反セクト法

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反セクト法(はんセクトほう)

  • 正式名称人権及び基本的自由の侵害をもたらすセクト的運動の防止及び取締りを強化するための2001年6月12日法律2001-504号(じんけんおよびきほんてきじゆうのしんがいをもたらす セクトてきうんどうのぼうし および とりしまりをきょうかする にせんいちねんろくがつじゅうににちほうりつにせんいち ごひゃくよんごう;Loi no 2001-504 du 12 juin 2001 tendant à renforcer la prévention et la répression des mouvements sectaires portant atteinte aux droits de l'homme et aux libertés fondamentales)は、フランス法律
  • 2001年6月12日に制定。

法律の解説[編集]

セクト(カルト)的と看做される団体の違法かつ悪質な活動に一定の規制をかけるための法律。 カルト的と目される団体が繰り返し犯罪を犯いかつその活動内容が恒常的に悪質であるとき。 その団体に無制限な活動の自由を認めるべきでなく、悪質さと犯罪性を根拠にその団体に一定の活動制限や処罰を与えるべきか。 これを争点とする裁判を開くことを可能にした法律。

刑法を拡張し未整備だったセクトの法人としての責任の明確化と、非常に甘かった組織犯罪に対する罰則の強化を行った法律。 フランスは元々法人への処罰全般が甘かったので全体的な厳罰化の流れとしてもこの法律は制定された。 セクトと目される団体が繰り返し組織的犯罪等や扇動等を行い、それが改まらない場合に適用される法律である。

この法律の想定しているセクトとは、フランス政府の規定による社会との軋轢を生む傾向のある団体のことであり、アメリカや日本などでカルトと呼ばれる団体とほぼ同じである。代表的なところでは統一教会(世界基督教統一神霊協会)、サイエントロジーエホバの証人創価学会などの現地法人がフランス国内での犯罪性や人権侵害の度合いなどに基づきセクトとして取り扱われた。

概略[編集]

ヨーロッパ各国では 1980年代世界基督教統一神霊協会(統一教会)に入信した信者と家族の間で問題が頻発したことを受け、当時のフランス首相、ピエール・モーロワから調査を委嘱された下院議員、アラン・ヴィヴィアン1985年4月、「フランスにおけるセクト、精神的自由の表現か悪質なかつぎ屋か」と題する報告書を提出した。 その後1984年4月と6月にEC議会が統一教会に対する対策を求めるに当たっての調査の中で同様の問題のある宗教団体があることが認識されるようになった[1]

1984年5月、EC議会がセクト問題について初めての決議、「宗教団体の保障の下で活動している新しい組織によるさまざまな法の侵害に対する欧州共同体加盟諸国による共同の対応に関する決議」を賛成多数で採択した[2]

その後、フランスにおいては政府がセクト現象についての調査委員会を国会に設置した。1995年12月、下院国民議会が「フランスにおけるセクト」という報告書を提出した[1]

2000年2月7日にはMILS(Mission interministerielle de lutte contre les sectes = 府省間セクト対策本部)が最初の報告書をまとめ、「人権及び基本的自由を侵害するセクト団体に対しての予防と規制を強化しなくてはならない」との結論を出した。そして、上下両院での約二年に渡る審議を経て、このいわゆる「反セクト法」を成立させた。

内容[編集]

法人自身、またはその規定上の指導者もしくは事実上の指導者がこの法律の為に拡張されたいくつかの刑法に記載されている違反のいずれかを犯したとして刑事責任を追及され、終局的に有罪判決を下された場合は、法的形態または目的が何であれ、その活動に参加している者の心理的・身体的依存状態を創り出し、維持し、または利用することを目的とした活動を続けるすべての法人に対し、本条項にて定める方式に従い、その解散を宣告することができる。

具体的な一例をあげれば宗教団体などが信者を利用しての犯罪行為を止めずそれが悪質な場合などに適用される。 解散訴訟は、職権で行動する検察の請求または全関係者の請願に基づき、大審裁判所(日本で言うところの最高裁判所)に提訴され、15日間の控訴期間が与えられ大審裁判所にて解散の是非を争われる。

法人への罰則は以下の通り

  • 法人の解散
  • 一定期間の活動の禁止
  • 司法監視
  • 事業所の閉鎖
  • 契約からの排除
  • 資金募集の禁止
  • 小切手の振出し禁止及びキャッシュカードの使用禁止
  • 犯罪に関連した物又は犯罪から生じた物の没収
  • 判決の掲示又は告知

