一方で、天候に左右されやすいという欠点があり、骨幹的通信回線としては信頼性に欠けるとも指摘されている。このこともあり、ひゅうが型では、SUPERBIRD D衛星を利用したXバンドの高速大容量通信(数Mbps)に対応する衛星通信空中線装置として、NORA-7が導入された[8]

なお防衛省では、SUPERBIRD B2/D/C2衛星の設定運用寿命の到達に伴い、Xバンド防衛通信衛星の運用を2017年(平成29年)度から開始する。Xバンド防衛通信衛星は防衛省がPFI方式で独自に保有・運用する衛星で、2017年に2号機(きらめき2号)が打ち上げられ、2018年に1号機が、2021年に3号機が打ち上げられる予定である。これにより従前より飛躍的に高速・大容量でのデータ伝送が可能となる。

これらの自衛隊専用衛星通信のほか、民間のインマルサット衛星通信用の衛星通信装置としてNORC-4も各艦に搭載されており、またアメリカ軍の衛星通信システムに参加するための対米通信装置として、一部艦(DDG, DDHなど)にはAN/WSC-3(OE-82C)やAN/USC-42 Mini-DAMAが搭載されている。

戦術級システム[編集]

海上自衛隊の戦術級C4Iシステムは、アメリカ海軍の海軍戦術情報システム(NTDS)に準拠したものとなっており、戦術情報処理装置と、これらを結ぶ戦術データ・リンクによって構成されている。戦術情報処理装置は、各艦の戦闘の統制を目的とした情報処理システムで、戦術データ・リンクは、これら各艦の戦術情報処理装置を連接するためのネットワーク・システムである。

戦術情報処理装置としては、イージス艦ではイージスシステムが、その他の護衛艦ではOYQシリーズが搭載されており、各艦の戦闘指揮所(CIC)に設置されている。戦術情報処理装置はおおむねNTDSに準拠して開発されており、OYQ-1からOYQ-4までは、NTDSの開発を行ったアメリカのUNIVAC社によって開発されているほか、初の国産となったOYQ-5の開発についても同社の協力を得ている。当初は、武器管制機能をもつものをTDS(Target Designation System: 目標指示装置)、もたないものをTDPS(Tactical Data Processing System: 目標指示処理装置)と称していたが、武器管制機能が一般化した現在では、CDS(Combat Direction System: 戦闘指揮装置)と総称されるようになっている。

戦術データ・リンクとしては、当初はリンク 11が使用されていたが、1990年代後半より、順次新型のリンク 16への移行が始まっている。また、はつゆき型のように戦術情報処理装置の能力が低かったり、あるいは搭載していない艦に作戦情報を伝達するためのリンク 14も使用されている。また、当初は搭載する戦術データ・リンクの種類によってNTDS艦 (リンク11を装備)と非NTDS艦 (リンク14を装備)に区別されていた[9][10]が、現在では、ミサイル艇を含めて新造艦艇のすべてがリンク11を装備していることから、この種の区別はほぼ消滅している。

日本の艦載戦術情報処理装置の変遷[11][12][13]
型番 名称/サブタイプ 戦術データ・リンク 武器管制
機能
対潜戦
機能連接
搭載艦艇
11 14 16
NYYA-1 TDPS 「たかつき」(38DDA)
OYQ-1 TDS[14] 「たちかぜ」(46DDG)
OYQ-2 「あさかぜ」(48DDG)
OYQ-3 OYQ-3 TDPS しらね型(50/51DDH)
OYQ-3B CDS
OYQ-4 OYQ-4 CDS 「さわかぜ」(53DDG)
OYQ-4-1 TDS はたかぜ型(56/58DDG)
OYQ-5 OYQ-5〜5C-1
TDS-3
はつゆき型(52〜57DD)
「いしかり」(52DE)
ゆうばり型(54/55DE)
TDS-3-2 たかつきFRAM型(56FRAM)
(「たかつき」, 「きくづき」)
OYQ-6 OYQ-6〜6B CDS あさぎり型(58〜60DD)
OYQ-6C CDS 「かしま」(04TV)
OYQ-6-2 CDS 「はるな」(58FRAM)
OYQ-7 OYQ-7〜7B-1 CDS 「うみぎり」(61DD)
など あさぎり型の一部艦
OYQ-7B-2 「ひえい」(59FRAM)
OYQ-8 OYQ-8 CDS 1号型(02PG)
OYQ-8B CDS 「はやぶさ」(11PG)
OYQ-8C CDS 「おおたか」(12PG)
OYQ-9 OYQ-9 CDS むらさめ型(03〜07DD)
OYQ-9B CDS 「いかづち」(08DD)
OYQ-9C/C-1 CDS たかなみ型(10/11DD)
OYQ-9D 「さざなみ」(12DD)
OYQ-9E 「すずなみ」(13DD)
OYQ-10 ACDS
(Advanced CDS)
ひゅうが型(16/18DDH)
OYQ-11 あきづき型(19〜21DD)
OYQ-12 いずも型(22/24DDH)

