ましゅう型補給艦
ましゅう型補給艦 | |
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AOE-425 ましゅう | |
基本情報 | |
種別 | 補給艦 (AOE) |
運用者 | 海上自衛隊 |
建造期間 | 2002年 - 2005年 |
就役期間 | 2004年 - 就役中 |
同型艦 | 2隻 |
前級 | とわだ型補給艦 |
次級 | 最新 |
要目 | |
基準排水量 | 13,500トン |
満載排水量 | 25,000トン |
全長 | 221.0 m |
水線長 | 205.0 m |
幅 | 27.0 m |
深さ | 18.0 m |
吃水 | 8.0 m |
主機 | SM1Cガスタービンエンジン×2基 |
推進器 | スクリュープロペラ×2軸 |
出力 | 40,000 ps |
最大速力 | 24ノット (44 km/h) |
航続距離 | 9,500海里 (20kt巡航時) |
乗員 | 145名 |
搭載機 |
ヘリコプター×1機搭載可能 ※平時搭載機なし |
レーダー |
・OPS-28E 対水上捜索用 ・OPS-20 航海用 |
電子戦・ 対抗手段 |
・NOLR-8 電波探知装置 ・Mk.137 6連装デコイ発射機×4基 |
ましゅう型補給艦(ましゅうがたほきゅうかん Mashu-class replenishment oilers)は、海上自衛隊が運用する補給艦の艦級[1]。建造費は約430億円。
なお本型は、2015年にいずも型ヘリコプター護衛艦が就役するまでは最大の自衛艦であった。
設計
本型は、昭和62年度計画で建造された8,100トン型補給艦(62AOE)をもとに、補給能力を向上させるとともに任務の多様化に対応した性能向上型とされている[2]。
船体
構造様式は62AOEと同じく縦肋骨方式である。一部を除いて商船規格に基いて設計されている。船型は、62AOEと同じ上甲板の斉一化を図った長船首楼型を基本とするが、艦首部には更に1層の船首楼が設けられている。これは上甲板への波浪の影響を減らすための措置であった。このために従来のようなブルワークは省かれている。また揚錨機を船首楼内に配置したことで、投揚錨作業はここで実施することとされた[3]。
抵抗低減のため艦首はバルバス・バウとされており、またこれとあわせて艦首部のラインも従来になく絞り込んだ特異な形状となっている。補給物資搭載スペースの確保と速力向上を両立するため、水線上を広くとる一方抵抗軽減を意図し水線部を絞り込んだ形状となり、両舷には顕著なナックルが設けてある。また艦尾もかなり絞られており、機械室付近から艦尾にかけて曲線を形成している。なおヘリコプター甲板長確保のため、艦尾にはオーバーハングが付されている[3]。
なお船体部については、特に傾斜船型とされているわけではないが、上記の事情のために船体平行部は少ない。また上部構造物については、レーダー反射断面積(RCS)低減を意識して傾斜がつけられている[3]。
なお搭載艇としては、01甲板レベルの煙突両舷にダビットを設けて、11メートル作業艇を各1隻搭載している。また後部03甲板上には6.3メートル複合型作業艇1隻を搭載する[3]。
機関
本型は、海上自衛隊の補給艦としては初めて、主機関にガスタービンエンジンを採用している。機種としては、第2世代汎用護衛艦(DD)で巡航機として用いられたロールス・ロイス社のスペイSM1Cが選定された。主機関の合計出力は40,000馬力で、62AOEの26,000馬力と比して大幅に強化されている。これは船型の大型化を補って余りあるものであり、速力は62AOEよりも2ノット優速の24ノットを発揮できるとされている。機械室はパラレル配置とされており、両舷に1基ずつの主機関が設置されて、減速機を介して両舷の推進器を駆動する。推進器としては、スキュー付き5翼の可変ピッチ・プロペラ(CPP)を採用している[4]。
貨油ポンプが蒸気駆動から電気駆動に変更されていることもあって所要電力が大きく、出力1,500キロワットのガスタービン発電機3基とディーゼル発電機1基が搭載され、給電能力が強化されている[4]。
なお水中放射雑音低減の観点から、主機関・減速機・発電機などは防振支持構造となっているほか、プロペラも大径化・低回転数化されている[4]。
能力
補給機能
とわだ型で確立された手法をベースとして、これを全体的に改良・強化したものとなっている。補給物資搭載量は大幅に増加しており、さらに真水の補給能力も持つ[5]。
洋上移送
