ヘヴンリーロマンス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヘヴンリーロマンス
第50回有馬記念パドック(2005年12月25日)
欧字表記 Heavenly Romance[1]
品種 サラブレッド[1]
性別 [1]
毛色 鹿毛[1]
生誕 2000年3月5日(24歳)[1]
抹消日 2006年1月11日[2]
サンデーサイレンス[1]
ファーストアクト[1]
母の父 Sadler's Wells[1]
生国 日本の旗 日本北海道新冠町[1]
生産者 ノースヒルズマネジメント[1]
馬主 (有)ノースヒルズマネジメント[1]
調教師 山本正司栗東[1]
厩務員 丸内永舟(持ち乗り調教助手)[3]
競走成績
生涯成績 33戦8勝[1]
獲得賞金 3億9123万9000円[1]
勝ち鞍
GI 天皇賞(秋) 2005年
GII 阪神牝馬S 2004年
GII 札幌記念 2005年
テンプレートを表示

ヘヴンリーロマンス(欧字名:Heavenly Romance2000年3月5日 - )は、日本競走馬繁殖牝馬[1]

2005年天皇賞(秋)(GI)優勝馬。その他の勝ち鞍に、2004年阪神牝馬ステークス(GII)、2005年の札幌記念(GII)。

主戦騎手松永幹夫[4]。馬名の由来は、英語で「神々しい恋愛」という意味[1]

戦績[編集]

2歳 - 3歳[編集]

ヘヴンリーロマンスの初出走は2002年11月30日阪神競馬場での新馬戦であったが、のちに牝馬三冠を達成するスティルインラブから1秒離された6着に敗れた。その後、徐々に着順を上げてゆき、明け3歳となった2003年1月26日京都競馬場で行われた未勝利戦で4戦目にして初勝利を挙げた。だが初勝利後、4か月の休養に入ったため、桜花賞オークスには出走できなかった。

休養後、5月の中京競馬で復帰。詰めが甘くてなかなか勝ち上がれなかったが、7月の函館の500万下条件戦を何とか勝ち上がって、秋を迎えた。

重賞初挑戦は、秋華賞トライアルのローズステークスだったが、アドマイヤグルーヴの6着に敗れ、秋華賞に出走することはできなかった。それでも、1000万下条件戦を勝ち上がって、エリザベス女王杯に出走。GI初挑戦となったこのレースは10着に敗れた。その後はゴールデンホイップトロフィー、オリオンステークスと準オープンを2戦したが、2戦とも2着に終わった。

4歳[編集]

4歳になって古馬になったヘヴンリーロマンスは3月の阪神競馬で復帰すると、5月にメイステークス(準オープン)で勝利し、オープン入りを果たした。しかしその後は、愛知杯10着、マーメイドステークス5着、府中牝馬ステークス7着と苦戦を強いられ、準オープンに降級した。だが、降級3戦目のゴールデンホイップトロフィー(準オープン)で勝利してオープン馬に返り咲くと、2004年12月19日に行われた阪神牝馬ステークスも勝ち、重賞初制覇を果たした。

5歳春 - 夏[編集]

重賞初制覇を果たしたヘヴンリーロマンスだったが、一転して春シーズンは不振を極めた。京都牝馬ステークス6着、フェブラリーステークス11着、中山牝馬ステークス10着、福島牝馬ステークス10着と掲示板すら載れず、放牧に出されることになった。だが、このリフレッシュ放牧がのちに功を奏することになる。

リフレッシュ放牧後の8月14日札幌競馬場で行われたクイーンステークスでハナ差の2着になり復調。さらに連闘で札幌記念に挑み、牡馬を相手に優勝したため、秋の目標をエリザベス女王杯から天皇賞(秋)に変更した。

天覧競馬で波乱の立役者に[編集]

そして10月30日後初の天覧競馬として施行されたエンペラーズカップ100年記念・天皇賞(秋)ではレースの1000m通過が62.4秒、上がり3ハロンが33秒6というスローペースで上がり勝負のレースとなったが、接戦の末GIのタイトルを獲得した。牝馬による天皇賞の優勝は1997年秋のエアグルーヴ以来8年ぶりであった。

この競走には、同年の宝塚記念で牡馬を退けて優勝したスイープトウショウ、前年の天皇賞(秋)2着馬で桜花賞優勝馬のダンスインザムード、エアグルーヴの娘でエリザベス女王杯2勝で前年の天皇賞(秋)3着馬のアドマイヤグルーヴと、3頭もの強い牝馬が出走していたことと、札幌記念の勝利がフロック視されていたこともあって、ヘヴンリーロマンスは14番人気であった。これは、ギャロップダイナの13番人気を下回る低人気での優勝となっている。また、鞍上の松永幹夫は、牝馬限定以外のJRAでのGI競走は初勝利であった。

