AIG
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
| 種類 | 株式会社 | ||||
|---|---|---|---|---|---|
| 市場情報 |
|
||||
| 略称 | AIG | ||||
| 本社所在地 | ニューヨーク州ニューヨーク市 |
||||
| 設立 | 1919年 | ||||
| 業種 | 保険業 | ||||
| 事業内容 | 保険 | ||||
| 代表者 | エドワード・リディ(会長兼CEO) | ||||
| 資本金 | 69億ドル(2007年) | ||||
| 売上高 | 1,100億ドル(2007年) | ||||
| 総資産 | 1兆605億ドル(2007年) | ||||
| 従業員数 | 約110,000人(2007年7月) | ||||
| 決算期 | 12月 | ||||
| 関係する人物 | Cornelius Vander Starr(創業者) | ||||
| 外部リンク | http://www.aigcorporate.com http://www.aig.com |
||||
American International Group, Inc. (アメリカンインターナショナルグループ;AIG) はアメリカ合衆国ニューヨークに本拠を置く保険会社。2006年末において、130以上の国・地域で事業を展開し、約106,000人の従業員を有している。
目次 |
[編集] 概要
欧州においてはロンドンのクロイドンに、アジアにおいては中華人民共和国の香港に本拠を置いている。2004年4月8日より2008年9月21日までダウ平均株価の構成銘柄の1つであった。株式はNYSE・東証・アイルランド証券取引所に上場している。
米経済誌フォーブスが2007年3月29日に発表したForbes Global 2000(世界優良企業2000社番付)2007年版では全業種通算で世界第6位に、保険セクターでは第1位にランキングされている。
グループの主な事業としては、以下のものがあるが、後述の経営危機により事業の大幅な売却を余儀なくされている。
- 生命保険事業
- 損害保険事業
- AIGエージェンシー・オート - 個人向け自動車保険
- DBG - 企業向け賠償責任保険
- AIU保険会社 - 欧州、日本、中南米で展開
- アメリカンホーム保険会社 - アメリカ、日本、韓国などで展開
- 21st Century Insurance Group
- 再保険事業
- 航空機リース事業
- インターナショナル・リース・ファイナンシャル・コーポレーション(ILFC) - 世界最大の航空機リース会社
- 金融事業
- AIGファイナンシャル・プロダクツ・コープ
- AIGインベストメンツ
- その他
[編集] 歴史
1919年、カリフォルニア州出身の起業家コーネリアス・バンダー・スターが中華民国の上海で創業した損害保険代理店American Asiatic Underwriters (AAU) が始まりである。スターは上海で中国人に保険を売った最初の西洋人だった。スターは、中国大陸での事業に成功後、アジア・ラテンアメリカ・ヨーロッパ・中東へと事業を拡大していった。1967年、持株会社としてAmerican International Group, Incが設立され、1969年に株式を公開する。
2005年、5億ドルの架空の損失引当金計上による粉飾、保険および証券法違反などの容疑でモーリス・グリーンバーグ(当時の会長)、AIG、元CFOのハワード・スミスが起訴される。AIGの格付けはAAAからAA+に格下げされた。モーリス・グリーンバーグは会長を辞任し、後任にはマーチン・サリバンが就任した。2006年、16億4000万ドルを支払うことでニューヨーク州司法当局等との和解に合意した。
2008年6月15日、マーチン・サリバン最高経営責任者(CEO)が、サブプライム関連で過去最大の損失を出したことから、CEO職と取締役を辞任し、後任CEOにはロバート・ウィルムスタッド会長が就任した(会長兼任)。しかし、後述の経営危機より巨額の公的支援が決定したことから、2008年9月18日に、ロバート・ウィルムスタッドはCEO兼会長を引責辞任し、後任にはエドワード・リディ(元オールステートCEO)が就任した。 2009年8月10日にエドワード・リディはCEO兼会長を辞任し、後任にはロバート・H・ベンモシェ(元メットライフCEO)が就任した。
[編集] サブプライムローン問題による経営危機
2007年にアメリカでサブプライムローン問題による金融危機が起こった。AIGもサブプライム関連の金融商品を抱えていたため例外ではなく、住宅価格の低下や金融商品の格下げの影響を受け多額の損失を抱えた。損失額は2008年通期で992億9000万ドルとなり、アメリカ企業史上最大の赤字額となった。
リーマン・ブラザーズが経営破綻を起こした2008年9月15日、ニューヨーク・タイムズ紙は信用格下げに直面しているAIGが連邦準備制度理事会(FRB)に対し400億ドルのつなぎ融資の打診をしている(FRBはこの融資を断っていた)と報じるなど、AIGの経営危機説が急浮上した。市場では次はAIGが破綻するとの懸念が広がり、株価は60%以上も下落、翌16日には一時株価が1.25ドルにまで下落した。AIGは経営危機を回避するために最大で750億ドルの調達を急いでおり、17日までに資金調達の目処がたたなければ、連邦倒産法第11章を申請する以外に手段はなくなるとの報道があった[1]。
