障害者

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障害者が利用できる施設であることを示す「国際シンボルマーク

障害者(しょうがいしゃ、「障礙者」や「障碍者」「障がい者」とも表記する場合がある、disability)とは、何らかの原因によって長期にわたり日常生活または社会生活に相当な制限を受けざるを得ない人のこと。児童福祉法の規定の関係上、18歳未満の場合は障害児という場合がある。

定義[編集]

法律の定義上は、身体障害者知的障害者精神障害者発達障害者を含む。至極軽度の障害によって制約を受ける者も分類上は同様に呼ばれる[1]が、本項は下記の内容を中心に説明する。

障害の医療モデルとアプローチについてはリハビリテーション#障害の分類と対策を参照のこと。

最初に訳語の問題として、不可逆的な状態にあるdisabilityの訳語である障碍という字があてられる状態と、そうではない精神障害のdisorderの訳である障害は異なる[2]

WHOの定義[編集]

Disabilities is an umbrella term, covering impairments, activity limitations, and participation restrictions. An impairment is a problem in body function or structure; an activity limitation is a difficulty encountered by an individual in executing a task or action; while a participation restriction is a problem experienced by an individual in involvement in life situations. Thus disability is a complex phenomenon, reflecting an interaction between features of a person’s body and features of the society in which he or she lives[3].
障害とは、身体の損傷、活動の制約、参加の制限が含まれる包括的な用語である。損傷は身体における機能もしくは構造に対するものを指し、活動の制約は個人が仕事や行動を行う際に直面する困難を指し、参加の制限は個人が生活する中で体験する問題である。したがって、障害は複雑な現象であり、ある個人の肉体が持つ特徴と、その人が生きる社会の特徴とがもたらす相互作用の反映である。

デラウェア大学の定義[編集]

デラウェア大学英語版出版の『脳性まひ看護ガイド』(Cerebral Palsy: A Guide for Care)では以下の様に述べられている[4]

減損 (Impairment) という単語は、筋肉を自在に動かせないとか、不要な動きを制御できないというようなことを標準からの統計的偏差として示す上では正しい表現である。障害 (Disability) いう単語は、日常生活において同じ年齢の他人ができる正常な動きに制限がかかっていることを定義することに使われる。例えば3歳になれば通常はひとりで歩く事ができるのに、これができない子供は障害を持っている。ハンディキャップ (Handicap) という単語は、障害を抱えるために社会における正常な役割を同世代の他人や同じ社会文化的な環境条件で、同等の活動ができない子供や大人を表すのに使われる。例えば、食事や排泄または衛生を自分で行えない16歳の少年はハンディキャップを持っていると言える。その一方で、松葉杖を使えば自ら歩け、普通学校に通い日常生活も自らこなせる同年の少年は障害を持っているがハンディキャップを抱えていないと言える。すべての障害者は何らかの減損を持ち、全てのハンディキャップを抱える人は何らかの障害を持っている。しかし、減損を持つ人が必ず障害者であるものでもなく、障害者がハンディキャップを抱えていると限られるものでもない。

日本における定義[編集]

条約[編集]

条約障害者の職業リハビリテーション及び雇用に関する条約(第159号)」では、

この条約の適用上、「障害者」とは、正当に認定された身体的又は精神的障害のため、適当な職業に就き、これを継続し及びその職業において向上する見通しが相当に減少している者をいう。(日本語訳より。正文英文またはフランス文

この条約は1992年6月12日に日本が批准している[5]。 

法律[編集]

障害者基本法では、第二条において、障害者を以下のように定義している。

身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

身体障害者については、身体障害者福祉法第四条において次のように定義している。

この法律において、「身体障害者」とは、別表に掲げる身体上の障害を抱える十八歳以上の者であって、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう。

「別表」として5項目を掲げ、「視力障害」「聴覚または平衡機能の障害」「音声機能、言語機能、咀嚼機能の障害」「肢体不自由」「重篤な心臓、腎臓、呼吸器機能の障害」というべきものをそれぞれに定義している。

