営団9000系電車

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帝都高速度交通営団9000系電車
東急目黒線へ乗り入れる9000系(2007年2月7日 / 多摩川駅)
東急目黒線へ乗り入れる9000系
(2007年2月7日 / 多摩川駅
編成 6両編成
営業最高速度 南北線・埼玉高速線内80km/h
東急線内110 km/h
設計最高速度 110 km/h
起動加速度 3.3 km/h/s
減速度 3.5 km/h/s(常用最大)
4.5 km/h/s(非常)
車両定員 本文参照
全長 先頭車20,660mm
中間車20,000 mm
全幅 2,780 mm
全高 ・下記は2次車以降。1次車はこれより5mmだけ高い。
4,080mm(5次車4,042mm)
パンタ付車両4,140 mm
車両質量 25.7 - 33.5t
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500V
架空電車線方式
主電動機 かご形三相誘導電動機 190kW
歯車比 109:14 (7.79)
駆動装置 WN平行カルダン
制御装置 GTOまたはIGBT素子
VVVFインバータ制御
台車 ・ボルスタレス台車
ESミンデン式:SS-122・SS-022
モノリンク式:SS-135B・SS-035B
・5次車はモノリンク式ボルスタ付台車
FS777A形
制動方式 ATC連動電気指令式空気ブレーキ回生ブレーキ併用)
保安装置 CS-ATCATOおよびTASC
製造メーカー 川崎重工業東急車輛製造
日本車輌製造

営団9000系電車(えいだん9000けいでんしゃ)は、帝都高速度交通営団(営団)の通勤形電車である。2004年(平成16年)4月の営団民営化にともない、東京地下鉄(東京メトロ)に継承された。南北線用の車両である。

1991年平成3年)11月29日の南北線の部分開業に併せて4両編成で登場した。同線のラインカラーであるエメラルドの帯が入っている。

形式称号は01系など、「0シリーズ」形式の登場以後ながら「09系」というような形式称号になっていない。

概要

本系列は21世紀を指向し、先進技術の導入、地域との調和、人に対するやさしさをコンセプトに製造された。

車体は東西線用の05系とほぼ同じ構造[1]アルミニウム合金製20m車体であり、側面に客用ドアが4か所ある。車体材料にはアルミニウムの中空や大形の押出形材を使用し、これらを連続溶接工法で組み立てている。前頭部は流線型に近く、フロントガラスは側面にもまわり込ませた曲面ガラスを使用し、運転士の視野を確保している[1]。前面にはプラグドアによる非常用貫通扉を配し、非常脱出用の梯子も設置してある。6両編成を組成し、電動車(M)と付随車(T)の構成(MT比)は4M2T(5次車は3M3T、8両化時は4M4T)である。

南北線は急曲線や急勾配が多く[2] 、従来のチョッパ制御ではそれに対応する直流電動機の出力などにも限界があり、より出力の大きい三相誘導電動機が使用できるVVVFインバータ制御を営団で初めて本格的に採用した[2]。初期の車両ではGTOサイリスタ素子を用いた方式を採用していたが、2次車以降ではIGBT素子に変更された。三相誘導電動機の採用で保守軽減が図られたことから営団地下鉄では初めて車内床面の主電動機点検蓋(トラップドア)は省略された。

保安装置には1段ブレーキ制御機能を持つ新形の多段式CS-ATCを採用した[3]。これにより細かい速度制御、乗り心地の向上が可能となっている。さらに安全性や停止精度を高めるために人工知能(AI)を組み込んだATOを採用し、これにより出発ボタンを押すだけで加速から駅停車まで自動運転が行われる。ATO運転時には力行・減速操作ともに31段の多段制御を採用、また定速運転機能を採用することで乗り心地を向上させている。

ATO運転時における安定した回生ブレーキが確保[4]できるように変電所3か所に「電力回生用インバータ」を設置している。これは列車の回生ブレーキが他の列車で吸収されない場合には回生ブレーキで発生する電力を変電所のインバータで吸収・変換して駅の照明やエスカレータの電源として使用する。

南北線では列車無線装置に在来方式の誘導無線(IR)方式に代え、漏洩同軸ケーブル(LCX)を使用した より電波品質の良い空間波無線(SR)を営団で初めて採用した。さらに、これまでの非常発報機能に加え、緊急時に列車防護が行える防護発報機能を搭載させた。また、運転指令所より列車無線を通じて運行中の全列車への車内に一斉放送ができる機能がある。

