エキュメニカル審査員賞

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エキュメニカル審査員賞(エキュメニカルしんさいんしょう、Prix du jury œcuménique)は、キリスト教関連の団体から贈られる賞で、カンヌ国際映画祭の独立部門のひとつ。1974年から授与されている。エキュメニカル審査員賞は、ロカルノ国際映画祭など他の映画祭にも設けられている。

概要[編集]

エキュメニカルとはキリスト教の教会統一の意。キリスト教徒の映画製作者、映画批評家らにより、1974年にカンヌ国際映画祭の独立部門として創設された。カトリックとプロテスタントの組織「SIGNIS and INTERFILM」の審査員6名によって「人間の内面を豊かに描いた作品」に贈られる[1]

受賞者の傾向[編集]

受賞者の国籍は欧州が多く、特にイタリアドイツポーランドの占める割合が高い。

キリスト教国でないアジア諸国からは、いままでに8人が選出されている。1994年のチャン・イーモウ(『活きる』)、2000年の青山真治(『EUREKA』)、2017年の河瀨直美(『』)、2021年の濱口竜介(『ドライブ・マイ・カー』)、2022年の是枝裕和(『ベイビー・ブローカー』)に加え、イランからは2001年のモフセン・マフマルバフ(『カンダハール』)、2003年のサミラ・マフマルバフAt Five in the Afternoon)、2013年のアスガル・ファルハーディー(『ある過去の行方』)の3人が選ばれている。河瀨直美サミラ・マフマルバフに続く史上2人目の女性受賞者となった。

2009年にはラース・フォン・トリアーの『アンチクライスト』の内容が反キリスト教的だとして、皮肉の意味を込め「アンチ・アワード」を与えた。

受賞作品[編集]

開催年 題名
原題
監督 製作国
1974年 不安と魂
Angst essen Seele auf
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー 西ドイツの旗 西ドイツ
1975年 カスパー・ハウザーの謎
Jeder für sich und Gott gegen alle
ヴェルナー・ヘルツォーク 西ドイツの旗 西ドイツ
1976年 受賞なし
1977年 レースを編む女
La Dentellière
クロード・ゴレッタ フランスの旗 フランス
1978年 木靴の樹
L'Albero degli zoccoli
エルマンノ・オルミ イタリアの旗 イタリア
1979年 麻酔なし
Bez znieczulenia
アンジェイ・ワイダ ポーランドの旗 ポーランド
ストーカー
Сталкер
アンドレイ・タルコフスキー ソビエト連邦の旗 ソビエト連邦
1980年 コンスタンス英語版
Constants
クシシュトフ・ザヌッシ ポーランドの旗 ポーランド
1981年 鉄の男
Człowiek z żelaza
アンジェイ・ワイダ ポーランドの旗 ポーランド
1982年 サン★ロレンツォの夜
La notte di San Lorenzo
タヴィアーニ兄弟 イタリアの旗 イタリア
1983年 ノスタルジア
Nostalghia
アンドレイ・タルコフスキー ソビエト連邦の旗 ソビエト連邦
1984年 パリ、テキサス
Paris,Texas
ヴィム・ヴェンダース 西ドイツの旗 西ドイツフランスの旗 フランスイギリスの旗 イギリス
1985年 オフィシャル・ストーリー
La Historia oficial
ルイス・プエンソ アルゼンチンの旗 アルゼンチン
1986年 サクリファイス
Offret
アンドレイ・タルコフスキー  スウェーデンフランスの旗 フランスイギリスの旗 イギリス
1987年 懺悔
მონანიება
テンギズ・アブラゼ ソビエト連邦の旗 ソビエト連邦
1988年 ワールド・アパート
A World Apart
クリス・メンゲス イギリスの旗 イギリス
1989年 モントリオールのジーザス
Jésus de Montréal
ドゥニ・アルカン カナダの旗 カナダ
1990年 みんな元気
Stanno tutti bene
ジュゼッペ・トルナトーレ イタリアの旗 イタリア
1991年 ふたりのベロニカ
La Double Vie de Véronique
クシシュトフ・キェシロフスキ ポーランドの旗 ポーランド
1992年 小さな旅人
Il Ladro di bambini
ジャンニ・アメリオ イタリアの旗 イタリア
1993年 Libera Me アラン・カヴァリエ フランスの旗 フランス
1994年 活きる
活着
チャン・イーモウ 中華人民共和国の旗 中国
太陽に灼かれて
Утомлённые солнцем
ニキータ・ミハルコフ ロシアの旗 ロシア
1995年 大地と自由
Land and Freedom
ケン・ローチ イギリスの旗 イギリス
1996年 秘密と嘘
Secrets & Lies
マイク・リー イギリスの旗 イギリス
1997年 スウィート ヒアアフター
The Sweet Hereafter
アトム・エゴヤン カナダの旗 カナダ
1998年 永遠と一日
Μιά αιωνιότητα και μιά μέρα
テオ・アンゲロプロス ギリシャの旗 ギリシャ
1999年 オール・アバウト・マイ・マザー
Todo sobre mi madre
ペドロ・アルモドバル スペインの旗 スペイン
2000年 EUREKA 青山真治 日本の旗 日本
2001年 カンダハール
Safar e Ghandehar
モフセン・マフマルバフ イランの旗 イラン
2002年 過去のない男
Mies vailla menneisyyttä
アキ・カウリスマキ  スウェーデン
2003年 午後の五時
پنج عصر
サミラ・マフマルバフ イランの旗 イラン
2004年 モーターサイクル・ダイアリーズ
Diarios de motocicleta
ウォルター・サレス アルゼンチンの旗 アルゼンチン
2005年 隠された記憶
Caché
ミヒャエル・ハネケ フランスの旗 フランス
2006年 バベル
Babel
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
2007年 そして、私たちは愛に帰る
Auf der anderen Seite
ファティ・アキン ドイツの旗 ドイツ
2008年 Adoration アトム・エゴヤン カナダの旗 カナダ
2009年 エリックを探して
Looking for Eric
ケン・ローチ イギリスの旗 イギリス
2010年 神々と男たち
Des hommes et des dieux
グザヴィエ・ボーヴォワ フランスの旗 フランス
2011年 きっと ここが帰る場所
This Must Be the Place
パオロ・ソレンティーノ イタリアの旗 イタリア
2012年 偽りなき者
Jagten
トマス・ヴィンターベア  デンマーク
2013年 ある過去の行方
Le passé
アスガル・ファルハーディー イランの旗 イラン
2014年 禁じられた歌声
Timbuktu
アブデラマン・シサコ モーリタニアの旗 モーリタニアフランスの旗 フランス
2015年 母よ、
Mia madre
ナンニ・モレッティ イタリアの旗 イタリア
2016年 たかが世界の終わり
Juste la fin du monde
グザヴィエ・ドラン カナダの旗 カナダ
2017年 河瀨直美 日本の旗 日本
2018年 存在のない子供たち
کفرناحوم
ナディーン・ラバキー レバノンの旗 レバノン
2019年 名もなき生涯
A Hidden Life
テレンス・マリック アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国ドイツの旗 ドイツ
2021年 ドライブ・マイ・カー 濱口竜介 日本の旗 日本
2022年 ベイビー・ブローカー
브로커
是枝裕和 大韓民国の旗 韓国
2023年 PERFECT DAYS ヴィム・ヴェンダース 日本の旗 日本/ドイツの旗 ドイツ

脚注[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]