レース終了後、松永はウイニングランの後、踵を返してヘヴンリーロマンスをメインスタンドへ向かわせて帽子を脱ぎ、競走を天覧した天皇皇后に鞍上から最敬礼した。

天皇賞後[編集]

天皇賞後、ヘヴンリーロマンスはジャパンカップ有馬記念に出走したが、ジャパンカップは7着、有馬記念は6着に終わり、有馬記念を最後に現役を引退した。

ヘヴンリーロマンスは、エアグルーヴ以来の牝馬による秋の天皇賞制覇を達成したが、JRA賞最優秀4歳以上牝馬の座は、同年に宝塚記念、エリザベス女王杯と2つのGIを制したスイープトウショウに攫われ、選出されなかった。

競走成績[編集]

以下の内容は、netkeiba.comの情報に基づく[5]。  

競走日 競馬場 競走名 距離(馬場) 頭数 枠番 馬番 オッズ

(人気)

着順 タイム

(上がり3F)

着差 騎手 斤量[kg] 1着馬(2着馬) 馬体重
2002.11.30 阪神 2歳新馬 芝1400m(良) 16 6 12 014.7(05人) 06着 01:23.2(35.0) -1.0 松永幹夫 53 スティルインラブ 500
0000.12.22 阪神 2歳新馬 芝2000m(重) 8 8 8 010.4(04人) 03着 02:04.8(35.5) -0.3 松永幹夫 53 カツラダンスオー 502
2003.01.11 京都 3歳未勝利 ダ1800m(稍) 16 6 12 005.6(02人) 02着 01:55.6(38.7) -0.2 松永幹夫 54 ウシュアイア 496
0000.01.26 京都 3歳未勝利 ダ1800m(不) 8 1 1 001.0(01人) 01着 01:54.3(38.8) -0.5 松永幹夫 54 (チェリーヴァレー) 494
0000.05.24 中京 3歳500万下 芝2000m(良) 18 5 9 012.2(06人) 02着 02:03.2(34.7) -0.0 松永幹夫 54 タンザナイト 500
0000.06.28 函館 遊楽部特別 500万 芝1800m(良) 14 2 2 002.7(01人) 02着 01:51.7(35.9) -0.2 松永幹夫 52 セイランクイーン 506
0000.07.13 函館 陸奥湾特別 500万 芝2000m(良) 8 6 6 012.9(04人) 03着 02:03.7(35.5) -0.3 松永幹夫 52 スローバラード 516
0000.07.26 函館 3歳以上500万下 芝1800m(良) 12 4 5 002.8(02人) 01着 01:48.7(36.1) -0.4 松永幹夫 52 (インコグニート) 510
0000.08.02 函館 かもめ島特別 1000万 芝1800m(稍) 12 1 1 003.0(01人) 02着 01:52.3(36.6) -0.1 松永幹夫 52 ヤマニンスフィアー 510
0000.09.21 阪神 ローズS GII 芝2000m(良) 12 7 10 050.3(07人) 06着 02:02.5(35.5) -1.0 松永幹夫 54 アドマイヤグルーヴ 498
0000.10.19 京都 3歳以上1000万下 芝2000m(良) 13 8 14 005.4(03人) 01着 01:59.6(34.7) -0.1 松永幹夫 53 (シゲルゴッドハンド) 496
0000.11.16 京都 エリザベス女王杯 GI 芝2200m(良) 15 4 6 041.5(09人) 10着 02:12.5(35.3) -0.7 松永幹夫 54 アドマイヤグルーヴ 500
0000.12.06 阪神 ゴールデンホイップT 1600万 芝2000m(良) 11 2 2 004.5(01人) 02着 01:59.1(35.6) -0.0 D.オリヴァー 55 タケハナオペラ 494
0000.12.27 阪神 オリオンS 1600万 芝2200m(良) 9 1 1 004.4(02人) 02着 02:13.9(35.7) -0.3 松永幹夫 54 サクラセンチュリー 500