ワンマン運転用の設備など

ワンマン運転用としてATO装置を装備し、ホームドアに対応している。また、営団として初めて車椅子スペースや、車内客用ドア上部に2段式のLED旅客案内表示器を設置した(5次車の案内表示器は液晶ディスプレイ式)。このほかに自動放送装置や車外スピーカーを搭載する。また、通常の車掌用放送操作器、ドア開閉装置(車掌スイッチ)も備えており、鳩ヶ谷駅浦和美園駅武蔵小杉駅日吉駅で入庫の際、運転士が直接目視で閉扉を行う場合や、東急東横線内で臨時列車として車掌が乗務する際などに使用される。

安全対策として、車内客用ドアの戸袋部には戸閉検知センサーがあり、手が引き込まれそうな時には開扉動作を停止する機能やホームドアとの連動機能があり、ホームドアに物が挟まれた場合には2回まで自動でドアの再開閉が行われる。車内の非常通報装置にはワンマン運転用として乗務員と相互通話可能なインターホン方式を採用した。これは各車両の左右の壁に2か所ずつ(1両あたり4台)と車椅子スペース部(同設置車は5台)に設置されている(ただし、5次車は各車両2台の設置)。乗客から通報があっても10秒間運転士が応答しない場合には列車無線に接続し、運転指令所の指令員が応答するシステムとなっている。

また、乗務員室仕切扉が電磁鎖錠対応となっている。これは、緊急時に乗客を避難させるために使用するもので扉上には「通行可」と表示され避難できるようになっている。さらに異常時における列車防護として前灯点滅機能がある[5]

乗務員室など

乗務員室はワンマン運転設備の設置で機器が多くなることから従来車よりも広く線路方向に約2.2m確保され、このために先頭車は中間車よりも66cm長い。乗務員室内の配色はクリーム色、運転台は茶色の配色である。中央にワンハンドルマスコン[6]があり、ATO出発ボタン、ドア開閉ボタン、非常停止ボタンなどが設置してある。計器盤右側には車両情報管理装置 (TIS) のモニター画面が収納されている。また、左壁や運転台の右袖部も広げ、機器を設置しており、運転席に座った状態であらゆる操作ができるよう機器を配置している。運転士用放送操作器(運転士操作器)は使用しやすいようにマイク形で、ワンタッチで連絡(両乗務員室間連絡用)・車内放送・車外放送(各左右別)用が切り換えできるものとなっている。

乗務員室と客室の仕切りには窓が3箇所あり、客室側から見て左から順に大窓、乗務員室扉、細長い窓であり、大窓のみ遮光ガラスが使用されている。遮光幕は大窓、乗務員室扉窓に設置してある。

車両情報管理装置(TIS)にはワンマン運転時の乗務員支援、機器故障時の車上検査機能、処置ガイダンス機能を搭載した[7]。さらに機器の遠隔操作機能(ブレーキ遠隔開放[8]・制御遠隔開放[9])があり、故障時における迅速な対応ができるようにした。

開業時は地上式CCTV(Closed Circuit Television・ホーム監視用モニター)を採用し、運転台からホームドア上部の線路側にあるモニターを見ながら戸閉操作を実施していた。その後、全線開業の際には車上方式に変更し、車掌台上にはホーム監視カメラからの映像を受信するミリ波受信機が設置され、全編成に車上ITV(車上モニター画面)が設置された。

形態分類

現行の編成では編成組成や機器の違いからそれぞれ呼称方法がある。

第01・03・05・07編成はA編成、第02・04・06・08編成はB編成、第09 - 15編成はC編成、第16編成 - 第21編成はD編成と呼ばれる。営団の公式な資料[10]においてもこの呼称方法が使用されている。

試作車から4次車まで

4次車までの編成では、インバータ制御による集中式の容量48.9kW(42,000kcal/h)の冷暖房装置を搭載する。南北線ではワンマン運転を行うため、冷暖房装置は細かい操作の不要な全自動モードにより運転することができる。車内は冷房ダクトによるラインフローファン方式で、ラインデリアは先頭車に9台、中間車に10台設置している。また、車内放送用スピーカーは各車6台ある。側窓は車端部は固定窓、それ以外の2連窓は開閉可能な下降窓である。

試作車

試作車・一次車の車端部に配置されたクロスシート
(2008年8月8日)

1990年(平成2年)11月に川崎重工業で第01編成(9101-9201-9301-9801)の4両が製造された。落成当初、行先表示器は前面が字幕式で、側面についてはホームからの視認性が悪い[11]ことを理由として準備工事とした(後述の東急目黒線直通改造の項も参照)。先頭車側面の帯は前面から側面まで1本につながっている[12]

客室のカラースキームは内張りにベージュ系の光沢化粧板を使用した。本車両では試験的にパープル系[13]、オレンジ系[14]の2色を基本とした座席モケットを4種類、床材は石畳の散歩道をイメージしたものを4種類、4両すべてを異なったデザインで試作し、営団関係者にアンケート調査を行い、量産車に反映した。ただし、試作した座席モケット、床材は後年に張り替えられた。車内の座席バケットタイプロングシートが基本であるが、車端部にはクロスシートを千鳥配置で設置した。

