宗教2世

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宗教2世(しゅうきょう2せい)とは、特定の宗教を信仰する親などの家族や宗教的集団の元で、その教えの影響を受けて育った子ども世代のことを指す[1][2]。「カルト2世」または「2世信者」などと呼ばれることもある[3][4]

概要

宗教2世の人たちが、親の信仰心による多額の献金などにより、家庭が経済的に困窮したり、親が宗教活動にのめり込んで数か月姿を消したことによるネグレクト(育児放棄)を受けて苦しんでいることが当事者などによる証言で明らかになっている[2][5]。また、親により意思表示ができない幼い子供(赤ちゃん)の頃から特定の宗教に入信させられるなど親から特定の宗教の非常識な教義を押し付けられて苦しんでいる。その実例としては、「テレビの視聴を禁止する」、「漫画を読むことを禁止する」、「友人の誕生日会への参加を禁止する」、「異性との自由な恋愛を禁止する」、「他宗教の寺院や神社などに行くことを禁止する」、「クリスマスなどの他宗教の行事に参加することを禁止する」などの「親が子供の日常生活を極端に制限する」などの事例が挙げられる[2][6][7][8]

中には大学への進学や会社への就職などを妨げられて人権侵害されたケースや[9][10][11]教祖が命名した珍妙な名前を一生背負っているケース[6]、教祖の血が入っているとされているワインを無理矢理飲まされたケース[12]などもある。

また、その宗教団体から脱会できたとしても、親と縁を切ることになるため、保証人などが求められる就職や住まいの転居などの面で支障が出ることも多い[2]

しかし、地方自治体の窓口やホットライン児童虐待や生活支援を相談しても、信教の自由が絡んでくることもあり、生活保護ドメスティックバイオレンス(DV)などとは異なる対応をされるケースが多く、「行政は宗教問題には介入できない」「家族のことはまず家族で話し合って」などと言われて門前払いとなったり、親から逃れる目的で転居先の住民票閲覧に制限を掛けるよう申請しても、「それは親子の問題だ」として拒否された事例もある[2][7]。以上のように行政では事実上どうにもならない劣悪な状況に宗教2世は置かれていた。

しかし、2022年(令和4年)7月8日に発生した安倍晋三銃撃事件の容疑者(事件当時・41歳)は母親が世界平和統一家庭連合(旧・統一教会)に入信して、その信仰行為の中で、容疑者の母親が多額な献金をして家庭が経済的に困窮して容疑者が進学校の高校卒業後に大学進学を断念してIT系の専門学校コンピューター学科)に入学したが、IT系の専門学校(コンピューター学科)を中退して海上自衛隊に入隊した。容疑者の家族構成は母親と兄(のちに自殺した)と妹がいる。容疑者が4歳の頃に父親がうつ病アルコール依存症に悩んで自殺して母子家庭だった。宗教(旧・統一教会)にのめり込んだ母親が多額の献金をしたために経済的に困窮して容疑者自身も20代の頃に自殺未遂をしていた。容疑者が30代の頃に容疑者の兄がガンの病気になり自殺するという出来事があった。世界平和統一家庭連合(旧・統一教会)と繋がりがあるとされた元内閣総理大臣安倍晋三を狙ったと容疑者が犯行動機を供述をしており、宗教2世に関する事柄が大きく社会問題化すると共に日本政府などによる対応策が急がれる事態になった[2][13][14]

宗教2世の法律的な問題点

宗教2世とは、18歳未満の未成年者で、親の意思で、親と同じ宗教団体に入信している子供(未成年者)のことである。

18歳未満の未成年者は、経済的な実力が無いに等しい状況であり、自らを監護する親(保護者)に反抗することが非常に難しい。「親から子供の日常生活を極端に制限される」、「親の言うことに背くと食事を与えられない」、「親の言うことに背くと学校に通わせて貰えない」などの恐怖に直面し、子供(未成年者)は親の要請に従うことになりやすい。

ちなみに、18歳未満の未成年者に対して親(保護者)が食事を与えないことはネグレクト(児童虐待)に該当するとされ、児童虐待防止法第2条及び第3条で禁止されている行為である。子供(未成年者)に対する「人権侵害」にも該当する。

