やえやま型掃海艦
やえやま型掃海艦 | |
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基本情報 | |
種別 | 掃海艦(MSO) |
運用者 | ![]() |
建造期間 | 1990年 - 1994年 |
就役期間 | 1993年 - 2017年 |
次級 | あわじ型 |
要目 | |
排水量 | 基準1,000トン / 満載1,200トン |
全長 | 67.0m |
最大幅 | 11.8m |
深さ | 5.2m |
吃水 | 3.1m |
主機 | 三菱6NMU−TKIディーゼルエンジン×2基 |
推進器 | スクリュープロペラ×2軸 |
出力 | 2,400馬力 |
速力 | 14 ノット (26 km/h) |
乗員 | 60人 |
兵装 | JM61-M 20mm機銃×1門 |
レーダー | OPS-39-Y 対水上捜索用×1基 |
ソナー | AN/SQQ-32 可変深度式×1基 |
特殊装備 | 機雷処分具S-7 2形 89式係維掃海具S-8 85式磁気掃海具S-6 71式音響掃海具S-2改1 |
やえやま型掃海艦(やえやまがたそうかいかん、英語: Yaeyama-class minesweeper)は、海上自衛隊の掃海艦(Mine Sweeper Ocean, MSO)の艦級[1]。
潜水艦隊のための航路啓開を主任務としており、従来の掃海艇では対処不可能な深深度に敷設された機雷への対処能力が付与されている[1]。従来の海上自衛隊掃海艇と同様、磁気反応型機雷を避けるため木造であり[1]、アメリカ海軍のアヴェンジャー級とともに、世界最大級の木造船舶となっている[2][3]。
来歴[編集]
1970年代初期、優勢なアメリカ海軍原子力潜水艦に対抗して、ソビエト連邦軍は機雷の高性能化・深深度化を進めており、アンテナ機雷や短係止上昇式機雷のなかには水深2,000メートルまで敷設可能なものも出現してきた。このような深深度に敷設された機雷には、従来の掃海艇では対処困難であり、海中を航行する潜水艦にとって大きな脅威となった[4][5]。
海上自衛隊においては、特に豊後水道・浦賀水道の2つのチョークポイントに機雷を設置された場合、それぞれ呉基地の第1潜水隊群、横須賀基地の第2潜水隊群の活動が大きく掣肘されることから、深深度の対潜機雷への対処能力の整備は非常に切迫したものとなった。このことから、61中期防においては、中深度域での機雷対処能力を備えた掃海艇(MSC)と、深深度機雷に対処するための1,000トン型掃海艦を整備することとされた。前者として整備されたのがうわじま型(63MSC)であり、後者として整備されたのが本型である[2]。
設計[編集]
本型の設計は、同様の目的でアメリカ海軍が1980年代に建造したアヴェンジャー級掃海艦に類似している。船首楼を全長の3/4以上に延伸して船首楼甲板を強度甲板とすることで、縦強度の保持および部材寸法の上昇を抑えている[6]。
また艦の大型化に伴う剪断応力の増加および板厚増に対処するため、外板構造は、内層板を互いに直交する斜め張りとしてこれに外層の縦張り板を張るという三層両矢羽根構造とされている。従来の掃海艇と同じ二重矢羽根構造を採用していた場合は内層板厚は47mmになったと考えられていたが、これによって20mmに抑えられている。使用樹種は下記の通りで、63MSCと同様である[3]。
主機関としては、63MSCの搭載機と同系列だがより大出力(1,200馬力/1,000rpm)の三菱重工業製4サイクル非磁性ディーゼルエンジンである6NMU-TKIを、二重防振装置を介して搭載した[7]。また初めてバウ・スラスターを装備すると共に、GPSを利用した精密航法装置・自動操艦装置を搭載し、艦位保持機能の向上を図っている[3]。
装備[編集]
センサー[編集]
機雷探知機としては、アヴェンジャー級と同じく、ハル・ソナーと可変深度ソナーを兼用するAN/SQQ-32を搭載した。これはアメリカのレイセオン社とフランスのトムソン・シントラ社により開発されたもので、機雷探知機能はレイセオン社の技術に基づいて35キロヘルツの周波数を使用しており、5本の垂直ビームによって全周にわたって海面から海底までを捜索できる。一方、機雷類別機能はトムソン・シントラ社の技術に基づいて445-650キロヘルツの周波数を使用しており、0.13度の分解能を誇っている[8]。
一方、対水上捜索レーダーとしては、63MSCと同系列のXバンドのOPS-39-Yが搭載される[9]。
機雷掃討[編集]