またFCS-1搭載艦には、目標情報の管理を目的としたアナログコンピュータ・システムとしてTDS-1が搭載された。これはアメリカの武器管制システムと同様の機能を有するものであった。

第一世代[編集]

海上自衛隊の戦術級C4Iシステムの開発は1960年代より着手され、武器管制機能および戦術データ・リンクのいずれも持たないNYYA-1を端緒として、武器管制機能を備えたOYQ-1/2、戦術データ・リンクを備えたOYQ-3が順次に実用化された。

NYYA-1[編集]

海上自衛隊が最初に開発した戦術情報処理装置はNYYA-1と呼ばれる機種で、アメリカより提供されたAN/USQ-20B(CP-642B)コンピュータ1基とAN/UYA-4(OA-7979)コンソール4基、水平型で大型のAN/UYA-4(OJ-195)コンソール1基より構成されていた。アメリカ海軍ガーシア級フリゲートのうち2隻(FF-1047, 1049)に搭載した海軍戦術情報システム(NTDS)の対潜版試作型(ASWSC&CS, ASW Ship Command and Control System)に近いものであった[15]

NYYA-1は64の近接した目標と、96の遠距離の目標を扱うことができた[15]が、戦術データ・リンクおよび武器管制機能のいずれとも連接されなかったことから、多用途護衛艦「たかつき」(38DDA)1隻に搭載されるにとどまった。しかし、これは後に開発されるOYQシリーズの基礎となった。[12]

OYQ-1/2[編集]

「たかつき」から8年後、海上自衛隊の次世代ミサイル護衛艦として計画されたたちかぜ型(46DDG)は、主な武器システムとしてターターD・システムを搭載することとされた。これは従来のターター・システムをもとに海軍戦術情報システムとのシステム統合を重視して開発された改良型であり、従って、たちかぜ型護衛艦においても海軍戦術情報システムに準じた戦術情報処理装置が搭載されることとなった[7]

1番艦には米UNIVAC社により開発されたOYQ-1 WESが、2番艦にはその小改正型であるOYQ-2が搭載された。おおむね、NYYA-1を中核としてこれに武器管制機能を統合したものとなっている。システム構成はアメリカ海軍のチャールズ・F・アダムズ級ミサイル駆逐艦の一部が後日装備したJPTDS(Junior Participating Tactical Data System)に準じたものとされた。これらは、戦術データ・リンクこそ備えていなかったが、戦術情報処理(NTDS)と武器管制(WDS Mk.13)を一元的に統合し、艦の戦闘システムの中核となっている。なお、当初はコンピュータは旧式のAN/USQ-20B(CP-642B)で、戦術データ・リンクにも対応していなかったが、1989年から1990年にかけて、OYQ-4に準じてアップグレード改修されている[16]

OYQ-3[編集]

一方、しらね型(50DDH)ヘリコプター護衛艦向けに開発されたOYQ-3は、対潜戦闘に重きを置いていた点で先行のOYQシリーズとは異なっており、部隊対潜戦指揮支援機能が組み込まれている。また、アメリカ政府の輸出制限が解除されたことにより、海上自衛隊では初めて、戦術データ・リンクとしてリンク11の運用に対応した。ただし武器管制機能とは連接されておらず、砲システムと短SAMシステムは国産のTDS-2 目標指示装置による武器管制を受けている[12][17]