FRBは当初、リーマン破綻時と同様に民間金融機関同士で資金の調達するよう促し、ゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェースなどに融資を持ちかけていた。しかし、民間金融機関はAIGを支援するだけの資金の余力はなく融資を拒否した。AIGが破綻することにより4000億ドルのCDSなどが顧客や市場に多大な影響を及ぼすことを危惧したFRBは方針を転換し、AIGの資産を担保とし、最大で850億ドルを融資することを決定した。また、これと引き換えに、アメリカ政府がAIGの株式の79.9%を取得する権利を確保し、政府の管理下で経営再建が行われることとなった[2][3][4]。なお、AIGには当初、融資枠の850億ドルのうち借りなかった分については8.5%、実際に借りた分にはロンドン銀行間取引金利(LIBOR)に8.5%を加えた金利が課されることになった[5]が、11月10日に発表された追加救済策ではLIBOR+3%に引き下げられた[6]。なお、この金利はその後の追加支援策により、LIBORの水準にまで引き下げられた[7]。
2008年10月3日には新しい経営方針として、生命保険事業を売却し中核事業の損害保険事業に資源を集中させる方針を発表した。売却して得られた資金はFRBからの借入金の返済に充てられる[8]。
2009年2月5日にニューヨーク証券取引所(NYSE)の株価が上場廃止の1つの基準となっている1ドルを一時的に割り込んだ。回復しなければ、上場廃止の可能性もあった[9]が、NYSEは時限的に上場維持基準を緩和したため6月30日までは上場の維持が見込まれることとなった[10]。
2009年3月11日にロンドンの金融商品部門で5000億ドルに及ぶ損失を出していた可能性を報道された[11]。
[編集] 批判
- 2008年10月7日、米下院で開かれた公聴会の席上で、AIGグループの保険子会社であるAIGアメリカン・ゼネラル社の幹部が、公的資金の投入による救済が決定した一週間後の9月22日から30日にかけてカリフォルニア州南部オレンジ郡の高級リゾート地に関係者を集め、総額44万ドル(約4500万円)の「会合」を繰り広げていたことが判明し、米下院のイライジャ・カニングス議員は「米国民が救済資金を出すのを横目に、マッサージを受け、マニキュアを塗っていたのか」と批判した。この件に関してはホワイトハウス広報官も「卑しむべき行為」と異例のコメントを行う事態となり、当初AIG側は「保険業界では常識的なことである」と正当性を主張していたものの、最終的には「もし開催を知っていれば中止させた」と弁明に追い込まれた[12]。
- 2009年3月、AIGが幹部社員に対して総計1億6500万ドル(約162億円)にもわたるボーナスを支給すると報じられた。ニューヨーク・タイムズ紙によると、ボーナスを支給される幹部は400人[13]。3月13日に支払われたボーナスは、400人に対し1億6500万ドル(約160億円)。ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ司法長官が17日に公表した結果によると、計73人が各100万ドル(約9800万円)超を支給され、そのうち11人はすでに退社しているという。支給額200万ドル超が22人おり、最高額は640万ドルである。これに対してバラク・オバマアメリカ大統領は「あらゆる手段を駆使してこれを阻止する」と宣言しており、アメリカ議会にて、国税である所得税においてボーナスの90%(地方税は10%相当であるから事実上は100%)を課税する法案が下院で可決され、上院で審議されている。また上院のグラスリー議員は「日本の経営者にならって、頭を下げ謝罪して辞任するか、もしくは自殺するかを選んで欲しい。そうすれば私の気持ちは少しは晴れる」という発言を行い物議をかもした。一方、AIG側は「ボーナス支給は危機前の契約で決定されたもので、支払わないと法的責任が生じる」と弁明したが、社員の一部には「賞与返還要求は脅迫も同じ。脅迫に応じる道義的責任はない。」と居直り、逆に「脅迫」に反抗して法的処置を模索する動きまである[14]。米メディアは高額ボーナスを受け取ったこれら幹部・元幹部を「AIGボーナスベイビー(bonus baby)」と揶揄している[15]。
[編集] スポンサー
- マンチェスター・ユナイテッド
- 2006年~2007年シーズンよりユニフォームスポンサー。
- 契約金は4年で8060万ユーロ(約113億円)でイングランドで当時の最高契約額であった。
- ジャパン・オープン・テニス選手権
- 2001年よりAIGがスポンサーとなり、AIGオープンとして行われている。
[編集] 日本での営業
2006年10月現在、日本国内では生命保険会社3社と損害保険会社3社(1社はJTBとの合弁会社)などが傘下で営業しており、日本国内の従業員数は2万5000人を超え、日本に進出している外資系企業としては最大級である。しばしば、アメリカンファミリー生命(アフラック)がAIGグループだと間違えられるが、アフラックは系列ではない。