精神障害者は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第五条において以下のように定義される。

この法律で「精神障害者」とは、精神分裂病、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者をいう。

なお、知的障害者については知的障害者福祉法に定義がないが、障害児児童福祉法第四条第二項において以下のように定義される。

この法律で、障害児とは、身体に障害のある児童又は知的障害のある児童をいう。

なおこの法律で児童とは第四条に

この法律で、児童とは、満十八歳に満たない者をいい(以下省略)

と定義されている。

障害者自立支援法の改正法、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)における障害者の定義は第四条に

この法律において「障害者」とは、身体障害者福祉法第四条 に規定する身体障害者、知的障害者福祉法 にいう知的障害者のうち十八歳以上である者及び精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第五条 に規定する精神障害者(発達障害者支援法 (平成十六年法律第百六十七号)第二条第二項 に規定する発達障害者を含み、知的障害者福祉法 にいう知的障害者を除く。以下「精神障害者」という。)のうち十八歳以上である者並びに治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって政令で定めるものによる障害の程度が厚生労働大臣が定める程度である者であって十八歳以上であるものをいう。

障害児は第四条第二項に

この法律において「障害児」とは、児童福祉法第四条第二項に規定する障害児及び精神障害者のうち十八歳未満である者をいう。

と定義されている。

発達障害者は、発達障害者支援法第二条第二項において以下のように定義される。

この法律において「発達障害者」とは、発達障害を有するために日常生活又は社会生活に制限を受ける者

その他[編集]

聴覚障害自閉症などの特定の病状を「障害」と表現することには抵抗を持つ人々がおり、発達上の相違と捉えるべきことを社会によって不当に汚名を着せられていると主張する[6]

理論[編集]

医学モデル[編集]

医学モデルとは、障害を引き起こすものは病気・トラウマ・その他の健康状態を起因とする個人の問題をして扱い、そのために専門家が個別に継続的な治療を施さなければならないものという考えである。このモデルでは、障害の管理とは「治療」もしくは「ほとんど治療」または効果的な治療へと繋がる個人に対する調整や行動の変更を目的としている。ここでは、医療が本題であり、政治的な意味では統計解析がヘルスケアに関する政策へ改革を促すものになる[7][8]

社会モデル[編集]

障害に対する社会モデルとは、「障害」の問題を社会的に発生したものと捉え、個人が社会へ全面的に適応する際の課題とみなす。このモデルでは、障害は個人に帰する問題ではなく、様々な状態が絡み合った複雑さとして受け止め、多くは社会環境から発生していると考える。従って、この問題と向き合うには社会活動が求められ、人々が障害者と社会生活全般の場面で供に生きられるような環境を整備する社会全体の集団責任となる。この問題は文化イデオロギー双方に関わり、また個人・共同体・そしてより広い社会の変化が必要になる。このような点から、減損や障害を持つ人々の機会平等は、重要な人権問題ということになる[9][8]

規模[編集]

全世界または国単位での障害者数割り出しには多くの問題がある。さまざまな障害者の定義があるにも関わらす、人口統計学者らは世界人口に占める障害者の割合は非常に大きいと考えている。例えば、2004年にWHOは世界65億人のうち、それなりの程度かもしくは深刻な状態の障害を持つ人は1億人近いと推計した[10]。障害を取り扱う専門家の中で広く行き渡った共通認識に、障害は一般に先進国よりも発展途上国で多いというものがある。障害と貧困の関係は一種の「悪循環」にあり、双方が状況の悪化を招き合っている[11]

アメリカ合衆国国勢調査局によると、2004年に同国内の障害者数は18歳以上の大人で3200万人、18歳未満の子供で500万人がおり、障害までには行かないが減損を抱える人々を加えると総数は5100万人になるという[12]ベトナム戦争の帰還兵でも、負傷して戻った15万人のうち少なくとも21000人が障害を抱えることになった[13]。2001年以来、合衆国軍の関与行為が増え、その結果として軍人が障害を負うケースが非常に増加している。Fox Newsによると増加率は25%、290万人の退役軍人が障害者であるという[14]

数年間にわたるアフガニスタン戦争によって100万人以上の身体障害者が生じたという[15]アフガニスタンでは、世界的にも障害者の数が非常に多いが[16]、およそ8万人は地雷によって四肢のどこかを失った[17]

