若草物語

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若草物語』、(わかくさものがたり、: Little Women)は、1868年ルイーザ・メイ・オルコットLouisa May Alcott,1832年11月29日 - 1888年3月6日)によって書かれた自伝的小説である。19世紀後半のアメリカを舞台に、ピューリタンであるマーチ家の四人姉妹を描いた物語である。続篇として『続 若草物語』(Little Women Married, or Good Wives)、『第三若草物語』(Little Men)、『第四若草物語』(Jo's Boys)があり、姉妹の成人・結婚やその後の生活が描かれている。

原題となっている「リトル・ウィメン」とは著者の父親が実際に娘たちを呼称するのに用いた言葉で、単なる幼い少女ではなく一人の立派な女性であるという意味合いで用いられていた。第1作と続編においては、聖書や『天路歴程』が姉妹たちの導きの書であり、これに関する記述が多々見られる。一家の行うフィランソロピー(慈善活動)もそれらの影響を受けているものと考えられる。

第三若草物語での、「ベア学園」のモデルは著者の父親が開いた学校である。個性ある子供たちの活き活きとした生活や自己の欠点との闘い、また特に当時としては珍しいといえる障害児健常児の統合教育も描かれるが、現代の人間の視点からはやや差別的と取れる箇所もみうけられる。

各国で映画演劇に加え漫画アニメとして愛されており、特に1933年・1949年のMGM映画は良く知られている。日本では吉田勝江の訳によって広く知られた。

1906年(明治39)年に、北田秋圃が『小婦人[1](しょうふじん)と訳している。

あらすじ[編集]

若草物語
時は南北戦争時代、父が黒人奴隷解放のため北軍の従軍牧師として出征し女ばかりとなりながらも、慎ましく暮らす一家の約1年を描く。父の無事と帰還を祈り、優しく堅実な母親に見守られ、時に導かれ、マーチ家の四人姉妹メグ、ジョー、ベス、エイミーは裕福ではなくとも明るく仲睦まじく暮らしている(もっとも、これはこの家族の豊かな時代に比して慎ましいのであって、実際には中流階級の家庭である)。家庭に起こる楽しい出来事や悩み、事件、そして大きな試練が姉妹達を少女から「リトル・ウィメン」へと成長させる。
続 若草物語 
長女メグの結婚に始まり、ジョーの結婚に至るまでにそれぞれの姉妹が出会う出来事が群像的に描かれる。
メグは小さな苦難を夫・ジョンと共に乗り越え、双子をもうける。元来の頑固な性格のため海外旅行に行き損ねたジョーは、その他の理由もあってニューヨークに作家修業に出る。ベスは闘病中ながらも温かく家族に尽くす生活をつづけ、淑女として成長したエイミーは持前の社交上手とたおやかな性格からマーチおばに気に入られ海外旅行に同行する。ジョーは闘病中のベスを熱心に看病し、その最期を看取ることになる。その過程の中で、ジョーはそれまで抱いてきた野心よりも、家族のために尽す誠実な努力こそが自らのためになるのだということをベスを通して知る。また、ベスの喪失を経たジョーは、悲嘆にくれるもののその人間性は深みを増し、それまでに書いた大衆小説よりも真に迫る小品を書き、それは各方面から評価されることになる。
第三若草物語 
ジョーがマーチおばから遺贈されたプラムフィールドでベア教授と開いた「ベア学園」での子供たちの生活により重点を置いた内容になっている。よって、第2作に較べるとマーチ家については描かれず、エイミーや姉妹の父母に関しては台詞が殆どなく、毛色の異なる作品となっている。
この作品においては主人公は、タイトル: Little Men(小さな男の子)からも分かるように、ナットやダンを中心としたプラムフィールドの少年少女たちが主人公である。
第四若草物語 
先述の「ベア学園」が老ローレンス氏の遺贈によって大学へと変わっており、この時点でジョー達姉妹の支えであった賢母が亡くなっている。『第三若草物語』において成長過程にあった子供たちはほぼ成人しており、それぞれの進路を歩む。
この作品ではジョーはもちろんエイミー、ローリー、メグたちも重要な役を演じ、台詞も多い。子供たちとしてはジョーの二男であるやんちゃなテッド(テディ)と、メグの二女である活発なジョーズィ、エイミーの娘のベスがその中心となり、また、第1作からの悲願であったジョーの大小説家になるという野望は、この作品で2人の大きな男の子たちの母となったジョーが叶えることになる(その代りに自由を失い、その細かい描写もややコミカルに描かれる)。当時のアメリカで問題となっていた婦人参政権の問題などが作中で語られるのも特徴となっている。