車内はステンレス製の手すり[15]にはベージュの焼付塗装がされている。荷棚は見通しのよいアクリル板とされ(これは後年に通常の網棚に改造された)、さらに荷棚受けや広告枠・押し面[16]などのアルミ材にもアイボリーの塗装品を使用している。また側窓・妻面窓枠はFRP製であり、当時の南北線は全線地下区間であったことからカーテンは設置していなかった。袖仕切りはFRP成形品とされ、仕切りの内側はモケットが貼られたほか座席下の蹴込み板は茶色に着色された。これらのことから本形式における車内は金属の質感を抑えるための工夫が従来車両よりも多く見られる。

当初の4両編成では9300形に車椅子スペースがあり、この場所の壁には折りたたみ式の2人掛け座席が設置され(ただし1次車も含め後年にこの座席は廃止された)、上部に荷棚も設置された。客用ドアには複層ガラス構造が採用され、連結面の貫通扉には下方までガラスの拡大された扉が採用された。

当初の編成における9201-9301は三菱電機製のGTO素子を用いたVVVFインバータ(1C4M・2群)を搭載している。補助電源装置は三菱電機製の150kW出力、DC-DCコンバータ(出力電圧は直流600V)を採用した。主回路は75kWを2群で構成し、VVVFインバータと合わせて4両編成時における故障時の冗長化を図っている。空気圧縮機 (CP) はレシプロ式のC-2500LB形を両先頭車に搭載した。

台車03系や05系で使用しているSUミンデン式(片板ばね式)台車を基本として、南北線における急勾配や急曲線においても安定して走行できるよう前後支持剛性をさらに低減させたESミンデン式軸箱支持方式を採用した。さらに、空気バネマイコンによる自動制御として直線走行時の安定性や曲線通過性を向上させている。基礎ブレーキには03系・05系でも実績のある保守の容易なユニットブレーキを使用している。

千代田線において各種試験を実施した後、1991年(平成3年)7月にトレーラーで陸送され、地下の王子車両区(現・王子検車区)に搬入された。後述の1次車と同様に、同年11月29日の駒込 - 赤羽岩淵間開業時より営業運転を開始した。

1次車

量産車は試作車の試験結果を踏まえて改良が加えられ、1991年(平成3年)6月から7月にかけて落成し、綾瀬検車区に搬入された。同検車区で整備後に試作車同様に王子検車区へ搬入された。このグループは1991年(平成3年)11月29日の南北線第1期開業用に第02 - 07編成が、翌1992年(平成4年)4月に検査時の予備として第08編成が川崎重工業で新製された。

制御装置は第02 - 04編成が日立製作所製のGTO素子、第05 - 08編成は三菱製のGTO素子を搭載した。

外観では先頭車運転室扉部の帯が前面に回り込む帯と側面帯に分かれている。これ以降このスタイルで統一されている。

車内は手すりの塗装をやめステンレス無塗装、荷棚は従来の01系以来使用しているステンレス線を格子状に溶接した網棚式に変更された。座席、床材は9103号車のデザインが正式に採用となり、座席、床材は沿線に点在する公園藤の花をイメージしたパープル調に統一(ただし、優先席部の座席は青色。)した。座席はバケット式だが、試作車のセパレートタイプ[17]ではなく、連続形となった。

当初は試作車と同様に4両編成(9100-9200-9300-9800)で組成されたが、四ツ谷 - 駒込間の延伸開業の際に、6両編成化による編成替えを実施している。

第02・04・06・08編成の9200-9300は、それぞれ第01・03・05・07編成の9600-9700に改番のうえで組み込まれた。残った偶数編成の9100・9800は、新製された2次車の9200-9300-9600-9700を組み込む形で6両編成化された。

なお、9300形は6両編成化時に車椅子スペースを9200形に移設した際、同スペース撤去跡に本来はクロスシートにするべき場所をロングシートにしたため、シート配置が不規則となった[18]。A編成の9700形は当初9300形であったため、その車椅子スペース上部には荷棚が設置されていた。それは9700形改番後も残されているが、9300形から移設した9200形の同スペース部には荷棚が設置されていない。

1992年に増備された第08編成は従来車両とほぼ同一仕様であるが、台車はESミンデン軸箱支持としながら、軸受けを鞍形(くらがた)構造に変更した。なお、後述の編成替えにより、現在は第08編成の両先頭車と、第07編成の9607・9707号車がこの構造である。

