ジェームズ・マティス

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ジェームズ・マティス
James Mattis
James Mattis official Transition portrait.jpg
2016年12月撮影
第26代 アメリカ合衆国国防長官
就任
2017年1月20日
大統領 ドナルド・トランプ
前任者 アシュトン・カーター
個人情報
生誕 James Norman "Jim" Mattis
(1950-09-08) 1950年9月8日(66歳)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ワシントン州プルマン
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
出身校 セントラル・ワシントン大学
兵役経験
渾名
  • "Chaos" (カオス
  • "Warrior Monk"(戦う修道士
  • "Mad Dog"(荒くれ者、狂犬)
所属組織 Seal of the United States Marine Corps.svgアメリカ海兵隊
軍歴 1972年 - 2013年
最終階級 US-O10 insignia.svg 海兵隊大将
部隊 第1海兵遠征旅団
アメリカ中央軍海兵隊
第1海兵師団
指揮 第1海兵師団長 (2004-2007)
変革連合軍最高司令官 (2007-2009)
アメリカ統合戦力軍司令官 (2007-2010)
アメリカ中央軍司令官 (2010-2013)
戦闘 湾岸戦争
アフガニスタン紛争
イラク戦争

ジェームズ・ノーマン・マティスJames Norman "Jim" Mattis1950年9月8日 - )は、アメリカ合衆国軍人政治家階級退役海兵隊大将学位Bachelor of Arts in historyセントラル・ワシントン大学1971年)。国防長官(第26代)。 海兵隊大将としてアメリカ統合戦力軍司令官NATO変革連合軍最高司令官アメリカ中央軍司令官を歴任した。

概要[編集]

湾岸戦争に第1海兵大隊長として、「不朽の自由作戦」に第1海兵遠征旅団長として、イラク戦争に第1海兵師団長としてそれぞれ出征。2007年に海兵隊大将に進級し、2007年から2010年まで、アメリカ統合戦力軍(USJFCOM)司令官。2007年から2009年まで、NATO変革連合軍最高司令官を兼任。その後、2010年から2013年までデヴィッド・ペトレイアスの後任としてアメリカ中央軍司令官を務め、2013年に海兵隊を退役。

渾名[編集]

プライベートでは戦史・戦略の研究に時間を費やし[1]、結婚もせず子供もいないため『戦う修道士(Warrior Monk)』[2]、海兵隊時代には部下を心服させ、粘り強く戦い続ける歴戦の実戦指揮官としての名声から『荒くれ者狂犬(Mad Dog)』[3]。などと呼ばれている[4]

アメリカのメディアではMad Dogで呼ばれることが多く、国防長官に指名したドナルド・トランプ大統領も、マティスが戦場で不敗であったことが渾名の由来と述べ、紹介する際にMad Dogと呼んでいる[5]

日本の主要メディアはMad Dogを主に『狂犬』と直訳して報じているが[2]、名声に由来するため『荒くれ者』が妥当との意見もある[6][注釈 1]

なお『カオス(Chaos)』という渾名もあるが、本人の性格ではなく海兵隊時代のコールサインに由来する[8]

経歴[編集]

佐官昇進まで[編集]

1950年9月8日、ワシントン州プルマン[9]で米国商船隊に所属するジョン・ウェスト・マティス[10][11]とルシール[12]夫妻の間に生まれる。母親のルシールは第二次世界大戦中に情報部隊員として南アフリカ共和国で軍務に就いていた[13]

マティスは1969年に海兵隊の予備員名簿に登載され[14]セントラル・ワシントン大学予備役将校訓練課程(ROTC)を履修し[15]1971年に同大学で歴史学学士(教養)BA in history)を取得し[15][16]1972年1月1日付で海兵隊少尉に任官した[17]

その後中尉に進級し、第3海兵師団のライフル小隊長、武器小隊長を務め、大尉に進級後は第1海兵大隊(第1海兵師団・第7海兵連隊隷下)でライフル中隊長、武器中隊長を務めた(これ以降、マティスは、第1海兵大隊長、第7海兵連隊長、第一海兵師団長を歴任した)。