2008年3月24日に厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課より発行された平成18年身体障害児・者実態調査結果[18]によると、在宅の全国の身体障害者数は、3,483,000人と推計されている(2006年7月1日現在)。

  • 世界では、毎年約790万人の障害児が誕生している。これは、全出産数の約6%を占めている。
  • これら障害児の出産、死亡の9割以上が、発展途上国に偏っている[19]
  • 両親の喫煙汚染された水空気食物による影響が考えられている。

障害と貧困[編集]

障害と貧困には、さまざまな要因によってもたらされた結果として、世界的に相関関係がある。これらには悪循環を形成する可能性がある。身体的な障壁は収入を得る行動を難しくさせ、そのために治療機会や健康的な生活の維持を難しくしてしまう[20]

障害者施策[編集]

ナチス・ドイツ[編集]

また、秘密裏に行われたわけではなく、「障害者の存在が健全な家庭を圧迫している」ことをメインに広報活動を行った。
一般社会に対しても障害者の絶滅を訴えるなどの活動が行われていた。

北朝鮮[編集]

  • 脱北した北朝鮮の将校の証言によると北朝鮮で生物化学兵器を開発するために、一般家庭の障害を持つ子女や将校・士官の子供や政治犯が「人体実験の道具」として利用されたとカタールのTV局・アルジャジーラや中国の報道で伝えられた[21]

日本[編集]

戦前の状況[編集]

  • 戦前日本では、公的な障害者施策は、ほとんど行われることがなかった。
  • もっとも、古来の日本の神道では、何か特別な能力を持った対象として、障害者を畏敬したという。例えば、日本神話で、伊弉諾(いざなぎ)と伊弉冉(いざなみ)の2神の間に生まれた最初の子供である蛭子(ひるこ、ひるのことも呼ばれる)は、3歳になっても足が立たず舟に乗せられて海に捨てられたとされるが、中世以後になって、これを恵比寿(えびす)と呼んで信仰に結びついたとされる。また、障害者の中には、神職など祭儀を司る役割を担ってきた者もいたという。例えば、片目片足伝承と結びついたひょっとこ(火男)は、日本神話古事記)に登場する天目一箇神(あめのまひとつのかみ、天目一箇命(あめのまひとつのみことともいう)をはじめとする鍛冶神の本尊が、火を吹く口の形を現したものとして伝えられている。
  • 江戸時代には、「盲人」「いざり」「めくら」「腰引」「物いわず」など、様々な障害者と考えられる呼称が見られる。近世社会における障害者の実態については史料的制約が大きいが盲人に関しては比較的資料が多く、盲人でありつつも国学者として活躍した塙保己一の存在などが知られる。歴代将軍の中にも脳性麻痺で重い言語障害のあったと考えられている徳川家重ほか障害者、もしくはそうでなかったかと言われている人物がいた[22]。また視力障害者のうち男子には当道座、女子には瞽女といった按摩師や音楽家の職業を斡旋する社会的身分保障がなされていた。
  • 在方社会における障害者の実態も家族内で扶養されている者や生業にある程度関わるものまで実態は多様であり、大家族においては介助・扶養の点で余力があるため障害者が多いことも指摘されている。障害者の百姓に対し領主が年貢や不役の免除を行っていたことは確認されないが、障害者の当主に対しては相続排除や家督交替を勧めていたと考えられている。
  • 以上のような歴史的な記録から、障害を抱える人に対して差別的な見方がされるようになったのは、近代以降であるとする見解がある。
  • これに対する反論として、触穢思想との関連から、中世平安時代から室町時代)において障害者を穢れをもたらす存在として非人として扱われていたとする説がある。これは、神道の天つ罪に由来して陰陽道の普及によって強化された考え方と考えられ、後に謡曲などによって知られるようになった蝉丸の伝説などに代表されるように、障害者は天皇の住まう平安京の清浄を守るために、穢れから平安京を守るための祭祀が行われていた四堺の外に放逐された。

戦後の状況[編集]

21世紀の施策[編集]

