はたかぜ型護衛艦

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はたかぜ型護衛艦
平成22年度 日米共同統合演習における「はたかぜ」
DDG-171 「はたかぜ」
艦級概観
艦種 ミサイル護衛艦 (DDG)
建造期間 1983年 - 1988年
就役期間 1986年 - 就役中
前級 たちかぜ型
次級 こんごう型
性能諸元
排水量 基準:4,600トン
(2番艦は50トン増)
満載:5,900トン
(2番艦は50トン増)
全長 150 m
全幅 16.4 m
吃水 4.8 m
深さ 9.8 m
機関 COGAG方式
TM3Bガスタービンエンジン
(22,500 shp)
2基
SM1Aガスタービンエンジン
(13,500 shp)
2基
可変ピッチ・プロペラ 2軸
速力 最大30ノット
航続距離 6,000海里 (20ノット巡航時)[1]
乗員 260人
兵装 54口径127mm単装速射砲 2基
高性能20mm機関砲 (CIWS) 2基
Mk.13 mod.4 単装ミサイル発射機
SM-1MR SAM用)
1基
ハープーンSSM4連装発射筒 2基
アスロックSUM8連装発射機 1基
324mm3連装短魚雷発射管 2基
艦載機 ヘリコプター甲板のみ
FCS Mk.74 mod.13 SAM用 1基
FCS-2-21C 主砲用 1基
SFCS-6A 水中用 1基
C4I SUPERBIRD B2衛星通信装置
※後日装備
OYQ-4-1戦術情報処理装置
レーダー AN/SPS-52C 3次元式 1基
OPS-11C 対空捜索用 1基
OPS-28B 対水上捜索用 1基
ソナー OQS-4(I) 艦首装備式 1基
電子戦
対抗手段
NOLQ-1電波探知妨害装置
OLR-9Bミサイル警報装置
Mk.137 6連装デコイ発射機 4基
曳航具3型 対魚雷デコイ装置

はたかぜ型護衛艦(はたかぜがたごえいかん、英語: Hatakaze-class destroyer)は、海上自衛隊護衛艦の艦級[2]たちかぜ型(46DDG)に続く第三世代ミサイル護衛艦(DDG)として、五三・五六中業中の昭和5658年度計画で計2隻が建造された[2]ネームシップの建造単価は約599億円であった[3]

来歴[編集]

海上自衛隊は、第1次防衛力整備計画期間中の「あまつかぜ」(35DDG)によってミサイル護衛艦(DDG)の整備に着手した。そしてたちかぜ型(46DDG)3隻の整備によって、五三中業の時点で、8艦8機体制下の護衛艦隊に必要な8隻のミサイル護衛艦のうち半分が充足することとなった[1]

これらの艦は、いずれもアメリカ海軍チャールズ・F・アダムズ級ミサイル駆逐艦に準じて、艦後部にターター・システムを搭載する設計を採用していたことから、ミサイルの射界はおおむね後方に限られた。これは適宜回頭・変針することによって補うことはできるが、戦術行動の自由度という観点からは、前方にターター・システムを装備した艦を従来艦とペアで配備するほうが望ましいことは明らかであった。またたちかぜ型3番艦(53DDG)は、護衛艦へのガスタービンエンジン導入開始後に建造されたものの、この規模の艦に適した規模のガスタービンエンジンが入手できなかったことから、従来通りの蒸気タービン艦として建造されていた[1]

53中業の当初計画では、各護衛隊群の8艦8機体制化のため、DDG 4隻の建造が検討されており、これらは船体前部にターター・システムを装備するとともに主機をガスタービン化した新型艦とすることになった。これが本型である。ただしDDG用ガスタービン主機の導入可能性の見極めや経費枠による整備隻数の問題から、53中業中での建造数は1隻に削減され、残り3隻は56中業に先送りされることになった。その後、56中業での計画数は2隻に削減されたうえに、昭和60年度で予定されていた3番艦の建造は中止され[2]、DDに振り替えられた。これは、この時点でイージスシステムの対日リリースの公算が高まったことから、あえて8艦8機体制に必要なDDGの所要数を完全には充足させず、将来のイージス艦のための建造余席を確保するための措置であった[4][注 1]

設計[編集]

基本計画番号はF112とされた[5]

船体[編集]

