はやぶさ型ミサイル艇

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
はやぶさ型ミサイル艇
Kumataka (PG-827) keert terug in Sakibe, -26 augustus 2004 g.jpg
基本情報
艦種 ミサイル艇(PG)
建造期間 2000年 - 2004年
就役期間 2002年 - 就役中
前級 1号型
次級 なし
要目
基準排水量 200トン
満載排水量 240トン
全長 50.1 m
最大幅 8.4 m
深さ 4.2 m
吃水 1.7 m
主機 LM500-G07ガスタービンエンジン×3基
推進器 ウォータージェットポンプ×3基
出力 16,200馬力
速力 最大44ノット[1]
兵装
C4ISTAR
  • MOFシステム
    (データ通信付加装置+SUPERBIRD B2)
  • OYQ-8B/C戦術情報処理装置
  • FCS FCS-2-31C 砲射撃指揮用
    レーダー
    光学機器 OAX-2赤外線暗視装置
    電子戦
    対抗手段
    テンプレートを表示

    はやぶさ型ミサイル艇(はやぶさがたミサイルてい、英語: Hayabusa-class guided-missile patrol boats)は、海上自衛隊ミサイル艇の艦級。平成11年度計画から平成13年度計画にかけて計6隻が建造された。建造費は1隻あたり94億円(平成13年度計画分)[2]

    来歴[編集]

    61中期防において、海上自衛隊は従来の魚雷艇(PT)にかわる沿岸防備用の高速戦闘艇として、ミサイル艇(PG)の整備に着手した。オペレーションズ・リサーチによって、大湊舞鶴佐世保地方隊に6隻ずつを配備するという基本計画が策定され、これに基づき、まず平成2年平成4年度計画で全没型水中翼艇1号型ミサイル艇(02PG)3隻が就役した[3]

    しかし就役後、波浪中の船体強度や耐航性の不足が発覚し、特に冬季の日本海での運用上問題となった。また船型が小さいために地上部隊による後方支援が必須となり、その部隊の機動可能範囲に艇の行動が制約されるという問題もあった[4]。更に水中翼艇特有の問題として、フォイルボーンでの高速時とハルボーンでの低速時との間に速力や運動性の面で大きなギャップがあり、中速域での運用が困難であった。これらはいずれも運用上重大な制約となったことから、1号型の建造は3隻で打ち切られた[2]

    このころ、安全保障政策の新しい基本的指針として07大綱の策定が進められており、ミサイル艇3号(04PG)の竣工と同年の1995年11月28日閣議決定された。07大綱では防衛力の適正化・コンパクト化が志向されており、ミサイル艇の整備数も9隻に半減することになった[2]。これに基づき、02PGの運用実績も踏まえて新たに建造が計画されたのが「はやぶさ型」である。平成11年度計画で2隻分190億円が予算化されたが、能登半島沖不審船事件を受けて更なる性能向上が求められることになり[4]、本格的な侵略事態における対艦ミサイルと主砲を活用した対水上戦闘はもちろんのこと、赤外線暗視装置や衛星通信装置の搭載、防弾板の装着など、不審船対処も考慮に入れた性能向上策[1][5]として、2隻分で27億円が追加された[2]

    設計[編集]

    船体[編集]

    上記の経緯により、02PGの反省から、耐航性と独立行動能力の確保が最大の留意事項となった。まず船体が大型化され、02PGが50トン型であったのに対し、本型では200トン型となった[2][4]

    船型としては、02PGの水中翼船型にかえて、滑走型案が2案検討された。1つは全く新しい双胴型で、もう1つは魚雷艇で実績のあった単胴型であった。平成11年度概算要求時の完成予想図ではどちらともつかない曖昧なラインが描かれていた。その後、1999年の能登半島沖不審船事件を受けて要求速力が40ノットから44ノットに引き上げられたのを受けて、主機関の搭載数が2基から3基に強化されたため、機関区画の配置上、双胴船型の採用は困難となった[2]

