すがしま型掃海艇

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
すがしま型掃海艇
JMDSF MSC688 Aishima-090218-N-4811K-874.jpg
基本情報
種別 中型掃海艇(MSC)
運用者  海上自衛隊
建造期間 1996年 - 2007年
就役期間 1999年 - 就役中
前級 うわじま型掃海艇
次級 ひらしま型掃海艇
要目
基準排水量 510トン
満載排水量 590トン
全長 54.0 メートル (177.2 ft)
全幅 9.4メートル (31 ft)
深さ 4.5メートル (15 ft)
吃水 3.0メートル (9.8 ft)
機関方式 CODOE方式
三菱6NM-TA(B)Iディーゼルエンジン (900 hp/670 kW)×2基
電動機 (130 kW/170 hp)×2基
推進器 スクリュープロペラ×2軸
電力 ディーゼル主発電機 (200kW)×4基
速力 14 ノット (26 km/h)
乗員 45人
兵装 JM61-M 20mm多銃身機銃×1門
搭載艇 4.9m型複合作業艇×1隻
ジェミニ・ディンギー処分艇×1隻
C4ISTAR NAUTIS-M情報処理装置
レーダー OPS-39-Y 対水上捜索用×1基
ソナー TYPE-2093 可変深度式×1基
特殊装備 PAP-104 Mk.5機雷処分具×2機
53式普通掃海具(O型)改6
DYAD感応掃海具 ※必要に応じ運用
テンプレートを表示

すがしま型掃海艇(すがしまがたそうかいてい、英語: Sugashima-class minesweepers)は、海上自衛隊の中型掃海艇Mine Sweeper Coastal, MSC)の艦級[1]ネームシップの建造単価は146億円であった[2]

自衛隊ペルシャ湾派遣の経験にもとづき、ヨーロッパから輸入した対機雷戦システムを搭載した機雷掃討メインの艇であり、03中期防08中期防13中期防にかけて計12隻が建造された[1]

来歴[編集]

海上自衛隊掃海隊群では、その前身組織の時代より、太平洋戦争中に日米双方が日本近海に敷設した機雷の掃海作業というかたちで実任務を遂行してきた。そして保安庁警備隊時代より、そのノウハウを反映した掃海艦艇を国産しており、その実力は世界の主要海軍のなかもトップレベルにあるとされていた。しかし一方で、1990年代に至るまで時代を画するような新装備の導入もドラスチックな組織的変化もなく、地道で着実な整備が指向されていた[3]

そして1991年自衛隊ペルシャ湾派遣での経験が、この状況に一石を投じることとなった。湾岸戦争中にイラク軍が使用した機雷のなかにはMANTA機雷のような新型のステルス機雷が含まれていたが、これに対し、派遣部隊を構成していたはつしま型や、当時新鋭の中深度対応掃海艇であるうわじま型(63MSC)でも、探知・処分は極めて困難であることが判明した。また同作戦に参加した欧米諸国軍と比して、艇の安全性や処分作業の自動化・省力化において大きな立ち遅れがあると判断された[4]

このことから、1992年より海上幕僚監部において、平成6年度計画で建造する掃海艇(06MSC)における対機雷戦システムの研究が着手された。研究にあたっては、当時の欧米諸国掃海艇のなかでは最新であったイギリス海軍サンダウン級機雷掃討艇がモデルとして採択され、1995年3月には2番艇「インバネス」への乗艦研修を含むイギリスでの現地調査が行われた。これらの研究結果を総合して、06MSCは同級搭載の対機雷戦システムを導入した500トン型掃海艇として要求されたものの、大蔵省との折衝の過程で、予算枠上の問題から06MSCは従来の63MSCに準じた設計とされ、新型掃海艇は次年度に見送りとなった。翌年度、510トン型として改めて要求がなされ、計画通り07MSCとして予算成立した[4]

船体[編集]

船体設計はおおむね63MSCのものが踏襲され、使用樹種も下記の通りで同一である[5]

  • ベイマツ - キール・スケグ、船底縦通材、チャイン材、フレーム、外板・甲板
  • ケヤキ - キール摩材
  • タモ - 合板

ただし、従来の掃海艇では掃海具の展張のために広い船尾甲板が要求されていたのに対し、本型ではサンダウン級と同様に掃討重視の艇とされたことからその必要は薄れた一方、居住性の向上や機雷処分具の格納庫を設ける必要があったことから、船首楼はかなり延長されている[6]。これは、原型のサンダウン級をおおきく上回る排水量であってはならないという制約によるものでもあった[5]

船首楼後端の左舷側にはPAP-104 Mk.5機雷処分具2機分の格納庫が設けられており、レールにのせて後方に引き出すことができる。その後方の船尾甲板には、左舷側には機雷処分具の揚降用の掃討用クレーンが、右舷側には普通掃海具の揚降などに用いられる掃海用ダビットが設けられている[6]。また艦橋からの後方視界向上を意図し、掃海艇では初めて2本並列配置となったが、運用の結果、艦橋左右後方の視界を妨げることから、続くひらしま型(16MSC)では従来通りの1本煙突に戻されている[5]