登場人物[編集]

マーチ家[編集]

メグ
四姉妹の長女。本名はマーガレット。母の名前を引き継いでいる。第1作では16歳。非常に美しく女らしいが、やや保守的な性格。金持ちの家庭の家庭教師となってマーチ家の生計を助けている。まだ家庭が裕福だった頃の事を姉妹の中では唯一覚えているため、美しい衣服や装飾品や社交界の話を見聞きする度辛く思い、虚栄心に悩まされる。
続編以降では、隣人であるローリーの家庭教師だったジョン・ブルックと結婚、双子のデーズィ・デミ、またジョーズィをもうける。彼女は夫であるジョンを第3作の終盤で喪うが、メグが生活するにあたって困らない程度の資産を彼が節制によって遺していたことが判明する。モデルは作者の姉、アンナ・ブロンソン・オルコット。
ジョー[2]
四姉妹の次女。本名はジョゼフィーン。背が高く手足が長く痩せている。第1作では15歳。マーチ家の「息子」と自ら標榜している。容姿はこれと言って優れてはいないが、唯一の女らしい部分は美しく豊かな髪。だが父が前線で病となり、母が看護にでかけるための旅費を助けるためにその髪を売ってしまう。父の伯母にあたる金持ちのマーチおば宅へ通い、お相手をする事でマーチ家の生計を助けている。ボーイッシュな性格だが裁縫が上手で、趣味は読書。作家を目指して自分でも小品を書いている(それが『ジョーおばさんのお話かご』)。短気でカッとなりやすい事に自分でも苦慮する。
続編以降では、その短気な性格ゆえに損をするが、結果的にはその損によってベスを看病することが可能となる。また、カーク夫人の元で家庭教師をしながら文筆修行をしていたニューヨーク時代にフリッツ・ベア教授に出会い、のちに結婚、ロブとテッドの2人の男子をもうける。結婚後は夫と主に、マーチおばの遺言により、遺贈されたプラムフィールドで夫と共に学園を開く。作者自身がモデル。
ベス
四姉妹の三女。本名はエリザベス。黒髪に青い目の非常に内気、しかし内に強さを秘めた少女。第1作では13歳。音楽が大好きで、ピアノをよく弾く。ピアノがきっかけとなって老ローレンス氏との間に年齢を超えた友情が芽生えた。おとなしく愛情深く、子猫や小鳥や人形を可愛がって面倒を見ている。自分とは正反対の性格のジョーと特に仲良し。内気な性格に加えて病弱なため、学校には通わず自宅で勉強し、家事を手伝っていた。他の姉妹のやり残した仕事も率先して片付け、かといって報酬を得ようとは思わない。物語の途中で猩紅熱にかかり、一命を取り留めるもすっかりひ弱になる。続編においては体調が悪化するなかで周囲のものをその性質によって感化し、特にジョーに大きな影響を与える。
モデルは作者の妹の三女エリザベス・スーウェル・オルコットで、実際にも病弱であり、若草物語の執筆が始まった時には既に他界していた。作者が姉妹の中で最も愛していたと言われている。
エイミー
四姉妹の四女。第1作では金髪の巻き毛が自慢のおしゃまな12歳。貴婦人らしく振舞うのが好きで、覚えたての難しい言葉を使いたがるが、大抵こっけいな言い間違いをする。美術の才能があり、写生をするのが好きである。生意気盛りでジョーとはよくぶつかってしまう。自分の鼻の低さを気にしている。
第2作以降は幼さも影をひそめて大人びた淑女に成長し、ローリーに忠言をするほどになる。美人ではないが品があり、たおやかで社交上手、おしゃれ上手な様はややぶっきら棒で社交のあまり得意でないジョーと対照的に描かれる。後に隣人であったセオドア・ローレンスと結婚し、生まれたベス(三女Bethとはスペルが異なる)を蝶よ花よと育てるが、娘の鼻が立派であることで非常に喜ぶことになる。モデルは作者の妹の四女アバ・メイ・オルコットである。
ミセス・マーチ
四姉妹から尊敬され、慕われる賢母。姉妹には聖書や『天路歴程』を礎とした道徳・愛の実践を自らが慈善活動を行うことによってやさしく教える。姉妹の父親に対し、母親は現実的であったとされる。姉妹は何かトラブルに見舞われると、この母に教えを請い、それは姉妹たちが成人してからも続く。