試作車・1次車 落成時の編成
 
← 赤羽岩淵
駒込・(目黒) →
形式 9100形
(CT1)
9200形
(M1)
9300形
(M2)
9800形
(CT2)
機器配置 CP VVVF DDC,BT CP
試作車 9101 9201 9301 9801
1次車 9102

9108
9202

9208
9302

9308
9802

9808
凡例 
  • VVVF:主制御器
    DDC:補助電源装置(DC-DCコンバータ)
    CP:空気圧縮機
    BT:蓄電池

2次車

2次車の車内
袖仕切が丸みを帯びた形状に変更
日立製のIGBT素子使用の
VVVFインバータ装置
(VFI-HR4820D形)

1996年(平成8年)3月26日四ツ谷 - 駒込間の開業用、および6両編成化対応として、1995年(平成7年)11月から1996年(平成8年)2月にかけて、第09 - 13編成の全車両および第02・04・06・08編成の9200-9300-9600-9700が川崎重工業と日本車輌製造で製造された。

9200-9300-9600-9700の制御装置は日立製のIGBT素子によるVVVFインバータ(3レベル方式、1C2M・4群)に変更され、台車はモノリンク式ボルスタレス台車 (SS135B・SS035B) に変更した。この台車は千代田線用の06系などで採用されたSS135形・SS035形台車をベースに、本形式の従来車両と同様のユニットブレーキ構造を組み合わせた台車である。補助電源装置のDC/DCコンバータは75kWを2台構成から130kW1台に集約、併せてコンバータ素子をGTOからIGBTに変更した。

試作車および1次車の6両編成化にあたっては、VVVFインバータの使用素子が同一編成内で混在することを避けるため、1次車の偶数編成の9200-9300の2両を抜き、奇数編成の9600-9700として組み込んだ。そして余った偶数先頭車に新製した中間車4両を組み込み6両編成化した。

車体は1次車とほぼ同じであるが、アルミ合金材質を統一し、廃車時のリサイクル性の向上を図っている。外観では前面の行先表示・運行表示LED式になった。さらに台車の設計変更により、床面高さを5mm低く(1,155mm→1,150mm)、さらに車体高さも5mm低くなった。

車内では側窓枠、妻面窓枠はアルミ製に変更となり、側窓枠にはカーテン設置用のレール・引っ掛け用溝も準備された(カーテン自体は未設置)。袖仕切は前年に落成した半蔵門線用の8000系6次車と同じ形状のアルミ製[19]で、丸みを帯びた形状に変更された。座席は掛け幅を440mm→450mmに拡大し、蹴込み板は無塗装品になった。さらに車椅子で車両間の通行ができるように貫通路の幅を800mmから900mmに拡大したため、車端部のボックス式クロスシートは廃止された。車椅子スペースは9200形・9700形に変更し、折りたたみ座席を廃止した。従来のつり革(△形で白色品)は座席前線路方向とドア付近枕木方向のみであったが、新たにドア付近線路方向へ増設がされた。

運転台ではTISはカラー液晶化とシステムの変調方式と伝送速度の向上化、東急乗り入れに備えて運転台保安表示灯を8点から13点に変更した。 1次車も同時期にカラー液晶に変更されている。

市ケ谷駅付近に有楽町線との連絡線が設けられたことから、2次車以降はメーカーから甲種輸送後、綾瀬検車区で整備を行い、同連絡線を経て南北線に搬入されている。

3次車

三菱製のIGBT素子使用の
VVVFインバータ装置
(MAP-198-15V58形)

1997年(平成9年)9月30日溜池山王 - 四ツ谷間の開業用に、東急車輛製造で第14・15編成が製造された。室内や外観の仕様は2次車と同じである。電動車は三菱電機製のIGBT素子を搭載している。

4次車

2000年(平成12年)9月26日の目黒 - 溜池山王間の開業用に、日本車輌製造で製造された。1999年(平成11年)10月に第16・17編成が、2000年(平成12年)4月から5月に第18 - 21編成が落成した。電動車は東芝製のIGBT素子による高耐圧・大容量の2レベルVVVFインバータ(1C2M・3群制御)を搭載している。 ただし、2・3次車の制御装置同様に4群構成としながら、3群を使用しており、将来の8両化時に4群制御化ができるよう配線準備がしてある。

当面は6両編成で運用することから、中間車の動力軸分散により、9300の赤羽岩淵・浦和美園方台車と9600の目黒・武蔵小杉方台車の電動機は準備工事として、MT比は3M3T相当となった。台車のマイコンによる空気バネ制御装置は3次車までは装備したが、4次車以降はコスト低減や従来の台車でも十分に安全性が高いことなどから取り止めとなった。

