保守革命

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保守革命(ほしゅかくめい、Konservative Revolution)とは、ドイツの思想史家のアルミン・モーラー (Armin Mohler) がヴァイマール共和国時代の、非ナチス的でナショナリズム的な一連の思想に与えた総称であり、それについてのモーラーの著書のタイトル(『ドイツの保守革命』、Die konservative Revolution in Deutschland)である。

保守革命の分類[編集]

「保守革命」(konservative Revolution) という語は1848年フリードリヒ・エンゲルスが最初に用いた[1]が、後の1920年代後半にフーゴー・フォン・ホフマンスタールミュンヘン大学の講演「国民の精神的空間としての著作」において述べた。

モーラーは保守革命を次の五つの傾向に分類している。

  1. 青年保守派: 中世ドイツの超国家的広域圏としてのライヒ(Reich) の再建を主張。
  2. 国民革命派: 総動員体制によるニヒリズム革命の戦士・労働者国家の創造を主張。
  3. 国粋民族派: 太古ゲルマン人の国粋的・民族的優越性を主張。
  4. 青年同盟: 青年運動やゲオルゲ派の精神的影響を受けた愛国的・軍国的青年運動。
  5. 農村民運動: 国家との間で非合法的実力闘争を展開した北ドイツの農民運動

保守革命の定義[編集]

メラー・ファン・デン・ブルックいわく、保守革命における保守とは単なる反動的保守主義とは違い、また革命は肯定されるべきものとされた。したがって、メラーは11月革命を否定したり、単にナンセンスと決めつけたりはしなかった。大戦の敗戦と革命は悪をもたらしただけではなく、新たな積極的なスタートともなったという立場から

「敗戦は決して取り返し得ないものではない。最悪の平和といえども決して決定的ではない。 しかし革命はかちとらねばならない。革命は一回限りのものである。革命はある国民が他の国民と決着をつけるような事柄ではなく、革命は全く一国民に関わる事柄であり、当該する国民のみが自ら決着をつけなければならず、国民が自己の運命に自由に与えることのできる方向は、その革命の結果に関わっている。」

故に、革命はメラーにとって「一国民の生活史の中で二度と回帰することのない瞬間」であって、国民は革命の中で復活するか、根底から改造されるかするのである。11月の革命もこういう瞬間であり、それは静止させてはならず、それが明確な結論に達し、ドイツの政治的定有が国家的形態を取るまで前進し続けなければならない。それ故、反動家が望んでいるように、革命を押し戻そうとするのはナンセンスである。

「革命を押し戻すことはできない。革命は、機を失しない限りこれに打ち勝つことはできる。しかし、革命が一度事実となるや否や、政治的に考えると同時に歴史的にも考える人間にとっては新しい事実となった革命から出発する以外にはない。この事実を除いて今や他の事実はないのである。」


既に過去のものとなった第二帝政へ復帰しようとするこの反動精神と我々は戦わねばならない。何故なら

「反動的な人間は国内の危険である。議会主義的な国家にとってではなく、国民にとっての危険である。」従って反動的な人間と保守主義的な人間とを鋭く区別することが肝要である。

「反動家とは、我々が1914年以前に送った生活を、依然として美しく偉大、それどころかこの上なく偉大であると考えている者をいう。保守主義者とは、この点独りよがりな自己陶酔にふけることなく、むしろ率直にあの頃は厭うべき時代だったと告白する者である。」


メラーは反動の理念、というよりはむしろ理念無き反動の理念を国家主義と対比している。この国家主義は国家を理念の一切のものの上におく、それどころか君主制思想の上にさえもおく革命的保守主義である。

「君主制と国家とはついに一致を見なかった。そして国民によって、危険な数時間、試練の数年のうちに、この一致が再び作り出さなければならなかった。 やがてヴィルヘルム時代に至り君主制と国家は次第に分裂していった。」

ヴィルヘルムの復位などは最高のナンセンスに違いあるまい。

保守革命の思想家[編集]

脚注[編集]

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関連項目[編集]

参考・関連文献[編集]

  • Armin Mohler, Die konservative Revolution in Deutschland 1918-1932: Grundriss ihrer Weltanschauungen, (Stuttgart : F. Vorwerk, 1950).
  • Klemens von Klemperer, Germany's New Conservatism, its History and Dilemma in the Twentieth Century, (Princeton, NJ: Princeton University Press, 1957).
  • Jean F. Neurohr, Der Mythos vom Dritten Reich: zur Geistesgeschichte des Nationalsozialismus, (Stuttgart: J.G. Cotta, 1957).
山崎章甫・村田宇兵衛訳『第三帝国の神話――ナチズムの精神史』(未來社、1963年/新装版, 2008年)
  • Kurt Sontheimer, Antidemokratisches Denken in der Weimarer Republik: die politischen Ideen des deutschen Nationalismus zwischen 1918 und 1933, (Munchen: Nymphenburger Verlagshandlung, 1962).
河島幸夫脇圭平訳『ワイマール共和国の政治思想――ドイツ・ナショナリズムの反民主主義思想』(ミネルヴァ書房、1976年)
  • Jeffrey Herf, Reactionary Modernism: Technology, Culture, and Politics in Weimar and the Third Reich, (Cambridge; New York, NY: Cambridge University Press, 1984).
中村幹雄・谷口健治・姫岡とし子訳『保守革命とモダニズム――ワイマール・第三帝国のテクノロジー・文化・政治』(岩波書店、1991年)
  • 蔭山宏『ワイマール文化とファシズム』(みすず書房、1986年)
  • 望田幸男・田村栄子『ハーケンクロイツに生きる若きエリートたち―青年・学校・ナチズム』 (有斐閣1990年) ISBN 9784641181311
  • 山下威士『カール・シュミット研究――危機政府と保守革命運動』(南窓社、1986年)
  • Roger Woods, The Conservative Revolution in the Weimar Republic, (Basingstoke: Macmillan, 1996).
  • 小野清美『保守革命とナチズム――E・J・ユングの思想とワイマル末期の政治』(名古屋大学出版会、2004年)

リンク[編集]