  • これまでの指摘を受けて、2004年(平成16年)に発達障害者支援法が新たに制定され、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害学習障害注意欠陥多動性障害などの発達障害者に対する支援策が、法的にも打ち出されることになった。また、2006年(平成18年)から、新たに、従来は対象外とされてきた精神障害者も、障害者雇用枠の対象者となるなど、徐々に対策が広がっている。
  • 2004年(平成16年)、障害者基本法の改正が行われ、「障害を理由として差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」ことが、基本的理念として条文化された。また、都道府県・市町村に「障害者計画」の策定が義務化された。
  • 2005年(平成17年)、これまで別個の法制度で行われてきた障害者支援策を、統一的に行うながいの目的から、障害者自立支援法が新たに制定された。
  • 2006年(平成18年)、千葉県で全国初の障害者差別をなくすための条例である「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」が制定された。

学校での障害児教育[編集]

障害児については、学校教育法のなかで、「障がい児」の定義があるが、1947年(昭和22年)にできた法文のまま、50年以上改正されなかった。重度障害児は就学を希望しても就学猶予・就学免除により排除された。1979年(昭和54年)には養護学校が義務化され、地域の小学校中学校に通っていた障害児も反対がなければ分離された。養護学校の設立当初は機能訓練が中心で、現在の養護学校とは様相が異なった。

近年の学校教育では、障害児を主としてコミュニケーションの面からみているが、精神科医は、それをどのような症状、兆候を見せるかというところから、診断、判断するため、障害児・障害者の分類は、かなり違ったものになる。

なお、文部科学省は、2001年(平成13年)から障害児教育を従来の「特殊教育」から「特別支援教育」に呼び改めることとした(ただし学校教育法上の法文は「特殊教育」のままであった)。2007年4月1日からは、「学校教育法等の一部を改正する法律」(平成18年6月21日法律第80号)[23]が施行され、それぞれ別個の学校種であった盲学校・聾学校・養護学校は特別支援学校という学校種に移行した。このため、2007年4月1日以降は、校名を変更した学校と変更していない学校が混在している。また、法文上「特殊教育」と記されていたものは、すべて「特別支援教育」と記されるようになった。

現在では統合教育と並行して、インクルージョン教育が推し進められている。

障害者雇用政策[編集]

障害者の雇用については、「障害者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)によって、一定規模以上(2007年時点で常用労働者数56人以上)の事業主は、障害者を一定割合以上雇用すべき法律上の義務を負う。これを障害者雇用(法定雇用)といい、その割合を、障害者雇用率(法定雇用率)[24]という。その率は、

※重度身体障害者及び重度知的障害者については、1人の雇用をもって、2人の身体障害者又は知的障害者を雇用しているものとみなされる。
※2006年4月1日施行の法改正によって、精神障害者も、法定雇用の対象となった。

実際には、障害者が就業することの困難な職種もあるために、業種ごとに除外率が決められているが、最終的には次のような職種を除いて廃止の予定。

障害者雇用促進法第44条、第45条は、親会社が多数の障害者を雇用する目的で設立し、一定の要件を備えた子会社について障害者雇用率の算定で親会社の雇用とみなす制度を設けている。これが特例子会社制度である。2007年4月末現在、213社が特例子会社に認定されている。

厚生労働省の障害者雇用調査(2006年6月1日時点)によれば、従業員5000人以上の企業の平均雇用率は1.79%としている。なお、上位5社は次のとおり。

  1. ユニクロ 7.42%
  2. 日本マクドナルド 2.94%
  3. しまむら 2.83%
  4. すかいらーく 2.82%
  5. パナソニックエレクトロニックデバイス 2.79%

障害者への手当・助成[編集]

日本においては、以下のような手当・助成制度が設けられている。

表記・呼称[編集]

国際人権法に基づき2006年国連総会で採択された「Convention on the Rights of Persons with Disabilities」(外務省仮訳、障害者の権利に関する条約[25]においては当事者について言及する際「handicapped」や「disabled」ではなく一貫して「with disabilities」という表現を用いている。ただし、これらの三語はどれも障がいと訳される。"challenged"は「(体の)不自由な」の訳になる。