車体では外板溶接の一部に摩擦攪拌接合(FSW)を採用し、外観見付けの向上を図った。行先表示器はLED式で、当初から側面にも設置されている。なお、第20・21編成のみ車両間転落防止幌を装着している。

車内は内張りは化粧板などの内装品の光沢仕上げをやめ、つや消し仕上げに、床材は紺色の2色濃淡柄に変更された。袖仕切りはアルミ製の大形仕切化、座席は片持ち式シートに変更された。ただし、暖房器はつり下げ式だが、小形ながら脚台は残されている。さらに客用ドアと連結面貫通扉の内張りを更新時に交換可能なものへ変更し、ドア本体のリサイクルが可能なように変更した。相互直通運転開始に伴い地上区間を走行することから、側窓のロールカーテンと側面の行先表示器を新製時より設置した。

当初より東急目黒線対応とされ、ATOにTASC機能を搭載[20]、東急線対応の列車無線装置を搭載した。車上CCTV設置により、地上区間におけるモニターの視認性向上のため前面ガラスに遮光フィルムを貼り付けされた。TISは伝送方式の変更と指令伝送の2重系化、従来は設定器で行っていた自動放送・行先設定をTISに内蔵した。

東急目黒線直通対応改造

2000年(平成12年)9月の目黒開業を前に、第01 - 15編成までの全車両に東急目黒線直通対応化改造が施行された。施行内容は以下の通り。

  • 準備工事であったLED式側面行先表示器の設置、側窓にロールカーテンの設置。
  • 4次車に合わせて放送・行先の設定機能をTISに内蔵、従来使用していた設定器は廃止した。
  • 運転台へのホーム監視モニターの設置、フロントガラスに遮光フィルムの貼り付け。TASC搭載、東急線対応の列車無線設置などを実施した。
  • 第01 - 08編成は、上記に加え前面の行先表示器をLED式に変更、ロールカーテン設置時に側窓枠ごとアルミサッシに変更した(ただし妻面窓はFRP製のままである)。

5次車

5次車
前頭部のデザインが大きく変更された
(2009年7月31日 / 多摩川)

2009年(平成21年)に、約9年ぶりの新車として第22・23編成の2編成が製造された[21]。4次車以来の増備となるため、以降に新造した半蔵門線用の08系有楽町線副都心線用の10000系の設計思想を採り入れている。

5次車は従来車両よりも「車内快適性の向上」・「使い易さの向上」・「環境負荷の低減」・「火災対策の強化」・「車体強度向上」を目指したものとした。導入する2編成のうち、1編成は同年6月6日に実施されたダイヤ改正時の列車増発用、もう1編成は今後実施予定の大規模改修工事時の予備編成確保用としている[22]。製造は2編成とも日本車輌製造[23]が担当した。

同年1月と3月に搬入され、5月22日から営業運転を開始し、運用上は従来車と何ら区分されることなく共通に使用されている[24]

1 - 4次車と5次車の
ラインカラーの比較
  前面 側面
1 - 4次車
5次車

外観では約9年ぶりの新造車であることを明確にするため[25]に、フロントガラス形状はそのままに、フロントガラス以下のデザインを変更し、スカートを設置した。シールドビーム前照灯尾灯はケース形状と灯具形状変更(角型→丸型)し、前面のラインカラー帯はフロントガラス下部の形状に合わせてカーブした形状とし、側面部とは流れるようにつなげた。側面は側窓上にもラインカラーを追加したほか、窓下のラインは配色が上下が逆[26]となり、車端寄りの部分はモザイク状に処理をして一体感と躍動感をイメージした外観とした。側面の車両番号表記は外板下部から戸袋部に変更されている。

車体構造は同じ日本車輌製造製である08系で採用した側構体をシングルスキン構造からダブルスキン構造とする「セミダブルスキン構造」を採用したほか、車体端部には三角形の断面構造を持つ衝突柱を配置し、これを車体台枠から屋根構体まで貫通させ、さらに側構体に直接接合する構造としている。さらに台枠と側構体床上面結合部の溶接位置を変更することで衝突事故時における安全性の向上を図った。

車体は従来車両よりもアルミ合金材質の統一を図る「モノアロイ化」を実施し、廃車時におけるリサイクル性をさらに向上させた。このほか、床面高さを10mm低い1,140mmとし、ホームとの段差を減少させた。また、従来車において正面左上窓に貼り付けしてあったシンボルマークは省略された[27]