DDG171Hatakaze.jpg

設計面では、本型にやや遅れて計画が進められていたあさぎり型(58DD)との共通点が多くなっており、船型も、全通上甲板を有する長船首楼型とされている。また顕著なナックルを有するのも同様である。ただし長さ/幅比(L/B比)は9.1と、はるな型(43/45DDH)に近い幅広の船型とされた(たちかぜ型は10、あさぎり型は9.4)。これはガスタービン主機の採用によって機関部重量が減少し、一方でCIWSやSSMなど搭載装備が増加したことによる重心上昇に対して、復原性を確保するための措置であった。またシアは少ないものとされている一方で、護衛艦としては珍しくブルワークを設けている。これは、艦首甲板のミサイル発射機を用いてミサイルの搭載・陸揚作業を行うための甲板平坦部を確保するとともに、凌波性も確保するための措置であった[1]

8艦8機体制下として初めて計画されたミサイル護衛艦として、艦尾甲板をヘリコプター甲板として設定している。ただしハンガーを設置しないため固有の艦載機はもたないほか、通常の状態では所要の甲板長を確保できないことから、発着の際には52番砲の砲身を90度横に向けることで対処している。また発着の安全性向上の為、ミサイル護衛艦として初めてフィンスタビライザーが装備された[1]

なお2番艦「しまかぜ」では、同年度の「あさぎり」(58DD)と同様、大きな把駐力を期待できる新型のAC-14型の錨を採用している[1]

機関[編集]

主機関としては、ミサイル護衛艦としては初めてガスタービンエンジンを採用している。あさぎり型(58DD)で大出力のロールス・ロイス スペイが搭載予定となったことを受けて、このスペイSM1Aと、はつゆき型(52DD)の高速機であるロールス・ロイス オリンパスTM3BCOGAG方式に配することで、1軸あたり36,000馬力を確保している。このような異機種ガスタービンの組み合わせによるCOGAG構成は、西側諸国では類を見ないものであった。ただし入手可能な主機関の出力と船体寸法を考慮して、最大速力は、部隊運用上の許容最低値である30ノットと妥協された(たちかぜ型は32ノット)[1]

船体寸法の制約上、たちかぜ型を含む蒸気タービン艦のように機関部をシフト配置とすることができず、はつゆき型と同様のパラレル配置とされている。なお、本型は推進装置の水中放射雑音の低減対策を総合的に実施した初の護衛艦であり、しらね型(50/52DDH)で導入されたハル・マスカーおよびプレリーに加えて、主機・補機や減速機の防振支持化や主要配管の防振対策、防振材の大量使用や防振継手の採用など多岐にわたる措置が徹底された[1]

電源としては、ガスタービン駆動およびディーゼル駆動の主発電機を各1基(出力はいずれも1,200キロワット)を第1・3機械室にそれぞれ配置するとともに、ディーゼル非常発電機(300キロワット)を第3甲板の船体前後に分散配置している[1]。ガスタービン主発電機の原動機は川崎重工業M1A-05ガスタービンエンジンであるが、これは第1世代護衛艦などで搭載されたM1A-02の強化版であった[6]

装備[編集]

本型の武器システムは、基本的に「さわかぜ」(53DDG)のものを踏襲している。特にSAM・CICシステムはアメリカ海軍カリフォルニア級原子力ミサイル巡洋艦の半分の能力を備えており、イージス以前の在来型ミサイル駆逐艦としては頂点に立つものとされていた[1]

C4ISR[編集]

戦闘システムの中核となる戦術情報処理装置は、「さわかぜ」のOYQ-4に改善を加えたOYQ-4-1である。電子計算機としてはAN/UYK-7 2基、TDSコンソールとしては、大型のAN/UYA-4(OJ-197)1基および標準のAN/UYA-4(OJ-194B)9基が配されており、ターター艦としては極めて充実したものとなっている。このために戦闘指揮所(CIC)や関連機器室、空調設備はたちかぜ型と比して大幅に拡張する必要があったが、はつゆき型以来標準となったCIC船体内配置化によって、十分な容積を確保した[1]

3次元レーダーは「さわかぜ」と同型のAN/SPS-52Cとされた。「たちかぜ」(46DDG)の建造当初に搭載されていたOYQ-1とAN/SPS-52Bレーダーの組み合わせでは、目標情報は手動入力、追尾も半自動式であったのに対し、本型のシステムでは自動探知・自動追尾が可能となったため、システムとしての対空目標追尾能力は著しく向上している[1]