2004.03.28 阪神 但馬S 1600万 芝2000m(良) 9 2 2 004.6(03人) 03着 02:01.4(34.1) -0.1 角田晃一 55 ツルマルヨカニセ 504
0000.04.17 阪神 難波S 1600万 芝2000m(良) 11 1 1 002.4(01人) 08着 02:02.1(34.6) -0.9 松永幹夫 55 エアセレソン 500
0000.05.02 東京 メイS 1600万 芝1800m(良) 10 8 9 005.0(03人) 01着 01:46.4(33.1) -0.2 吉田豊 55 (オトコノユウジョウ) 498
0000.06.06 中京 愛知杯 GIII 芝2000m(稍) 18 8 16 005.0(01人) 10着 02:02.4(38.7) -1.8 松永幹夫 54 メモリーキアヌ 504
0000.07.11 阪神 マーメイドS GIII 芝2000m(良) 10 8 10 009.0(04人) 05着 02:00.9(35.4) -0.9 松永幹夫 55 アドマイヤグルーヴ 496
0000.10.17 東京 府中牝馬S GIII 芝1800m(良) 16 6 12 029.6(11人) 07着 01:46.8(34.1) -0.6 松永幹夫 55 オースミハルカ 498
0000.11.07 東京 ユートピアS 1600万 芝1600m(良) 9 8 8 004.2(03人) 04着 01:35.1(33.1) -0.6 吉田豊 55 スターリーヘヴン 494
0000.11.21 京都 古都S 1600万 芝2200m(良) 11 2 2 008.8(04人) 02着 02:17.5(33.0) -0.1 松永幹夫 55 アイポッパー 502
0000.12.04 阪神 ゴールデンホイップT 1600万 芝1600m(良) 14 5 8 007.2(04人) 01着 01:33.4(34.5) -0.3 内田博幸 56 アサクサデンエン 502
0000.12.19 阪神 阪神牝馬S GII 芝1600m(良) 16 1 2 006.7(03人) 01着 01:34.0(34.3) -0.2 松永幹夫 55 メイショウバトラー 502
2005.01.30 京都 京都牝馬S GIII 芝1600m(良) 15 6 11 003.5(02人) 06着 01:35.4(33.1) -0.4 松永幹夫 56 アズマサンダース 506
0000.02.20 東京 フェブラリーS GI ダ1600m(不) 15 2 2 085.4(10人) 11着 01:36.0(36.9) -1.3 松永幹夫 55 メイショウボーラー 490
0000.03.12 中山 中山牝馬S GIII 芝1800m(良) 16 4 8 006.6(03人) 10着 01:50.1(34.5) -0.4 松永幹夫 56 ウイングレット 498
0000.04.24 福島 福島牝馬S GIII 芝1800m(良) 16 3 6 006.9(05人) 10着 01:50.1(34.6) -0.7 松永幹夫 55 メイショウオスカル 502
0000.08.14 札幌 クイーンS GIII 芝1800m(良) 14 4 5 043.0(10人) 02着 01:46.7(34.2) -0.0 松永幹夫 55 レクレドール 516
0000.08.21 札幌 札幌記念 GII 芝2000m(良) 14 3 4 017.7(09人) 01着 02:01.1(35.9) -0.0 松永幹夫 54 ファストタテヤマ 512
0000.10.30 東京 天皇賞(秋) GI 芝2000m(良) 18 1 1 075.8(14人) 01着 02:00.1(32.7) -0.0 松永幹夫 56 ゼンノロブロイ 510
0000.11.27 東京 ジャパンC GI 芝2400m(良) 18 5 10 019.5(08人) 07着 02:22.7(35.5) -0.6 松永幹夫 55 アルカセット 508
0000.12.25 中山 有馬記念 GI 芝2500m(良) 16 4 7 056.5(08人) 06着 02:32.5(34.9) -0.6 松永幹夫 55 ハーツクライ 508