    船体断面としては、技術研究本部第1研究所の水槽試験によって、単胴型の角形・丸形・V形を比較・検討した結果、船体抵抗が少なく、動揺特性の優る角形が選定された[4]。艇尾船底は、ウォータージェットの海水吸入口を設けたためフラットな形状になっており、浅海面への進出を容易とするとともに推進効率を高めている。一方、艇首部は、凌波性を確保するために断面形状をV形とし、側面部はダブルナックル、いわゆるコーナーを2段つけて、高速時の艇首衝撃を下部チャインで緩和し、ピッチングに対する影響を低減させる船型とした[4]。ただし船型の小ささのためにピッチングの低減にも限度があることから、居住区を含めて人間の介在する区画は、艦橋構造物付近の船体重心付近に集中配置されている[2]

    設計においては、重量軽減、重心降下が最重要課題で、極限的に船体重量の抑制を図ることに細心の注意を払った。船体構造に耐食アルミニウム合金を使用することで、鋼製に比し約36トンの重量軽減が達成され、200トン型の重量枠に収まった。ただし上記の性能向上のための設計変更においても、基準排水量は変更されなかったことから、更に厳しい重量枠となり、余積にゆとりがない、窮屈な設計になることは避けられなかった。なお船殻材料は、荒天時における運用を考慮し、溶接部からの亀裂発生の防止と耐振動性の確保のため、押出型材を多用している[4]

    艦橋構造物は2層構造とされており、主要部分には難燃性の複合材を用いた防弾板が装着されている[2]。なお耐弾対策としては、技術研究本部土浦試験所において各種防弾材料の射撃試験を行い、耐弾性の限界データを分析し、設計に反映させた[4]。艦橋内配置は全員着席が基本とされており、それぞれの座席は5点式シートベルトと緩衝器が備えられている。艦橋下には、上甲板レベルに士官室と士官寝室が、その下の船体内に科員寝室が設けられている。科員寝室のベッドは3段ベッドである。また士官室の後方には6程度のスペースの戦闘指揮所(CIC)が配置されているが、その両舷側に通路を均等に設けて完全な二重構造とすることでスプリンター防御を図っている[2]。CIC下の船体内には食堂が配置されているが、ここは特別警備隊の待機室を兼ねており、座席10席は全て艦橋と同様の5点式シートベルト・緩衝器装備のものとなっている。なお、食堂の奥には厨房が設置されているものの、調理器具は電子レンジ電磁調理器のみであり、航海中の食事は弁当またはレトルト食品が基本となる[6]

    なお、本型の設計にあたっては、ステルス性への配慮が導入された。これはレーダー反射断面積(RCS)のシミュレーション計算をもとに行われており、船体の各部にはレーダー波を直接反射しないようにするため傾斜がつけられている。マストも三脚構造のステルス性が重視された形状になっており、前甲板の62口径76ミリ単装速射砲もステルスシールドが採用されているほか、射撃指揮装置も多少の傾斜が付された位置が係止位置とされている。また舷側手すりやウォータージェットノズルの防護材も、通常の円筒状材ではなく、マストと同様に菱形断面で造られている。なお、ミサイル艇の任務上、接敵に際して敵に艦首を向けている際のRCSがもっとも重要であるが、この際には、76ミリ砲のシールドからRCSの最大値が生じるように設計されている[2]

    機関[編集]

    想定される対水上艦艇の最大速力、および不法行動を行う高速船の速力を32~33ノットと見込んで、これに対し6ノット以上の優位を確保し得るよう、02PGと同様40ノット以上の速力が求められた[4]

    主機関はアメリカゼネラル・エレクトリック社が開発し、石川島播磨重工ライセンス生産しているLM500-G07ガスタービンエンジン(出力5,400馬力)を3基搭載している。各エンジンは船体に並列に並べられ、それぞれ一基のウォータージェット推進のノズルに接続されている。LM500-G07エンジンはミサイル艇1号型に搭載されているものと同型であるが出力が400馬力向上している。最大速力は44ノットに達する[5]ウォータージェット推進器としては、1号型では荏原製作所300CDW型が採用されたのに対して、本型では三菱重工業のMWJ-900Aとされている[2]