日本[編集]

戦前は不具者(ふぐしゃ)、不具癈疾者(ふぐはいしつしゃ)などと表記され、一般には「片輪者(かたわもの)」と呼ばれていた。

学術用語としては、1924年(大正13年)に刊行された樋口長市の著書『欧米の特殊教育』に「視角障碍者」「聴覚障碍者」「言語障碍者」の用例が確認される[26]。また、新聞記事では1917年(大正6年)1月20日付の『福岡日日新聞』に「例えば生糸織物工場等は多少影響を蒙るやに想像せらるるも此等の工場が障害者を生ずる事は甚だ少なきを以て」、また1921年(大正10年)12月17日付の『大阪毎日新聞』に「故に米国では工場法によつて工場主は労働者に賠償の方法を講じてゐるが一時に多数の障害者を出した場合等が」[27]との使用例が確認される。ただし「障碍者」「障害者」のいずれも戦前のこうした用例は僅少である。

「障害者」および「障害者」の意味での「障害」の表記は1949年(昭和24年)の身体障害者福祉法の制定を機に一般的に使われるようになった。同法律では「障害」「障礙(碍)」のうち「礙(碍)」が当用漢字使用制限によって法律では使えなくなったことにより「障害」という語が採用された[要出典]

なお、「碍」は「礙」の俗字である[28]。「障害」「障礙」はいずれも当用漢字制定前から同じ“さわり・妨げ”という意味の熟語として漢和辞典に掲載されていたが[29]、現在のような“身体の器官や能力に不十分な点があること”という特定の意味ができたのは後年のことである。

近年、「害」の字が入っているのは好ましくないとして、地方自治体を中心に交ぜ書きで「障がい者・障がい児」と表記を交ぜ書きする変更する動きが広がっている[30]。自治体としては「障害者」を「障がい者」に表記を変えるだけで福祉に配慮した自治体、福祉に配慮のない自治体というイメージ付けされてしまうため、深い考察もなく変更してしまう。これについて、「障」「者」「児」の字が入っていても良いのか?と言及されることがある。

この変更については議論も多く、

  • 今まで意識していなかった負のイメージを逆に意識してしまう
  • 過度な言葉狩りである
  • 小学校で習う常用漢字教育漢字[31]を否定している
  • 障害者の実情から目を背けているだけ

との批判もある[32]

当の障害者らはどちらでも良いと感じている人がほとんどであり、どちらかといえば障害当事者の家族や障害者団体の方が変更の推進に積極的であることから、障害当事者の中には議論されること自体を不快とみる向きもあり[33]、配慮を要する。このように「障害者」の表記・表現の変更に関する議論については賛否両論があるが[34]、「『害』の字を不快に感じる人が一人でもいるのであれば」というスタンスで、2009年には政府が従来の障害者施策推進本部に代えて障がい者制度改革推進本部を設置。このように表記の変更は着実に進んでおり[35]、同推進本部に設置されている障害者制度改革推進会議では法文における表記を「障害」から見直すことも協議されているが[36]佐賀県知事古川康2010年2月に「交ぜ書きは好ましくない」として推進本部と文化審議会に対して「碍」を常用漢字に追加し「障碍者」を採用すべきであると表明した[37]。これに対し、文化審議会国語分科会は2010年5月に公表した答申案において使用される熟語の少なさや歴史的に「障碍」は「悪魔怨霊が悟りへの到達を妨げる」とする否定的な意味を有していたとする調査結果を挙げて「碍」の常用漢字追加を拒否する方針を決定[38]。但し、障がい者制度改革推進会議における議論の結果、同会議より追加の要望が出された場合は11月に予定されている内閣告示前に改めて協議するものとされている[39]

また、この「がい」表記の変更に合わせて、アメリカの「ピープル・ファースト」(障害者である前に人間である)の考え方を取り入れて、出来る限り「障害者」ではなく「障がいのある人(方)」と表記する方針に改めている自治体も多い。しかし「障害者」を「障がい者」「障がいのある方」とどんなに改めてもそこにマイナスのイメージが定着すると差別用語と化してしまい根本的な解決に至っていない。

