トレインチャンネル
トレインチャンネルは、東日本旅客鉄道(JR東日本)の首都圏線区において、通勤形電車内に設置した液晶ディスプレイ(LCD)を用いた電子広告(デジタルサイネージ)である。動画を主体とした各種コンテンツ(CM・ニュース・天気予報など)を提供し、他の吊り広告などと同様にJR東日本グループの広告代理店であるジェイアール東日本企画(jeki)が媒体社となっている[1]。
三菱電機(一部の配信系統は日立製作所)が開発したトレインビジョンシステムを採用しており[2]、同様にLCDを用いて停車駅や乗換案内・運行情報などを表示する車内案内表示装置と組み合わせて設置される。
また、近年ではJR東日本以外の鉄道事業者でも類似の車内デジタルサイネージを展開している例(東京近郊では東京地下鉄の「Tokyo Metro ビジョン」、東京急行電鉄の「TOQビジョン」、西武鉄道の「西武スマイルビジョン」など)も増加している。
概要
2002年から山手線に導入されたE231系500番台に初めて搭載された。同車両に搭載されているVIS (Visual Information System) により表示内容を制御しており、各客用ドアの鴨居部分に画面サイズ15インチ・アスペクト比4:3のLCDが2画面ずつ設置されている。
向かって左側の画面がトレインチャンネル用であり、コマーシャル動画・天気予報(日本気象協会(JWA)によるもので、トレインチャンネル用のJWAキャラクターとして「じぇいわ君」がいる[3])・文字ニュース(共同通信社送信のニュース)、「NHK Pickup NEWS」(このタイトルは以前「NHK NEWS 1minute」というタイトルで放送されていた。また数か月して「NHK Pickup NEWS」のタイトル画面に「トレインチャンネルニュース」の文字が追加された)・「TBSニュースバード」を放送する。その前は日テレNEWS24が放送されていた。(インフォマーシャルと天気予報は各線で異なるものを使用)。音声は流れないため、本来テレビコマーシャル向けに制作されたCMの一部は制作側で編集され、画面下に字幕やふきだしを表示しているものがある。その他、山手線で運行されている広告貸切列車である「ADトレイン」では、このトレインチャンネルも一社貸切広告として放送されている。事例としては2006年4月に運行された日本テレビの「デジタルGトレイン」(日テレ関連広告および読売ジャイアンツ戦中継を放送)や「箱根駅電」(箱根駅伝の中継)が挙げられる。
- その後の新型車両にも順次導入されており、2006年から導入されたE233系電車やE331系電車(現在は運用終了)、2015年に導入されたE235系電車にも設置されている。2007年から導入された京浜東北線・根岸線向けE233系1000番台以降は画面が17インチ・アスペクト比16:9に拡大された。常磐緩行線・千代田線直通用のE233系2000番台では、運行開始当初はLCDが1画面のみの設置でトレインチャンネルには対応していなかったが、2015年2月より導入された[4]。
- E235系では、トレインチャンネルの2画面に加え、新たなデジタルサイネージとして「まど上チャンネル」と「サイドチャンネル」が新設されている。21.5インチ液晶ディスプレイを窓上に3画面、妻上部に1画面設置している[5]。
- ニュースや天気予報などリアルタイム性のある情報は主要駅ホームに設置されたアンテナで配信されるほか、動画などの広告データは車両基地入区中にミリ波無線や無線LANを使用して更新される。なお、E233系5000番台以降の電車および山手線・中央・総武緩行線向けE231系500番台ではUQコミュニケーションズのモバイルWiMAXを用いて配信するシステムを搭載している。
右側の画面は広告等以外の列車運行に係る情報を表示する「車内案内表示装置」(路線図・次駅案内・乗換案内・運行情報・駅情報など)であり、運行情報についてはデジタル列車無線を通じて最新のデータが地上側から随時伝送され、新着や更新があった際にはチャイム音が鳴る(駅停車中に運行情報を受信した場合も鳴る)。
- 運行情報(遅延や運休など)は日本語と英語に分けて表示される。この情報はJR東日本ホームページの運行情報一覧のほか、駅の案内表示器および、VISを搭載している車両(トレインチャンネル装備車両のほかE231系電車・E217系電車・E531系電車の車内LED表示装置にも同時配信される。新幹線および関東(全域)・甲信越地方のJR東日本線、さらに2006年以降は首都圏の私鉄線・地下鉄線の情報も表示されるようになったため、大規模な運行遅延時(地震・台風・大雪など)には表示されるページ数が十数ページに達し、結果的に全てを表示する前に次の駅に到着するため、途中で打ち切られることもある。また、これらの現象を考慮して乗務員が表示路線・内容を取捨選択することもできる。