2008年10月、AIGの新しい経営方針に伴い、日本国内の生命保険会社3社は全て他社に売却される予定である。この件により、2009年1月に予定されていた傘下のAIGエジソン生命とAIGスター生命との合併計画については延期された。
[編集] 日本国内傘下会社
- アリコジャパン(アメリカン・ライフ・インシュアランス・カンパニー日本支社) - 生命保険
- AIGスター生命保険 - 生命保険。千代田生命の営業を承継。
- AIGエジソン生命保険 - 生命保険。東邦生命の営業を承継。旧GEエジソン生命
- AIU保険会社 - 旅行傷害保険などを展開。
- アメリカンホーム保険会社(アメリカンホームダイレクト) - 自動車保険の通信販売
- ジェイアイ傷害火災保険 - 50%出資。JTBグループとの合弁会社。旅行傷害保険などを展開。
[編集] 歴史
AIGの日本進出は1946年に傘下の保険会社のAmerican International Underwriters Corporation (AIUC) が、当時日本を占領していたGHQの要請で、駐留アメリカ軍の資産の保険を始めたことによってなされた。1950年には日本人向けの営業も行なうようになった。傘下のアリコジャパンは日本で最初の外資系生命保険会社として1973年より営業を開始した。
[編集] 事業規模
生保の保険料収入(2008年10月時点)では、アリコ単体で業界5位、グループ全体でも5位である。損保の保険料収入では、AIUが第8位、アメリカンホームが第11位で外資系としてはトップである。なお、通販専業損保ではアメリカンホームが業界最大規模となっている。
[編集] 顧客・営業規模
- 生保の保有契約総件数は944万件(2005年3月末個人保険)
- 生損保の合計総資産は8兆6千億円(2005年3月末)
- 生損保の保険料収入総額は2兆6千億円(2004年度)
- 生損保の保険金支払総額は4,700億円(2004年度)
- 生保3社:3,461億円(保険金+給付金、年金は除く)
- 損保2社:1,257億円(元受正味保険料)
[編集] 第三分野保険
がん保険、医療保険、傷害保険といった生保と損保の中間部分の保険を第三分野保険という。これは歴史的に外資系保険会社が強く、アリコもその分野でのシェアは高い。
[編集] 脚注
- ^ AIG、深刻な資金繰り悪化に直面(リンク切れ), NIKKEI NET(2008年9月16日), 2008年9月17日閲覧
- ^ <AIG>救済に方針転換 連鎖破綻への懸念強く…米政府(リンク切れ), 毎日新聞(2008年9月17日), 2008年9月17日閲覧
- ^ 米FRBがAIGに最大約9兆円融資へ、政府が株式79.9%取得(リンク切れ), ロイター通信(2008年9月17日), 2008年9月17日閲覧
- ^ FRB: Press Release--Federal Reserve Board, with full support of the Treasury Department, authorizes the Federal Reserve Bank of New York to lend up to $85 billion to the American International Group (AIG)--September 16, 2008
- ^ 「AIG、政府からの借り入れ費用調達に資産売却加速か=1(リンク切れ)」。2008年、DJニュース。2008年9月28日閲覧。
- ^ 「米政府がAIG向け追加支援、公的資金400億ドルを注入へ」、ロイター、2008年 11月 11日、2009年9月15日閲覧
- ^ 米政府、AIGに300億ドルの追加支援実施へ=関係筋、ロイター、2009年3月2日、2009年9月15日閲覧
- ^ アリコなど3社売却へ…AIG生保、事実上の日本撤退(リンク切れ), 読売新聞(2008年10月3日), 2008年10月4日閲覧。
- ^ Bloomberg.co.jp: 米AIGの株価が1ドル割れ、政府救済後に時価総額半減-上場廃止も 2009年2月5日付
- ^ NYSEが上場維持ルール緩和、1ドル規則を一時的に撤廃、ロイター、2009年2月27日、2009年3月12日閲覧。
- ^ 阿部伸哉 (2009年3月11日 夕刊). “米AIG 50兆円損失か 英の金融商品部門 業績悪化の原因(リンク切れ)”. 東京新聞
- ^ 救済1週間後に豪遊、AIGに批判噴出、2008年10月8日、産経ニュース
- ^ 「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」と呼ばれ、今回の危機の引き金となった複雑な金融商品を扱っている部門に所属する社員であるが、複雑な業務のため人材流出を防がなければならなかったとリディ会長は述べている(『日本経済新聞』2009年3月19日夕刊、2面)。
- ^ 米AIGの欧州部門従業員、賞与返還要求は「脅迫」と反発、2009年3月29日、ロイター
- ^ AIGボーナスベイビー〜深刻な財務省の人手不足(2009年3月26日、JBpress)