機関[編集]

推進方式としては、従来のディーゼルエンジンによる機械駆動とともに、低速時用の補助推進装置として電動推進方式を併用している。これは、特に機雷掃討時には低速で長時間航走する必要があり、また放射雑音およびキャビテーションノイズ低減が求められたためである。主機関は63MSCと同じ6NMU-TA(B)Iが採用された[7]。これは輸送艇1号型などに搭載された三菱重工業のSU系列ディーゼル(S6U)を非磁性化して技術研究本部が開発した4サイクル6気筒ディーゼルエンジンであり、同系列の機種ははつしま型後期型(60MSC)より踏襲されてきている[8]。また省力化のため、機関制御は全て艦橋からの遠隔操作であり、機械室に当直は配置されない[6]

なお水中放射雑音低減のため、主発電機4基は、各原動機とともに水線より上、船首楼内の第1甲板に配置されている[4]。磁気掃海具が永久磁石式とされたこともあり、掃海発電機は搭載されていない[9]

機雷掃海時には航路保持が求められるのに対し、機雷掃討時には定点保持(Hoverring Positioning)が求められることから、GPSと連動した自動船位保持装置も本級より新たに導入された。機雷掃討の際の運動性能向上、ホーバリング性能向上のため、可変ピッチプロペラ、バウ・スラスター、シリング舵を採用し、これと連動する自動操艦装置の装備などで運用性の向上が図られている[4]

装備[編集]

船尾甲板。右舷側には掃海用ダビッドと掃海浮標、左舷側には掃討用クレーンとPAP-104が1機あり、また舷側には横抱き式に展開器が収納されている

本型においては、英サンダウン級で搭載された情報処理装置・機雷探知機・機雷処分具の3点セットが導入されている。また係維掃海具としては63MSCと同じものが搭載されたが、感応掃海具の自艇搭載は断念された。

C4ISTAR[編集]

本型の対機雷戦システムの大きな特徴が、情報処理装置を中核としたシステム構築がなされている点である。その機種としては、英GECマルコーニ社製情報処理装置(NAUTIS-M; 最終バッチ2隻はNAUTIS-M-1)が採用された。これはサンダウン級用に開発されたもので、機雷戦艦艇で求められる対衝撃性(30G)、非磁性などの要求を達成している。3台のコンソールからなっており、レーダーや機雷探知機などと連接されて、航海情報管理、また対機雷戦計画・評価支援機能を備えている[10]

機雷探知機としては、可変深度式のTYPE-2093ソナーが搭載された。これは上部構造物前端の甲板室内に設置されており[6]、ウィンチによって300メートルの深度まで吊下することができる。機雷探知用としては80キロヘルツ、類別用としては350キロヘルツの周波数を使用しており、最大1,200メートルという長距離探知と0.3度の分解能を両立している。最大使用速力は12ノットである[11]

機雷掃討[編集]

機雷処分具としては、初の海外機として、フランス製のPAP-104 Mk.5をライセンス生産により搭載している。従来海自掃海艇が搭載してきた国産機が電源ケーブルによる外部給電を使用していたのに対し、電池を内蔵して、ケーブルは光ファイバーのみとすることで、活動可能時間が短縮したかわりに優れた機動性を備えている。英サンダウン級以外にも、仏・蘭・白共同開発のトリパルタイト型機雷掃討艇でも採用された傑作機であり、13か国の海軍に400機以上が納入されている[12][13]

機雷掃海[編集]

原型となった英サンダウン級は機雷掃海能力を持たない掃討専用艇であったが、日本近海には機雷掃討に不適な泥質の海底も多いことから、本型では機雷掃海能力も付与されている。

係維掃海具
係維機雷に対しては、63MSCと同じく53式普通掃海具(O型)改6が搭載された[5]。これは28MSC以来の53式普通掃海具(O型)をもとに、対艇掃海によって中深度域の掃海に対応したものである。オロペサ型係維掃海具(O型掃海具)は、展開器と呼ばれる水中凧によって掃海索を左右数百メートルに展開するとともに沈降器によって一定深度に沈下させて曳航し、機雷の係維索を引っ掛けて、掃海索の数カ所に装備した切断器によってこれを切断していくものである[14]
感応掃海具
排水量でサンダウン級を大きく上回ることができないなどの設計上の制約の問題から、従来の海自掃海艇で採用されてきた国産機は搭載できなかった。このことから、感応掃海具としては、オーストラリアADI社製のDYAD(ダイヤード)を必要に応じて搭載する方式とされた。これは永久磁石式の磁気掃海具と水流を利用した音響発生装置(パイプノイズメーカ, PNM)による、設備電力を必要としない複合掃海具で、艦船の磁気分布を模倣できる。ただし感応掃海具を使用する際には母艦などからDYADを受け取る必要があるため、運用上の制約が大きく、続くひらしま型(16MSC)では自艇搭載が設計上の要求事項とされることになった[15][16]

同型艦[編集]