任官中は上官からその知性を高く評価されており、数千冊の蔵書を保有するほどの読書家であった[18]。上司であるロバート・H・スケールズ少将からは「私が今まで出会った中で最も知的で洗練された男」と評されており、本人曰くマルクス・アウレリウス・アントニヌスの「自省録」を通して身に付けたものだという[18]

佐官時代[編集]

少佐に進級したマティスは、オレゴン州ポートランドにある新兵募集基地で新兵募集任務に従事した。中佐に進級して、第1海兵大隊長に就任。湾岸戦争において、同大隊は「砂漠の盾作戦」決行にあたって組織されたタスクフォースの1つ、「リッパー」(Task Force Ripper[注釈 2])の構成部隊の1つとなり[注釈 3]、マティスも大隊長の1人としてタスクフォース・リッパーの指揮に関わった。

その後、大佐に進級し、第7海兵連隊長となった。

将官時代[編集]

マティスが師団長を務める第1海兵師団が、2003年のイラク戦争に出征する際に、師団長から麾下の全員に送った手紙。第1海兵師団のモットー"No Better Friend, No Worse Enemy"が記されている。

准将に進級したマティスは、2001年のアメリカ同時多発テロ事件に対する「不朽の自由作戦」において、第1海兵遠征旅団と海軍隷下のタスクフォース58号を指揮する。同作戦で、マティスは海兵隊員としては初めて海軍のタスクフォースを指揮した人物となった[19]

少将に進級後、2003年に始まったイラク戦争において第1海兵師団を指揮する。同師団は、海兵隊から参加した第1海兵遠征軍の主力地上部隊であった。2004年4月ファルージャでの戦闘ヴィジラント・リゾルヴ作戦[注釈 4])では、市内の暴徒たちの指導者との交渉で重要な役割を担う。またマティスは、11月の作戦(ファントム・フューリー作戦[注釈 5])の立案でも大きな役割を果たしている。

マティスは、第1海兵師団のモットー「味方にとっては最高の友であれ、敵にとっては最悪の相手であれ("No Better Friend, No Worse Enemy"[注釈 6] 」(ルキウス・コルネリウス・スッラの言葉を基にしている)を、イラクに出征するに際して、師団長から麾下の全員に送った手紙に記した。[21]このモットーは、第1海兵師団の小隊長(en:Platoon leader)であり、戦争犯罪の嫌疑を受けたen:Ilario Pantano少尉についての報道で何度も言及された。[22]

マティスは、第1海兵師団の将兵に「君たちがイラク市民に対して怒りや嫌悪を示すことが、即ち、アルカーイダや他のならず者たちの勝利となってしまうことを忘れるな("whenever you show anger or disgust toward civilians, it's a victory for al-Qaeda and other insurgents")」と訓示し、イラク市民に被害を及ぼすことを戒めた。[23]

中将に進級したマティスは、本国に帰還してen:Marine Corps Combat Development Commandの指揮官となった。

マティスは、2005年にサンディエゴで行われた討論会で、「アフガニスタンへ行けば、ヴェールをつけないという理由で、女性を5年も殴り続けてきた奴らに出くわします。人間のクズとしか言いようがない。そんな奴らを撃ち殺すのは実に愉快です…("You go into Afghanistan, you got guys who slap women around for five years because they didn't wear a veil. You know, guys like that ain't got no manhood left anyway. So it's a hell of a lot of fun to shoot them."」と発言した。当時の海兵隊総司令官であったマイケル・ヘギー(en:Michael Hagee)海兵隊大将は、マティスの発言について「発言する時は、もっと言葉を注意深く選ぶよう、マティス中将に注意した」と述べた。[24][25][26]

2006年に第1海兵遠征軍司令官に就任。翌年の2007年には、ジョージ・W・ブッシュ大統領の指名・上院の可決により、マティスは大将に進級すると同時にアメリカ統合戦力軍司令官に就任した。NATOの変革連合軍最高司令官を2009年まで兼任した。

中央軍司令官の頃
2011年12月15日、バグダッドへ飛ぶC-17機内で統合参謀本部議長デンプシー陸軍大将(左)と話す中央軍司令官マティス海兵隊大将(右)