対空捜索レーダーはOPS-11Cを後檣頂部に、対水上捜索レーダーはOPS-28を前檣頂部に装備した。OPS-11は、当初計画では前檣のもっと高い位置に配されていたが、ガスタービンの排気の影響を避けるために後檣を新設してここに移動したものである。また電子戦システムとしては、NOLQ-1電波探知妨害装置(ESM/ECM)およびOLR-9Bミサイル警報装置が装備された。これらはいずれも「さわかぜ」と同様であった[1]

ソナーについても「さわかぜ」と同様で、OQS-4(I)をバウ・ドームに収容して装備している[1]

武器システム[編集]

Mk.13 mod.4 ミサイル発射機

本型の主要な武器システムとなるのはターターD・システムである。そのサブシステムはいずれも「さわかぜ」(53DDG)と同型で[1]Mk.74 mod.13ミサイル射撃指揮装置(GMFCS)Mk.13 mod.4 ミサイル発射機(GMLS)RIM-66B/E スタンダードMR(SM-1MR)艦隊防空ミサイル(SAM)から構成される[7]。上記のとおり、本型では艦の前方象限での交戦能力が求められたことから、GMLSは艦首甲板に、また2基のGMFCSも前部上構上に配されている[1]。就役後、スタンダードSM-2の運用能力付与、またアメリカ海軍がターターD搭載艦に対して行ったNTU改修に準じた近代化改修も検討されたものの、イージスシステム搭載ミサイル護衛艦導入を優先する観点から、これは見送られている[1]

なお、「さわかぜ」ではMk.13 GMLSを用いてハープーン艦対艦ミサイルの運用を行っていたが、その分だけSM-1MRに充当される弾庫容量が奪われることから、本型では、あさぎり型(58DD)と同様に、ハープーン専用の4連装発射筒2基を煙突後部両舷の01甲板上に対向装備として、Mk.13 mod.4 GMLSはSM-1MR専用としている[1]

主砲としては73式54口径5インチ単装速射砲を前部甲板室上と後甲板上に1基ずつ搭載、砲射撃指揮装置(GFCS)としては艦橋構造物上に81式射撃指揮装置2型22(FCS-2-22)を搭載した。また近接防空用として、高性能20mm機関砲CIWS)2基が後部上構両舷に装備されている[1]

前部砲塔直後にアスロック対潜ミサイル用の74式アスロック・ランチャーを搭載するのはたちかぜ型(46DDG)と同様だが、はつゆき型(52DD)以来採用された弾庫からの直接装填方式が踏襲されたことから、ランチャーの装備位置は艦橋構造物寄りとなり、また同構造物前面は傾斜して装填用の扉が設置されたものとなった。また68式3連装短魚雷発射管も、従来通り装備されており、装備位置はSSM直下の上甲板上両舷である。水中攻撃指揮装置は「さわかぜ」やはつゆき型、あさぎり型と同じくSFCS-6である[1]

同型艦[編集]

艦番号 艦名 建造 起工 進水 竣工 所属
DDG-171 はたかぜ 三菱重工業
長崎造船所
1983年
(昭和58年)
5月20日
1984年
(昭和59年)
11月9日
1986年
(昭和61年)
3月27日
第1護衛隊群第1護衛隊
横須賀基地
DDG-172 しまかぜ 1985年
(昭和60年)
1月13日
1987年
(昭和62年)
1月30日
1988年
(昭和63年)
3月23日
第4護衛隊群第8護衛隊
佐世保基地

運用史[編集]

上記の通り、一時は近代化改修の計画があったものの実現せず、就役後は大きな変化なく活動を続けている。平成24年、25年、27年、28年度予算で延べ4隻分の艦齢延伸のための先行的部品調達予算が、平成26年度予算で1隻分の改修予算が計上された。艦齢延伸措置を行い、運用期間をこれまでより10年程度延伸する計画を予定している[8]

現在、建造中であるまや型(27DDG)就役によりはたかぜ型2隻は練習艦に種別変更される予定である[9]

登場作品[編集]

映画・テレビドラマ[編集]

