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グルコース

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D-グルコース
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β-D-グルコース
識別情報
略称 Glc
CAS登録番号 50-99-7
492-62-6 (α-アノマー)
492-61-5 (β-アノマー)
PubChem 5793
日化辞番号 J4.109B
EC番号 200-075-1
特性
分子式 C6H12O6
モル質量 180.16 g/mol
精密質量 180.063388
密度 1.54 g/cm3
融点

α-D-グルコース: 146 °C
β-D-グルコース: 150 °C

への溶解度 91 g/100 ml (25 °C)
メタノールへの溶解度 0.037 M
エタノールへの溶解度 0.006 M
THFへの溶解度 0.016 M
熱化学
標準生成熱 ΔfHo −1271 kJ/mol
標準燃焼熱 ΔcHo −2805 kJ/mol
標準モルエントロピー So 209.2 J K−1 mol−1
危険性
安全データシート(外部リンク) ICSC 0865
EU Index not listed
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
D-グルコースのフィッシャー投影図

グルコース (glucose) 、あるいはブドウ糖は、の一種であり、代表的な単糖の一つである。デキストロース (dextrose) とも呼ばれる。人間をはじめ、動物植物が活動するためのエネルギーとなる物質の一つである。

所在・製法

グルコースは果実・蜂蜜・体液中に遊離して存在している。

物理的性質

常温常圧で白色の粉末状の結晶。水に溶けやすい。甘味がある。

化学的性質

単糖の一種であり、ヘキソース(六炭糖)およびアルドースに分類される、アルドヘキソースである。光学活性物質であり、天然に大量に存在するのはD体である。

Glcのほか、ドイツ語 のTraubenzucker(Trauben ブドウ、Zucker 糖)から Tz とも略記される。

グルコースは以下のようなオリゴ糖多糖の構成単位である。グルコースを構成単位とする多糖の総称をグルカンと称する。

おもな誘導体

  • キノボース(6-デオキシグルコース)キナの樹皮の配糖体
  • パラトース(3,6-デオキシグルコース)サルモネラ菌のリポ多糖

アルコール発酵

グルコースは、チマーゼと呼ばれる酵素群によりエタノール二酸化炭素に分解される。この反応をアルコール発酵という。

C6H12O6 → 2 C2H5OH + 2 CO2

還元性

グルコースは水溶液中ではごく一部が鎖状構造となっている。この構造の末端にはアルデヒド基が存在するため、グルコース水溶液は還元性を示す。水溶液中でアルデヒド基をもつ単糖はアルドースと呼ばれる。

化学構造

水溶液中では、以下の3種類の構造が一定の割合で存在する平衡状態となっている。

グルコースの平衡
グルコースの平衡

水中において平衡状態に達したとき、グルコースはほぼα-グルコース(α-ピラノース、38%、上図左)とβ-グルコース(β-ピラノース、62%、上図右)の形で存在しており(立体電子効果#アノマー効果を参照)、他の異性体フラノース、鎖状体〈上図中央〉)は合わせても1%に満たない(注:ピラノースは六員環、フラノースは五員環の環状ヘミアセタールである)。

α-ピラノースとβ-ピラノース は、再結晶の溶媒や条件をきちんと選べばそれぞれの純品の結晶を作り分けることができる。その純品の結晶を水に溶かすと平衡状態へ移行する過程で旋光度の変化がみられる。この現象は変旋光と呼ばれる。

体内での役割

グルコースは、食事から摂取された炭水化物糖分が消化され、小腸から吸収され、体内で主要なエネルギー源として利用されており、特にでの通常時のエネルギー源として利用されている。

炭水化物を摂取すると小腸でグルコースに分解され、大量のグルコースが体内に吸収される。体内でのグルコースは、エネルギー源として重要である反面、高濃度のグルコースは生体に有害であるため、インスリンなどによりその濃度(血糖)が常に一定範囲に保たれている。

グルコースの分子は極性を有するため、生体膜を通過するのには特別な膜輸送タンパク質を必要とする。

食後に大量のグルコースが体内に吸収されるが、体内のインスリンが十分に機能しないと血糖のコントロールができなくなり病的症状が現れる。

グルコースはそのアルデヒド基の反応性の高さからタンパク質を修飾する作用(メイラード反応参照)があり、グルコースによる修飾は主に細胞外のタンパク質に対して生じる。細胞内に入ったグルコースはすぐに解糖系により代謝されてしまう。インスリンによる血糖の制御ができず生体が高濃度のグルコースにさらされるとタンパク質修飾のために糖毒性が生じ、これが長く続くと糖尿病合併症とされる微小血管障害によって生じる糖尿病性神経障害糖尿病性網膜症糖尿病性腎症などを発症する[2]

医療における利用

医薬品として様々な濃度(5%、20%、50%など)のブドウ糖注射製剤が複数の製薬会社より製造・販売されている。日本薬局方にも記載され、ブランドとしてでなく「局方品」として調剤されることが多い。医療現場では、しばしば「5プロ糖」「ツッカー」(ドイツ語の「Zucker 糖」に由来)と呼ばれる。

糖尿病治療薬の過量服用などで低血糖になった際などには、携帯したブドウ糖顆粒の経口摂取がしばしば行われる。ショ糖では血中のブドウ糖濃度は速やかに上昇しないため、ブドウ糖の摂取が好ましい。

血液内のブドウ糖濃度(血糖値)は、健常なヒトの場合空腹時血糖値でおおよそ80-100 mg/dl程度、食後は若干高い値を示す。血糖値の異常については糖尿病耐糖能異常を参照。

脚注

  1. ^ 奥山格「有機化合物命名法」
  2. ^ http://www.mnc.toho-u.ac.jp/v-lab/aging/doc3/doc3-03-5.html 生体分子に起こる加齢変化 05-異常たんぱく質はなぜ増えるのか?

関連項目


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