63MSCで搭載された中深度対応の機雷処分具S-7 1形をもとに深深度に対応して発展させた機雷処分具S-7 2形を搭載する[2]。これは有線式の遠隔操作無人探査機(ROV)で、円筒形の機体の後方には可動式のスラスターが、前方には上下動用のスラスターがトンネルを設けて設置されている。先端には精密走査用のイメージング・ソナー(超音波水中映像装置)、低光量ビデオカメラおよびサーチライトが装備されている。
機雷処分用として、胴体下に処分爆雷1発を搭載しており、海底の機雷に向けて投下して破壊する[10]。また2形では、1形にはなかった係維索切断用のカッターも備えている[11]。
機雷掃海[編集]
- 係維掃海具
- 深深度機雷に対処できる新型機として89式係維掃海具S-8を搭載する。これはカッターのついた掃海索を深度数百メートルに下ろして、これを曳航しながら機雷の係維索を切断していくものであり、従来の係維掃海具よりも長大な掃海索を備えることから、両舷の掃海範囲の幅を一定に保つための展開器や深度を一定に保つ沈降装置も新規開発となった[2]。
- 感応掃海具
- 感応機雷に対する掃海具は63MSCと共通で、71式音響掃海具S-2改1と85式磁気掃海具S-6を搭載する[3]。
配備[編集]
艦番号 | 艦名 | 建造 | 起工 | 進水 | 竣工 | 除籍 | 所属 |
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MSO-301 | やえやま | 日立造船 神奈川工場 |
1990年 (平成2年) 8月30日 |
1991年 (平成3年) 8月29日 |
1993年 (平成5年) 3月16日 |
2016年 (平成28年) 6月28日 |
最終所属 掃海隊群第51掃海隊 (横須賀基地) |
MSO-302 | つしま | 日本鋼管 鶴見造船所 |
1990年 (平成2年) 7月30日 |
1991年 (平成3年) 9月20日 |
1993年 (平成5年) 3月23日 |
2016年 (平成28年) 7月1日 |
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MSO-303 | はちじょう | 1991年 (平成3年) 5月17日 |
1992年 (平成4年) 12月15日 |
1994年 (平成6年) 3月24日 |
2017年 (平成29年) 6月6日 |
最終所属 掃海隊群第1掃海隊 (横須賀基地) |
参考文献[編集]
- ^ a b c d 自衛隊装備年鑑 2006-2007 朝雲新聞社 P244-245 ISBN 4-7509-1027-9
- ^ a b c d 稲山克己「海上自衛隊の1,000トン型掃海艦 (掃海艦艇のメカニズム)」、『世界の艦船』第427号、海人社、1990年10月、 104-105頁。
- ^ a b c d 廣郡洋祐「海上自衛隊 木造掃海艇建造史」、『世界の艦船』第725号、海人社、2010年6月、 155-161頁、 NAID 40017088939。
- ^ 井川宏「掃海艦艇の特質と種類 (掃海艦艇のメカニズム)」、『世界の艦船』第427号、海人社、1990年10月、 69-73頁。
- ^ 大平忠「機雷処分具 (現代の掃海艦艇を解剖する)」、『世界の艦船』第427号、海人社、1990年10月、 96-99頁。
- ^ 「船体 (現代の掃海艦艇を解剖する)」、『世界の艦船』第427号、海人社、1990年10月、 76-79頁。
- ^ 佐藤一也「4サイクルディーゼル機関の技術系統化調査」、『国立科学博物館 技術の系統化調査報告 第12集』2008年3月。
- ^ 黒川武彦「センサー (現代の掃海艦艇を解剖する)」、『世界の艦船』第427号、海人社、1990年10月、 88-91頁。
- ^ 「海上自衛隊の現有艦載レーダー」、『世界の艦船』第607号、海人社、2003年2月、 41-45頁、 NAID 40005630576。
- ^ 岡部いさく「海上自衛隊の新型掃海/掃討システム (特集 新しい対機雷戦)」、『世界の艦船』第631号、海人社、2004年9月、 90-93頁、 NAID 40006349317。
- ^ 「3.水雷兵器 (海上自衛隊の艦載兵器1952-2010)」、『世界の艦船』第721号、海人社、2010年3月、 94-99頁、 NAID 40016963808。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
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