2010年7月、マティスは国際治安支援部隊(ISAF)司令官兼アフガニスタン駐留アメリカ軍(USFOR-A)司令官に転出することになったデヴィッド・ペトレイアス陸軍大将の後任として、ロバート・ゲーツ国防長官の推薦により、バラク・オバマ大統領よりアメリカ中央軍(CENTCOM)司令官に指名された。正式な指名は7月21日付で発令された[27]。本人事は、きわめて緊急性が高い人事だったこともあり速やかに上院軍事委員会による承認プロセスがとられ、8月5日に上院軍事委員会において承認に向けた公聴会が開催された[28]。本人事は、上院軍事委員会およびその後の上院本会議での採決でも無事に承認を得て、マティスはペトレイアスの後任として8月11日付で正式に中央軍司令官に就任した[注釈 7]。これにより、2011年7月にアレン中将が大将昇任・補職に伴って退任するまでの1年近くにわたり、同じ統合軍の正副司令官ポストを共に海兵隊出身の将官が務めるという状況が生まれた。このように、同じ統合軍の正副司令官ポストを共に海兵隊出身の将官が占めるということは、史上初めてのことであった[注釈 8]。しかし、後にオバマ政権と対イラン政策をめぐって対立し、解任となる[29]。イランとの核合意に反対[30]し、イランをISIL以上の脅威[31]と考えるマティスの姿勢が原因とされる[32][33]

2013年に中央軍司令官を退任し、同年、海兵隊を退役[29]

国防長官[編集]

2016年11月20日、ドナルド・トランプ次期大統領は、マティスをアメリカ合衆国国防長官に指名することを検討していると発言した。ニュージャージー州ベッドミンスターでマティスと小一時間ほど会談した[34]トランプは、その後ツイッター上で「国防長官に擬している『狂犬』ことマティス大将に昨日会い、深い感銘を受けた。彼は正しく将軍の中の将軍だ!」と発信した[35][36]

トランプは2016年12月1日、オハイオ州シンシナティで行われた凱旋集会において、マティスを次期政権の国防長官に起用する方針を発表し[37]、12月6日にノースカロライナ州ファイエットビルで行われた集会で指名を正式発表した[38]国家安全保障法では、軍人が国防長官に就任するには、現役を退いてから7年経過していることを要すると定められているが、マティスが退役したのは2013年であるため、この要件に抵触してしまう。そこでマティスの指名の認否が連邦議会に諮られる事となる[39]

2017年1月20日、アメリカ合衆国連邦議会(上院)が、98:1でマティスの国防長官就任を承認した[40]。これによりマティスはジョージ・マーシャルに次ぎ史上二番目の退役から7年未満の国防長官[39]となった。

就任後は相次いで欧州各国と電話会談を行い、NATOへの永続的関与を確約した[41]。2017年2月、初の外遊先となる韓国日本を訪問して北朝鮮への対処は最優先であるとして同盟の強化を謳った[42][43]。アジア太平洋やNATOをめぐる問題でかねてからマティスはトランプ大統領と比較して従来の同盟関係を重視する姿勢で知られている[44][45]。トランプ大統領が主張していたテロ容疑者の水責め復活にも反対しており、トランプ大統領は「必ずしも私は賛成しないが、私が任せてる彼を優先する」として復活を断念した[46]

2017年2月15日、NATO国防相理事会に出席してかつて自らがNATO変革連合軍で最高司令官を務めたことから「第二の故郷」としてNATOの重要性を説く一方で[47]、NATO加盟国が負担を増やさない限り関与を減らす意向を表明した[48]。また、ロシアは「国際法に違反する行動を行ってる」として現時点での軍事協力を否定した[49]

注釈[編集]