マーチおば
四姉妹たちの大おばで、四姉妹の父ミスター・マーチは甥にあたる。未亡人で自らの子供は赤ん坊の時に亡くしており、ミスター・マーチが破産した際に、娘たちの誰かを養子として引き取ろうと提案したが、これを拒否されたため一時は立腹していた。裕福ではあるが足が不自由なため、ジョーが身の回りの世話をする仕事をしている。一見偏屈でジョー達を閉口させるが、内心では身内であるマーチ家の人々に愛情を抱いており、特にやんちゃなジョーを気に入っている。
第1作の後半には、ベスの病気が感染することを防ぐため、隔離された幼いエイミーをしばらく預かることになり、このことでエイミーを気に入り、第2作ではエイミーをヨーロッパ旅行に連れてゆくことになる。第2作の最後に亡くなり、その際にジョーにプラムフィールドを遺贈する。ここがジョーと夫のベア教授が開いた学園となり、第3作以降の話の中心となる。

ローレンス家[編集]

セオドア・ローレンス(ローリー)
マーチ家の隣人で、非常に裕福なローレンス家の一人息子。第1作では15歳でジョーと同い年。祖父と2人、使用人に囲まれて立派な屋敷に住んでいるが、近所づきあいがなく孤独な毎日を送っていた。メグの友人サリーの屋敷で開かれた舞踏会で、手持ち無沙汰にしていたジョーと出会う。その後あけっぴろげなジョーの態度に打ち解け、意気投合して、以後マーチ家の人々と親しく交流する。ドーラという愛称で呼ばれるのを嫌い、姉妹たちには自らをローリーと呼ばせる。また、セオドアの愛称でテディとも呼ばれる。両親は早くに亡くなっているが、母の音楽の才能を引き継いで自らもピアノを弾く。性格は快活で茶目っ気があり紳士的、誰からも好かれるが、やや無鉄砲でいたずら好きな面も。
活発で性格の似たジョーを熱愛するが、最終的にはエイミーを娶る。第3作以降もジョーたちのよき隣人であり、協力者になった。第3作の主人公であるナットは彼の勧めで、ジョーが経営する学園へやってきた。
老ローレンス
セオドア・ローレンスの祖父。一見気難しそうに見える老人だが、根は非常に優しく親切で、マーチ家では特にベスを愛していた(彼の亡くなった孫娘の面影を重ねてもいた)。ローリーの両親の結婚には反対で、それと関係してローリーが音楽をやることを嫌う。ローリーに対しては厳格でもあるが、一面では非常に甘い。何かとマーチ家の力になり、「ベア学園」には財産を遺贈する。
ジョン・ブルック
ローリーの家庭教師として登場。マーチ家四姉妹がローリーや彼の友人らとキャンプへ出かけた際にメグと出会い、後に結婚する。第1作終盤には、ミスター・マーチが負傷した際、ミセス・マーチの付き添いでミスター・マーチが収容された病院へ同行し、しっかりとその責任を果たした。
第2作の最初にメグと結婚し、その後は双子の兄妹デミとデーズィ、次女のジョーズィをもうける。性格はやさしく、いたってまじめで倹約家。しかし、第3作で心臓発作で急死する不幸に見舞われるが、同時に彼がどれほど周りから愛され、慕われていたかも判明する。