補給ステーションは6箇所あり、艦橋からの視界改善のため門型からモノポール型に変更されている。中央の2つ(第3/4番)がドライカーゴ用、前後の4つが液体用であり、艦首よりの2つ(第1/2番)は主燃料、艦橋よりの2つ(第5/6番)は主燃料、航空燃料、真水用である。なお、とわだ型より省力化が進められている。
物資格納
- 液体補給品
- 液体補給品のタンクは、弾薬庫の防御構造の一部として組み込まれており、弾薬庫の下部に貨油タンク、両サイドは補給用真水タンク、前後は補給用の燃料タンクが配置されている。搭載量は、主燃料と航空燃料は約1.5倍になっており、貨油は10,000トン近くに達するとみられている[5]。
- 固形補給品(ドライカーゴ)
- 第2甲板の両舷にドライカーゴの移送用の補給通路が設置されており、これは艦首から艦尾までほぼ全通している。補給通路上にはレール上を移動するフォークリフト(サイド・フォーク)が設置されており、補給物資を速やかに移送することができる。艦の中央両舷(補給通路上)、および後部左舷(医療区画後部)に昇降機が設置されており、これによって第1甲板と第2甲板の間で物資を移送できる。
- 弾薬については、第2〜4甲板において各2ヶ所ずつ、計6ヶ所の格納所が設置されている。格納所は前後の計2区画にまとめられており、各区画の格納所同士は昇降機によって連接されている。格納所内では、専用のフォークヘッドトロリーによって物資の移動が行なわれる。
- また、食糧についても同様で、艦の中央部に設置された冷凍・冷蔵庫内で昇降機およびコンベアで移送されたのち、第2甲板で補給通路上のサイド・フォークに引き渡される。
航空補給
海自AOEでは、5,000トン型補給艦「さがみ」(51AOE)でHSS-2ヘリコプターを発着させられるようヘリコプター甲板を設置し、ヘリコプターによる物資移送(VERTREP)に対応した。発展型の8,100トン型補給艦では、MH-53Eヘリコプターに対応できるようヘリコプター甲板を拡張した[5]。
本型では、更にヘリコプター甲板に連続して、VERTREP用の物資を一時集積するための飛行甲板荷扱所を設置した。物資が集積されていない場合、ここを格納庫として利用することができる。ヘリコプター甲板、格納庫のいずれも、海上自衛隊最大のヘリコプターであるMH-53Eまで対応している[1]。また補給艦として初めて、戦術航法装置(TACAN)も搭載している[5]。
病院船機能
本型は、自衛艦として最も高度な医療能力を備えていることで知られている。これは護衛艦隊の洋上後方支援を担当するという任務に対応したものであるが、阪神・淡路大震災規模の大規模災害派遣においても十分に活用できるものとなっている。このことから、災害時などには病院船としての運用が考慮されている[3]。
医療区画は、艦後部、第2甲板レベルに設置されている。区画のすぐ裏には、第1甲板レベルの飛行甲板と第2甲板の間を往復する昇降機が設置されており、昇降機で移送されたストレッチャーを直ちに医療区画に移すことができる[3]。
本型の医療区画は、手術室、集中治療室、X線撮影室、歯科治療室など充実した医療設備を備え、46床の入院設備を有している。重傷者用の第1病室(8床)、軽傷者用の第2病室(30床)、女性用または隔離室としても使える第3病室(7床)に区分されており、収容人数を確保するため、第2病室は二段ベッドを採用している[3]。
自衛機能
本型は、海自AOEとして初の電子戦装置として、NOLR-8B電波探知装置を搭載している[6]。NOLR-8はミサイル・シーカー波の瞬時探知や全方位同時捜索に対応するなど、対艦ミサイル防御(ASMD)を重視して開発された電波探知装置であり、あさぎり型護衛艦後期建造艦(60DD)より装備化されていたものであった[7]。
また艦橋ウイング後方には、Mk.137 6連装チャフ・フレア発射機が両舷各2基ずつ設置された。これは62AOEと同様の装備要領であるが、同級では後日装備であったのに対し、本型では当初より搭載した[3]。なお、艦首と後部格納庫上部には高性能20mm機関砲(CIWS)の後日装備が計画されている[1]。
竣工時点での捜索レーダーは対水上捜索用のOPS-28Eのみであるが[6]、これはシースキマーの探知も可能とされている[8]。また対空レーダーの搭載も考慮されている[3]。
同型艦
艦番号 | 艦名 | 建造 | 起工 | 進水 | 就役 | 所属 |
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AOE-425 | ましゅう | 三井造船 玉野事業所 |
