切稜立方体

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切稜立方体から菱形十二面体への段階的変化
切稜立方体

切稜立方体(せつりょうりっぽうたい、chamfered cube)とは、立方体の辺(稜)に平行な平面によって辺(稜)を含む三角柱部分を切り離す操作(切稜)を、12本の辺(稜)に対して一様に行うことによって得られる凸多面体である。 切り離される三角柱の底面が二等辺三角形である場合、いいかえれば切稜角が45度の場合には、最大の切稜深度すなわち立方体の辺(稜)の中点を含む平面で切稜することによって得られる多面体は菱形十二面体とよばれている。したがってそれよりも浅い切稜によって得られる多面体は、菱形12面体の4価の頂点6箇所を切頂した切頂菱形12面体(truncated rhombic dodecahedron)ともよばれる18面体となる。これはゾーン多面体の一種でもある。

構成面:正方形6枚、平行六角形12枚(内角は109.47度と125.26度)

辺(稜):48

頂点:32。うち、24は(4,6,6)、8は(6,6,6)

回転対称性:4回回転対称軸3本、3回回転対称軸4本、2回回転対称軸6本

双対多面体:四方立方八面体英語版

典型的な鉱物標本[編集]

蛍石(切稜立方体)

蛍石(英名Fluorite、化学式CaF2、等軸晶系)。産地:中国広東省韶関市。結晶学では、正方形面を100面、六角形面を110面と表記している。

切稜立方体の歴史[編集]

切稜立方体の形をしたさいころ

紀元前5-6世紀の中国(漢代)において、「六博(りくはく)」と呼ばれた盤上遊戯のさいころとして18面体の木製立体が使われていたことが明らかにされている。これは切稜立方体の六角形が三枚集まる頂点を丸めたものである。

2006年に、山口県の木材加工会社に勤務していた中川宏が偶然に製作した18面体の名称が不明であったことから、「切稜立方体」(英訳Chamfered cube)と呼称することを提唱。

2014年8月、ウィキペディア英語版に、多面体の変形操作(Conway notation)のひとつとしてChamfer(geometry)(切稜)を定義し、立方体に切稜操作を施したものをChamfered cube(cC)と名付けた記述が登場した。

ただし、そもそものConway polyhedran notation[1]にはchamfer(切稜)は含まれておらず、その位置づけは定かではなかった。 2018年9月時点では、Conwayの基本操作から一般に作成することはできない拡張演算子の一つとして数えられている。 切稜立方体 <cC>は 、その4価の頂点が切り捨てられた 菱形12面体<t4daC> tetratruncated rhombic dodecahedron として新たな名称が与えられるに至っている。

立方体切稜のバリエーション[編集]

立方体の切稜においては、切稜の深度だけではなく、切稜の角度も変化させることができる。特に、切稜角約31.7度で辺(稜)の中点をふくむ平面で立方体を切稜すると正十二面体ができる。

切稜立方体の投影図
切陵角の変化による切陵立方体の変化









切稜立方体の結晶工学[編集]

日本におけるナノサイズの微細結晶の研究は、1960年代以降名古屋大学の上田良二らによって開始され、鉄・バナジウム・クロム・モリブデンなど体心立方格子(bcc)金属の微粒子が立方体⇔切稜立方体⇔菱形12面体の間のさまざまな多面体形状をとることが明らかにされた。 2017年には、金属有機構造体の一種ZIF-8の切稜立方体形状・大きさを成分濃度と成長温度によって立方体⇔切稜立方体⇔菱形12面体の間で自在に制御する技術が、京都大学大学院工学研究科宮原稔研究室の大﨑修司(現在大阪府立大学大学院)らによって確立された。


参照文献[編集]

  • 「半正多面体の生成(第2報)-切頭・切稜による生成とパソコンによる作図」立花徹美著、「図学研究41号(1987/08)」[2]
  • 「さいころ」増川宏一著、法政大学出版局(1992/07) ISBN 978-4588207013
  • 「多面体木工(増補版)」、佐藤郁郎・中川宏著、科学協力学際センター(2006/08初版、2012/10英語版) ISBN 978-4990588007
  • 「したしむ固体構造論」志村忠夫著、朝倉書店(2000/02) ISBN 4-254-22765-5
  • 「ソフト多孔性錯体のフロー式精密合成と分子シミュレーションモデリング」大﨑修司、京都大学大学院博士論文 2017年)

外部リンク[編集]