その後、1990年代後半に入って、機器の老朽化と性能の陳腐化を受けて近代化改修が計画された。これは、電子計算機を新世代のAN/UYK-44に更新するとともに、TDSの機能をTDPSに統合、ASWDSとTDPSを連接するものであり、これに伴い名称もOYQ-3 TDPSからOYQ-3B CDSCombat Direction System)に変更された。「しらね」は1997年12月から1998年4月にかけて、また「くらま」は1999年3月から8月にかけて改修を受けた。ただし「しらね」のOYQ-3Bは2007年12月の火災事故で全損したため、退役予定であった「はるな」搭載のOYQ-6-2を移植して搭載している[18][12]

第二世代[編集]

ポスト4次防期(1977年(昭和52年)~1979年(昭和54年)度)より就役を開始した第二世代のOYQシリーズにおいては、コンピュータを高性能なAN/UYK-7、AN/UYK-20に更新しており、これによって戦術データ・リンク機能および武器管制機能の双方との連接を実現した。

また国産によって汎用護衛艦向けのOYQ-5、さらにOYQ-6/7が開発された。これらは、日本が新しく開発した射撃指揮装置であるFCS-2との連接に対応した。

OYQ-4[編集]

たちかぜ型の3番艦「さわかぜ」(53DDG)、およびこれに続くはたかぜ型(56DDG)2隻の計3隻が搭載するOYQ-4は「full CDS」と呼称され、JPTDSにほぼ匹敵するものであった[15]

AN/UYK-7, AN/UYK-20を各1基備えており、対空センサーの情報はすべてコンピュータに入力され、ソナーのデータのみ水中攻撃指揮装置(SFCS-6A)に直接入力されていた。またOYQ-3と同様にリンク11,14を備えており、これによりOYQ-4は、海上自衛隊で初めて、DDGとしての武器管制機能と戦術データ・リンクによる部隊戦術情報処理機能をあわせもつ本格的コンバット・システムとなった[12]。なお、UYK-7はOYQ-1/2のUSQ-20 2基に相当する役割を果たしているものと考えられており、UYK-20はミサイルの射撃指揮に用いられていると推測されている[15]

OYQ-5[編集]

はつゆき型(52DD)向けのOYQ-5TDS-3とも)は、海上自衛隊のワークホースたる汎用護衛艦に戦術情報処理装置を搭載したという点で、極めてエポックメイキングな機種であった。

スペース的な制約から、1基のUYK-20のみを使用しており、これと4基または5基のUYA-4(OJ-194B)ワークステーションを組み合わせていた。さらに、データリンクとしては、処理能力やコストの面からリンク 11の搭載を断念し、本来はテレタイプ端末での受信用であるリンク 14を通じて受信した情報を入力するという変則的な方式を採用している。

なお、OYQ-5は、はつゆき型のほか、FRAM改修を受けたたかつき型「たかつき」, 「きくづき」)や、「いしかり」およびその拡大改良型であるゆうばり型に搭載されたともされている。[12][15]

OYQ-6/7[編集]

あさぎり型(58DD)は、様々な面ではつゆき型の強化型であるが、戦術情報処理装置についても同様であった。

58DDで搭載されたOYQ-6は、はつゆき型のOYQ-5をもとに、リンク11送受信機能の付加や対空レーダーとの連接などの改良を加えたものとなっており[12]、「full destroyer CDS」とも称される[15]

その後、同型の最終艦(61DD)においてOYQ-101 対潜情報処理装置(ASWDS)の搭載に伴い、これとの連接に対応したOYQ-7に発展した。これはのちに、あさぎり型の他艦にもバックフィットされたほか、FRAM改修に伴い「ひえい」にも搭載された[12][15][19]

第三世代[編集]

海上自衛隊は、新世代のミサイル護衛艦の搭載システムとしてイージスシステムを選定したが、その戦術情報処理装置 (C&D, WCS)はアメリカより完成品を輸入する形となった。また汎用護衛艦向けのOYQ-9においても、イージスシステムに範を取って設計が抜本的に見直されている。

OYQ-8[編集]

小型のミサイル艇に搭載されるOYQ-8シリーズでは、小型コンピュータのみが使用されている。ミサイル艇1号型(02PG)で搭載されたOYQ-8では、OYQ-5〜7と同様にUYK-20が採用された[20]。続くはやぶさ型ミサイル艇(11PG)で搭載されたOYQ-8Bおよび改良型のOYQ-8CではUYK-44に更新された。これらのOYQ-8は、いずれもリンク 11への接続能力を備えている[21]

OYQ-9[編集]