  1. ^ ジャーナリストの森田浩之は、マティスの異名"Mad Dog"を日本のメディアが「狂犬」と直訳するのは誤訳に近く、米海兵隊のエリート指揮官としては異例なまでの、マティスの戦場の猛将としての資質を捉えた「荒くれ者」という訳が妥当、と述べている[7]
  2. ^ 「砂漠の盾作戦」決行にあたっては、「リッパー」以外にも「パパ・ベア」(Task Force Papa Bear)、「タロー」(Task Force Taro)、「グリズリー」(Task Force Grizzly)の各タスクフォースが、いずれも海兵隊の部隊によって組織されている。
  3. ^ この他にも、第5海兵連隊・第1海兵大隊などの部隊が「リッパー」を構成していた。
  4. ^ 日本語に直訳すれば、「油断無き解決」「隙無き解決」などと訳しうる。
  5. ^ 日本語に直訳すれば「幻の怒り作戦」「幽し怒り作戦」「幽霊の怒り」「幽き者の怒り」などと訳しうる。この「ファントム・フューリー」という作戦名は、米軍側が命名したものであるが、のちにイラク側からの要請で、アラビア語で「夜明け」「暁」を意味する「アル・ファジル」(Al-Fajr)作戦に名称が改められた。
  6. ^ "No Better Friend, No Worse Enemy"というモットーは、簡潔すぎるために和訳が容易でないが、このモットーを"It was General Mattis who coined the phrase that there is no better friend or no worse enemy than the United States Marine."と解説している報道がある[20]。この解説は「マティス将軍は、『アメリカ海兵隊以上に良い友、悪い敵は存在しない』というモットーを作り出した」と和訳できるだろう。
  7. ^ 実際には、ペトレイアス大将がマティスの着任よりも早く司令官を退任しており、司令官臨時代理を務めていたジョン・アレン中将(当時CENTCOM副司令官、のち大将に昇任しISAF司令官兼USFOR-A司令官)との交替という形であった。
  8. ^ アメリカ軍の統合軍の正副司令官には、違う軍種の将官が充てられることが通例。例えば太平洋軍であれば、司令官は代々海軍出身者が充てられており、副司令官には2013年2月現在では海兵隊出身者が就いている。

出典[編集]

  1. ^ 「マティス国防長官、「狂犬」は蔵書7000冊の読書家”. 日経ビジネスオンライン (2016年12月5日). 2017年3月19日閲覧。
  2. ^ a b 「狂犬」の異名持つ戦略家=国防長官指名のマティス氏-次期米大統領”. 時事通信 (2016年12月2日). 2017年1月12日閲覧。
  3. ^ Trump transition: Who is General 'Mad Dog' Mattis?”. デイリー・テレグラフ (2016年12月2日). 2017年1月12日閲覧。
  4. ^ China accuses US of putting regional stability at risk over backing of Japan in island dispute”. インデペンデント (2017年2月4日). 2017年2月5日閲覧。
  5. ^ 「マッドドッグをよろしく」国防長官をベタ褒め”. 読売新聞 (2017年1月31日). 2017年2月5日閲覧。
  6. ^ トランプ政権の国防を担うクールな荒くれ者”. ニューズウィーク日本版 2016.12.13号掲載 (2016年12月9日). 2017年2月5日閲覧。
  7. ^ 次期米国防長官の異名を「狂犬」にした日本メディアの誤訳”. ニューズウィーク日本版 (2016年12月20日). 2017年1月12日閲覧。
  8. ^ Kovach, Gretel C. (2013年1月19日). “Just don't call him Mad Dog”. San Diego Union Tribune. http://www.sandiegouniontribune.com/sdut-just-dont-call-him-mad-dog-2013jan19-story.html 2016年11月20日閲覧。 
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公職
先代:
アシュトン・カーター
アメリカ合衆国国防長官
2017年1月20日 -
次代:
現職
軍職
先代:
ジェイムズ・コンウェイ
IMEFlogo.jpg 第1海兵遠征軍I Marine Expeditionary Force)司令官
2004 - 2007
次代:
ジョン・サットラー
先代:
ランス・L・スミス
北大西洋条約機構の旗 変革連合軍最高司令官
2007年11月9日 - 2009年9月9日
次代:
ステファン・アブリアル
先代:
ランス・L・スミス
USJFCOM SEAL.gif アメリカ統合戦力軍司令官
2007年11月9日 - 2010年8月11日
次代:
キース・M・フーバー(臨時代理)
先代:
ジョン・R・アレン(臨時代理)
Seal of the United States Central Command.png アメリカ中央軍司令官
2010年8月11日 - 2013年3月22日
次代:
ロイド・オースティン英語版