車内内装

車内は快適性の向上や使い易さの向上などのため、仕様が見直されている。特に火災発生時に有毒ガスの発生源となるFRP塩化ビニル材料の使用を取りやめている。

内張りは白色系の化粧板仕様とし、床材はエメラルドグリーンのゴム材を採用して車内を明るく見せる配色とした。座席は従来車と同様に一般席は紫色、優先席は青色のバケットシートであるが、掛け幅を450mmから460mmに拡大した。座席詰め物には従来からのポリエステル綿のほか、スプリング構造のクッション材や中空エラストマーを重ねた2重構造として座り心地の改善も図っている。袖仕切は白色の大形仕切で、仕切板上部の外側は黒色として明るい車内をシャープに引き締めるアクセントとした。

ドア間の7人掛け座席部では新たにスタンションポール(握り棒)を2本設置した。車端部では7人掛け座席部よりも網棚高さを100mm低い1,700mmとし、優先席部ではつり革高さを80mm低くして(床面上1,660mmから1,580mmへ)使いやすさを向上させたものとした。優先席袖仕切部の握り棒はオレンジ色のエンボス加工品を使用している。

側面客用扉は扉窓ガラスを複層構造から単板ガラスへと変更したほか、側面出入口下部(クツズリ部)には黄色の出入口識別表示板を配している。ドアチャイムは、10000系などと同じ3打式に変更され、各扉の鴨居下部に扉の開閉に合わせて赤く点滅する「ドア開閉表示灯」が新設された。この開閉表示灯はドア開閉時のほか、運転台の乗降促進放送を鳴動させる際にも点滅する。ドアエンジンは当初より減圧機構付きとされたほか、4次車まで採用されていた車内客用ドアの戸袋部にある戸閉検知センサーは省略された。

各車両間にある扉のドアクローザーは新開発のものを使用し、事故防止・防火対策の観点からドア下部に生ずる隙間を発生させないようにしているほか、緊急時に人力で開き易いようになっている[28]

車内の案内表示器LEDによる2段表示式から見やすさ、より多くの情報を表示できる液晶ディスプレイ(LCD)方式に変更し、各客用ドア上部に1台を設置する[29]。表示器を設置していない左側は路線図などを掲出するスペースとされているが、将来的には2画面化(Tokyo Metro ビジョン設置)が可能なよう準備工事を施工している。

冷房装置インバータ制御による容量48.9kW(42,000kcal/h)から、稼働率制御方式(ON/OFF制御式・CU768形)による容量58,0kW(50,000kcal/h)に増強されている。また、5次車では駅部における温度上昇対策のため、駅構内では空調装置からの廃熱を抑制する機能が追加されている。

運転台を始めとした乗務員室内の機器配置などは取り扱いを考慮して従来車に準じているが、一部仕様が変更されている。速度計と両端にある保安表示灯、マスコンノッチ表示灯は10000系と同様の平板な形状としている。また、ホームドア表示灯はマスコン台から保安表示灯部に収納された。車両情報装置(TIS)は空調装置の指令機能と前灯点滅機能を専用スイッチからTISモニター経由の操作に変更した。運転台前のフロントガラスには遮光用カーテンが設置された。

走行機器など

編成形態は一部変更され、9300形(M2)に代わり新区分形式となる9400形(簡易運転台付きT車)を新製し、MT比は完全な3M3T構成とした。走行機器は主電動機出力や歯車比については従来車と同一であるが、機器類は10000系の仕様が採り入れられ設計変更が加えられた。

主回路は三菱電機製の2レベルIGBT-VVVFインバータ方式(PGセンサレスベクトル制御・純電気ブレーキ対応)とし、電動機制御は1C4M1群/2群構成とした。歯車比は従来車と同様だが、10000系で採用した新設計の駆動装置を使用し、振動騒音の低減、保守性の向上を図っている。

補助電源装置は東芝製の240kVA出力の静止形インバータ (SIV)(三相交流440V出力)に、空気圧縮機はレシプロ式から低騒音かつ保守性に優れた一体箱形状のスクロール式に変更した(三菱電機製・MBU331C形)。

台車は走行安全性向上や輪重調整作業などの保守性向上を目的に住友金属工業製モノリンク式台車であるFS777A形[30]に変更され、南北線では初のボルスタ付台車となった。パンタグラフは菱形からシングルアーム式に変更し、一編成当たり3基搭載とした。

編成・運用

運用区間は東京メトロ南北線目黒 - 赤羽岩淵間、相互乗り入れ先である東急目黒線目黒 - 日吉間、埼玉高速鉄道線赤羽岩淵 - 浦和美園間である。営業外列車や臨時列車によってはこれ以外の区間・路線を走行する場合がある。

6両編成23本すべてが王子検車区に所属している。最大運用数は21本で、予備編成は2本である。なお、車体洗浄と車輪転削は埼玉高速鉄道の浦和美園車両基地、定期検査は千代田線綾瀬工場において行われる。