はつゆき型・あさぎり型は、搭載するOYQ-5〜7戦術情報処理装置を含めて、技術的には共通点が多かったが、まったく新設計の汎用護衛艦であるむらさめ型(03DD)OYQ-9では、こんごう型(63DDG)搭載のイージスシステムに範をとったシステム構成となっており、全武器システムとのデジタル連接化が実現した。[12]

ハードウェア的にも、UYK-7の後継としてUYK-43、UYK-20の後継としてUYK-44が採用され、さらに、ワークステーションもOJ-663/UYQ-21に更新された[22]。また戦闘指揮所には、イージス・ディスプレイ・システム(ADS Mk.2)に類似した大画面液晶ディスプレイ(LCD)2面構成の情報表示プロジェクタが設置され、戦術情報の表示を効率化している。[12]

さらに、たかなみ型4番艦(12DD)搭載のOYQ-9D型では、SSDSやイージスシステムのベースライン7と同じく、AN/UYQ-70による分散処理が導入され、5番艦(13DD)搭載のOYQ-9E型ではリンク 16に対応した[12]

第四世代[編集]

日本国産第1世代のOYQ-5においては、レーダー情報の入力と射撃指揮装置への出力の両方が手動であり、これが応答時間の短縮において制約となっていた[23][24]ほか、対潜戦機能との連接もまったく為されていなかった。以後、順次に改良・強化が重ねられ、OYQ-6で対空レーダーとの連接、OYQ-7で対潜情報処理装置との連接、そしてOYQ-9で全武器システムとのデジタル連接化が実現した[12]。しかしOYQ-9においても、戦術状況の判断なども多くをオペレーターに依存しており、同時多目標対処能力も制限された。

これを改善するために開発されたのが、新戦闘指揮システムACDS (Advanced CDS)を中核として、SWAN (Ship Wide Area Network)によって各戦闘システムを連接した新戦術情報処理装置ATECS (Advanced Technology Combat System)である[25]。ATECSを構成するのは以下のシステムである[26]

  • 新戦闘指揮システム ACDS (Advanced Combat Direction System; OYQ-10)
  • 艦載用新射撃指揮装置(00式射撃指揮装置3型 FCS-3
  • 新対潜情報処理装置 ASWCS (Anti Submarine Warfare Control System)
  • 水上艦用EW管制システム EWCS

ACDSはOYQ-10として制式化され、ひゅうが型護衛艦に搭載された。OYQ-10の特徴は、オペレーターの判断支援および操作支援のため、予想される戦術状況に対応して、IF-THENルールを用いて形式化されたデータベースに基くドクトリン管制を採用している点にある。これによって、OYQ-10はエキスパートシステムとなり、オペレーターの関与は必要最小限に抑えられ、意思決定は飛躍的に迅速化される。ACDSを含め、ATECSは全体にCOTS化されており、総合的に開発が行われている。これによって、対空・対水上・対潜の各戦闘機能が高度に統合され、戦闘能力は飛躍的に向上した[27][28]

またあきづき型(19DD)でも、同様にATECSの系譜に属するOYQ-11が採用されているが、魚雷防御システムなどサブシステムが多くなっている[29]

対潜情報処理装置[編集]

対潜戦闘は人力に頼る部分が大きく、自動化が困難であることから、ソナーで目標を探知してから戦術状況を判断し、水中攻撃指揮装置(SFCS)の管制によって実際に攻撃が行なわれるまでの流れの大部分がオペレーターによって行なわれていた。その後、や艦装備のレーダーなどの情報は戦術情報処理装置を経由して水中攻撃管制装置に入力されるようになったが、情報処理は依然として人力への依存が大きかった。

1980年代HSS-2B哨戒ヘリコプターソノブイ、個艦装備の曳航式パッシブ・ソナー(TACTASS)(TACTASS)が相次いで艦隊配備されたことから、対潜戦のパッシブ・オペレーション化が志向され、処理するべき情報が飛躍的に増大したことから、このような対潜戦闘を自動化する試みが開始された。まず艦体装備のソナーとTACTASS、ソノブイの入力を統合するためのOYQ-101 ASWDS(ASW Direction System)が国内開発され、1991年就役のあさぎり型の最終艦(61DD)で装備化されたのち、他の汎用護衛艦やしらね型護衛艦にバックフィットされた[12][18]。これにより、艦のソナー(艦首装備ソナーと曳航ソナー)、ヘリ装備のソナー(ディッピングソナーソノブイ)の目標探知状況・識別結果、攻撃状況、探知を失った場合の目標推定位置などを統合処理・管制できるようになった[30]