中国・台湾[編集]

大陸部(中華人民共和国)では伝統的に「残疾人」の呼称が使用されているが、儒教思想に基づく差別的概念を前提とする呼称ではないかとの批判が生じており[要出典]、障害者権利条約[40]の批准に伴う中華人民共和国残疾人保障法を始めとする国内法の整備に合わせ「残疾」を「残障」とする案も提示されていたが、既に市井で「残疾人」が広く使用されているため呼称の変更を周知するのに時間がかかる、さらには「残障」も十分に理想的な用語とは言えないとの理由で、現行のままとなっている[41]。なお、台湾では繁体字を用いて「障礙者」もしくは「障礙人」が用いられている[42]。また、中国語では大陸・台湾とも共通でアクセシビリティあるいはバリアフリーのことを「無障碍(礙)」と表現する。

英語[編集]

イギリスでも「人を前に置く表現」に似た用法があるが、「people with impairments」(たとえば視覚減損を対象にした「people with visual impairments」)と減損についての言及が多い。イギリスの場合、「disabled people」の方が人を前に置く表現よりも一般に都合が良い。社会モデルが議論される中で、障害 (disability) はその人の個性であり、例えば車椅子で通勤経路にスロープを設けるなど、公共設備の改善を促す契機に繋がるためである[43]

日本でよく言われる「ハンディキャップ」は、英語圏でもよく使われる表現であるが、本来の語源[44]とは別に、民間語源によって「物乞いをする人が手にキャップ(帽子)を乗せている状態」を表すとされる[45]

資料[編集]

障害別にみた障害者数の推移
(資料出所:厚生労働省 身体障害者・児実態調査結果の概要)
理由 1991 1996 2001
実数 比率 実数 比率 実数 比率
視覚障害 353,000 13.0% 305,000 10.4% 301,000 9.3%
聴覚言語障害 358,000 13.2% 350,000 11.9% 346,000 10.7%
肢体不自由 1,553,000 57.1% 1,657,000 56.5% 1,749,000 53.9%
内部障害 458,000 16.8% 621,000 21.2% 849,000 26.2%
重複障害(再掲) 121,000 4.4% 179,000 6.1% 175,000 5.4%
総数 2,843,000 3,112,000 3,420,000

脚注[編集]