2002年 (平成14年) 1月21日 |
2003年 (平成15年) 2月5日 |
2004年 (平成16年) 3月15日 |
第1海上補給隊 (定係港:舞鶴基地) |
AOE-426 | おうみ | ユニバーサル造船 舞鶴事業所 |
2003年 (平成15年) 2月7日 |
2004年 (平成16年) 2月19日 |
2005年 (平成17年) 3月3日 |
第1海上補給隊 (定係港:佐世保基地) |
その他
2番艦の「おうみ」には、新造時から女性用居住区が造られている(女性専用居住区は「ましゅう」にも設定されており、平成20年の対テロ作戦支援任務では14名の女性自衛官が参加した)。平成18年の対テロ戦争支援任務でのインド洋派遣(自衛隊インド洋派遣)にも19名の女性海上自衛官が参加している。
海上自衛隊の補給艦の艦名には「貯めた水などを供給する」という趣旨から、歴代、湖の名前が用いられているが、同時に地域を分散させることも考慮され、近畿・中国・九州地区の湖(四国にはダム湖以外の湖自体存在しない)からの命名を要求された2番艦において、担当者の困惑は大きく、退官した素人の意見をトレースし、結局日本最大の湖である琵琶湖の万葉集で見られる古名「淡海(淡水の海。あふみ)」から取られた(「びわ(琵琶)」では木の名前であり、九州地区で最大の湖であれば、鹿児島県開聞岳の麓の池田湖であるが、「いけだ」としたら「誰だ?そいつ」となりかねなかった)。これは自衛艦としては「現存しない地名」由来の初の艦名であった(以降、ひゅうが、いせ、いずも、かがと、全通飛行甲板型DDHに旧国名が用いられているが、本艦は、近江国が由来ではない。「おうみ」の命名担当者は後の「ひゅうが」艤装員でもある)。海上自衛隊の先代の「おうみ」(山口県青海島に由来)は、たかみ型掃海艇MSC-644であり、決裁の回議中にそのことを問題視する意見も出た。最終的に現在の艦名に落ち着いたという経緯があるが、公式には定かではない(第2案は「とうや」であったという説もある[要出典])。
もっとも一番艦である「ましゅう」の元になった摩周湖も法律上は湖ではなく「大きな水たまり」にすぎない(流出する河川が法律上の湖では必要)。
登場作品
映画
- 『男たちの大和/YAMATO』
- 冒頭では、1番艦の「ましゅう」が、2004年秋から2005年5月にかけての対テロ作戦支援任務によるインド洋派遣を終えて母港である舞鶴基地に帰還した際に入港する「ましゅう」、ならびに、乗組員が舞鶴基地の海上自衛隊員や派遣隊員の家族、それに市民による歓迎を受けている光景を撮影した実写映像が使用されている。
漫画
- 『空母いぶき』
- 第5護衛隊群に「おうみ」が所属する。
小説
- 『ルーントルーパーズ 自衛隊漂流戦記』
- 架空のましゅう型補給艦「しだか」が登場。国連軍としてアフリカ大陸に派遣される自衛艦隊に配備されていたが、艦隊とともに異世界に飛ばされてしまう。また、派遣にあたって高性能20mm機関砲が搭載されている。
参考文献
- ^ a b c 自衛隊装備年鑑 2006-2007 朝雲新聞 P270 ISBN 4-7509-1027-9
- ^ 技術研究本部 (2002). “技術開発官(船舶担当)” (PDF). 技術研究本部50年史 2015年6月21日閲覧。.
- ^ a b c d e f g h i 「船体 (特集 新型AOE「ましゅう」のすべて)」『世界の艦船』第629号、海人社、2004年8月、75-81頁、NAID 40006310089。
- ^ a b c 「機関 (特集 新型AOE「ましゅう」のすべて)」『世界の艦船』第629号、海人社、2004年8月、82-83頁、NAID 40006310089。
- ^ a b c d 「補給システム (特集 新型AOE「ましゅう」のすべて)」『世界の艦船』第629号、海人社、2004年8月、84-87頁、NAID 40006310090。
- ^ a b 「カラー写真頁 注目の新型補給艦「ましゅう」を見る!」『世界の艦船』第629号、海人社、2004年8月、1-5頁、NAID 40006310077。
- ^ 香田洋二「国産護衛艦建造の歩み(第25回)ポスト4次防の新装備(短SAMおよび発射装置)はつゆき型DD(その3)あさぎり型DD(その2)」『世界の艦船』第810号、海人社、2015年1月、194-201頁、NAID 40020274355。
- ^ 長井荒人「海上自衛隊の現有艦載レーダー」『世界の艦船』第433号、海人社、1991年3月、84-89頁。
関連項目
- 同時期の諸外国海軍の補給艦