    機械室前方の補機室には発電機械2セットが設置されている。その原動機としては新潟鐵工所の6NSE-Gディーゼルエンジン(380馬力)、発電機としては東芝製の出力200キロワットのものが用いられている[2]

    装備[編集]

    戦闘システムの中核として戦闘指揮所に配置される戦術情報処理装置はOYQ-8B(12・13PGではOYQ-8C)とされている。これは1号型で装備されたOYQ-8の改良型で、電子計算機は新世代のUYK-44とされた[7]。OYQ-8と同様にリンク 11の運用能力を備えているのに加えて、データ通信付加装置を連接することで海上作戦部隊指揮管制支援システム(MOFシステム)にも対応している。MOFシステムは、艦橋構造物後方に配置されたNORA-1衛星通信装置を通じてSUPERBIRD B2通信衛星と接続して、地方総監部などから攻撃命令や攻撃に関する情報資料を受け取ることができる[2]

    兵装については、艦対艦ミサイル(SSM)は02PGと同じで90式艦対艦誘導弾連装発射筒2基を搭載した。一方、砲熕兵器については、02PGでは20mm多銃身機銃を搭載していたのに対し、本型では62口径76ミリ単装砲に変更された。これは、不法行動等対処任務の付加に伴って、小型武装船舶への対処に有効な武器として、一般的に小型武装船舶が保有すると見積もられる武器よりも射程が長く、相手に対して威圧可能な武器が求められたためであった。当初は40ミリ機関砲も検討の俎上に載せられていたが、76ミリ砲に比べて費用が高く、射程も短いこと、新たな砲の導入による教育や整備、それに伴う経費を考慮して棄却された[4]

    76ミリ単装砲は、他の護衛艦と同様に日本製鋼所ライセンス生産したものだが、本型では、海上自衛隊として初めてステルス型シールドを備えるとともに発射速度を向上させたスーパーラピッド砲が採用された[8]。シールドの形状変更は製造ライセンスの関係上、開発元のオート・メラーラ社からの承認に時間を要したという。目立たないが、砲基部の甲板とのリブにもステルス対策が施されている。射撃管制は射撃指揮装置2型31Cによる[2]

    このほか、対不審船用として、艦橋後方の01甲板上には、12.7mm重機関銃M2用の銃架が両舷各1基ずつ搭載されている[2][6]。また赤外線暗視装置OAX-2[5]や臨検用の6.3メートル型複合型作業艇なども搭載されている[2]

    同型艦一覧[編集]

    PG-826 おおたか
    PG-827 くまたか
    艦番号 艦名 建造 起工 進水 竣工 所属
    PG-824 はやぶさ 三菱重工業
    下関造船所
    2000年
    (平成12年)
    11月9日
    2001年
    (平成13年)
    6月13日
    2002年
    (平成14年)
    3月25日
    舞鶴地方隊
    舞鶴警備隊
    第2ミサイル艇隊
    PG-825 わかたか 2001年
    (平成13年)
    9月13日
    大湊地方隊
    余市防備隊
    第1ミサイル艇隊
    PG-826 おおたか 2001年
    (平成13年)
    10月2日
    2002年
    (平成14年)
    5月13日
    2003年
    (平成15年)
    3月24日
    佐世保地方隊
    佐世保警備隊
    第3ミサイル艇隊
    PG-827 くまたか 2002年
    (平成14年)
    8月2日
    大湊地方隊
    余市防備隊
    第1ミサイル艇隊
    PG-828 うみたか 2002年
    (平成14年)
    10月4日
    2003年
    (平成15年)
    5月21日
    2004年
    (平成16年)
    3月24日
    舞鶴地方隊
    舞鶴警備隊
    第2ミサイル艇隊
    PG-829 しらたか 2003年
    (平成15年)
    8月8日
    佐世保地方隊
    佐世保警備隊
    第3ミサイル艇隊

    将来[編集]

    令和3年度末から順次退役し、代替として防衛省技術研究本部が開発中の3900トン型護衛艦(FFM)が複数、就役する予定である[9]。また、はやぶさ型を代替するミサイル艇を開発する計画は存在しないが、31中期防においてはやぶさ型や2桁護衛隊の護衛艦が担っていた監視活動に特化した「哨戒艦」を導入する予定[10]