一方これと前後して、技術研究本部第5研究所では、1978年(昭和53年)度から1982年(昭和57年)度にかけてアクティブソナー目標類別装置の研究を行なうなどの要素研究が重ねられていた。これを踏まえて、ソナーそのものに情報融合機能を持たせて、アクティブソナーやTACTASSなど複数のソナーを統合して海洋条件および用途に応じた信号処理を行なうことで運用の適正化を可能とするソナー・システムとして、OQS-Xの開発が着手された。OQS-Xは1984年(昭和59年)度から1986年(昭和61年)度にかけて試作、1986年(昭和61年)度から1987年(昭和62年)度にかけて技術試験が行なわれ、1988年(昭和63年)度から1989年(平成元年)度にかけて特務艦「あきづき」に搭載されての実用試験が行なわれた。最終的に実用化はされなかったものの、信号処理・類別技術や信号処理の共通化技術等はOQS-102およびOQS-5ソナーに採用されたとされている[25]

そしてOQS-Xの技術を生かして開発されたOQS-102ソナーを搭載したこんごう型護衛艦(63DDG)においては、米国のAN/SQQ-89の構成に範をとって、よりシステム統合を進展させたOYQ-102 ASWCS(ASW Control System)が装備された。汎用護衛艦においても、平成3年度計画より建造に着手したむらさめ型では、同様にOQS-Xを踏まえて開発されたOQS-5ソナーを搭載するとともに、OYQ-102の経験を生かしたOYQ-103 ASWCSが装備され、これは発展型のたかなみ型(10DD)でも踏襲された。これらはOYQ-9 CDSと連接されるとともに、ソナー、水中攻撃指揮装置などと連接されている[12]

その後、平成16年度計画より建造に着手したひゅうが型(16DDH)において、艦の戦術情報システムが分散システム化されたATECSとなったのに伴い、対潜情報処理装置も、米国のAN/SQQ-89(v)15を参考とした統合ソナー・システムに移行した。これは同様のシステム構成を採用したあきづき型(19DD)においても踏襲されている。

潜水艦指揮管制装置/情報処理装置[編集]

掃海艇情報処理装置[編集]

航空機戦術情報処理装置[編集]

業務系システム[編集]

海上自衛隊の業務系システムは、海自造修整備補給システムとして統合されている。これらはいずれも、防衛情報通信基盤(DII)を通信システムとして利用する[31] [32]

従来、海上自衛隊の後方支援体制は、補給本部艦船補給処航空補給処の3つの需給統制機関を中心として運営されており、業務系システムとしては、下記の3系列のシステムが独立して運用されていた。

需給統制システム
需給統制隊(現在の補給本部)により、昭和30年度より整備されたものである。補給本部を中心に、艦船補給処・航空補給処に配備された、いわば作戦級のシステムである。
艦船補給システム
昭和40年度より整備されたもので、艦船補給処を中心にして各地方総監部補給所(現在の造修補給所)に配備された、いわば戦術級のシステムである。
航空補給システム
木更津航空補給所(現在の航空補給処)により、昭和36年度より整備されたもので、航空補給処を中心にして各航空部隊補給隊に配備された、いわば戦術級のシステムである。

海上自衛隊では、2007年よりこれら3システムの総合的な性能向上計画として「海幕補給3システムの業務・システム最適化計画」を策定したが、2008年にはこれをさらに拡大したシステムの統合計画として、「海自造修整備補給システムの業務・システム最適化計画」が策定された。この計画に基づき、3システムは高度に連接され、合理化されている[33]

参考文献[編集]

  1. ^ 防衛省. “平成25年度業政事業レビュー (PDF)”. 2017年5月10日閲覧。
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  3. ^ 防衛省. “237 海上作戦部隊指揮統制支援システム用器材(借上) (PDF)”. 2014年3月11日閲覧。
  4. ^ 防衛省. “平成16年度防衛力整備と予算の概要(案) (PDF)”. 2014年3月11日閲覧。
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  9. ^ 森恒英『艦船メカニズム図鑑』、グランプリ出版、1989年、276-281頁、294-303頁
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関連項目[編集]