優先席は、1号車と5号車は南側(日吉目黒寄り)、それ以外は北側(浦和美園赤羽岩淵寄り)に設置されており(赤羽岩淵側から1号車、2号車、3号車…の順)、モケットは古いものでは青地にシルバーライン入り、新しいものは青色に柄入りである。弱冷房車は4号車、車椅子スペースは2・5号車に設置されている。パンタグラフは、5次車も含めすべての編成で9200形と9600形(2号車と4号車)に搭載している。

1次 - 4次車 編成形態
 
← 浦和美園・赤羽岩淵
目黒・日吉 →
制御装置
(VVVFインバータ)
備考
形式 9100形
(CT1)
9200形
(M1)
9300形
(M2)
9600形
(M1)
9700形
(M2)
9800形
(CT2)
機器配置 CP VVVF DDC,BT VVVF DDC,BT CP
1次車編成
(A編成)
9101 9201 9301 9601 (9202) 9701 (9302) 9801 9201・9301は三菱電機製GTO素子(1C4M・2群)
9601・9701は日立製作所製GTO素子
1次車の編成替え
カッコ内は組換前の旧番号
9103 9203 9303 9603 (9204) 9703 (9304) 9803 日立製作所製GTO素子
9105
9107
9205
9207
9305
9307
9605 (9206)
9607 (9208)
9705 (9306)
9707 (9308)
9805
9807
三菱電機製GTO素子
1次・2次車
(B編成)
9102
9104
9106
9108
9202
9204
9206
9208
9302
9304
9306
9308
9602
9604
9606
9608
9702
9704
9706
9708
9802
9804
9806
9808
日立製作所製IGBT素子
(3レベル方式、1C2M・4群)
先頭車は1次車
中間車4両は新造2次車
2次車
(C編成)
9109

9113
9209

9213
9309

9313
9609

9613
9709

9713
9809

9813
日立製作所製IGBT素子
(3レベル方式、1C2M・4群)
全車新造車編成
3次車
(C編成)
9114
9115
9214
9215
9314
9315
9614
9615
9714
9715
9814
9815
三菱電機製IGBT素子 全車新造車編成
4次車
(D編成)
9116

9121
9216

9221
9316

9321
9616

9621
9716

9721
9816

9821
東芝製IGBT素子
(2レベル方式、1C2M・3群制御)
全車新造車編成
凡例
  • VVVF:主制御器
  • DDC:補助電源装置(DC-DCコンバータ)
  • CP:空気圧縮機
  • BT:蓄電池

備考
  • 将来8両編成化を行う場合は、9300形と9600形の間に9400形 (Tc) と9500形 (Tc') を追加する予定である。
5次車 編成形態
 
← 浦和美園・赤羽岩淵
目黒・日吉 →
形式 9100形
(CT1)
9200形
(M1')
9400形
(T)
9600形
(M1)
9700形
(M2)
9800形
(CT2)
機器配置 CP VVVF1 SIV,BT VVVF2 SIV,BT CP
車両番号 9122
9123
9222
9223
9422
9423
9622
9623
9722
9723
9822
9823
凡例
  • VVVF1:主制御器(1C4M1群)
  • VVVF2:主制御器(1C4M2群)
  • SIV:補助電源装置(静止形インバータ)
  • CP:空気圧縮機
  • BT:蓄電池

備考
  • 将来8両編成化を行う場合は、9200形と9400形の間に9300形を、9400形と9600形の間に9500形を追加する予定である。
定員一覧表
形式 先頭車 中間車 中間車
(車椅子スペース付)
1次車 140人
(座席49人)
151人
(座席56/55人)
152人
(座席52人)
2次車以降 140人
(座席48人)
150人
(座席54人)
151人
(座席51人)

その他

  • 2007年(平成19年)11月30日12月7日に放送されたテレビ朝日系の番組『タモリ倶楽部』において、第08編成が「地下鉄開業80周年記念タモリ倶楽部号」(貸切列車)として運転された。経路は王子検車区→(南北線)→市ヶ谷駅→(有楽町線)→桜田門駅→霞ヶ関駅→(千代田線)→綾瀬検車区であった。