繁殖成績[編集]

2006年より生まれ故郷のノースヒルズマネジメント(現・ノースヒルズ)にて繁殖牝馬となり、初年度・2年度と続けて2004年の東京優駿(日本ダービー)優勝馬キングカメハメハと交配され、2年続けて牡馬を出産している。2010年1月にジャングルポケットの仔を抱えた状態でアメリカに渡り、現地で繁殖生活を送ることになった。2010年7月11日に2番仔のヴェイロンが福島新馬で優勝し、産駒の初勝利を挙げた。

2015年に入ると、5番仔のアムールブリエエンプレス杯に勝利し、産駒による重賞初勝利を飾った。次いで4番仔のアウォーディーシリウスステークスで優勝した。 2016年には、6番仔のラニUAEダービー[6]で優勝し、産駒による海外重賞初勝利を飾った。 2016年11月3日武豊騎手騎乗で、アウォーディーがJBCクラシックを優勝し、産駒初の中央・地方交流統一GI初制覇した。

馬名 誕生年 毛色 厩舎 馬主 戦績 備考
初仔 コードゼット 2007年 栗毛 キングカメハメハ 栗東・松永幹夫
船橋・山中尊徳
前田幸治 34戦1勝 (引退)
2番仔 ヴェイロン 2008年 栗毛 栗東・松永幹夫
→栗東・吉村圭司
園田住吉朝男
26戦2勝 (引退)
3番仔 ウイニングサルート 2009年 栗毛 フレンチデピュティ 栗東・松永幹夫 (株)ノースヒルズ 13戦2勝 (引退)
4番仔 アウォーディー 2010年 鹿毛 ジャングルポケット 前田幸治 42戦10勝 (死亡[7])
5番仔 アムールブリエ 2011年 鹿毛 Smart Strike 25戦10勝 (引退・繁殖[8])
6番仔 ラニ 2013年 芦毛 Tapit 前田葉子
→前田幸治
17戦3勝 (引退・種牡馬)
7番仔 キエレ 2014年 栗毛 Distorted Humor 前田幸治 6戦0勝 (引退・繁殖)
8番仔 イグレット 2015年 栗毛 栗東・松永幹夫

→大井(小林)・堀千亜樹

27戦2勝 (引退・繁殖)
9番仔 ゼルク 2016年 鹿毛 Awesome Again 前田晋二 25戦1勝 (引退)
10番仔 Tapit's Angel 2018年 芦毛 Tapit (繁殖)
11番仔 カウピリ 2020年 芦毛 Frosted 栗東・松永幹夫

→大井・上杉昌宏

(株)ノースヒルズ

→前田幸治

11戦0勝 (現役)
12番仔 ディフェリ 2021年 鹿毛 Mendelssohn 栗東・松永幹夫 (株)ノースヒルズ 2戦0勝 (デビュー前)
13番仔 アインプレーゲン 2022年 栗毛 (デビュー前)
  • 2024年2月23日現在

血統表[編集]

ヘヴンリーロマンス血統 (血統表の出典)[§ 1]
父系 サンデーサイレンス系
[§ 2]

*サンデーサイレンス
Sunday Silence
1986 青鹿毛
父の父
Halo
1969 黒鹿毛
Hail to Reason Turn-to
Nothirdchance
Cosmah Cosmic Bomb
Almahmoud
父の母
Wishing Well
1975 鹿毛
Understanding Promised Land
Pretty Ways
Mountain Flower Montparnasse
Edelweiss

*ファーストアクト
First Act
1986 鹿毛
Sadler's Wells
1981 鹿毛
Northern Dancer Nearctic
Natalma
Fairy Bridge Bold Reason
Special
母の母
Arkadina
1969 鹿毛
Ribot Tenerani
Romanella
Natashka Dedicate
Natasha
母系(F-No.) Natashka系(FN:13-c) [§ 3]
5代内の近親交配 Hail to Reason 3×5、Almahmoud 4×5 [§ 4]
出典
  1. ^ [9]
  2. ^ [10]
  3. ^ [11][9]
  4. ^ [9]

脚注[編集]

注釈[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p ヘヴンリーロマンス|JBISサーチ(JBIS-Search)”. www.jbis.or.jp. 2020年7月9日閲覧。
  2. ^ ヘヴンリーロマンス、繁殖生活へ”. ラジオNIKKEI. 2022年4月16日閲覧。
  3. ^ https://www.keibalab.jp/column/interview/1777/”. 競馬ラボ. 2023年3月18日閲覧。
  4. ^ 【チャンピオンズC】アウォーディーVへ松永幹師「今が一番」”. 予想王TV@SANSPO.COM (2016年11月29日). 2020年7月9日閲覧。
  5. ^ ヘヴンリーロマンスの競走成績 | 競走馬データ”. netkeiba.com. 2020年7月9日閲覧。
  6. ^ Results From The 1.35 Race At Meydan (UAE)”. Racing Post (2016年3月26日). 2016年3月26日閲覧。
  7. ^ アウォーディーが放牧先で安楽死 8歳、右飛節骨折 | 競馬ニュース”. netkeiba.com. 2020年7月9日閲覧。
  8. ^ ダート重賞6勝のアムールブリエが繁殖入り競走馬のふるさと案内所、2017年2月6日閲覧
  9. ^ a b c 血統情報:5代血統表|ヘヴンリーロマンス”. JBISサーチ. 公益社団法人日本軽種馬協会. 2017年2月17日閲覧。
  10. ^ ヘヴンリーロマンスの繁殖牝馬情報”. 競馬ラボ. 2020年4月12日閲覧。
  11. ^ 平出貴昭 (2014年9月17日). “『覚えておきたい日本の牝系100』収録の全牝系一覧”. 競馬“血統”人生/平出貴昭. 2017年2月17日閲覧。

外部リンク[編集]