  1. ^ 骨折による梅雨時等の膨張率変化によって発生する骨の軋み、歯の脱臼による神経切断など、法的な認定はされないが、事故による何らかの軽度な後遺症が発生した場合。
  2. ^ 日本精神神経学会/精神科病名検討連絡会「DSM‒5 病名・用語翻訳ガイドライン(初版)」 (pdf) 、『精神神経学雑誌』第116巻第6号、 429-457頁。
  3. ^ Disabilities”. World Health Organization. 2012年8月11日閲覧。
  4. ^ Cerebral Palsy: a Guide for Care”. The Nemours Foundation. 2007年7月29日閲覧。
  5. ^ 職業リハビリテーション及び雇用(障害者)条約(第159号) ILO駐日事務所 2011年8月26日閲覧
  6. ^ Solomon, Andrew. “The New Wave of Autism Rights Activists”. New York Magazine. 2011年10月30日閲覧。
  7. ^ Nikora et al. 2004, p. 5.
  8. ^ a b Donovan 2012, p. 12.
  9. ^ Nikora et al. 2004, p. 6–7.
  10. ^ Disease incidence, prevalence and disability”. Global Burden of Disease. World Health Organization (2004年). 2012年8月11日閲覧。
  11. ^ Yeo, R. & Moore, K. (2003). Including disabled people in poverty reduction work: “Nothing about us, without us”. World Development 31, 571-590.
  12. ^ American FactFinder”. Factfinder.census.gov. 2012年8月11日閲覧。
  13. ^ "The War's Costs". Digital History.
  14. ^ "VA: Number of Disabled Veterans Rising". FOXNews.com. May 11, 2008.
  15. ^ "Homes for disabled in Afghanistan". BBC News. May 29, 2009.
  16. ^ "Afghanistan: People living with disabilities call for integration". IRIN Asia. December 2, 2004.
  17. ^ Norton-Taylor, Richard (2008年2月13日). “Afghanistan's refugee crisis 'ignored'”. London: The Guardian. http://www.guardian.co.uk/world/2008/feb/13/afghanistan 2012年8月11日閲覧。 
  18. ^ 平成18年身体障害児・者実態調査結果(厚生労働省) (PDF)
  19. ^ 障害児の出生率が増加傾向、年間100万人以上が誕生 - レコードチャイナ』2007年9月21日付配信
  20. ^ Yeo, R. (2005). Disability, poverty, and the new development agenda. Disability Knowledge and Research Programme. Webaccessed: http://www.dfid.gov.uk/r4d/PDF/Outputs/Disability/RedPov_agenda.pdf
  21. ^ <北朝鮮>心身障害児を化学兵器の人体実験に-中国報道 サーチナ 2009年7月29日
  22. ^ もっとも、これは能力より血筋を重視した結果であるが「側用人以外家重が何を言っているかわからない」という人物が将軍になったことは事実である。
  23. ^ 学校教育法等の一部を改正する法律(平成18年6月21日法律第80号)
  24. ^ 具体的数値は、政令(障害者の雇用の促進等に関する法律施行令)で定められている。
  25. ^ 障害者の権利に関する条約・日本語仮約(外務省)
  26. ^ 欧米の特殊教育国立国会図書館近代デジタルライブラリー
  27. ^ 原文は旧字旧仮名遣い
  28. ^ 『詳解漢和辞典』第178版 冨山房 (大正11年3月25日 発行)、『三省堂漢和辞典』第12版 三省堂書店 (明治42年7月10日 発行)
  29. ^ 「障害」と「障礙」は共に明治時代から使用例があり、「障害」という表記は「礙」を同音の「害」に単純に置き換えて戦後に造語されたものではないとされる。
  30. ^ アメーバニュース『表記は「障害者」?それとも「障がい者」?』2007年2月27日
  31. ^ 「害」という漢字自体は、小学4年生の課程で習う。
  32. ^ MSN産経ニュース - 【新国語断想】塩原経央 子ども、障がい者 漢字が悪いわけじゃない 2009年10月13日
  33. ^ 三重県保健・医療・福祉総合情報-「障がい者」の表記に改めます(三重県)
  34. ^ 「障がい」の表記について - 大分県福祉保健部(2006.2)
  35. ^ 障がい者制度改革推進本部を設置―政府(キャリアブレイン)
  36. ^ 第5回障がい者制度改革推進会議議事次第
  37. ^ 「障害」→「障碍」 佐賀県、国に見直し提案へ佐賀新聞、2010年2月17日)
  38. ^ 要望の多かった「玻・碍・鷹」の扱いについて
  39. ^ 改定常用漢字表(答申) 12ページ。 (PDF)
  40. ^ 残疾人权利国际公约(国際連合、簡体字中国語正文)
  41. ^ 中华人民共和国残疾人保障法修改专题(中国残疾人联合会)
  42. ^ 身心障礙者權益保障法中華民国法務部)中華民國視覺障礙人福利協會など。
  43. ^ e.g., Glascow Centre for Inclusive Living: The Social Model of Disability
  44. ^ 英語勉強サイト「eigo21」 handicap「ハンディキャップ」語源解説
  45. ^ About the Meaning of "Handicap"

参考図書[編集]

  • 「障害を知ろう!みんなちがって、みんないい」シリーズ(金の星社
  • 「知っていますか?障害者の人権一問一答」(解放出版社

障害者のための大学・短期大学・専門学校[編集]

  • いずみ高等支援学校 - 仙台市宮城野区安養寺に所在する、高等部と専攻科を設置し、女子のみを受け入れる私立の特別支援学校(「知的障害者に関する教育」を扱う)。
  • 筑波技術大学 - 聴覚障害・視覚障害を有するものを対象とする大学。

関連項目[編集]

障害の種類[編集]

障害を扱った作品の一覧[編集]

障害を扱った作品の一覧及びCategory:障害を扱った作品を参照。

外部リンク[編集]