脚注

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  1. ^ a b 鉄道図書刊行会「鉄道ピクトリアル」1991年6月号「営団地下鉄9000系試作車」55-57頁記事。
  2. ^ a b 帝都高速度交通営団「東京地下鉄道南北線建設史」827頁記事。
  3. ^ この方式は1991年(平成3年)3月に東急田園都市線で採用したばかりである。
  4. ^ ATO運転時に回生ブレーキが使用できない場合(回生失効)は空気ブレーキに切り替わり、定位置停止の精度が落ちてしまう。
  5. ^ 緊急で駅間に列車が停車した場合に後方車の前照灯を点滅させ、後続列車に停止を促す機能。
  6. ^ マスコンノッチ数:力行1 - 4ノッチ・常用ブレーキ1 - 7段・非常
  7. ^ 2000年代に入ってからはこれらのシステムを標準搭載している車両が多くなっているが、1991年当時の採用例は少なかった。
  8. ^ ブレーキが故障により、緩解でできない場合に強制的にブレーキを緩解させる機能
  9. ^ インバータ制御装置故障時に群単位(ユニット単位)で開放させる機能。
  10. ^ 帝都高速交通営団発行「東京地下鉄道南北線建設史」参照。
  11. ^ 南北線の各駅(目黒駅は除く)には天井までの高さがあるタイプのホームドアが設置されている
  12. ^ 現在の外観における量産車との識別点である。
  13. ^ 南北線のイメージを沿線にある旧庭園をモチーフにパープル調にアレンジしたもの。
  14. ^ 従来の営団車両のイメージを南北線用にアレンジしてオレンジ色にまとめたもの。
  15. ^ 乗務員室仕切窓部、客用ドア横、袖仕切部、荷棚前、車椅子スペース部である。なお、車椅子スペース移設後の9201号車も同スペース部には着色手すりが流用されている。
  16. ^ 化粧板同士の継ぎ目を隠すアルミ材のこと。
  17. ^ 1人分の掛け幅がごとに縫い目の入った座席のこと。
  18. ^ このため、ほぼ同様の仕様であるにも関わらず、座席定員が9300形は55人・9600形は56人と違いがある。
  19. ^ 骨組はアルミで、外側は化粧板・座席側はモケット張りである。
  20. ^ 東急目黒線内ではATOの駅停車制御機能(TASC機能)のみを使用する。
  21. ^ 東京メトロ南北線増備車両9000系車両概要 (PDF)
  22. ^ とれいん誌2009年3月号記事を参照。
  23. ^ 日本車輌製造での製造は営団時代の08系以来であり、東京メトロ移行後の新造車両としては初めて日立製作所以外が製造を担当した。
  24. ^ 東京メトロ9000系5次車が営業運転を開始」交友社『鉄道ファン』railf.jp「鉄道ニュース」、2009年5月25日
  25. ^ 鉄道ピクトリアル鉄道車両年鑑2009年版「東京地下鉄9000系5次車」を参照。
  26. ^ 細帯のグリーン+太帯のエメラルドから、太帯のエメラルド+グリーンの細帯へ変更。
  27. ^ 有楽町線・副都心線用の10000系第13編成以降も同様である
  28. ^ http://www.sokeinp.com/2009/0608/ [アイスリー]電車の引き戸自閉装置開発 東京メトロが導入 相模経済新聞 2009年6月10日
  29. ^ LCDの映像には行先・次の駅と乗り換え案内・駅の設備・所要時分などを表示する。 なお、乗り入れ先である東急目黒線内や埼玉高速線内では停車駅の設備や目的地までの所要時分など詳細な項目は表示されない。表示内容は10000系と同等である。
  30. ^ 10000系が装備するFS777形と基本設計は同一であるが、サフィックスが追加されている。

参考文献

  • 帝都高速度交通営団「東京地下鉄道南北線建設史」
  • 交友社「鉄道ファン
    • 1991年5月号 新車ガイド:営団地下鉄9000系
    • 1996年10月号 カラフル営団地下鉄2401両
    • 2004年9月号 東京メトロ
  • 鉄道図書刊行会鉄道ピクトリアル
    • 1991年6月号「営団地下鉄9000系試作車」(盛山保雄 帝都高速度交通営団車両部設計課 課長補佐)
    • 1995年7月号増刊 帝都高速度交通営団特集
    • 2005年4月号増刊 東京地下鉄特集
    • 鉄道車両年鑑 1991年版以降各年版
5次車について
  • 交友社「鉄道ファン」
    • 2009年4月号 CAR INFO「東京地下鉄9000系5次車」
  • ネコ・パブリッシングRail Magazine
    • 2009年4月号 NEW COMER GUIDE「東京地下鉄9000系5次車」
  • 交通新聞社鉄道ダイヤ情報
  • 2009年4月号 DJ NEWS FILE「東京地下鉄9000系5次車 (南北線)」
  • 鉄道図書刊行会「鉄道ピクトリアル」
    • 2009年10月臨時増刊号鉄道車両年鑑2009年版「東京地下鉄9000系5次車」
  • 日本鉄道車両機械技術協会「R&m」
    • 2009年4月号研究と開発「東京地下鉄 南北線9000系5次車の概要」(東京地下鉄 (株) 鉄道本部車両部車両課 蓮見 誠 著)

関連項目

外部リンク