    なお、フィリピンは日本との防衛協力を拡大することを希望しており、2015年5月に供与を希望する装備品のリストを提示したが、これにはやぶさ型ミサイル艇が含まれていた[11]

    その他[編集]

    • 「しらたか」の進水命名式は、上記のとおり2003年8月8日に行われたが、おりから接近した平成15年台風第10号の強風の為、実際の進水(このクラスは全艇、クレーン船による釣り上げ進水である)作業は翌9日に実施された。
    • 海上保安庁に同名の航空機がある(「しらたか」除く)
    • 振動が激しいため、ブリッジなどのシートは、スポーツカーや航空機で実績が高いレカロ社製である。
    • 隊司令の個室がないため、(司令の個性にもよるが)艇長が自室を司令に譲り、自らは士官室のソファーで「まるで副直士官のように寝る」はめになることもある。

    プラモデル[編集]

    青島文化教材社プラモデル、「はやぶさ」「うみたか」には「領海侵犯船」が付属しており(発売日2011/2/28)[12]パッケージ尖閣諸島を背景に領海侵犯船が衝突しそうな様子が描かれ、商品説明は「領海侵犯船を新規に作りおこし、正義を希求する国民の声に応えるべくミサイル艇を再度商品化。」となっている。

    登場作品[編集]

    ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり
    漫画版に「うみたか」が登場。ヒロイン達を乗せて舞鶴基地から佐世保基地まで航行する。
    ゲートSeason2 自衛隊 彼の海にて、斯く戦えり
    「はやぶさ」と「うみたか」が登場。アヴィオン海での海賊対処のために特地に派遣され、その高速性をもって多くの海賊を壊滅させ、特地の海賊たちから『飛船』の異名で恐れられる。
    朝鮮半島を隔離せよ
    「しらたか」と「わかたか」が登場。上巻では、架空の自衛隊特殊部隊「サイレント・コア」を北朝鮮まで移送し、下巻終盤では、平壌の大同江羊角島で戦う陸上自衛隊を支援するために活躍する。
    『日本国召喚』
    「はやぶさ」と「うみたか」が登場。パーパルディア皇国デュロ防衛艦隊42隻が舞鶴港を奇襲しようとした際、舞鶴地方隊所属の2隻がこれを迎撃。44ノットの高速を生かした一撃離脱戦法で敵戦列艦艦隊を翻弄、76mmスーパーラピッド砲のみで全艦を撃沈し全滅させる。
    北方領土奪還作戦
    「しらたか」が登場。自衛隊が北方領土奪還のために発動した「KE作戦」において、択捉島空挺降下したロシア軍への艦砲射撃や上陸部隊を乗せた艦隊の迎撃など、孤軍奮闘の活躍を見せる。

    脚注[編集]

    [脚注の使い方]

    出典[編集]

    参考文献[編集]

    • 朝雲新聞社『自衛隊装備年鑑 2006-2007』朝雲新聞社、2006年。ISBN 4-7509-1027-9
    • 石井, 幸祐「海上自衛隊の最新鋭ミサイル艇「はやぶさ」型のすべて (特集・ミサイル艇)」『世界の艦船』第597号、海人社、2002年6月、 88-97頁、 NAID 40002156363
    • 『海上自衛隊50年史』海上幕僚監部、2003年。NCID BA67335381
    • 海人社, 編纂.「注目の新型ミサイル艇「はやぶさ」「わかたか」を見る!」『世界の艦船』第597号、海人社、2002年6月、 1-5頁、 NAID 40002156352
    • 香田, 洋二「国産護衛艦建造の歩み」『世界の艦船』第827号、海人社、2015年12月、 172頁、 NAID 40020655404
    • 山崎, 眞「わが国現有護衛艦のコンバット・システム」『世界の艦船』第748号、海人社、2011年10月、 98-107頁、 NAID 40018965310

    外部リンク[編集]

    ウィキメディア・コモンズには、はやぶさ型ミサイル艇に関するカテゴリがあります。