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ことえり

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ことえり
開発元 Apple
最新版
対応OS OS X
プラットフォーム x86
後継 日本語入力プログラム
サポート状況 終了
種別 インプットメソッド
ライセンス プロプライエタリ
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ことえりとは、かつてAppleが開発し、Macintosh向けOSに標準搭載されていた日本語入力システムの名称である。漢字Talk / Mac OSの日本語版[1]Mac OS X / OS X、およびOS X Serverに組み込まれていた。

旧来の2.0/2.1変換に代わる日本語入力システムとして1992年に漢字Talk 7.1で導入された。2013年OS X Mavericksを最後に廃止され、以降は単に日本語入力プログラムと呼ばれる新たな入力システムが採用されている。

概要

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最初期の漢字Talkには標準搭載の日本語入力システムが存在せず、EGBRIDGEがバンドルされた。漢字Talk 2.0で初めて基本的な日本語入力プログラムが標準搭載され、これは2.0変換と呼ばれた。漢字Talk 6.0では改良され2.1変換となった。ただし2.0/2.1変換は機能が少なく、サードパーティ製の日本語入力システムを使用するユーザーも多かった。

漢字Talk 7.1で標準搭載のものとしては初の本格的な日本語入力システムとなる「ことえり」が搭載された。ことえりの名は、源氏物語の一巻・帚木にある「文を書けど、おほどかに言選りをし」に由来し、「言葉を選ぶ」ことを意味する。

最初のバージョンでは日本語解析辞書の収録単語が少なく、変換効率が悪かったが、Mac OS 8に搭載された「ことえり2」で辞書を大幅に強化し、固有名詞などについてはサードパーティの製品を上回る性能を発揮した。ただし文脈を考慮した変換ができなかったため、形態素解析に基づくAI変換を採用した他社製品に変換効率で水をあけられていた。一方、Mac OS 8.5に搭載された「ことえり2.2」では早期からUnicodeに対応し、Mac OS X v10.0に搭載された「ことえり2.5」では1万数千文字以上が利用できるようになるなどの長所もあった。

Mac OS X v10.1に搭載された「ことえり3」で、はじめてAI変換を採用。変換効率が格段に向上し、Mac OS X v10.2の「ことえり3」ではAdobe-Japan1-5での異体字の入力に最も早く対応している。Mac OS X v10.3に搭載された「ことえり4」では、Mac OS X上で競合するATOKEGBRIDGEなどの製品とシェア争いを繰り広げられるほどになった。すなわち、変換効率を向上するためにわざわざインプットメソッドを購入するというユーザが減った。ただし、ローマ字かな変換ルールなどのカスタマイズ性についてはOS X 10.9時点でも乏しいため、依然選択の余地は残っている。

Mac OS X Lionに搭載された「ことえり4.3」では、変換ウインドウのユーザインタフェースを一新し、Mac OS Xに搭載されている国語辞典(『大辞泉』)から単語の定義を表示する機能などが追加された。

「ことえり4」以降での特徴的な機能としては「アイヌ語」の入力、モードの切り替え作業なしに話し言葉や「関西弁」の入力ができ、部品の共通する漢字の検索、関連文字への変換がキーボードショートカットで可能なこと、Microsoft IMEに近いキーバインドも選択可能なことなどが挙げられる。このほか「英数」キーを2回押すことで誤って入力したかなをアルファベットに変換したり、「かな」キーを2回押すことで確定した文字を変換前の状態に戻したりすることができる(かな英数キー2度押し機能)。

「ことえり4」のショートカットは、例えば平仮名に変換するcontrol+J[2]片仮名に変換するcontrol+K[2]などが用意されていて(UNIXで一般的なWnnのキーバインド)、メニューにもそう記載されている。ことえり初期バージョンで使用されていたもの(平仮名変換は Option+Z[3]、片仮名変換は Option+X[4]など)も使用することができるため、昔から使っていたユーザも違和感なく使うことが可能である。

小書きの仮名をローマ字入力を入力する際「ぁ」はXAと打つが、Microsoft IME風のLAにすることもできる。「ことえり2」までは、変換候補表示から文節長や変換対象の変更などの操作が、マウスで行えた。現在はその数こそ減ったものの、まだいくつか残っている。

iOS搭載のインプットメソッドはことえりではなく、米Appleで増井俊之ら日本人開発者により新たに開発された専用のものである。

Mac OS X Server 1.0ではことえりは採用されずCannaを搭載していた。

2014年10月16日に発売されたOS X Yosemite(OS X バージョン10.10)からはことえりは廃止され、単に日本語入力プログラム (Japanese Input Method)と呼ばれる新たな入力システムに置き換えられた。ただし、キーボード操作にはことえりを踏襲している。

略歴

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イースター・エッグ

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漢字Talk 7.1から付属することえりの初期バージョンではイースターエッグが存在する。「ことえりのさくしゃ」と入力し変換することで、宮武伸裕(ことえりチューナーの作者)、原 啓介(Font Patchin'の作者)、木田泰夫 (元Apple Inc. International Text Group)、高野琢巳(へたダサヘルパーの作者)、と四人の開発者名が候補として表示[5]されるようになっていた。他にも「ことえりのてすと」、「ことえりのなかま」、「ことえりのかんしゃ」等で関係者個人名が表示される。

また、System7.5に対応したJapanese Language Kit 1.2に付属のことえりマニュアルでは、「つきのみやこへかえる」「たけのなかからみつけたおんなのこ」など竹取物語にちなんだ入力例文が使われていた[6]

脚注

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  1. ^ 他言語版で日本語処理を可能にするアップル製のソフトウェアパッケージ(コンポーネント)「Japanese Language Kit」にも含まれた。
  2. ^ a b Apple 1993, p. 134.
  3. ^ Apple 1993, p. 36.
  4. ^ Apple 1993, p. 43.
  5. ^ 中原晃司、梶浦正規著『マッキントッシュ礼賛』株式会社カットシステム、1997年6月1日、113頁。ISBN 4-906391-45-1 
  6. ^ Apple 1993, p. 21-25.

参考文献

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  • 『Macintosh 日本語入力操作ガイド』Apple Computer, Inc、1993年。030-4174-A。 

外部リンク

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