宗教2世問題に無理解な人達は、成人(18歳以上)に達したら親(保護者)のもとから自立(独立)して「宗教団体から脱会(脱退)すればよいではないか?」という疑問があるが、「宗教を辞めると、地獄に堕ちる」などの精神的・心理的な恐怖心やマインドコントロール脅迫や説得などを受けるケースが多い為に脱会(脱退)することは非常に難しい。

宗教2世をテーマにした作品

映画

漫画

関連項目

脚注・出典

  1. ^ 塚田穂高 (2022-03-31). “小説・映画「星の子」が描く宗教・家族・学校”. 上越教育大学研究紀要  (上越教育大学) 41 (2). https://juen.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=8543&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1 2022年8月26日閲覧。. 
  2. ^ a b c d e f 清永聡 (2022年8月22日). “旧統一教会と『宗教2世』問題”. 解説委員室ブログ. 日本放送協会. 2022年8月26日閲覧。
  3. ^ 藤倉善郎 (2021年6月22日). “NHKの特集連発で揺れる「カルト2世問題」の行方”. 論座(RONZA). 朝日新聞社. 2022年8月26日閲覧。
  4. ^ 毎日放送 (2022年8月5日). “「教会のせいで人生をめちゃくちゃにされた」...『神の子』と言われて育った元2世信者が語る”苦悩とジレンマ” 自死を考えた際の”遺書”には「悔しい。悔しい。悔しい」”. MBSニュース. 2022年8月26日閲覧。
  5. ^ 中井なつみ (2022年8月17日). “「毒親」の背景にあるもの 宗教2世の生きづらさ、議論すべき点とは”. 朝日新聞. 2022年8月26日閲覧。
  6. ^ a b 島田裕巳 (2019年6月14日). “"親が創価学会"の子の悲惨すぎる学校生活”. PRESIDENT Online(プレジデントオンライン). pp. 1-2. 2022年8月27日閲覧。
  7. ^ a b ABEMA Prime (2022年8月9日). “電話相談もシャットダウン「宗教絡みはおうちでなんとか…」 自助グループを立ち上げた元2世信者の研究者”. ABEMA TIMES. 2022年8月27日閲覧。
  8. ^ 日本テレビ (2022年8月17日). ““統一教会”2世「自由恋愛は最大の禁忌」「3日断食」――“宗教虐待”周知へ署名活動「宗教2世を助けてください」”. 日テレNEWS. 2022年8月27日閲覧。
  9. ^ 久永隆一 (2022年8月19日). “宗教2世の子どもは置き去り? 政府会合に厚労省不参加で疑問の声”. 朝日新聞. 2022年9月8日閲覧。
  10. ^ クローズアップ現代 (2022年9月5日). “旧統一教会の他にも…"宗教2世”たちの知られざる苦悩”. 日本放送協会. 2022年9月8日閲覧。
  11. ^ 日本放送協会 (2022年9月5日). ““宗教2世"旧統一教会・信者の子どもたち 知られざる現実”. NHK クローズアップ現代. 2022年9月8日閲覧。
  12. ^ 日本テレビ (2022年7月19日). ““統一教会”「2世信者」の苦悩 子供のころ“文鮮明氏の血が入っているとされるワイン”飲まされ…”. 日テレNEWS. 2022年8月26日閲覧。
  13. ^ 雨宮処凛 (2022年7月20日). “「人生をめちゃくちゃにされた」安倍元首相銃撃事件、そして宗教二世問題”. ハフポスト. 2022年8月26日閲覧。
  14. ^ 大井真理子 (2022年7月23日). “安倍氏殺害事件で注目を集める「宗教2世」”. BBCNEWS JAPAN. 2022年8月26日閲覧。
  15. ^ 新興宗教の2世信者描く「息衝く」がリバイバル、東京・大阪で緊急上映”. 映画ナタリー (2022年8月24日). 2022年8月26日閲覧。
  16. ^ 宗教2世の中学生が抱えた“絶望”とは。今だから見たい映画『星の子』が教えてくれること”. 女子SPA! (2022年7月22日). 2022年8月26日閲覧。
  17. ^ 「二世信者」として育てられた女性が語ったあの頃…「異常だったけれど母のことを否定するつもりはない」――衝撃作『よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話』著者インタビュー”. ダ・ヴィンチWeb (2019年2月28日). 2022年8月26日閲覧。
  18. ^ 「宗教2世」題材の漫画を刊行へ 文芸春秋、他社で連載中断”. 共同通信 (2022年8月17日). 2022年8月26日閲覧。