ゴジラシリーズ
ゴジラ×メカゴジラ
「はたかぜ」が登場。千葉県館山市(として撮影された横須賀基地)に係留されている。
ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS
「はたかぜ」と艦名不明の同型艦1隻が登場。太平洋上にて日本に向かうゴジラを、DD-147「あいづ」とともに迎撃する。
世にも奇妙な物語
第139話に「はたかぜ」が登場。乗員が次々に消えていくという怪奇現象に遭遇する。

アニメ・漫画[編集]

新世紀エヴァンゲリオン
TVアニメ版に国連海軍所属艦艇として登場。
続・戦国自衛隊
「はたかぜ」が登場。朝鮮半島へ派遣される陸上自衛隊を乗せたおおすみ型輸送艦おおすみ」を、こんごう型護衛艦こんごう」とともに護衛する。

小説[編集]

大逆転!ミッドウェー海戦
「はたかぜ」が登場。「環太平洋合同演習」(リムパック)へ参加するためミッドウェー島沖を航行していた最中、アメリカタイムトラベル実験に巻き込まれ、同じく演習に参加する予定だった3隻の他艦とともにミッドウェー海戦勃発直前の同沖へタイムスリップする。そこで、襲来する旧アメリカ海軍機をスタンダードミサイルで迎撃する。
ニセコ要塞1986
IBM海軍所属の艦艇として「はたかぜ」が登場。物語中盤、石狩湾への上陸を目論むスミノフ艦隊と輸送船団を迎撃するためにアイオワ級戦艦ニュージャージー」、ニミッツ級航空母艦ニミッツ」などとともに出撃するが、スミノフ艦隊の対艦ミサイル攻撃により撃沈されてしまう。
『日本北朝鮮戦争 竹島沖大空海戦』
北朝鮮から発射されたノドンIIを迎撃するために「しまかぜ」が出撃し、こんごう型護衛艦こんごう」、はつゆき型護衛艦はまゆき」「まつゆき」とともにSM-3を発射する[10]
亡国のイージス
第65護衛隊(架空)所属艦として架空の3番艦「DDG-183 いそかぜ」が登場。ただし、改装してFCS-3VLSを搭載したという設定で、作中では「ミニ・イージス艦」として扱われる。

ゲーム[編集]

エースコンバットシリーズ
大半の作品で、巡洋艦(CRUISER)のCGモデルとして使われている。

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 仮に56中業でターターDDGを2隻建造していた場合、4個護衛隊群に必要な計8隻のDDGはすべてターターDDGで充足するため、後継となるイージスDDGは、7~8年後に「あまつかぜ」が除籍されるまで建造できないと考えられた[4]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 香田 2015, pp. 210-213.
  2. ^ a b c 朝雲新聞社 2006, pp. 228-229.
  3. ^ 防衛省経理装備局 艦船武器課 (2011年3月). “艦船の生産・技術基盤の現状について (PDF)”. 2015年6月28日閲覧。
  4. ^ a b 香田 2015, pp. 208-209.
  5. ^ 技術研究本部 2002, p. 111.
  6. ^ 寺田 1995.
  7. ^ 香田 2015, pp. 112-117.
  8. ^ 平成24年度概算要求の概要 防衛省
  9. ^ 「世界の艦船」2017年7月号増刊
  10. ^ 31頁

参考文献[編集]

  • 香田, 洋二「国産護衛艦建造の歩み」、『世界の艦船』第827号、海人社、2015年12月、 NAID 40020655404
  • 寺田, 政信「1994年における舶用機関技術の進歩」、『日本舶用機関学会誌』第30巻第7号、1995年7月、 489-527頁、 NAID 130001338063
  • 山崎, 眞「わが国現有護衛艦のコンバット・システム」、『世界の艦船』第748号、海人社、2011年10月、 98-107頁、 NAID 40018965310
  • 海人社, 編纂.「海上自衛隊全艦艇史」、『世界の艦船』第630号、海人社、2004年8月、 NAID 40006330308
  • 『自衛隊装備年鑑2006-2007』 朝雲新聞社、2006年ISBN 978-4750910277
  • 「技術開発官(船舶担当)」『技術研究本部50年史』 技術研究本部、2002年、72-115頁。NCID BA62317928

関連項目[編集]

同時期のミサイル駆逐艦(第二世代の防空艦