- なお、乗換路線の案内は22時30分以降になると路線名の下に「のりかえのお客様は、終電の時刻にご注意ください。」と表示され、また23時以降は終電の時間を考慮して自動放送で乗り換え路線の案内が放送されなくなる(ただし画面上では終電が発車した後でも当該路線への乗換案内が表示される)。
搭載車両
- JR東日本E231系電車(500番台)
- JR東日本E233系電車 - 3000番台をのぞく。
- JR東日本E235系電車 -
- JR東日本E129系電車 - 2015年7月末まで2両に試験設置。
- JR東日本E331系電車 - 現在は運用終了。
類似事例
JR東日本以外の各社で車内LCDによるデジタルサイネージを導入している例
- (広告表示を実施しているものに限り記載。詳細については以下リンク先の記事を参照のこと。)
- 小田急電鉄 - 「小田急TV(OTV)」 1000形電車の更新工事実施車両、4000形電車に搭載。小田急3000形の一部にも搭載。
- 東京都交通局 -「地下っ都ビジョン」 都営大江戸線東京都交通局12-600形電車、都営新宿線東京都交通局10-300形電車
- 京王電鉄 - 「K-DGチャンネル」1000系電車の一部に搭載。
- 京成電鉄 - 3000形電車の一部に搭載。
- 京浜急行電鉄 - 1000形電車の10次車以降に搭載。当初は2画面であったが広告収入が見込めないため、後にトレインチャンネルに当たるほうを撤去。
- 埼玉高速鉄道 - 「SaiNet Vision」15インチの広告画面を千鳥配置で設置。
- 相模鉄道 - 「Sotetsu Infovision System(SIS)」。11000系電車に搭載。
- 西武鉄道 - 「西武スマイルビジョン」30000系電車、6000系電車(6103F~6151F.6154F.6158F)に搭載。
- 東京急行電鉄 - 「TOQビジョン」5000系電車、6000系電車、7000系電車に搭載。ただし、7000系のものは、グループ広告専用のため、TOQビジョンの名称は与えられていない。
- 東武鉄道 - 60000系に搭載。
- 東京地下鉄(東京メトロ) - 「Tokyo Metro ビジョン」。10000系電車、15000系電車、16000系電車、9000系電車(5次車)1000系電車、8000系B修車、02系B修車、05系B修車に搭載。案内画面と広告画面の二画面構成。ただし「9000系電車(5次車)」のみ広告画面が無い一画面構成。(準備工事実施済)
- 横浜市交通局 - 「グリーンビジョン」。10000形電車に搭載。ドア横に設置。乗務員室直後は1画面。
- しなの鉄道‐「115系電車」に搭載。15インチ(アスペクト比4:3)の広告画面が千鳥配置でドア上に設置されている。2両編成の電車、「ろくもん」には未搭載。
- 名古屋市交通局 - 「ハッチービジョン」 案内画面のみ。
- 西日本旅客鉄道(JR西日本) - 「WESTビジョン」
- 南海電気鉄道 - 8300系電車に搭載。LCDは17インチ(アスペクト比16:9)。
- 京阪電気鉄道 - 3000系電車・13000系電車・8000系電車・京阪6000系電車(リニューアル車)に搭載。LCDは15インチ1画面。
- 神戸電鉄 - 6000系電車に搭載。LCDは1画面。
- 阪急電鉄 - 阪急1000系電車・阪急1300系電車・9000系電車・9300系電車(3次車以降)・7000系電車(一部改造車)・7300系電車(改造車)に搭載。1000系電車・1300系電車・7300系電車(VVVF改造車)は32インチハーフサイズ1画面。それら以外は2画面。
- 阪神電気鉄道 - 5700系電車に搭載。LCDは阪急と同じ32インチハーフサイズ一画面のものを千鳥配置で設置。
脚注
- ^ “JR東日本企画 トレインチャンネル”. 2012年12月29日閲覧。
- ^ “三菱電機 トレインビジョンシステム”. 2012年12月29日閲覧。
- ^ じぇいわ君オフィシャルページ - 日本気象協会
- ^ "JR常磐線各駅停車に「トレインチャンネル」が新たに登場!!" (PDF) (Press release). ジェイアール東日本企画. 23 February 2015. 2015年3月4日閲覧。