プラムフィールド[編集]

フリッツ・ベア(ベア教授)
第2作より登場。ジョーが文筆修行のためにニューヨークへ行った際に出会い、後に結婚する。性格は穏やかで子供好き。ジョーと出会った時、すでに30代後半でジョーとは歳が離れており、その時は家庭教師をして生計を立てていた。第3作以降は妻のジョーと共にプラムフィールドを経営し、そこで教師となる。
ナット
第3作でプラムフィールドにやってきた12歳の少年。実質的に第3作の主人公である。貧乏な父と共に、ヴァイオリン弾きとして各地を転々としていたが、父が死に、行き場を失っていたところをローリーに拾われ、学園にやってきた。将来はヴァイオリニストになるのが夢。性格は気弱で誰にでも優しいが、まれに恐怖から嘘をつく悪い癖がある。
学園時代からデーズィと仲が良く、成人した第4作では恋人同士となるも、ヴァイオリンの修行のため、ヨーロッパへ旅立ち離れ離れになる。しかし、帰国後にその恋は成就したようである。
ダン
ナットが放浪をしていた際に出会った無法者の少年。ナット同様行き場がなく、ナットの紹介でプラムフィールドにやってきた。当初は問題ばかり起こし、一度はページ氏の元へ預けられるが、その後すぐに脱走し、その後は再び学園に帰ってくる。学園に帰ってきた後は、迷惑をかけても愛情を注いでくれるベア夫妻、特にジョーに対する感謝の気持ちが、当初の彼の荒々しさを徐々に和らがせてゆく。ページ氏に預けられていた際にある老人と出会い、そこで博物学に興味を持ち始め、それを聞いたローリーから、それらに関する本や子供たちが集めたものを展示するプラムフィールドの博物館を寄贈される。成人した第4作以降は、各地を転々とする旅人となる。

本作を題材にした作品[編集]

映画[編集]

メグ:ジャネット・リー、ジョー:ジューン・アリソン、ベス:マーガレット・オブライエン、エイミー:エリザベス・テイラー、ローリー:ピーター・ローフォード、ベーア教授:ロッサノ・ブラッツィ、マミー:メアリー・アスター出演。
ウィノナ・ライダースーザン・サランドン出演。

テレビ[編集]

アニメ[編集]

1977年10月6日放映、TBS系放映、ダックスインターナショナル制作
1980年5月3日放映、フジテレビ系放映、東映動画制作。
メグ:増山江威子、ジョー:杉山佳寿子、ベス:麻上洋子、エミー:小山茉美、母:池田昌子、ナレーター:吉永小百合
1981年4月7日-1981年9月29日東京12チャンネル放映、国際映画社制作
1987年1月11日-1987年12月27日、フジテレビ系放映、日本アニメーション制作
1993年1月17日-1993年12月19日、フジテレビ系放映、日本アニメーション制作

漫画[編集]

ミュージカル[編集]

歌劇[編集]

  • 1998年 マーク・アダモ作曲。台本は作曲者自身。1998年にテキサス州ヒューストン・グランド・オペラにて初演(この公演はテレビ放映され、DVD化もされた)。同地での再演に加え、カルガリー(カナダ)やテルアヴィヴ(イスラエル)などでも公演され、2005年には来日したニューヨーク・シティ・オペラによって東京と名古屋でも公演(アジア初演)が行なわれた。

脚注[編集]

  1. ^ 中国語訳も同名。
  2. ^ 吉田勝江による訳では「ジョオ」と記される。

外部リンク[編集]