計画年度 # 艦名 起工 進水 竣工 所属
平成7年 MSC-681 すがしま 1996年
(平成8年)
5月8日
1997年
(平成9年)
8月25日
1999年
(平成11年)
3月16日
舞鶴地方隊
第44掃海隊
MSC-682 のとじま 1997年
(平成9年)
9月3日
平成8年 MSC-683 つのしま 1997年
(平成9年)
8月7日
1998年
(平成10年)
10月22日
2000年
(平成12年)
3月13日
呉地方隊
阪神基地隊
第42掃海隊
平成9年 MSC-684 なおしま 1998年
(平成10年)
4月17日
1999年
(平成11年)
10月7日
2001年
(平成13年)
3月16日
平成10年 MSC-685 とよしま 1999年
(平成11年)
4月26日
2000年
(平成12年)
9月13日
2002年
(平成14年)
3月14日
佐世保地方隊
下関基地隊
第43掃海隊
平成11年 MSC-686 うくしま 2000年
(平成12年)
5月17日
2001年
(平成13年)
9月17日
2003年
(平成15年)
3月18日
MSC-687 いずしま 2000年
(平成12年)
4月27日
2001年
(平成13年)
10月31日
大湊地方隊
函館基地隊
第45掃海隊
平成12年 MSC-688 あいしま 2001年
(平成13年)
4月17日
2002年
(平成14年)
10月8日
2004年
(平成16年)
2月26日
掃海隊群
第3掃海隊
平成13年 MSC-689 あおしま 2002年
(平成14年)
4月15日
2003年
(平成15年)
9月16日
2005年
(平成17年)
2月9日
佐世保地方隊
沖縄基地隊
第46掃海隊
MSC-690 みやじま 2002年
(平成14年)
5月28日
2003年
(平成15年)
10月10日
掃海隊群
第3掃海隊
平成14年 MSC-691 ししじま 2003年
(平成15年)
5月23日
2004年
(平成16年)
9月29日
2006年
(平成18年)
2月8日
佐世保地方隊
沖縄基地隊
第46掃海隊
平成15年 MSC-692 くろしま 2004年
(平成16年)
5月12日
2005年
(平成17年)
8月31日
2007年
(平成19年)
2月23日

参考文献[編集]

  1. ^ a b 自衛隊装備年鑑 2006-2007 朝雲新聞 P250-251 ISBN 4-7509-1027-9
  2. ^ 防衛省経理装備局 艦船武器課 (2011年3月). “艦船の生産・技術基盤の現状について (PDF)”. 2015年6月28日閲覧。
  3. ^ 稲山克己「海上自衛隊の1,000トン型掃海艦 (掃海艦艇のメカニズム)」、『世界の艦船』第427号、海人社、1990年10月、 104-105頁。
  4. ^ a b c d 「「すがしま」型掃海艇の建造」『海上自衛隊五十年史』 海上自衛隊 50年史編さん委員会、防衛庁海上幕僚監部、2003年
  5. ^ a b c d 廣郡洋祐「海上自衛隊 木造掃海艇建造史」、『世界の艦船』第725号、海人社、2010年6月、 155-161頁、 NAID 40017088939
  6. ^ a b c d 「新型掃海艇「すがしま」「のとじま」の明細」、『世界の艦船』第553号、海人社、1999年6月、 141-143頁、 NAID 40002155524
  7. ^ 佐藤一也「4サイクルディーゼル機関の技術系統化調査」、『国立科学博物館 技術の系統化調査報告 第12集』2008年3月。
  8. ^ 「海上自衛隊全艦艇史」、『世界の艦船』第630号、海人社、2004年8月、 1-261頁、 NAID 40006330308
  9. ^ 「世界の代表的対機雷戦艦艇 (特集 新しい対機雷戦)」、『世界の艦船』第631号、海人社、2004年9月、 74-81頁、 NAID 40006349315
  10. ^ 赤尾利雄「指揮管制装置 (現代の掃海艦艇を解剖する)」、『世界の艦船』第427号、海人社、1990年10月、 84-87頁。
  11. ^ 黒川武彦「センサー (現代の掃海艦艇を解剖する)」、『世界の艦船』第427号、海人社、1990年10月、 88-91頁。
  12. ^ 大平忠「機雷処分具 (現代の掃海艦艇を解剖する)」、『世界の艦船』第427号、海人社、1990年10月、 96-99頁。
  13. ^ Norman Friedman (2006). The Naval Institute guide to world naval weapon systems. Naval Institute Press. ISBN 9781557502629. http://books.google.co.jp/books?id=4S3h8j_NEmkC. 
  14. ^ 梅垣宏史「掃海具 (現代の掃海艦艇を解剖する)」、『世界の艦船』第427号、海人社、1990年10月、 92-95頁。
  15. ^ 髙橋陽一「機雷戦艦艇 (特集 海上自衛隊の新艦載兵器) -- (注目の新艦載兵器)」、『世界の艦船』第778号、海人社、2013年5月、 92-97頁、 NAID 40019640900
  16. ^ 技術開発官(船舶担当) 『技術研究本部50年史』(PDF)、2002年、72-115頁。2014年1月27日閲覧。

外部リンク[編集]