また強制解散後は5年間の司法監視が行われる。 2001年に反セクト法が制定されるまで、フランスにおいては実質セクトを規制する法律はなかった[3]

過去の新聞記事についてはG-Search[1]というデータベース検索サイトで閲覧可能である。


雑記[編集]

この法律は日本でも話題になり、ネットでも議論の対象となった。 創価学会と創価学会に批判的な人の間での議論が最も数が多かったので掲載しておく。 大別すると二つに分かれる。

  • 創価学会員の主張:宗派や教義で差別し、実質キリスト教を守るための法律である。
  • 創価学会に批判的な人の主張:創価学会を特別に危険視して制定された法律である。

この2つはネットで最も広く支持された意見であるが、法律の内容を知らない人間による議論という点で一致していた。 両者の意見を裏付ける思想宗派を統制するための条文や特定宗教を狙い撃ちにした条文はこの法律の中に存在しない。

産経新聞』の記事に 「【談話室】カルト指定、事実でない 」 という記事がある。 フランスのセクト対策について創価学会がどう考えているかを書いた創価学会の公式発表と呼べる記事である。 この記事中反セクト法にはカルトとされる団体の名前が条文に直接記載されており、この条文の中に創価学会は載っていない。よって創価学会はフランスでセクトと分類されていないと創価学会が主張している。

この主張には明確な嘘が含まれていた。 反セクト法の骨子は、悪質なカルト的活動が常態化し、組織犯罪で何度も有罪判決を食らった団体があった時。 この種の団体の活動の自由を無制限に認めず、活動内容に幾らかの規制をかけるべきか裁判で争えるようにしようという法律である。 軽い処罰として小切手の振り出し禁止から、重い処罰としてフランス国内での解散命令、5年間以内の団体再結成の禁止までを裁判で争えるように法的根拠を与えている。

反セクト法は一般的な犯罪を裁く刑法であったためこの法律にいかなる団体の名前も載っていない。 組織ぐるみの汚職事件を起こした会社を処罰できるよう法整備がなされるのと同様に、フランスでは悪質なカルトの法的責任を裁判で争えるよう法整備を行ったわけである。 このため創価学会は公式発表でデマを流したと言えるし、特定団体を狙い撃ちにした法律だというネット上の反創価の議論もデマに満ちていたと言える。


日本での俗称は反セクト法(他にセクト法案、カルト法案、カルト防止法、セクト防止法、カルト弾圧法、セクト弾圧法、ピカール法、アブ-ピカール法、反カルト法)など無数の俗称を持つ。 この呼称は議論をする人間がどの陣営に属していたかで別れる。 学術的な場合俗称はあまり使われないがアブ-ピカールを、フランス政府を叩きたい場合は弾圧法を、中立的な場合は反セクト法を、一部のアンチがカルト防止法といった俗称を使っていた。


この法律の想定しているセクトはフランス政府の基準であり、一政府の行ったものに過ぎないが警察司法の記録に基づき犯罪性と人権侵害を基準になされ、特に注意すべき団体のリストが1995年1999年の報告書において示された。

フランスでは憲法に記載されているライシテ(宗教からの独立)の原則に基づき宗派や宗教での差別は出来ない。 セクトは犯罪に手を染めやすい特徴をもつ団体として取り上げられており、その定義はカルト団体とほぼ共通している。 フランス政府はどのセクト団体においても所属することで所属前より人生が向上した人や、カルトの中にも社会の需要に答えているなどの面もあり、犯罪性が高くとも単純には排斥できない面もあるとしている。

またセクトとみなされるべき基準は以下の通りである。

  • 精神の不安定化
  • 法外な金銭的要求
  • 生まれ育った環境との断絶の教唆
  • 健全な身体の損傷
  • 児童の徴用
  • 多少を問わず反社会的な教説
  • 公共秩序の撹乱
  • 多くの裁判沙汰
  • 通常の経済流通経路からの逸脱傾向
  • 行政当局への浸透の企て

参考文献[編集]

外部リンク[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ a b 山口広中村周而平田広志紀藤正樹 『カルト宗教のトラブル対策』教育史料出版会 2000年5月20日
  2. ^ 第二東京弁護士会 消費者問題対策委員会(編)『論争 宗教法人法改正』 1995年9月30日 緑風出版
  3. ^ 朝日、産経、読売、毎日新聞等でフランスのセクト対策について紹介されたのであるが、これらの記事中に、「フランスに置いても反セクト法とよべる法律が存在しない」旨の記述がある。これにより2001年まで反セクト法と呼ばれる法律が存在しなかったことがわかる。

関連項目[編集]